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お話倉庫

主に長編BL小説置き場です。BLの意味が分らない、または嫌悪感がある方は速やかにブラウザバックでお願いします。

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――隣人がおかしな件について――<12>

 目的地に着くまで、車内はずっと青葉と愛梨が楽しそうに話していた。
 海里は一人、取り残された気分になる。
 ったく、一体、何だよ!! 俺は只の運転手かよっ!!
 ベラベラ愛梨さんと楽しそうに喋っちゃって、デレデレ鼻の下伸ばして!! 
 そりゃ愛梨さんは可愛いけどさ、それじゃ、あの言葉は何だったんだよ!? 
 コイツ、ゲイを装っていれば、俺が嫌がると思って、楽しんでるだけじゃん?
 同情して損した、馬っ鹿みてぇ!!
 海里は苛々としながら、駐車場に車を停める。
「着きましたよ」
 ふて腐れ、敬語で話しかけると、青葉は愛梨に視線を送る。
「さ、着いたみたいですよ。行きましょうか?」
「何でアンタが愛梨さんを誘うんだよ!? もう帰れ!!」
 海里は運転席から降りると、後部座席の扉を開け愛梨の手を引く。
「行こう、愛梨さん! あんな奴、放って置いて良いから!!」
「あ、あの……っ」
 愛梨が困惑している様子なのは、海里も理解していた。
 だが、愛莉の心が青葉に傾き掛けているのではないかと、焦燥しきっていた故に、愛梨を思い遣る事が出来ないで居たのだ。そんな海里に、青葉が深い溜息をつく。
「海里、少し落ち着いたらどうだ? 愛梨さん、困っているだろう?」
 妙に落ち着いた雰囲気で、大人を気取っているのかと思うと余計に苛立ちを覚え、海里はカッとなってしまい、大声で怒鳴る。
「うっせぇ!! アンタが付いて来るから悪いんだろがっ!! 大体、只の隣人のくせに図々しいんだよっ!!」
 その声に反応して、愛梨がビクリと身を竦ませる。
「あ、あのっ……ごめんなさい、私……」
 海里は慌てて握っていた手を緩ませるが、愛莉のその表情は曇っていた。
 流石にこれではマズイと思い、懸命に声を抑える。 
「愛梨さんは何も悪くないから! コイツが……」
 険悪な空気を断つように、聞き慣れないメロディーが流れる。
「っあ、ごめんなさい。友達から……ちょっと待ってて貰って良いですか?」
 愛梨はホッと息をつくと、海里を見上げ、腕をさりげなく戻す。
「……あ、ああ、うん……。構わないよ?」
「ごめんなさい、直ぐ終わりますから」
 愛梨は海里に背を向けると、鞄から携帯を取り出し、通話ボタンを押す。
「もしもし?」 
 会話が始まると、海里もホッと息をついた。正直、切羽詰り過ぎて自分を見失っていた。
 頭を冷やすには、丁度いい。
 くそ……、何やってるんだ俺は……。
 これじゃ余計、愛梨さんに嫌われちゃうじゃないか。
 ってか愛梨さん、やっぱ、俺よりあいつの方が良いのかよ? 随分楽しそうに話してたけど……。
 でも、確かに俺なんかより似合ってるよな……。どうせ俺なんかチビだし、取り柄だってないし……。
 考えれば落ち込むばかりだった。そんな折り、会話の端が耳につく。
「麻里ぃ、だから……今日は駄目だって……」
 ……ん? 違う友達かな? ナツさんやコミさんじゃないみたいだ。
 悪いとは思いつつ、つい聞き耳を立ててしまう。
「え、ちょっと、どうし…………ええっ!? データー消えたって……うん、うん。それで?…………ペン入ったのは残ってるのね? で、トーンは? ……じゃあ、辛うじてベタのは残ってるんだよね?」
 ……なんか、込み入った話なのかな?
 何話してるか分らないけど、ちょっと深刻そうだな……。
「何言ってるの! 明後日まででしょ!! 大丈夫、絶対間に合うって! え? ……ごめん今日は約束が…………。駄目よ、諦めないでっ!! 落としたら、夏コミに間に合わないじゃない! せっかくここまで頑張ったのに!!」
 ……あれ? ナツさんやコミさんに間に合わないって……?
 その人達が仕切ってるのか? 講演とか控えてるのかな?
 でも、何か違うような……? 
「麻里、しっかりして!! そんな泣き言、言ってる場合じゃないでしょ……分ったわ。これから帰るから、データー転送しておいて」
 ええっ!? 帰るって……? これから俺らデートじゃないの!?
 海里は慌てて
「あ、愛梨さん? 帰るって……?」
「ちょっと待っててくれる、麻里」
 愛梨は険しい表情で振り返り、携帯の通話口を手で塞ぐ。
 その気迫に、海里は押されてしまった。
「須藤さん……ごめんなさい!! とても大切な用事が入ってしまって……私、帰ります」
「え、ええっ!?」
「本当にごめんなさい! これだけは、どうしても譲れないんです。今まで皆でずっと頑張ってきた事が、台無しになっちゃうんです……。我侭な事言ってるのは百も承知ですけど……どうかお願いします!!」
 愛梨は真剣な眼差しで、深々と海里に頭を下げた。
「あ、いや、そんな……謝らないで? そんなに大切な事じゃ、仕方ないよ……」
 愛梨は海里の返事を聞くと、ほっと息を吐き、表情を和らげる。
「ごめんなさい、須藤さん、本当に……。今度、絶対お詫びします! あ、これ、お弁当、置いて行きますね? お二人でどうぞ!」
 愛梨はそう言うと鞄から、ピンク色の布に包まれた弁当箱を二つ、後部座席に置く。
「お二人でって……」
 海里は愛梨の視線の先を追うと、助手席の青葉と目が合う。
「え、ちょっと待って愛梨さん! 俺とアイツで!?」
「はい! やっぱり青葉さん、お誘いしておいて良かったです! 須藤さん、一人ぼっちにならなくて」
 男二人でピンクの包み持って歩くの恥ずかしいんですけど!
 俺、そんな大きな鞄持ってないし!
 ってか、コイツと一緒にそれを食えと!?
 と、口にしそうになり、ハッとしてその言葉を飲み込んだ。
 それを聞いたら、愛梨は罪悪感に苛まれるじゃないだろうか? 
 それでなくても、青葉と言い争いしていたんだ、きっと居心地も悪かっただろう。
 咄嗟そうに思ったからだ。
「……いやいや、愛梨さんが帰るんなら、俺も帰るよ? 送って行くし」
「いえ、本当に緊急事態で……車で帰るより電車の方が早いと思うんです。それじゃ、私、急ぎますから」
「じゃ、駅まででも……」
 愛梨は海里の言葉が聞こえていない様子で、携帯を握り「麻里? 沙羅と京華には連絡した? あの子達にも手伝って貰おう?」と、会話をしながら車を出ると、駅に向かうバスへと飛び乗ってしまった。

 ぽつんと残され、唖然としながら、そのバスが走り去る姿を見送る。
 ……嘘だろ?
 何でコイツと二人きりになる訳? 
 しかも、このカップルだらけの遊園地に、男二人で入れと!?
 ……いや、無理だって。幾らなんでも虚しすぎるだろう、それ。
 ってか、ナツさんとコミさんって名前じゃ無かったよな……?
 でもあだ名って言ってたし……。何か変な感じなんだけど?
 まぁそれは置いといて……帰ろう。
 コイツだって愛梨さんが居なくなったら、楽しくないだろうし。
 どうせ俺はコイツにとって、弄って楽しいだけのおもちゃだからな……。
 海里はそう思い後部のドアを閉め、外からぐるりと助手側に移動すると、そこに座る青葉に声を掛ける。
「なぁ、アンタどうする? 俺、帰るけど……送ってやらないし」
「じゃあ、行こうか?」
「……は? 人の話、聞けよ! 送らないって言ってるじゃん!! 大体、アンタのせいなんだからな!! 愛梨さん、きっと気を悪くしたんだよ!!」
「そうかな? そうは見えなかったが?」
 海里は大きく溜息をつくと、青葉に吐き捨てるように
「アンタの目は節穴か? あれは絶対、険悪な雰囲気から逃げたかったんだって! わざわざこんな遠い所まで来たのに……」
「だから、別に帰らなくても良いだろう?」
「じゃあ、一人でいれば?」
「彼女もああ言ってた事だし、遠出したのに、遊ばないのは勿体無いだろう?」
「…………アンタ、頭、大丈夫か? 男二人で? このピンクの包み持って?」
「別に構わないだろう。食べ物は粗末にしちゃいけない。せっかく彼女が置いていってくれたんだし、無駄にしたらきっと悲しむと思うよ?」
「うっ……。そりゃ、そうだろうけど……」
 海里が言葉に詰まっていると、青葉は助手席から降りて、ポケットから黒いハンカチのようなものを取り出す。
 何をするのかと見ていると、それを風の向きに合わせて振り、ニッコリと微笑んだ。ハンカチだと思っていたものは、袋状に変化を遂げる。
「……それ、何?」
「ん? エコバック」
「…………何でそんなの、持ち歩いてんの?」
「いつでも買い物出来るように。それと、君がまた何か捨て……ゲフン、ゴミとして捨てられた、まだ使えるものが落ちてるとも限らないし」
「アンタ、どっかのオバチャンかよ!? ってか浮浪者!?」
「……結構、便利だけどね?」
「いや、便利なのは分るけど、そうじゃなくて! おかしいだろ、男同士でピンクは!」
「この包みの色が嫌なんだろう? だったらこれで見えないし」
 青葉は海里の言葉を聞いてない様子で、さっさと弁当箱を袋に詰める。
「袋から出したら、同じじゃん! 二人でそのピンクの包みを開けるんですか? このカップルだらけの敷地内で?」
「そうだけど、それが?」
「アンタ、マジで頭のネジ緩いのか? そこまでして、俺をからかいたいわけ?」
 海里の刺々しい態度に青葉は眉根を下げ、口の端だけで笑みを作り、後部座席に弁当を置いた。
 その表情がとても寂し気に見えて、海里は胸の奥がズキンと痛む。
 ……何だよ、その顔!!
 またそうやって、俺の同情を誘うつもりか!?
 婆ちゃんから俺が話聞いたのは知ってんだろうから、弟が居たら……とか言って気を引くつもりだろう? 騙されないからなっ!!
 だが、海里の思考とは裏腹に、青葉は
「そうか、そんなに迷惑だったとは気が付かなかったよ。すまなかったね」
 踵を返すと、バス停まで歩き出した。
 その背中が、役目を終えて居なくなる図と重なると、海里の胸はジリジリと痛み出す。

 くそ! 何だよ、また……。
 いいじゃないか、別に!! 居なくなってくれた方が清々するってのっ!!
 …………でも、アイツ、命の恩人なんだよな?
 あのオッサン達、いかにもって感じで、かなりヤバそうだったもんな……。
 もしかしたら、今頃俺、拉致られたかも知れなんだよな……?
 それに……アイツ、ずっと一人で勉強頑張ってたって、婆ちゃん、言ってた。
 それから社会に出ても、義兄弟と睨み合いを続けているって……。
 アイツ、恋人とか居たのかな? 
 恋人が過去に居たとしても、大人な人で幼稚な事が嫌いな人だったら?
 もしかしたら、こんな所、来た事無いんじゃないか?
 だから、来てみたかったのか……? 
 ああーーーっ、もう!! 
 また眠れなくなるっ!! くそっ!!
 気が付くと、青葉に駆け寄り、服の裾を掴んでいた。
 ツンとシャツが引っ掛かった感覚に、青葉は振り返る。
「……どうした?」
「…………」
 黙り込んでいると、青葉は不思議そうにしながら、海里を見下ろす。
「俺、何か忘れ物でもした?」
「……エコバック」
「ああ、そうだったな。帰ったらポストにでも入れてくれれば良いよ」
「…………だろ?」
「何? よく聞こえな……」
「アンタ、ずっと一人だったんだろ、って訊いたんだよ!!」
「……は?」
「だから! 家族とかと、こう言う所、来た事無いんだろ?」
「……まぁ、そうだな。妙子さん引っ張り回すの悪いと思ったし、親父は忙しくて滅多に逢えなかったから、来たいとも思わなかったし……それが?」
「……弟とかいたら、来たかったんじゃないか?」
 その言葉を聞くと青葉は、ふと寂しそうに微笑む。
「……そうだな」
「じゃあ、俺が一日だけ、弟になってやるよ。今まで護ってくれた礼だ……。但し! 弁当は別々の場所で食う!! それが条件だ」
 海里は言い終えると、車まで走る。そして、エコバックを持つと
「グズグズしてっと、行かねぇからな!!」
 そう言い放ち、入場口に向かって歩き出す。
 暫くキョトンと海里を眺めていた青葉だったが、フッと笑みを零す。
「全く……。『ツンデレ』って、ああいうのを指すだろうな。本人、自覚してないところがまた可愛いんだけど」
 その時の青葉の小さな囁きは、海里の耳までは届かなかった。
「何してんだよ! ボケッとしてっと置いてくぞ!!」
 青葉が付いて来ない気配に、海里は振り返り大声を上げると
「はいはい、分ったよ。少しはオジサンを労わってくれないのかね? 今時の子は」
 冗談めかして言う青葉に、海里はふと思う。
 だから、オッサンに見えないから。ってか、歳、絶対詐称してるって!!
 今度、免許証見せてもらおう。きっと、婆ちゃんから俺の歳聞いてて、ずっと年上だと言っておけば、ビビるとでも思ったんだろうさ。
 その手には乗らないからな!
 海里は視線を前に戻すと、そのまま早足で駐車場内を歩く。
 その後ろを、青葉がゆっくりとした足取りで追う影が、短く、アスファルトに映し出されていた。


               

             ――to be continued――


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