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主に長編BL小説置き場です。BLの意味が分らない、または嫌悪感がある方は速やかにブラウザバックでお願いします。

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――時空を超えて――<3>

 風呂から上がって食事も終わると、陽はすっかり落ちていた。尚史は両親に布団に入るように言われ、いつもと違うんだからまだ遊んでも良いんじゃないか、と反発するものの、その意見はあっけなく却下された。
 渋々としながら川の字に敷かれた布団の真ん中に、その小さな身をもぞもぞと潜り込ませる。
 電気を消され、辺り一面に深い闇が訪れた。さわさわと木々が揺れる音を聞きながら、ふと昼間、玄関先で出会った子供の事を思い出す。
 あの子が、この世の者じゃないとは気が付かなかった。
 尚史はこの歳になると、その存在の違いの区別が付くようになっていた。
 大体のものはどこか違和感を感じる。尚史は幼い頃から、視力があまり良くなかった。
 ぼんやりと友達の顔は見えるのに、その存在だけはハッキリと見えるのだ。
 浮いていたり、一部が見えなかったり、その時々で様々だが、兎に角、生きている人間とは何かが違う。
 それが怖かったから、異界の者が居る時はなるべくその場所に近寄らないようにしていたのだが、先程の子は普通に見えた。生きてる人間同様にぼんやりと。
 だから尚史はその事で、両親が言っている事に疑問を抱いていた。
 でも、確かにこの季節にあの服装はおかしいかも知れないと思い始めた頃、大浴場で散々遊びまわった疲れからか両目の瞼が重く感じ、ふわぁと大きな欠伸をすると、考える事も面倒になってしまった。
 布団を抱え込み何度か寝返りを打つが、両隣で聞こえてくる静かな寝息につられて、尚史もいつしか深い眠りへと誘われて行った。

 
 尚史は不意に、胸の辺りに重苦しさを覚えて目を開けた。
 天井を見ると小さな電球だけが光っていた。しかし、尚史は違和感を覚える。
 確か寝る時は灯が点いていなかったはず――。
 他を見ようと、首を動かそうと思ったが何故か動かない。それどころか、指の一本まで動かすことが出来なくて、ただじっと天井を見つめていたら、小さな電球の灯だと思っていたそれはフワフワと宙を漂って、尚史は恐怖を感じた。
 初めての現象に、訳が分からないままでいると耳元で声がする。
『どうして来なかったの? 僕(やつがれ)、待ってたんだよ?』
 尚史は直感であの子だと思った。さすがにこの現象で、やはりその子がこの世の者でないと痛感し、恐怖で泣きそうになる。それを必死に堪え、尚史は心の中で謝った。
(ごめん!! 君があっちの世界の子だと気付かなかったんだ!! ごめんね、生きてる人としか遊んじゃダメって、お母さんに言われてるんだ、ボク!!)
 でもその子は、尚史の言葉に耳を傾けようとはせず、哀しそうな声を出して
『遊んでくれるって言ったから、嬉しかったのに……』
 背筋がゾーっと粟立つのを感じながら、尚史はなおも必死に謝った。
(――ごめんね、本当にごめんね!! 約束破るつもりは無かったんだ、本当に……) 
 その必死さが伝わったのか、フッと胸の辺りの重みが消えた。どうやらその子が自分の上に乗かっていたのだと気が付き、尚史は全身に冷たい汗を流す。
 これで起き上がれるかも、と思い、指先に力を入れてみた。しかし、手足が動かないのは変わらなかった。
 恐怖でどうにかなりそうなのを必死に堪えて、目だけで何とか位置を確認すると、その子は尚史の寝ている横に、正座していた。後ろには母親の姿がぼんやりと見える。
 くっきりと見えるその子に、尚史は怯えきっていた。
(やっぱりお母さんの言う事は本当だったんだ……昼間とは全然違う感じだ……)
 その子供は尚史の様子など気にもしない様子で、変わらず俯いたまま哀しげな口調で話しかけて来た。
『分ったよ、お前さんの母様にそう言われちゃ、仕方ないよね……。じゃあ、代わりに話、聞いてくれる?』
 尚史は怯えながら、心の中で(ボクをそっちに連れて行かない?)と、質問した。
『……連れて行く? そんなのやり方、わからない』
 その子の返事を聞いて、尚史はホッと息を吐く。
 あまりに哀しげな瞳に見据えられ、約束を破ってしまった罪悪感から尚史はそれを了承する事にした。
(遊ぶのはダメだけど、話を聞くのはいいよ。ごめんね、約束したのに遊べなくて)
 そう心の中で返事をすると、その子はニッコリと微笑んだ。
『もういいよ。お前さんが僕の話、聞いてくれるだけで』
 機嫌が直ったと思った尚史は、少し引き攣りながらも微笑を返した。
 しかし、両親にこの事がバレたら思うと、気が気じゃなくなってきた。
(あのさ、夜遅くまでかかる? あんまり遅くまで起きてると……)
 それを察したのか、その子はコクリと頷いて見せ
『分った。じゃあ、見てくれたらいいよ』

 尚史は意味が分からずポカンとしていると、頭の中にイメージ画像のようなものが次々と流れてきた。最初は不思議に思っていたが、それはその子が見せているものだと言う事に気が付いたのは、目線が今の自分と変わらなかったからだった。
 その画像のような、動画のようなものに映し出された画面には、尚史が祖父母の家で見た、時代劇のような着物を着ている人達が沢山いた。この子の言葉使いからも、現代ではないのだろうと推測する事は、幼い尚史にも容易であった。
 まるでドラマでも見るように、尚史はその映像を眺める。
 その子が体験したであろうと思われる場面が、次々に変わった。
 最初は母親と思われる女性を見上げる図や、同じような年頃の子供達と鬼ごっこやかくれんぼをして戯れている、至って普通と思われるシーンだったが、周りとは明らかに違う、豪華な着物を着た男たち数人に取り囲まれ、その一人が母親の両脇を抱え込み、身動きが取れない状態で、その女の人が泣きながら遠ざかって行く場面から様子は一転する。
 最初は連れてきた連中と同じような、刺繍がふんだんに施された豪華な着物を着せられて、色々な所に連れ回される。だが、そのシーンは長くは続かずに、真紅に輝く綺麗な着物を纏った女の人が赤ん坊を抱いて、冷たい視線を投げかけている所からまた様子が変わった。そのな着物を被ぎ取るように脱がされた後、粗末な着物を着せらた。今着ている着物が、まさにそれと同じであった。そしてその華美な屋敷から遠ざかる図が見える。
 その時尚史は、その子供が元いた場所に帰れるんだと思っていた。その子も同様だったのだろう、画面にはゆっくりと流れるような風景が映り込んでいる。簾だろうかそれを小さな手のひらで元に戻し、視線が変わると周りの大人たちも穏やかな笑みを浮かべていたのだが、次の場面で異変は起きた。
 四方八方を見回す様子から、どうやら連れて来られたのは知らない場所だったらしく、画面が激しく揺れだした。一瞬だけ見えた先程の大人の顔が、まるで鬼のように豹変している。次々に変わる場面に、走って逃れようとしているのは察しがついた。だが、視線が大人たちと同様な事から、捕まってしまったことを物語っていた。
 暫くしてから小さな倉のような、ほとんど光の入らないような所に閉じ込められた。必死に門を叩くが、そのうち両手から血が滲み出て、その場に泣き崩れたのだろう、視界が歪む。
 何日もそこに放置されていたのだろうか、薄暗くなったり、真っ暗になったりしている場面が続く。その間、食事とは言い難い、粗末な食べ物が置かれたのは、ほんの数回、数えられるくらいだった。
 それを必死に手に取ろうとすると、大人達はわざとひっくり返したり、土の上に放ったりしていた。そして、誰もいなくなった部屋で、土にまみれた食べ物を口に運ぼうとする様子が視界に納まり、尚史は胸の奥が重くなるような感覚に囚われる。
 時には目を背けたくなるような暴力的なシーンもあった。何度も画面が揺れ、どうしたのかと思って見ていると、視線の先には、げらげらと指を指し笑っている大人たちの姿があった。小さな手のひらには血のようなもが、ぼたぼたと零れ落ち、画面が暗く閉ざされる。
 代わる代わる現れては、体罰や意地悪を繰り返す大人達の表情は、とても人間のものとは思えない、見るに耐えないものだった。
               


               ――to be continued――


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