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主に長編BL小説置き場です。BLの意味が分らない、または嫌悪感がある方は速やかにブラウザバックでお願いします。

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――隣人がおかしな件について――<4>

 海里の部屋の前でブツブツと文句を言いながら佇む男が、驚いた様子で視線を向ける。
 その男はピザの宅配と思われる服装をしていた。サイズの大きいピザが入っているであろうと思われる箱が積まれていて、海里はやはり身に覚えが無いと思い、声を掛ける。
「あの、間違いじゃないですか? 俺、ピザなんか頼んでないですよ?」
「えと、須藤さんですか? 良かった、居ないかと思って……。これイタズラだったら大目玉食らう所でしたよ!」
 営業スマイルをする宅配員に『おい、人の話を聞け!』と、突っ込みたくなる。
「いや、確かに俺は須藤だけど、ピザなんて頼んでないってば」
「えっ、でも、三丁目七番地コーポ石山一0一号の、須藤海里さんですよね?」
「まぁ、そうだけど……」
 海里は困惑しながら、顎に手を掛けて考え込む。
 確かに住所も名前も俺のものだ。……誰かの嫌がらせ?
 でも、そんな嫌がらせを受けるような事なんてした覚えも無いし……。
 首を傾げ、見据える様子の海里に、伝票を手にしている宅配員も困った顔をする。
「参ったな……こんな数の注文、間違いでしたと言われても、こちらも困るんですよね」
 見ると積み上げられた箱は、二十は下らない。ざっと計算しても、五~六万くらいだろうか。 確かにそんな額の損失は痛いだろう。
 だが海里も身に覚えの無い出費は避けたい。どうしたものかと思っていると、頭上から青葉がひょいと顔を覗かせる。
「あ、すまないね君。それ、こっちの注文だった」
 何食わぬ顔で言い放つ青葉に、海里は驚きと怒りで身体が震える。
 何だと!? 全ての元凶はこいつか!!
 そう思うのと同時に、怒声を上げる。
「は!? あんた何、人の名前使って注文してんだよ!?」
「はは、ごめんごめん。君の驚く顔が見たくてね」
 ……たったそれだけの為に? ええっ!? 信じらんねぇ!! 
 ってか、金払えるのかよ? まさか俺に擦り付けようなんて思ってないよな!?
「馬鹿かアンタ!! 貧乏人なんだろ、こんなに頼んで払えるのかよ?」
「まぁ、何とかなるでしょ」
 一応、払う気はあるらしい。海里はホッと息をついた。 
 それにしても凄い量だ。これを一人で平らげるのだろうか……。
 でもテレビで大食い選手権なんかに出場している人でも、痩せている人は結構居る。
 青葉はその類なのかも知れないと思った。
 エンゲル係数が高すぎて、貧乏なのだろうと思うとちょっと同情する。
「ってか、ホント大食漢なんだな?」
「ん、そうだね……ちょっと頼みすぎたかな?」
 海里は青葉を見上げた。ふとその表情が曇っているように見えた。
 やっぱ、払えないんじゃないのか?
 だからって俺に縋られても困る。第一、そんなに頼む自分が悪いじゃないか。
「払えないからって、俺に擦り付けるの止めろよな? 嫌がらせするにも……」
 だが予想に反して青葉は、海里ににっこりと微笑みかける。
「大丈夫、今日のために貯金しておいたから」
 その答えを聞き、海里は唖然とする。
 何言ってるんだよ、こいつ……。
 わざわざイタズラするために貯金とか、こんな馬鹿げた事に大金つぎ込む奴いるか? やっぱ、こいつ何処かおかしい……。
 ただの同性愛者ならまだしも、行動が不可解すぎて俺の理解の範疇を超えている――。
 そんな奴に好かれて、俺はこれからどうなるんだ……?
 青葉を見上げると、言い知れない不安が込上げてくる。青葉は海里の刺すような視線に居た堪れなくなったのか、視線をずらした。
 
 そんな二人のやり取りを黙って見ていた宅配員は、痺れを切らしたように声を掛けた。
「あの……、こちらは支払いしていただければ、それで良いんですけど」
 海里はハッと我に返り、視線を戻す。
 青葉は尻のポケットから財布を取り出すと「カードはダメ?」と聞く。
「はい、うちはカード支払いはネット注文限定でして……。携帯での支払いだと可能ですが」
「じゃあ、ちょっと待ってて頂けます? 今、携帯持って来ますから」
 そう言って青葉は、部屋へと姿を消した。
 海里はその受け答を聞き、疑問を感じていた。
 自分で注文したならそれくらい把握してるだろうし、現金の用意もしているだろう。
 もしかしたら、青葉にも身に覚えが無いんじゃなかろうか?
 そんな考えが頭を掠める。
 支払いが済むまでの間、大量のピザは青葉の玄関元に運ばれていた。
 青葉は宅配員の持つ機械に携帯を翳すと、ピロリーンと電子音が響いた。
「これでいい?」
「毎度ありがとうございます! 今度もぜひお願いします」
 腑に落ちないままその様子を眺めていると、店員は上機嫌な様子で帰って行き、海里はその場に残る。
「……金あったんだ?」
「だから、貯金してたって言っただろう? そうだ、これひとつどうぞ」
 青葉はそう言うとピザの箱を一つ渡してよこした。
 出来立てのチーズの焼けた香りは、また海里の腹を刺激する。
 ぐるるると鳴る腹の音に、青葉はまたクスクスと笑う。
「これなら何も心配しなくて食べられるだろう?」
「……そう言う問題じゃないだろ? 何なんだよ、アンタ……。訳が分からない。栄養云々言っておいて……。本当はアンタ、注文してないんじゃないのか?」
 海里の言葉に青葉の表情は、固くなったように見えた。
 やはり海里が思うように、注文した覚えが無いようだ。だが、すぐに取り繕ったような笑顔を向ける。
「いや、俺が頼んだんだ。ちょっと多すぎたみたいだけど」
「いやいや、だっておかしいだろ? いくら大食漢でも自分で飯作っておいて、ピザなんか取るか? 俺を困らせようと目論んだろしても、おかしくないか?」
「そう、だね。ちょっと、タイミング悪かった?」
「タイミングとかの話じゃなくて! おかしいだろ、色々!! あんた、もしかして、俺の代わりに支払いしたんじゃないか?」
 そうだとしたら納得出来る。
 身に覚えは無いが、誰かが嫌がらせをしてるかも知れない。
 ふと海里の脳裏に、会社の同僚の顔が浮かぶ。
 ……そういや田中、アイツも愛梨さん狙いだったよな。もしかしたら、あいつか?
 俺が抜け駆けしたのを見ていて、頭に来たから……とか? 
 だからって、あいつがこんな事する奴には思えないし……。
 やっぱり、コイツが嫌がらせでやったのだろうか……? 
 でも自分で頼んだようには見えないし……。
 コイツ、俺を庇ったんだろうか? でも、貧乏人だろ?
 俺ならいくら好きでも、自分の生活が危うくなるよう事だったら、躊躇するし……。
 ぐるぐると考えが堂々巡りしていると、青葉は困ったように笑って
「いや、それは違う。どうやら届けてもらう日を、俺が忘れてただけみたいだ」
「忘れてたって……。どう考えても、アンタが頼んだようには思えないんだけど。貧乏人のくせに、たかがイタズラ目的でそんな大金つぎ込むなんて……」
「何? 俺の事、心配してくれてるの? もしかして惚れた?」
 ニコニコと機嫌良さそうに顔を寄せられ、海里は飛び退く。
 何だ、こいつ!
 ただ単に俺の気を引きたかっただけかよ!?
 あー、くそ!! ホント、訳分かんねぇ!!
「誰が!! もういい、あんたが変態の上に変質者だって事も充分わかった!! 早く消えてくれ!!」
 吐き捨てるように言うと、海里は自分の部屋に脱兎の如く姿を消した。

 玄関で靴を脱ごうとしたら、履いていない事に気がつく。それに突き返そうと思っていたピザの箱も、持ち帰ってしまった。
「ああ、もう!! 何だって言うんだよ、全く」
 思わず思った事が、口をついてしまう。
 気分は最悪だ。一瞬でも同情した自分がアホらしく感じる。
 海里は靴下を玄関で脱ぐとその場に放置した。
 怒りでドカドカと足音を立てながらリビングまで行き、ソファーに腰を掛けると、受け取ったピザの箱を開けた。
 チーズがふんだんに使われていて、具材の彩りも華やかだ。
 もしかしたら一番高いやつかも知れない。それを肩代わりしたとなると、結構な金額じゃないか?
 だが、そんな事は関係ない、と、海里は首を横に振る。
 嫌がらせを受けたんだ、食っても文句なんか言わせない!
 自分が注文したって言い張るんだから、きっとそうなんだ!
 全く、性質が悪いったらありゃしないっての!!
 テーブルにピザを置き冷蔵庫からビールを取り出すと、むしゃくしゃとした気持ちをぶつけるようにガツガツとヤケ食いをした。
 腹も膨れ、ピザが全部無くなる頃には、気持ちも少し落ち着いてきた。
 長い溜息をついた後、携帯を取り出し、今日交換したばかりの番号を呼び出す。
「……話したいな、愛梨さん。でも今日は忙しいみたいだし、メールも迷惑かもな……」
 独りごちして、そっと画面を閉じた。

               

               ――to be continued――


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