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お話倉庫

主に長編BL小説置き場です。BLの意味が分らない、または嫌悪感がある方は速やかにブラウザバックでお願いします。

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――隣人がおかしな件について――<1>

「な――、なんで、アンタが俺の部屋にいるの!?」
 須藤海里(すどう かいり)の素っ頓狂な声が部屋に響くと、男は薄い端麗な口の端を上げる。
「いや、ストーキングしてたら、偶然これを見つけてね」
 ん? ……こいつ、今、何つった? ストーキングって言わなかったか!?
 海里が目を瞠ると男は腕を持ち上げ、ぶらぶらと何かを揺らしている。
 その右手には、見覚えのあるキーホルダーが付いた、鍵が握られていた。
「ポストの奥に入れてたら、他の奴にもすぐ見付かるだろ? 気を付けろよ」
 ソファーに腰を降ろし、マグカップに口を付けながら余裕の表情を見せる。
 色々突っ込みどころ満載過ぎて、声すら出ない。
 ただパクパクと口を開け、指差す海里に向かって男は 
「ああ、そうだ。このTシャツ、君には少し大きいだろう。俺が貰ってやるから」
 しれっと言い放つ。
 それは海里が今朝、洗濯して部屋に干してあった、お気に入りのTシャツだ。
 思わず、握り拳をした腕が震える。
 大きい? オレのサイズ、アンタにはピッチピチだから。
 タイツみたいになってるんですけど?
 ドクロのプリントがぴったり張り付いて、身体の線が浮き出てて気持ち悪いですから。
 せっかく気に入って買ったTシャツを台無しにされて、海里は涙目になる。
「……なに、人んちで勝手に寛いでんだ! しかも勝手に俺のTシャツ着るなっ!! このド変態がぁーっ!!」
 ソファーに駆け寄り、鍵を取り上げようとするが、男の方が上手で
「変態? ああ、最高の褒め言葉だね?」
 そう言い放ち、さらりと身をかわす。
「いや、アンタと話してると頭おかしくなるから! それ脱いでさっさと出て行け!!」
「うん? 俺の裸体が見たいと? さては誘ってる?」
 海里はすかさずその男に、脳天チョップを喰らわす。
 だが、そんな攻撃も効いている様子が無く、男はニッコリと微笑む。
「やだなぁ、そんなに照れる事ないのに」
「誰も照れてないから。もう、それやるから。今すぐ、で・て・け!!」


 ドタバタと追い掛け回すも、軽々と身を翻し逃げ回る男は、高らかに笑っている。
 あからさまに揶揄されているのが見えて、海里は怒鳴り声を上げた。
「このクソ青葉!! とっとと返せつってんだろっ!!」
「あはは、君が俺に好きって言ったらね」
 切れ長の漆黒の瞳が片側だけ閉ざされると、海里は背筋に虫唾が走る。
「死んでも言うかっ、ボケがっ!!」
 やっとの思いで青葉を部屋の外に出すと、楽しそうな笑い声を背に、床に落ちた鍵を拾い上げた。
「……危ねぇ、油断も隙もあったもんじゃなねぇな」
 海里は、独りごちを零した。



 青葉大成(あおば ひろなり)――同じアパートの隣に越してきたのは、約半年前だ。
 引越しの挨拶に訪れた青葉は背が高く、サラリと靡く黒髪が印象的で彫りの深い顔立ちの、とんでもないほど容姿端麗な青年で、目を瞠ったのを今でも覚えている。
 背が一六二cm程度の海里は、青葉を見上げ、モデルの人でも隣に引っ越してきたのかと思っていた。
 ところが。
 海里はガクリと項垂れた。
「誰があんな変態だと思うかよ……。ほんと勘弁して欲しいわ」
 着ていたスーツをクローゼットに仕舞い着替えていると、視線を感じた。
 窓の外に目をやるとカーテンの隙間からあの切れ長の目が見えて、海里は慌ててカーテンを隙間なく閉じる。
「いい加減にしろ!! このホモ野郎!!」
「酷いなぁ、俺はただ君が好きなだけなのに」
「残念でした!! 俺はドの付く位ノーマルなんで! おっぱいのある人にしか興味ありませんから!!」
「それじゃ、俺の胸筋に顔埋めさせてやるよ? 雄のぱいと書いて、雄っぱいだろ?」
 その図を思わず想像してしまい、海里は半分くらい魂が抜け出てしまう感覚に陥る。呆然としていると、青葉の機嫌よさそうなバス・バリトンボイスが聞こえた。
「さぁ、遠慮してないで、飛び込んでおいで?」
「……アンタ、馬鹿だろ? 普通おっぱいって言ったら、女だろが!! 遠慮しておきます、いいから自分の部屋に帰って下さい!!」
 この男に何を言った所で、埒が明かないのは今始まった事じゃない。
 遮光カーテンをジャッと目一杯引き、海里は暗がりで着替えた。
 なんでこんな目に俺が遭わなきゃならないんだよ……。
 こんな事なら一階にするんじゃなかった。
 引っ越すにしたって、ボーナスは車のローンで吹っ飛んじゃったし……。
 車は女の子にモテるための必須アイテムだしなぁ。
 海里は項垂れながら、二間のうちのリビングにしてある部屋に向かう。
 海里の見た目はそんなに悪くない。というか寧ろイケメンと呼ばれる類だろう。
 少し明るめの頭髪が目元までサラリと靡くと、触りたくなりほど綺麗で、整った細めの眉は目許に沿って美しく弧を描いている。
 低過ぎず高過ぎない鼻梁は、卵型の輪郭に良く似合っており、二重の丸く切れ上がった瞳は、情の厚そうな、ややぽってりとした唇と相まって、人が善さそうな事を物語っている。その唇から発せられる声質も、柔らかなテノールで女性に好評だ。
 だが「ちびっこ」と同僚から言われている海里は、背にコンプレックスがあった。
 だから奮発してローンを組んだ。
 あんな奴が隣に引っ越して来るって知ってたら、車なんて買わなかった。
 思うところは多々あるものの、隣の住人が変態という意外は快適そのものだ。

 駅まで歩いて五分、ショッピングセンターには約十分。
 学校も病院も娯楽施設も徒歩圏内の、こんな立地条件がいいアパートで、家賃が周囲の物件より格安なのは魅力的だ。
 他よりも家賃が安いのは、いわゆる『いわく付き訳あり物件』という訳ではない。海里の人柄により、家賃が据え置きになっているからだ。
 昨年、大手のOA機器を扱う会社に入り、晴れて社会人になれた海里だが、大学生の頃からこのアパートに入居していた。
 それまで海里は、ドの付くくらい田舎に住んでいた。野山に囲まれ、のんびりとした環境。そのせいか海里の周りには老人が多かった。
 引っ越してきた当初から海里は、大家が老婆と言う事を気に掛けていた。田舎と違い都会は殺伐としていて、老人の一人暮らしは何かと危険が伴う。
 老人と接する機会が多かった上に、お婆ちゃん子だった海里は、庭の手入れをしたり、話し相手になったりしていうちに大家も心を開き、今では実の孫のように扱ってくれ、海里も普通に『婆ちゃん』と呼んでいる。
 その大家が最近、病院に通う事が多くあった為、心配もあって引っ越すには気が引ける。海里にとっては、大家は第二の祖母なのだ。
 いっそあの変態が引っ越せばいい、そう思っていたが、敵も中々の兵だ。
 まさか不法侵入するまでになっていたとは、思いもしなかった。今まで住んでいて、そういうトラブルが発生したのは、青葉が隣に住むようになってからだ。



               ――to be continued――



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