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お話倉庫

主に長編BL小説置き場です。BLの意味が分らない、または嫌悪感がある方は速やかにブラウザバックでお願いします。

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――隣人がおかしな件について――<13>

 海里はぐったりとしながら、助手席に身を置いていた。
 まさかこんなに早く、免許証が確認出来るとは思ってもいなかった。
 海里は項垂れながら、車窓を流れる海岸を横目で眺める。
 あのさぁ、オッサンがそんなに元気で、俺がこんなにぐったりってどういう事よ?
 ってか、はしゃぎ過ぎなんだよ、コイツ……。
 絶叫系、死ぬほど廻らされるわ、『少し休憩しようか』とか言いながら、コーヒーカップの乗り物に乗ったかと思えば、思いっきりハンドルぶん回すわ……。
 俺は、脱水に掛けられた衣類かよって言う話だよ、全く。
 フラフラで歩けなくて、ちっちゃい子にバカ笑いされたじゃん! 
 お陰で弁当は、気持ち悪くなって半分以上残しちゃったし、最悪だよ!!
 別々の場所で食おうって言ったのに、結局、超見えるところに居るし……。お揃いの弁当箱だって、バレバレだったじゃん!!
 周りのあの目……。思い出しただけで、首吊りたくなるっての!!
 こいつ、絶対鬼だ! 鬼畜以外の何者でもないって!!
 やっと落ち着いたかと思えば、観覧車、一番天辺に来た途端、ガンガン揺らしやがって! 
 緊急停止喰らうなんて、初めてだっての!! 
 降りる時、係りの人にめちゃ怒られて、恥ずかしいたらありゃしない!!
 海里は、運転席に座る青葉をひと睨みすると、また項垂れる。
 反省したかと思えば、ホラーハウス入って……。
 ……思い出したくも無い。なんで手なんか握ってくるかな、コイツ……。
 俺は弟になってやるとは言ったけど、ガキじゃないんだからさ……。
 ――確かにちょっとビビったけどさ……。
 うあーーー、何でビビっちゃったかな、俺! 
 恥ずかしいったらありゃしないっての!!
 でも、やっぱ、暗がりって気味悪いよな! 仕方ないよな?
 なんか仕掛けがあるって分ってても、ビクっとするよな?
 なのにこいつ、隣でお化け見て笑ってやがるし……。
 心臓に毛が生えてるとしか思えないって!! 
 それにしてもこいつの手、大きくて暖かかったたな……。
 視線をハンドルに向けると、その大きな掌に長い指が、しなやかにハンドルを握るのが見えて、そこで海里の心拍数が上がった。
 ……まただよ。思い出したらまた何か動悸始まるし……。
 マジで一回、病院行ってこよう……。
 そう言えば拳を握った大きさが、心臓の大きさと比例するって聞いたことあったな。
 海里はそっと拳を握ると、青葉の手と比較し溜息をつく。
 やっぱそうだ。そんなに大きい心臓の持ち主だから、何も怖くないんだって!!
 ホント、こいつじゃないけど、頭ん中、覗いてみたいよ。
 どう言う神経してるんだか……。
 
 走行中、ずっと黙り込み項垂れていると、青葉が声を掛けて来た。
「どうした? まだ気分悪いのか?」
「……誰かさんのお陰でね。ホントもう、最悪」
「そうか、それは悪かった」
「アンタ、年甲斐も無く、はしゃぎ過ぎなんだって」
「……確かに。こんなに面白いとは思わなかったからね、少し弾け過ぎたかな」
 上機嫌で運転する青葉の横顔を見る限り、楽しかったのだとは伺える。
 だが、それに付き合わされる身にもなって欲しいと、海里は思った。
「弾け過ぎって、限度があるだろ? アンタ、会社でもそんな感じなわけ?」
「はは、さすがにそれは無いな」
「会社の人に見てもらいたいよ、ホント。アンタの組の若頭は、本当はこんな人ですよって」
 厭味たらたらで青葉に言うと
「ん~そうだな、皆、驚くかもね?」
 軽くあしらわれ、肩を落とす。
 本当にこいつ、若頭かよ? 全然、見えないんですけど……。
 でも、会社ではやっぱ一応、ちゃんとしてるんだろうか?
 あの髪型で、スーツ着て……。
 海里は一昨日の出来事を思い出す。
 するとなぜか、顔が火照り、トクトクと心臓が脈を打ち始める。
 海里は思わず首を振った。その余韻で気分がまた悪くなる。
 次第に血の気が引き始め、吐き気を催してしまった。
「どうした? 急にまた黙り込んで……」
 横目で青葉が語り掛けて来たが、返事をせずに居ると、車窓が降りて新鮮な空気が送られるのと同時に、進路が変わった様子だった。
 微かに潮の香りが車窓に流れると、気分も落ち着き、吐き気も少し収まったようだ。
 ナビの音声が煩く帰路を案内すると、青葉はそのスイッチを切る。
「おい、どこ行くつもりだよ?」
「ちょっと寄り道」
「俺は気分が悪いんだって! 早く帰りたいんだ!」
「だから少し、休んで行こうと思ってね」
「別に休まなくたって良いから!!」
「そんなに顔色が悪いようじゃ、家まで持たないだろう?」
 確かにそうかも知れないと思いつつ、車窓から流れる風に顔を向けた。 
 海辺の道路には、あちこちにラブホテルの看板が掲げられている。
 海里はそれを流れる車窓から凝視した。
 少し休むって……まさか連れ込む気じゃないよな?
 いや、幾らなんでもそりゃ無いか。
 こいつ、愛梨さんに興味津々だったもんな……。
 そう考えていると、気持ちが沈んで行く感覚に囚われる。
 ……あれ? 何だろう。
 吐き気は収まったけど、まだ酔ってるのかな……?
 そんな海里を横目に青葉は、ラブホテルが記されている看板の方向に、ウィンカーを上げた。
 海里は驚きのあまり、素っ頓狂な声を上げる。
「ちょっと待て!! アンタどこ行く気だ!?」
「……だから、少し休もうと思って」
「ちょ、おま!! そんな所に連れ込む気かよっ!?」
 青葉は看板を目にして、ニヤリと微笑む。
「そうだな。ゆっくり休んでも、俺は構わないが?」
「じょ、冗談じゃないっ!! 誰がアンタなんかと!!」
「まぁ、ものは試しって言葉があるだろう?」
 海里は青葉の言葉に青ざめた。
「い、嫌だぁぁぁぁっ!! お・ろ・せぇぇぇぇぇぇっ!!」
 海里の雄たけび虚しく、車は看板が記す方向へと向かった。

 もう駄目だ……こんな状況じゃ逃げられない……。
 いや、待てよ? ただ単に本当に休むだけ……?
 いやいやいや! だったら別に、他の場所でも構わないじゃん!!
 ってか、こいつ愛梨さんに興味津々だったくせに、男もって奴か!?
 ううゎっ、最悪!! いざとなったらケリ喰らわせて、逃げよう!!
 ――でも、こいつ凄ぇ強かったよな……?
 俺……勝てる気がしないんですけど…………。
 そわそわと落ち着き無く車窓を眺めていると、まるでアラビアの教会のような煌びやかな建物が目に映る。
 パーキングの看板が掲げられている方向に、ウィンカーが上がると海里は意を決した。
 もう、最終手段だ。油断させて急所にケリ入れよう……。
 いくら強くても、そこにヒット喰らったら、まともに立ってられなくなるし!
 ちょっと可哀想な気もするけど、それしか逃げる手段が思いつかない!
 拳を握り策を練っていると、ウィンカーは下げられ、車はその横を通り過ぎる。
 呆気に取られ横を向くと、青葉が目尻に涙を溜めながら肩を揺らしていた。
 そして堪えきれなくなったのだろう、大声で笑い出す。
「あ、アンタなぁっ!! また、からかっただろっ!!」
 色々と策を練っていた事が途端に恥ずかしくなり、それを誤魔化すように大声を上げる。
「あははは、腹痛い!! 本当に海里は面白いなぁ」
「だからっ!! 名前で呼ぶな!! 俺で遊ぶなっ!!」
 海里の怒声も、青葉には通用しないらしい。青葉はクククと笑いを堪えながら
「ほら、少しは元気になっただろう?」
 そう言われてみれば、乗り物酔いしていたのも忘れていたと、ふと思う。
「……何だよ、最初っから、そのつもりで……?」
 恥ずかしさのあまり、ごにょごにょと口篭らせた。
 それを青葉は横目で眺めると、楽しそうな笑みを零す。海里は拍子抜けしたように脱力した。
 あーもう、また、こいつにおちょくられた!
 いい加減、俺も学習しろよな!!
 マトモになんか、相手にするなって!
 ってか、なんで俺……がっかりしてんだ?
 ……ああ、そっか。緊張してたから、気が抜けたんだ……。
 恥ずかしさが消えると、今度は怒りが沸々と湧いてくる。
「なぁ、どこ行くんだよ? もう帰りたいんだけど」
「ん? 本当に休ませてあげようと思ってね」
 青葉は笑みを携えたまま、フロントガラスを指差した。
 その先を見ると、夕日に照らされた波が反射する、広大な景色が広がっていた。
「あ、海が……。こんな所、あったんだ……」
「潮風に当たれば、気分も良くなるかと思ってね」
「だったら最初からそう言えよ! 全く、紛らわしいんだよ!!」
「そうかな? 俺は普通に言ってるけど?」
「普通じゃないだろが!! 絶対、勘違いするように言ってるだろ!」
「勘違いするのは、その気があるから……って事だろ?」
「ばっ!! 馬鹿な事ぬかしてんなよっ!? 誰がアンタなんかにっ!!」
 青葉は駐車場に車を停め「ふーん?」と、顔を覗き込む。また唇に目が留まると心臓が跳ね上がった。
「い、いきなり近寄んじゃねぇっ!!」
 海里は慌ててシートベルトを外すと、外へ飛び出した。
 波の音と潮の香りが辺り一面に広がると、潮風が心地良く髪を撫で上げる。
 青葉は車から出ると、車にロックをかけて歩き出した。
「ちょ! 鍵、返せよ!!」
「まだ気分が悪いんだろう? ちゃんと部屋まで……って隣だからアレだけど、送るから」
「いや、もう大丈夫だし! ってか、また違う所寄り道されても帰りが遅くなるから」
 青葉は海里の顔を覗き込む。
「ふーん。そんなに早く帰ってどうする?」
「……あ、愛梨さんに今日のこと謝りたいし……、それにまた今度、もう一回、ちゃんとしたデートの約束もしたいし……」
「そうか。なら、返して欲しかったら、俺から奪えばいいだろう?」
 意地悪く言うと、青葉は駆け出した。
「あ、くそっ!! 待てコラぁぁぁ!!」
 二人の走る影が、砂浜に長く映し出された。 

 結局、鍵は返して貰えず、げんなりとしながら助手席に身を置く。
 ……こいつ、バカだ。
 あれだけ遊んだ後、あんなに走るバカ見たこと無ぇっての。
 全力疾走して逃げるってアリかよ? オッサンだからって油断してた……。
 砂浜で足場悪いってのに、何であんなに速く走れるんだよ、コイツ。
 なんか、逃げる訓練でもしてんのかって話だよ、全く……。 
 大体、リーチが違うんだから、追いつける訳ないって!
 お陰で戻って来るまで、何時間掛かったと思ってるんだよ? 
 真っ暗で姿すら分んないって、一体どういう事ですか? 
 端から端まで、走りくさりやがって……。
 言いたい事は山ほどあったが、海里は走り疲れて口を利く元気も無かった。
 いつしか瞼が重く感じ、流れていた景色が暗く、幕を降ろすように閉じていた。




               ――to be continued――


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