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主に長編BL小説置き場です。BLの意味が分らない、または嫌悪感がある方は速やかにブラウザバックでお願いします。

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――いつまでも ずっと――<21>

 扉が開くとリチャードは
「ここのホテルの最上階、今日彼等が泊まる場所だ」と、案内する。
 綺麗に清掃された大理石の廊下を歩くと、二人の足音がコツコツと響いた。
 途中で見えた窓からの景色は、絶景だった。多分、料金も最上級に違いない。
 贅沢志向の吉岡が好みそうな所だ。
 300505号室の前で立ち止ると、リチャードは「ここだよ」と、掌で示した。
 そして此処とは別の、さほど離れていない部屋を指差した。
 こちらからは見通しが良いが、あちらからは、置いてある観葉樹が邪魔して、この部屋が陰になるような感じだった。
「あの部屋、300527号室が、今日、その男達が泊まる部屋だ。こちらの動きが悟られないように配慮しておいたよ。君の大切な人が無事だと良いな……」
 部屋の鍵を開け、荷物を中に運び入れながら、リチャードは言う。
「ありがとう助かるよ、リチャード。この恩は必ず返すから……」
「どういたしまして。カールに泣き付かれては、私も弱くて……」
 カールが、どうしてそこまで俺にしてくれるか、本当の所、不思議だった。
 まさか、と、思ったが、その考えを否定する。
 カールには、こんなに素敵な恋人がいる。
「それでは、直ぐにでも君に協力出来るように、オーナーに相談してくるよ」
「本当にありがとう……」
 すると、リチャードは首を横に振り
「カールが君の事を、とても気に入っていた訳が、会ってみて分かったよ、うん」
 俺は意味が分からず、きょとんとリチャードを見上げた。
「ああ、その顔。本当にそっくりだね」
 リチャードはまた、瞳を輝かせニッコリと微笑む。
 先程のエレベーター前の仕草といい、嫌な予感がして
「まさか……とは思うけど――。アザラシに似てる……とか?」
「そうそう。ゴマフアザラシの赤ちゃんね! 本当に目が黒々としていて大きくて! それで身体がもっと太くて全身白い服でも着ていたら、間違えてしまいそうだよ! ベリーキュートね」
 やっぱり……と落ち込む。
 一応、俺、人間なんですけど――。その言葉を飲み込んだ。
 しかし、理由はどうであれ、協力してくれるのは有り難い。
 かなり悲しい気持ちにはなったが、今は落ち込んでなどいられないと思っていると、ふと、そんな理由だけで協力してくれる、リチャード達に疑問を抱く。
「――でも、君の立場が危うくはならない? 顧客の情報を流した上に、協力までして貰って……もし、クビにでもなったら……」
 すると、リチャードは微笑み
「それはご心配無く。ここのオーナーは、私の父だから」
 その答えに驚いた俺は「え……? じゃあ、君はここの御曹司?」と、声が上擦ってしまった。
「……と、いう事になるのかな?」
 ふふっと微笑むと、リチャードは
「そしてカールは……本当は、私の従兄弟になるんだ。なので将来、この系列のホテルは私達が経営する予定で、今は互いの受け持つホテルのボーイをして、客層を見ながら勉強中なんだ。だから、大丈夫。安心して下さい、ね?」
 従兄弟同士でそういう仲なんだ、という事実にも驚き、目を丸くする。
「そう……だったんですね。でも、そんな人を巻き込む訳には……どうして、俺に協力してくれるんですか?」
「理由は簡単。カールが君の事を気に入っているからだよ。それに、会ってみて私も、君の事が気に入った、それじゃ駄目かい? さ、グズグズしていると彼等が来てしまうよ? とにかく私は色々と確認してくるよ、連絡は室内に設置してある電話でするから」
 そう言いながら部屋に荷物を置くと、リチャードは足早に去っていった。
 リチャードが言った言葉に、カールが俺にペットになれと言ったのは、まんざら冗談でも無かったのかと、複雑な心境になった。

 一人になり一息吐くと、窓の外の景色を眺めた。
 流石に最上階だけあって見晴らしが最高だ。街並みがパラレル写真のように見える。
 流れる雲を目で追いつつ、想いを巡らせる。
 この二年、ずっと探していた隼人。
 あの日も、何も変わらずに手を振っていた。
 何故、こんな事になってしまったのか……。
 俺が……愛する者を不幸にしてしまうのだろうか?
 ネガティブな感情に囚われそうになった時、部屋の電話のベルが鳴る。
 リチャードからの連絡かと、緊張が走った。
「はい……」と、受話器を挙げ、返事をすると、やはりリチャードからだった。
「涼太、私だ。彼等は今、到着した。タクシーを降りて、エントランスに入いろうとしている。痩せた茶髪のやつと、多分、君のお義兄さんも一緒だ。見た目が、随分変わってしまったが、きっとそうだと思う」
 ヒソヒソと小さい声でリチャードは話す。フロントに居るのだろう、他の人の話し声も聞こえる。
「それで!? 隼人は、大丈夫そうなのか?」
「いや……あまり調子が良さそうとは思えない。君の知り合いと言う男に、凭れ掛かるようにしながらタクシーを降りた……立つのも辛そうだ」
 俺は、そのリチャードの報告を聞き、気が昂る。
「リチャード、俺も……俺も、様子が見たい!!」
「待ってくれ、涼太。部屋から出ないで。今、鉢合わせしたら、救えるものも救えなくなってしまう……耐えるんだ」
「……でもっ!!」
「涼太の気持ちは分かる。だけど、助けたいんだろう? 私に考えがある。機会を伺うんだ」
 逸る気持ちを抑える事が出来ず、思考が短絡的なっていた俺は、リチャードのお陰で我に返る事が出来、冷静さを取り戻した。
「分かった……ごめん、リチャード……」
「いや……。悪い、一度切る!! また後で」
 焦っている様子から、リチャードは、隼人達の接客をするのだろうと察した俺は、また連絡が入るのを、唯ひたすら待った。

 暫くすると、部屋の外から人の話し声がして、聞き耳を立てる。
 リチャードは大袈裟に、このホテルの良い所など説明していた。
 それは俺に、吉岡達がそこに居る事を知らせる為だろう。
 その好意に感謝しつつ、ドアに張り付き、神経を集中させた。
 心拍数が上昇し、今にも心臓が飛び出しそうな勢いで、その音が鼓膜に木霊し、よく聞こえない。
 深呼吸を繰り返し、鼓動を落ち着けると、必死に声を探った。
 足音が止まると、リチャードが隼人に対して、質問しているようだった。
『お客様、顔色が優れないようですが、大丈夫でしょうか?』
『彼は車酔いをしただけでね、心配は要らないよ、な?』
『……ええ』
 あれは吉岡の声だ。流暢な英語で不機嫌そうに答えていた。
 そしてあの懐かしい声がした。間違い無い、隼人だ!! 
 俺は、溢れそうになる涙を必死で堪えた。
『さぁ、部屋に入ろう、隼人。疲れただろう?』
 吉岡はリチャードに対する声と違い、優しい声を出し、今度は日本語で話していた。
 俺はそこで違和感を覚える。
 ――何故、隼人を名前で呼ぶ? 
 しかも、そんな気遣っているような、優しい声で……。
 何か途轍もなく、嫌な予感がした。
 バタン、と扉が閉まる音がして、辺りに静粛が訪れる。



               ――to be continued――


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