FC2ブログ

お話倉庫

主に長編BL小説置き場です。BLの意味が分らない、または嫌悪感がある方は速やかにブラウザバックでお願いします。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

このページのトップへ

――時空を超えて――<18>R-18

 翌日の昼、尚史は溜め息をつきながら、携帯を閉じたり開けたりしていた。
 富田に連絡しようにも、言葉が思い浮かばない。昨日のあの態度では、もう既に嫌われてしまっているだろう。
 このまま自然消滅……とも考えてみたものの、それではあまりに幼稚すぎる。別れるならちゃんと説明して、お互いが納得した上での方が、これからの人間関係にも影響してくるだろう。
 落ち着かない様子で、部屋をうろうろと歩き回っていた。
 と、着信音が部屋に響き渡り、尚史は身を縮めて視線を移し、相手を確認して通話ボタンを押す。
「京迩……」
『……おう。起きたか? 何かさ……待ってると落ち着かなくて』
「……ごめん」
『いや……。俺も電話するの結構迷ったからさ……』
暫くの間、沈黙が続いた。
 まるで有罪判決を宣告される前の被告人……そんな心境だった。手に嫌な汗を掻き、言葉も見付からないまま項垂れていた。
 どれくらい沈黙が続いただろう。痺れを切らしたかのように、大きな溜息が通話口の向こうで聞こえた後に
『昨日から俺、ずっと考えてたんだけどさ――』
 別れよう。そんな言葉を思い浮かべ、尚史は俯いた。
 元はといえば自分が悪い。虹輝を忘れるために利用した罰(ばち)が当たったのだ。尚史は富田と過ごした日々を廻らせ、涙を堪えるのに必死になっていた。いつだって自分を優先してくれた、優しい富田の笑顔が浮かぶ。
 それに比べて、自分はどうだっただろう。その優しさに甘えてばかりいて、しかも虹輝に好きだと言われて、一瞬でも浮かれてしまっていたではないか――。
 ここで当然の報いを受けるのだろう、そう思っていた。
『お前の全てが知りたい。本当の事、話してくれないか?』
 その意外な発言に、尚史は「えっ」と、小さく声を漏らす。
『今から行っていいか? その、昨日は突然押しかけて悪かったな……』
 尚史は首を横に振った。だが声を発していない事に気が付かない程、思考は停止していた。
『……どうした? 駄目……か?』
 不安そうに声を曇らす富田に、ハッと我に返り声を出す。
「あ……ううん、いいよ。僕も……話がしたい」
 喉の奥が引き攣ったようになりながら、必死に答えた。
(これ以上、京迩を振り回すのはやめよう。ちゃんと話をして……虹輝にも話をして、また独りに戻ればいい……。二人を傷付けたんだから、そうするのが当然だから……)
 もう途切れてしまった携帯の画面を見つめながら、尚史はぼんやりとベッドに腰掛けていた。

 暫くすると玄関のチャイムが鳴り、富田が姿を現す。
「よう。悪かったな……なんか急かせちまって」
 何時もの覇気は見られず、表情は暗かった。
「ごめん、何も用意してない……」
「そんなの気にするな」
 富田は尚史の頭をぽんぽんと撫でる。
 部屋の中央の座卓に腰を下ろすと、富田は深い溜め息をついた。何から話して良いものか、考えが纏まらず暫く重い沈黙が続いた。
 富田はその重い空気を振り払うように、一息つくと言葉を発する。
「悪いな、昨日は気が動転しちまって……」
「……いや、心配して来てくれたのに……こっちこそ申し訳ないよ――」
 俯く尚史の顔を覗き込むと、富田は無理に笑ってみせる。
「そんなのは良いんだけど……」
 富田は意を決したよう短く息を吐いた後「昨日のあれ、どういう事だ?」と、問う。
 尚史は今までの経緯を全て、包み隠さず話す事にした。
「実は……僕は幼い頃、虹輝、生まれ変わる前の藤吉に、あの山の旅館で出合ったんだ」
「――藤吉?」
「そう。僕は当時八歳だった。虹輝はその旅館の、俗に言う座敷児童子みたいな……」
 それから小一時間ほど、思い出を手繰りながら、ぽつりぽつりと話した。
 最初は疑心暗鬼な表情で聞いていた富田だったが、リゾート計画地の話しになると腕を組んで、真剣に話を聞いていた。
「――で、昨日、虹輝がその獣を追っ払ってくれて……」
「すると……あのリゾート計画の所は、本当に祟られてるって事になるな?」
「……多分」
「で、命を狙われてる尚史を、あの弟が護っていると?」
「……多分」
 ふーっと大きく溜め息をつき、富田は胡坐を組み直す。
「なぁ、尚史。怒らないから本当の事を言ってくれ。お前の想い人ってのは、あの弟か?」
 尚史はおずおずとしながら、小さく頷いた。
「はぁー、参ったな。お前ら両想いだったんだろ? なんで……」
「ごめん……京迩。僕は子供だった。今も……。兄貴風を吹かして……虹輝の未来を潰したくないと言いつつ、自分が……傷付くのが怖かった……」
 ふっと笑い、富田は尚史の頭を撫でる。
「バカだなぁ、お前……。あの弟はお前にぞっこんだぞ? 見りゃ分る。生まれ変わってまでお前の傍にいたかったんだろうよ」
 尚史は零れ落ちる涙を止められず、身体を震わせていた。富田は大きく首を振り、尚史の肩をぽんぽんと優しく叩く。
「俺もな、あいこだ。お前が誰かに恋してるのは知ってた……。その隙を突いて言い寄ったのは俺だ。気にする事は無い……」
 富田の優しい言葉が身に染みて、尚史の心は今にも砕けそうだった。
 優しくされればされる程に、自分の意気地無しさが浮き彫りになる。
 やはり代わりを求めてしまった代償は、手痛いものだ。富田の誠実な心を踏みににじり、粉々に壊してしまった。富田に傾きかけた恋心は、罪悪感に支配され重く影を落とす。
 もうこれ以上、富田を傷つける訳にはいかない。
 別れよう。そう決心して富田を見上げた。
「京迩……僕はこの通り小さい、どうしょうもない人間だ……」
「…………」
「好きだって言ってくれて、本当に嬉しかった……」
「…………」
「今まで……ありが……とう」
 喉の奥が引き攣り、うまく言葉に出来なかった。
 暫くの沈黙が続いた。富田は俯いたまま何かを考えている様子だった。
「……このままじゃ僕は、京迩を傷つけてしまう」
「まだ……好きなのか?」
 その質問には答えられずにいた。
 尚史は確かにまだ虹輝を心のどこかで求めている。昨日もキスを強要された時、思いとは裏腹に胸が高鳴った。
 その事実を思うと、項垂れる事しか出来ずにいた。 
「――でもな、俺だってそう簡単にお前を手放す気は無いぞ? 今でもあいつが好きだとしてもな!」
 富田はそう言うと、いつもの優しいキスとは違い、噛み付くように荒々しく尚史の唇を貪る。
「んんんっ!! や……」
 急変する態度に、尚史は混乱した。
 富田は一旦唇を離すと、苦しそうな表情をする。
「お前は知らないだろうけどな、同じ部署になってからずっと好きだったんだ。はい、そうですかって簡単に諦められるか!!」
 富田は荒々しく尚史を抱き寄せると、またも強引に唇を塞ぐ。
「まっ……ん……ふぅ」
 何か話そうとする度に口腔内を掻き乱され、垂涎が顎を伝う。
 勢いよく吸い込まれた舌先が痺れ、息も絶え絶えになると、酸欠から意識が遠のきそうになった。必死に抵抗して、やっとの事で唇を離す。
「はぁ……はぁは……」
 乱れる呼吸を整えようと、息をついた。富田はその様子を満足げに眺め、舌舐めずりをする。
 いつもと全く違う様子の富田に、尚史は背筋が寒くなった。
「どうだ? お前も本当はこうして欲しかったんだろ?」
「違う! こんなの望んでない!」
「そうかぁ? その割には色っぽい顔してるじゃねぇか?」
 ひりひりと痛み、ぽってりと腫れて紅く染まった唇を拭う。富田は口の端を上げニヤリと不敵な笑みを浮かべると
「やっぱ誘ってるんだろ? なら望みどおりに」
 尚史を押し倒し、荒々しく薄紅色の突起に爪を立てる。
「痛っ……!」
 尚史が苦しそうな表情をすると、それを愉しむように口の端を上げる。
 そこに何時もの愛情に溢れた優しさは見られず、ただ只管に自分の要求のみを押し付けて来る富田は、冷静さを欠いただけには見えない。
(怖い……っ! まるで違う人みたいだ……)
 恐怖に凍り付きながらも、尚史は精一杯抵抗して見せるが、それが返って富田の欲望を煽るのか、ニヤニヤと不気味な笑みを浮かべ、尚史の苦痛に耐える顔を覗き込む。
 小さな突起を強く摘まれ絞るように捩じ上げられると、痛みに耐えられず身体を跳ね上げた。
「いっ、や、ぁ……っ!!」
 何とか振り解こうと試みるが、富田は全身を使って尚史を押さえつけると耳に齧りつくように歯を立てた。
「あっ、いっ……!!」
 痛みと同時に、耳腔内に生温い舌の感触が、水音と共に進入し、尚史は驚愕する。
 ぴちゃぴちゃと耳の中を水音が反響して、尚史は背中の毛を総立てた。
「っぃやだ!! 気持ち悪い!!」
「そのうちこれがよくなるさ……」
 はぁはぁと息を荒げながら、地を這うような声が響くと、背筋は冷たく凍り付いた。
(まさか……まさかっ!)
 抑え付けられた身体を何とか捩り、富田の目を見ると、あの黒い影と重なるように赤く燃えていた。口許には尚史の耳を噛んで出血させた血を滴らせて、ニヤリと不気味に笑い舌舐ずりしていた。
(う、嘘だ……こんな事って!!)
 尚史は必死にもがいた。しかし抵抗虚しく、びりびりと衣類を引き裂かれ、白い肌を剥き出しにされてしまった。
「京迩!! 頼む、目を覚ましてくれっ!!」
「はぁ? 俺はしっかり起きてるが? こっちもな」
 股間を隆起させ、クククと下品に笑う富田は、その獣に完全に支配されているようだった。
 そんな富田の姿を見ると、目の前が霞んで見えた。
「教えてやらないと分らないんだろう? 誰が恋人か!!」
 我を見失った様子で富田が怒声を上げる。尚史はびくりと身体を竦ませた。
 富田は嫉妬心を煽られ、取り憑かれてしまったに違いない。
 そうさせてしまったのは他の誰でもない、尚史だ。どんなに謝っても富田に負わせた心の傷を埋める事など不可能だろう。
 頬を涙が止め処なく伝う。
「いい顔してくれるじゃねぇか? 今まで遠慮して損したぜ」
 尚史は青ざめて、何とか逃げようとした。しかし急所を握られ動けなくなる。
「っ、はぅ……っ!」
「おら、啼けよ。もっと俺を楽しませてくれよなぁ?」
「い、いや……だ、京迩ぃ……」
 尚史が嫌がれば嫌がるほど、富田は更に追い立てる。
 声も掠れ、意識も朦朧としかけた時だった。突然、携帯の着信音がけたたましく鳴る。
 尚史は我に返ると必死に手を伸ばし、ボタンを押した。
「虹輝……っ、こうきぃ」
涙交じりの声で必死に名を呼ぶと、携帯を遠くに投げ飛ばされて愕然とした。
「邪魔してんじゃねぇよ、クソが!」
「京迩……頼むから……」
「なに? そいつともヤリたいのかよ? 純真そうな顔して、案外そいつも喰っちゃってンじゃねぇの?」
 ニヤニヤと不敵な笑みを浮かべて、富田は尚史を執拗に攻め立てた。
「や、あぅ……やめ……」
 恐怖で萎縮してしまった身体は、全く反応しなかった。それどころか痛みが増すばかりで、尚史は唇を噛む。うっすらと血が滲み口腔内に流れると、錆びた鉄の臭いが鼻腔を掠めた。
「ちっ」
 無反応なのが気に入らないのか、富田は舌打ちをする。
「京迩! 聞こえるだろう? 京迩!!」
 尚史は必死に呼びかけた。意識のある富田とならまだ救われるが、こんな形で関係したくない。これではまるでその獣と契りを交わすようなものだ。
「頼む、目を覚まし……」
 言いかけた瞬間、富田は尚史のものに喰らいつき、歯を立てて激しく攻め立てる。
 痛みに耐え兼ねて、啜り泣きながら「やめて」と懇願するが、変わらず執拗なほどに甚振られて、腰が抜けたように脱力すると、双丘の間を富田のごつい指先が触れる。
「あっ、い、い、いや……いやだぁ!!」
 肩に掴みかかり必死で抵抗するが、力の差は歴然でびくともしなかった。
 次第に辺りに獣臭が立ち込めると、富田の顔つきは完全に獣と同化していた。
 獣が息をするように、ハッハッと息を荒げながら尚史を捕らえる。完全に発情した獣の雄そのままの富田を見て、尚史は泣き崩れた。
(もう……元の京迩には――戻ってくれないのか……?)
 富田との何気ない日常を思い浮かべると、胸が詰まり、苦しさで気が狂いそうになる。
 ここまで追い込んでしまった自分を責める事しか出来ず、尚史は途方に暮れた。
                


                ――to be continued――


毎日お昼に更新☆気に入って頂けたらポチお願いします^^*
にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村

にほんブログ村 小説ブログ BL長編小説へ
にほんブログ村

 
スポンサーサイト
[PR]

[PR]

このページのトップへ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。