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主に長編BL小説置き場です。BLの意味が分らない、または嫌悪感がある方は速やかにブラウザバックでお願いします。

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――隣人がおかしな件について――<16>

 ――俺、どうなちゃっうんだよ!?
 まさか、海に沈められるとか……!?
 いや、でも、少しの間って言ってた……。
 大丈夫だ、落ち着け! こいつらだって無闇やたらに人殺しなんかしない筈だ。
 ――――アイツが居てくれたら……。
 海里の脳裏に、青葉の顔が浮かぶ。
 何、弱気になってるんだよ!
 そもそも、調子のいい事考えるな!
 俺はアイツを傷付けたんだ、助けてくれる訳ないだろ!!
 ここは考えるんだ、まだチャンスはあるはずだ……。
 海里は思考を廻らすと足掻くのを止める。
 ここで無駄に体力を消耗して、逃げるチャンスを逃したくなかったからだ。
 大人しくなった海里を見て、石山の娘婿がニヤリと口の端を上げる。
「そうそう、そうやって大人しくしてりゃ、早くおうちに帰れるかもな?」
 変わらず醜悪な笑みを浮かべて、運転席に身を置くと車を発進させた。

 少し走ったところで、石山の娘婿が叫び声を上げる。
「うわぁっ!? 何だ、あの車っ!!」
 見ると凄いスピードで、この車めがけて暴走する黒塗りの車が見える。
 石山は慌ててハンドルを切ると、すれすれで避けた。が、操作を誤り、電柱へと衝突する。
 それに釣られて後ろから付いて来ていた、他の連中を乗せていた車も、急ブレーキを踏んだらしい。キキキーッとタイヤの摩擦音が響き渡る。 
 あまりスピードが出ていなかったせいか、乗車していた者は皆、無事だった。
 海里は何が起こったか、理解するのに数秒を要した。
 ――あの車、アイツの……?
 そんな、まさか!? ってかアイツ車持ってなかったよな?
 あっ、俺が見たこと無かっただけか……?
 海里は目を見開き、車から出てくる人物を確認する。
 ヘッドライトに映し出された、黒光りする車の運転席側の扉が開くと、そこから長い手足が見えて、海里の胸はドキンと脈を打った。
 車の様子を窺っていると、出てきたのはやはり青葉だった。エアバックに埋もれながら石山が怒声を上げる。
「このガキ! 嘘付きやがったなっ!? アイツ、居るじゃねぇか!!」
 知るかよっ!! 俺が聞きたいくらいだ!
 それより何で、俺が捕まったこと知ってるんだよ!?
 海里が混乱していると、一台の、やはり黒塗りの車が横に着く。
 降りて来たのは携帯を握り締めた、スーツ姿の男だった。
 その男は携帯を閉じると、青葉に駆け寄った。
 海里を乗せたワゴン車から、わらわらと石山の雇われヤクザが降りると、怒声を上げる。
「ゴルァ! 貴様いい度胸じゃねぇか!?」
「それはこっちの台詞だ。海里を返して貰おうか」
 鋭い眼差しで立ちはだかる青葉が目に映ると、今まで張り詰めていた糸が切れたようになり、堪えていた恐怖心が沸き起こるのと同時に、ガクガクと身体が震え出す。
 スーツ姿の男は、青葉の後ろに立つと頭を下げた。
「若、すみません……! ちょっと目を離した隙に」
 開け放たれたドアのお陰で、会話は筒抜けだった。
「いや、お前が居なかったら、俺は知らないままだった。礼を言う」
「しかし、私達だけでこれだけの人数を相手にするのは……。今、応援を……」
 だが青葉は、携帯を開いた黒スーツの男を制する。
「要らない。下がっていろ」
 殺気を帯びた低音が響くと、青葉は切れ長の瞳を鋭く光らせる。その気配に気圧されたのだろう、黒スーツの男は一歩、後ろに退いた。
 青葉の周りがゆらりと陽炎のように揺らめく。その姿は獲物を狩る時の、黒豹のようにも見えた。
 いや、無理だって!
 幾らアイツが強くても、十人は居るぞ!?
 俺も加勢しなきゃ!
 海里は、焦燥した。青葉の危機に恐怖心はどこかに吹っ飛び、必死にバタバタと足を動かすと、縛られた縄を緩めようとする。
 が、そう簡単に外れる訳もなく、反動でシートの下に転がってしまう。
 くっそぉぉっ!! 何だよ、俺っ!!
 情けないにも程がある……!
 早くしないと幾らアイツだって、無事じゃいられないってのに!!
 ジタバタともがいてみるが、隙間にずっぽりと嵌ってしまい、身動きが取れなくなる。
 焦燥し、もがいていた少しの間、ヤクザ共の怒声が聞こえていた。その後、数分もしないうちに辺りに静粛が訪れた。
 その中に、男のうめき声らしきものが混ざり、海里の胸中は不安に包まれる。
 い、一体、どうなったんだ?
 まさか、アイツ……。そうだよな、あんな人数じゃ幾らなんでも……。
 ぅあああああっ、くそっ!! 俺が情けないばっかりにっ!!
 こんな事になるなら、早くアイツを遠ざければ良かった……。
 そしたらアイツは……大成は……っ!!
 悔し涙で、目の前が霞む。暗闇の中、ただ自分への怒りで身を震わせていた。
 ところが、石山の娘婿がガタガタと震えながら「あわわわ……」と、声を上げる。
 それと同時に、運転席の扉が開く音がした。
「……降りろ、このゲス野郎」
 今までの人生で聞いた事がない、地を這うような静かな怒声に、海里は身を竦める。
 が、それが青葉の声だと気が付き、無事だった事に、深い息をついた。
「ひっ、ごめんなさいっ!! もうしませんからっ!!」
「全力で潰すと言った筈だ……。覚悟は出来てるな?」
 悪魔と言う架空の生き物がいたとしたら、こんな声を出すのだろうかと思う程の低音に、全身がゾッと粟立った。
 ヤバイ! 大成の奴、マジ切れしてるっ!!
 何とかしないと、このオッサン、危ないんじゃね?
 でも、ヤクザの仲間なら……。いや、待てよ? 
 確か金で雇ってるって言ってなかったか?
 ってことは一般人? それに仮にも婆ちゃんの娘婿だよな?
 だとしたら、もし傷付けたりなんかしたら、大成がヤバイんじゃないか!?
 必死に口を動かし、何とか口枷を半分くらい外すと
「やめろ大成!! 俺は大丈夫だからっ!!」
「……海里!? どこに居る!?」
 海里の声を聞いた青葉の声の調子が、少し変わったように感じた。
「う、後ろで転がってるだけだから!! そのオッサンに手ぇ出したら駄目だっ!!」
「どうして? こいつはお前を……」
「俺は無事だから!! だから、そいつには手を出すな!!」
「どうしてだ、海里……。こんな奴を庇うなんて……」
「違う!! 一般人、傷付けたりしたら大成がヤバイだろ!! それに、婆ちゃんにも迷惑が掛かるかも知れないだろ!!」
 海里の言葉に、石山の娘婿は声の調子を上げて尻馬に乗る。
「そ、そうだよ、旦那ぁ。アンタ、事件で掴まるぜ? 怪我なんかした暁にや、婆さんに慰謝料貰いに行くしな?」
「煩ぇ、カスが。別に俺はどうなろうと構わない。お前は黙ってろ。それとも何か? 口が利けなくなるほど、顔面、腫らしてみるか?」
「やれるもんならやってみろよ? 婆さんにその姿見せて慰謝料と……」
 娘婿の声を遮るように空を切る音が聞こえると、車が衝突したのではと錯覚するほどの衝撃と、弾かれるような鈍い音が響き、地震のような振動が伝わる。
 それと同時に、何かが頭上を通過した。海里は何が飛んできたのかと思い、凍てつきながら凝視した。一瞬、猟奇的な場面を想像したが、それに反し通過したものは、ドライバーズシートのヘッドレストだった。
 それがリアガラスに当たると、凄まじい破壊音を轟かせ、破片が飛び散る。
「あ……わわ……」
「それ以上、何か喋ってみろ。次はお前の頭がアレになるぞ?」
「ひ、ひぃぃぃっ!!」
 尋常じゃない青葉の行動に、海里は危機感を募らせ焦燥した。このままでは、事件になってもおかしくない。
「だから!! 俺は無事だから! それ以上はやめろっ!! そいつ殺す気か!?」
 青葉は海里の緊迫した声に制されたのだろう、深い溜息をついた後「分った」と、呟いた。
 その後、どさりとシートに振動が伝わる。
「お前、海里に救われたな? それに免じて今回は見逃してやる。だが、もう二度と近寄るな。例え秋山の親父を連れて来た所で、結果は同じだ。分ったらとっとと失せろ!」
 青葉の怒声に怯えたのだろう。石山の娘婿は「ひぃっ」と小さく悲鳴を上げると、バタバタと助手席側の扉を開け、車外に飛び出して行ってしまった。

 コツコツとアスファルトを蹴る音が近付き、後部座席に人の重みが伝わる。
「海里、どこだ?」
 海里は自分の姿が情けなくなり、声を小さくする。
「一番後ろ……」
「どこだ? 見当たらないが……?」
「下に……」
 青葉は海里の姿を見付けると、縛られていた手足を自由にし、口枷にしていた布を取り払った。その間、青葉の表情は、暗闇で読み取れなかった。
 無様に転がってシートの間に挟まれていた海里は、てっきり笑われるかと思い「笑うかと思ってたのに……」と、呟いた。
 どんよりと曇っていた、雲の隙間から月明かりが緩やかに射すと、青葉の表情がはっきりと映し出される。
 顔面を蒼白にし、眉根を寄せ口許を震わせながら、黒い瞳が揺れてるのが見えると、海里は息を呑んだ。
「誰がこんな状態で笑えるか……」
 大きな掌が、海里の頬を撫で上げる。
 暖かな感触が伝わると、海里の胸はトクトクと脈打つ。
「何かされたのか? 涙の跡が……?」
「あ、いや……何も……。ただ縛り上げられて、悔しくて……」
「本当か? 乱暴な事はされなかったか?」
「あ、うん……」
 海里の返事に、青葉は小さく息をつく。だが、自分を見失っていたのだろう、青葉は散らばったガラスの破片を見て、ハッと息を呑む。
「すまない、頭に血が上って……ガラスは当たらなかったか?」
「それも大丈夫」
「――そうか、良かった…………」
 青葉はハァーと大きな息をつき、海里を抱きしめると、消え入るような声で囁く。
 広い胸板から速い鼓動が伝わると、共鳴するように海里の心音も高鳴って行く。
 後ろから髪を撫でられると、緊張し強張っていた身体が解れて、一筋の涙が頬を伝った。
「俺……怖かった……」
「ああ……」
「大成が……助けに来てくれて……嬉しかった」
「そうか……」
「迷惑……かけて……ごめん……なさい」
「謝る事はない。無事で……良かった」
 心地良い夜風が吹くと、青葉の香が海里の鼻腔をくすぐる。
 海里はその香りに抱かれると、胸の鼓動は早鐘を打つも、安らかな気分になる。
 ……ああ、そっか。
 この匂い、この人の身体から漂ってるんだ。
 俺は、その匂いが好きで…………この人の事も……好き、なんだ。
 海里はようやく、自分の気持ちを素直に認める事が出来たのだった。
「ごめん……俺……大成の言う通りだった」
「……ん?」
 青葉は、海里の瞳を覗き込むように首を傾げる。
 その姿が映ると、海里の顔は沸騰しそうなほどに熱くなった。
「あ、あの……今まで……ごめん」
「どうした? 海里らしくも無いな?」
「……らしくないかも知れないけど……だって、俺……気が付いたから」
「……何に、だ?」
「だから……大成が……その、す、好き……だと思う」
「――そうか。やっと自覚したか」
 青葉は海里をそのまま抱き上げ、両手に抱えるとニッコリと微笑む。
 お姫様抱っこをされて、海里は慌てふためいた。
「あ、いや……ちょ、ナニコレ!?」
「ん? 俺の可愛い海里」
「なんで人を猫か犬みたいに……何してるんだって、訊いてるんですけど?」
「見れば分るだろう? お姫様抱っこだ」
 いつもの調子に戻った青葉に、海里は途端に恥ずかしくなり声を荒げる。
「バ、バカ!! 恥ずかしいだろ、降ろせ!! どこも怪我なんてしてないし、自分で歩けるから!!」
「何を今更。晴れて恋人同士になったんだ、これくらい構わないだろう?」
「だ、誰が恋人同士だ!! 降ろせったら降ろせ!!」
「俺の事が好きなんだろう? 俺も海里が好きだ。だから恋人同士だろう?」
 ニヤリと口の端を上げ青葉が言うと、海里は後悔の念に駆られる。
「……ごめんなさい、嘘です。今のは無しで」
「何の事かな~、聞こえないな~」
「どうしてアンタはそうかな!! 一瞬でも好きだと思った俺がアホでした!」
「うん? ずっと好きでした? そうか、そうか。そりゃ光栄だ」
「……馬鹿だろ? ネジ緩いだろ? 降ろせって言ってるの!!」
「全く、素直じゃないな。嬉しいくせに」
「ばっ、馬鹿野郎っ!! いいから、お・ろ・せぇぇぇっ!!」
 海里の雄たけび虚しく、青葉の車にそのまま押し込めらた。
 二人を乗せた車は、静かに走り出すと、闇に溶け込むようにその姿を消して行った。



             ――to be continued――


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