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主に長編BL小説置き場です。BLの意味が分らない、または嫌悪感がある方は速やかにブラウザバックでお願いします。

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――いつまでも ずっと――<14>

「それじゃ、先程の宿に電話を入れてみようか? そろそろ良い頃だろう」
 そう言いながら、吉岡さんは腕時計を見る。
「ああ、でも……もう、こんな時間か。こんな遅くまでお邪魔して、申し訳なかったね」
 壁にかけてある時計は、23時40分を過ぎていた。あちらでは前の日の5時40分頃になる。
「いえ、大丈夫ですよ。電話しましょう」
 俺が携帯を取り出すと、吉岡さんは片手を胸の前に挙げ『待った』のポーズをする。
 意味が分からず、きょとんと見ると、にっこりと微笑んだ。
「いや、私が掛けるよ。国際通話料って、バカにならないよね? 私の携帯は、コートの中なんだけれど……」
「あ、すみません、コートは廊下のところに……。でも、そんな……」
「無理しなくても良いよ? 借金、まだ返せて無いんだろう?」
 痛い所を突かれる。借金は嘘とは言え、確かに貯金は底が見え始めている。
 ここで隼人が見付かったと連絡があって、急なフライトが有った場合、往復するのは無理かも知れない。最悪、本当に借金する羽目になる。
 俺は、吉岡さんの申し出を受ける事にした。
「……すみません」
「いや、構わないよ。えーと、私のコートは……」
 そう言いながら、廊下に出た吉岡さんを、俺も追いかけるように隼人の部屋を出た。

 コートを手渡し、居間へと戻る。
 吉岡さんは、携帯を取り出すと、一度メールチェックをしてる様子で画面を見ていた。
 そして、エアメールの後ろに書かれてある番号に、電話を掛けた。
 俺は、固唾を飲み、その様子を眺める。
 しかし、吉岡さんは溜息を吐くと、携帯の通話ボタンを切って俺を見た。
「まだ、誰も出ない。朝の支度で、忙しいのかも知れないな……。蓬田君、悪いが今日はこれで失礼させて貰うよ……。明日、急な仕事が入ったみたいでね、休日出勤しなくてはいけなくなったようだ。申し訳ない……」
「はい……。吉岡さん、忙しい所すみませんでした」
「いやいや、そんなの全然構わないよ。それじゃ、帰ったらまた掛け直してみるし、仕事が終わり次第、連絡入れるよ。何かあったら遠慮なく、携帯に電話してくれないか」
「今日はありがとうございました」
「いや、私の方こそありがとう。それと、このメモリ、こちらも預かっておくね? 一応企業秘密だから……」
「あ、はい。分かりました」
「それじゃ、また。食事、とても美味だったよ、ご馳走様」
「口に合ったみたいで、何よりです」
「また、ご馳走になりに来ても、良いかな?」
「ええ、是非。大してレパートリーは無いですけど」
 俺の料理が気に入って貰えた様だと思い、笑顔になる。
 吉岡さんはにっこりと微笑み、帰り支度を済ませると一礼し、玄関の扉を閉めた。

 緊張感から開放され、一息吐こうと、キッチンに立ち、コーヒーを淹れた。
 隼人の財布を眺めながら、一口、苦めのコーヒーを含むと、じんわりと涙が滲む。
 隼人はやはり、企業スパイだった。
 その事実が、胸に重く圧し掛かる。
 しかし、俺にはどうしても納得出来ない。
 本当にそうだったとしたら、吉岡さんの言う通り、誰かに脅されていたとしか、考えられない。
 だがしかし、例えそうだったとしても、もう、元の会社には戻れないだろう。
 職を失ったら、遠慮深い隼人の事だから、この家には帰り辛いのかも知れない。
 でも、俺だって、隼人一人面倒見るくらい、容易いとは言い難いが、無理じゃない。
 戻って来て欲しい、事情がどうであれ……。
 ぽつり、と、零れ落ちた涙で、コーヒーの表面に波紋が広がる。
 溜息を吐き、俺はそれを捨てると、隼人の部屋に入り、ベットに潜り込む。
 翌日、吉岡さんから電話があり、話を聞くと隼人がその宿に一泊しただけで、その後の消息は掴めない、と言うものだった。
 礼を言って通話ボタンを切ると、涙が頬を伝う。
 また、一から探し直さなければならない失望感に、押し潰されそうになる。
 だが、その後も彼は、何か少しでも手掛かりになりそうな事があると、情報を送ってくれた。だから俺はたまに自宅に招待して、持て成したりもした。
 そうして互いに情報交換していた。
 吉岡さんは、あれからずっと捜索活動を続けてくれている。
 それはとても、心強いものだと思った。
 しかし、年月は駆け足のように、残酷に過ぎて行く……。




                       ――to be continued――

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