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主に長編BL小説置き場です。BLの意味が分らない、または嫌悪感がある方は速やかにブラウザバックでお願いします。

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――いつまでも ずっと――<8>

 
 俺はその日、仕事を終えた後に約束の場所へと、逸る気持ちを抑えながら出掛けた。
 街中のネオンがやけに目に染みて、嫌な思い出が脳裏を掠める。
 クリスマスだの、忘年会だのと騒がしい雑踏の中、約束の時間より少し早めに到着した俺は、吐く息が白む中、吉岡さんが現れるのを待った。
 と、周りに居たOLの女の子達だろうか、急にざわめき立つ。
 何事かと思ってふと顔を上げるとそこには、白っぽいビジネスコートを羽織った、吉岡さんが立っていた。
「遅れて申し訳なかったね、蓬田君」
 その声にまた周りの女の子達が、頬を上気させながらひそひそと話をし、しきりにこちらを見ている。
 周りが段々と騒がしくなり、注目される中、居た堪れなくなった俺は
「いえ、そんなに待ってませんから。それじゃ行きましょうか?」と、声を掛けた。
「ん、そうだね。じゃあ車、用意してあるから、駐車場へ行こうか」
 一瞬意味が分からず、きょとんとしていると
「あ、もしかして蓬田君も車で来た? 君が飲めないと言うのもあるけれど、時期が時期だからね、店に入れないと困るし、と思ってレストラン予約しておいたんだ。しかし、ここからは少し遠いから車で行こうと思ったんだけど……」
「あ、そうでしたか、有難うございます……。でも、実は俺も車で来てるんですけど、どうしましょうか?」
 俺の言葉に少し考えている様子だった吉岡さんは、声を曇らせた。
「そうだね、君が嫌じゃないなら、君の車に乗せて貰うかな? 私の車はちょっと中が狭くてね……二台で行っても構わないんだが、あまり駐車場が広い所じゃないんだ……」
「そうなんですか? ええ、構いませんよ。俺の車で良かったら」
 きっと悪いと思ったのだろう、眉を顰めて俯き加減にしている仕草から、そんな気がした俺は、笑顔で答える。
「悪かったね、連絡入れておけばこんな手間掛けさせなくても良かったんだけど、今日はやけに仕事が入込んでいてね、本当に申し訳無いよ」
 吉岡さんは、顔色を曇らせたまま頭を下げた。
「あ、いや、そんな気にしないで下さい、吉岡さん……」
 俺は慌てて、頭をあげるように言うと、安心したように微笑んだ。
「君は義兄弟と言っても、どこか桜井君に似ているよね。丁寧な対応とか、人当たりが良い所とか……」
「……え? そう、ですか?」
 最愛の人似ている……そう言われて、心が少し、くすぐられる様な感じがした。
「ああ、似ているよ。君のような好青年だったら、私も妹を任せても良いと思える。桜井君もきっと、そうだったんだろうね」
 吉岡さんは本当に隼人の事を、良く思ってくれているのだと改めて思い、心が温まるような気持ちになりながら話をしていると、先程の女の子のグループが、こちらをしきりに見ては、何やら一人を嗾(けしか)けていた。
 どうも、吉岡さんに声を掛けろと囃立(はやした)てているのが、会話の端に聞こえ、吉岡さんもそれに気が付いたようだった。
 一瞬、目だけで声のする方を確認した後、眉を顰め視線を俺に戻す。
「さて、立ち話もなんだから、そろそろ出掛けようか?」
「ええ」と、返事をすると吉岡さんは、声を掛けられるのを避けるように、反対方向へと歩き出す。その後を、俺も追従した。
 残念そうにしているその子達の声を聞き、吉岡さんはフッと鼻で笑うと眉を顰めて、不愉快そうに話し掛けて来た。
「最近、ああ言う子達が増えて困るな。少しは古き良き時代の、大和撫子魂ってものを持って貰いたいものだよ。だから男女逆転とか言われるんだよね。そうは思わないかな、蓬田君は」
 確かにナンパな行為は好きじゃないが、吉岡さんに関しては、これだけ完璧な容姿を持つ人に遭遇できる確率は、どれ位あるかと考えると、その気持ちも分らないでも無い。
 そんな人物の横を歩く、俺の身も少しは考えて欲しいと、惨めな気分になりつつ「はぁ」と、生返事をすると、吉岡さんは不思議そうな顔をし、俺を見た。
 その子達に興味があったと思われたのかだろうか、と思い、慌てて俺は、吉岡さんを見上げる。
「あ、いえ、車の事が気になって……。吉岡さんの車、駐車場に置きっ放しで、大丈夫ですか? ここら辺駐車料金高いですし、車上荒しも最近あったみたいだし……。良かったら俺の家、そう遠くは無いので、そこに止めても良いですよ」
「そう? でも、迷惑になると悪いから……」
「俺ん家マンションなんですけど、今、義兄の分の駐車場空いてるんで、迷惑なんかじゃないですよ」
「ああ、そう言えば、一緒に住んでいたんだよね?」
 一瞬、しまったと心で呟いたが、どうせ隠した所で住所が同じなのは、あの戸籍謄本を見た時点で分っているはずだ。 
 俺は動揺を悟られ無いように、俯き加減で話す。
「ええ……恥ずかしい話ですが、妻が亡くなった時、俺、荒んでしまって……借金してしまったんです……。その時に義兄が一緒に住めば経費も半分で済むだろうと……」
「そうだったんだ……大変だったね、君も」
 同情をしているような眼差しだった。
「いえ……」
 少し後ろめたい気持ちになったが、隼人が同性愛者だと知ったら、気味悪がって、協力してくれなくなるかも知れない。
 勿論、俺に対しても、もう親切にはして貰えないだろう。
 それにもし、企業スパイとか間違いであって、隼人が会社に復帰する事になった時、そのせいでまた、変に噂を立てられる可能性もある。
 だったら、俺に非がある方と思われた方が、よっぽど良いと思った。



                     ――to be continued――


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