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お話倉庫

主に長編BL小説置き場です。BLの意味が分らない、または嫌悪感がある方は速やかにブラウザバックでお願いします。

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――時空を超えて――<10>

 食事を済ませると、虹輝は満足そうに腹を摩った。
「うまかった~! やっぱ兄貴の味付け、母さんより好きだな」
 ニコニコと微笑む虹輝の姿が、眩しすぎて直視出来なくなる。
(あー、もう頼むからそんな顔しないでくれよ……)
 虹輝の言葉に、いちいち反応してしまう自分が情けなくなる。
 少し落ち着かないとこのまま話をするのも儘ならないと思った尚史は、虹輝に皿洗いを命じて一旦離れてから気分の高揚を押さえようと考え、顔を見られないように伏せ気味に話す。
「はいはい、どうも。じゃあ感謝の気持ちを込めて、皿洗いしようか?」
 綺麗に空になった皿を指差し、虹輝を見上げると
「えーっ!? 俺がやんの?」
 不服そうな顔をして尚史をじっと見つめた。
 あまりにも熱っぽい視線を送るものだから、逆効果だったかもと思いつつ、目を逸らすと焦り気味に言い放つ。
「あ、あのなぁ、お前、食ってゴロゴロしてたら牛になるんだぞ?」
 虹輝はクスクスと笑う。
「兄貴ってさ、可愛いよね? 想像力があるって言うか」
 十歳も下の弟に、可愛いとか言われると思っていなかった。
 尚史は少し不機嫌になると、口を尖らせ反論する。
「もっ、ものの例えだろが! 昔、母さんがよく言ってたんだよ」
「そっか、兄貴のお母さん、可愛い人だったんだね。外見も中身も似てたんだ?」
 そう言われて尚史は昔の事を思い出す。確かに自分の母親は綺麗と言うよりは、可愛い感じだったのかも知れない。母親似だったから、あまり認めたくは無かったが。
「そう、なのかもな。僕は別に可愛いとは思わなかったけど……」
「そりゃ自分の親だからね。俺から見たらお義母さん、超可愛いけどな?」
 まるで自分が可愛いと言われているようで、このまま話をしていると、虹輝の言葉に嫌でも反応して、心臓がバクバクと脈打ち、顔が赤く染まる。
「そ、それを言うなら、義母さんの方が美人だろう? お前だって自分の母親だから気が付かないだけで……そんなもんだろうし」
「ん~、そうかな?」
「と、とにかく! 僕は可愛いなんて言われるのは、心外なんだよ」
 虹輝と距離を置くのが無理なら、話をさっさと済ませて、とっとと自分のアパートに帰りたい。このままではおかしくなってしまいそうだった。
 尚史は何とか平静を装い、話を切り出した。 
「話は変わるけど、昨日、お前さ、僕の家の近くに居なかったか?」
「……は? 何が?」
 虹輝を見ると、なぜか浮かない顔をしている。不思議に思いながらも、もう一度、問い掛けてみた。
「あのさ、昨日、大学休みだった?」  
「……何で?」
 眉を顰め訝しげに尚史を見る虹輝に、ふと背筋に寒いものが走る。
(もしこのまま話を続けて、変な奴だと思われたらどうしよう――。思われるだけならまだいい……避けられるようになったら?)
 義母も虹輝も、尚史の能力は知らなかった。と、言うよりは自分も今回の事が無かったら忘れていた記憶だ。あえて話す必要など無かった。
 尚史は口篭もり、俯いた。
「……兄貴、どうしたのさ?」
 ハッとして見上げると虹輝は心配そうに見つめていた。
「い、いや……何でもない。僕の勘違いだったみたいだ。さて、片付けて帰るかな」
 椅子から立ち上がろうとすると、腕を掴まれ
「なんだよ、途中で逃げるみたいに……。俺に何か聞きたい事あったんだろ?」
 いつもとは違った心配そうな虹輝の眼差しに、尚史は戸惑いを隠せなかった。
「だってお前……きっと僕の事、おかしい奴だと思うだろ?」
「話聞いてみなきゃ分んないよ、そんなの。座って? 聞かせてよ」
「…………」
「黙ってちゃ分らない。本当にどうしたのさ?」
 虹輝がやたら心配するものだから、尚史は意を決して口を開いた。
「いや、昨日さ、ちょっと不思議な事があって……。頼むから馬鹿にしてくれるなよ」
「……分った。真剣に聞く」
 尚志は再び椅子に腰を下ろすと、昨日、自分の身に起こった事を話した。
「……で、車に轢かれそうになったら、身体が急に浮いた感覚があってさ、お前が居たんだよ、傍に――」
 虹輝はその話を困ったような顔をして聞いていた。
 やっぱり話すんじゃなかったと後悔の念に駆られ、じんわりと掻く嫌な汗を掌で握り締めた。
 暫くの間、虹輝は何かを考えている様子だったが、重い沈黙を破り口を開く。
「……兄貴、疲れてるんじゃないの? それで悪い夢見たとか……。さっきから顔赤いし、熱でもあるんじゃないの?」
 急に顔を寄せられ、即座に反応出来ず、そのまま尚史の額に虹輝の額が当てられた。
 虹輝が子供だった頃には尚史もした仕草ではあるが、好きだと意識するようになった今では刺激が強すぎる。
 突然に虹輝の顔が真近にあって、尚史は動揺して頬を真っ赤に染めると慌てて離れる。
 ガタンと椅子が床を鳴らした。
「ななな、何でもないよ!! 熱とか無いから!!」 
「そう? 何か熱かったけど……?」
「い、いや、大丈夫だし!! ところで、本当にお前じゃないんだよな?」
 このままでは、本当におかしくなってしまいそうだった。早くアパートに戻ろうと、話を切り上げようとして、虹輝から目を逸らした。
 すると虹輝は、ふて腐れたように
「だって後ろ姿だったんだろ? それじゃ誰だか分らない。俺に似た人だったんじゃないの?」
 そしてつまらなそうに、テレビに視線を向けた。尚史は虹輝の反応に不満を覚えた。
「確かに後ろ姿だったから、何とも言えないけど……まぁ、それは良いとして、僕は小さい頃、こんな感じの不思議な体験、結構してたんだ。だから、アレは夢じゃないと思うんだけど……」
「……ふぅん?」
 またも浮かない顔をする虹輝を見て、尚史は避けられるようになるんじゃないかと怖くなり、話すのを止めようと思った。
「……まぁ、いいや。お前じゃなかったんなら。やっぱり僕の勘違いだったかも。今の話も忘れてくれ。それじゃ、僕は……」
 尚史が席を立とうとした時だった。興味が湧いたのか、突然、虹輝は問い掛ける。
「あ、あのさ! 小さい頃、どんな体験したの? やっぱり、お化けとか見た?」
 虹輝の『お化け』の一言で、ふと藤吉との事を思い出す。
 またどうせ疑われるかも知れないと思うと、話す事を躊躇した。
「お化け……か。まあ、そんな事もあったな。でも、お前はこんな話は信じないんだろう?」
 虹輝は少し癖がついた頭髪をポリポリと掻きながら、視線を泳がせていた。
「いや、信じないわけじゃないよ。友達でも見えるって言う人は居るし……ただ俺は、自分ではそんな体験した事無いから分からないだけで……。兄貴がそうだったなんて聞いた事、なかったし……」
 もしかしたら自分に少しでも興味を持ってくれたのかもと思い直し、再び椅子に腰を下ろすと、尚史はテーブルを挟んで座る虹輝を見た。
「……でも、聞いたところで幻覚でも見てたなんて言われたら、僕は正直、気分が悪い」
 だが、思いとは裏腹に、辛口を叩いてしまう。
「そんな風に言ったりしない。さっきの事で、もし兄貴が気分悪くしたなら謝るよ。ゴメン」
 悪さをした犬が縋りつくような、そんな視線で見られて尚史はふぅと小さく息を漏らした。
「いや、そんな謝られるような事じゃ……」
 年が離れた弟に悪態をついてしまった自分が情けなくなる。
 虹輝は心霊体験的な話は苦手に違いないと思った尚史は、なるべく恐怖感を与えないよう、あの旅館での出来事をを話す事にした。
「そうだな、怖くないお化けも居たよ」
「ふぅん? どんなんだった? そのお化け」
 先程とは打って変わって、好奇心旺盛な瞳を向ける。 
 やはり虹輝は怖い話が苦手で、話に興味を示さなかったのかも、と思い直し、幼少期から体験してきた事を語った。
 藤吉が天国に行ってから、一切の霊体験をしなくなった事を言い終えると、虹輝は何故か嬉しそうに微笑んでいた。



               ――to be continued――


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