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主に長編BL小説置き場です。BLの意味が分らない、または嫌悪感がある方は速やかにブラウザバックでお願いします。

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――時空を超えて――<2>

「お母さん、着いたよ! すっごい大きい家だね~!!」
 尚史は初めて見る、古民家風の温泉宿に興奮して大きな声を上げた。
「ふふ、そうね。でも、騒いじゃダメよ。他にお客さんも居るんだからね?」
 母親は尚史の口許にそっと人差し指を立て、物腰柔らかな口調で諭すように話す。
 父親はそんな妻子の姿を眺めながら目を細め、玄関を入った所にある少し広めの廊下で家族三人分の荷物を下ろし、尚史の肩に手をポンと乗せた。
「ちょっと荷物番してくれないかな? お父さんはお母さんと一緒に、お店の人と話をして来るから」
 父母の、いつもよりも優しさを増した笑みに尚史は、つられるように笑顔で「うん! わかった」と、返事をする。
 非日常的な出来事で、家族全員が浮かれているのが、児童である尚史にも理解出来ていた。
 ワクワクと胸を躍らせて、荷物の置いてある場所に身を屈めると、父母の言いつけを守って荷物の番をしながら待っていた。
 古民家のような建物の中は広く、キョロキョロと落ち着きなく辺りを見廻していると、不意に衝立の所で人の気配がして視線を向けると、そこには自分と同じような年頃の子供が尚史をじっと見つめていた。
 瞳が綺麗な子だった。
 尚史はその子の瞳の色をじっと見据える。
(なんて綺麗な色なんだろう……。外人さん、かな? でも髪は黒い……)
 艶のある黒髪とは相反し、淡い光に照らされ色素が薄く見える茶色の瞳に惹かれて傍に行こうとしたが、言いつけを破っては怒られると思い、その場から離れず声をかける。 
「ねぇ、何してるの? 君もここに泊まってるの?」
 その子は一瞬驚いたように切れ上がった一重の目を瞠った後、照れたようにニッコリと笑い頷いた。
「そうなんだ。ボクも今日からここに泊まるんだ、よろしくね? それじゃあさ、後で遊ばない? 今、ここから動いたら怒られちゃうんだ」
 その子は嬉しそうに微笑むと、コクコクと頷いた。
 尚史は遊び仲間が出来た事で嬉しくなり、満面の笑みを向けていると父親が傍にやって来て、荷物を手に取った。それに合わせて尚史は立ち上がり、視線を父親へと向ける。
「あ、お帰り!」
「部屋が決まったぞ~! 畳の部屋で、とっても広いんだ。そこに行くからお父さんの手伝いしてくれな?」
「うん、わかった! どれ持ったらいいの?」
 父親に言われたリュックなど軽い荷物を持って、尚史は振り返った。
「じゃあさ、後でここで待ってるね?」
 ニコニコしながら手を振るその子を見て、手を振り返すと、尚史は父母に追従しその場を離れた。

 部屋に入って仲居が説明を終えた後、尚史はそわそわとしながら母親に話掛けた。
「お母さん、ボクさ、友達と約束あるんだ。行っていい?」
「お友達? あら、もう誰かと仲良くなったの?」
「うん。さっきね、玄関の所で友達になったんだ。盆踊りの時に着る服着てね、目が綺麗な、あれはなんて言うのかなぁ……、そうだ! 紅茶の飴みたいな色でね、髪の毛がこうね、肩のところまであって揃ってる、女の子だと思うけど、男の子かなぁ? 着てる服の色が灰色だったから」
 身振り手振りをしながら話す尚史に、父母は顔見合わせ、表情を曇らせた。
 父親は既に浴衣に着替えていて、母親はそれを指差すと尚史に問う。
「こんなのだった? 同じ柄だった?」
「違うよ、もっとこう……襟の所がきゅっと小さかったし、そんな紐みたいのじゃなくてもっと広い……えっとね、こんな感じで、お腹の所が隠れてたよ?」
 両親は、一生懸命にジェスチャーを交え話す尚史を見つめながら、顔を見合わせ頷いた。
「ちょっと待っててね、尚史。お母さんちょっとお風呂見てくるから」
「え? 何で? ボク友達と約束してるから……」
 母親の不可解な言動に尚史は反論したが、すかさず父親が尚史を制する。
「少しくらい待たせても逃げやしないんだろう? その友達は」
「そうだけど……。泊まってるって言ってたから、待っててくれるとは思うけど、約束したのにあんまり長く待たせちゃったら、怒っちゃうかも知れないから……」
 尚史は口先を尖らせると、不満そうに答えた。
「大丈夫よ、お母さん、すぐ戻ってくるから」
 母親は父親に目配せをし部屋を後にしたが、言葉通り数分もしないで戻って来ると尚史の前に屈み込み、その肩を両手で掴んで目線をしっかりと合わせた。
「尚史、ダメよ。その子とお友達になっちゃ」
「えっ、どうして!?」
 突拍子も無い母親の言葉に、尚史は混乱した。
「どうしてそんな意地悪を言うの!? ボクはあの子と遊びたいのに!」
「あのね、さっきの仲居さんに聞いたら、今日は子供は尚史しか泊まってないって……。それにね、今は春でしょ? それは着物って言ってね、今の子はそんなの着てないのよ? 学校のお友達も皆そうでしょう? その子は、この世の子じゃないわ」
 母親の言葉にハッと我に返り、その時の様子を思い浮かべながら
「……でも、盆踊りとかの時に着てる子も居るし、普通の子だったよ? 怖く無かったよ? もしかしたらここのうちの子とかかも知れないし……」
「いいえ、ここには子供は居ないって言ってたわ。それに怖くなくてもね、ダメよ。お母さん達と一緒にいなさい」
 しかし、例えこの世の者じゃなくても約束を交わしてしまった尚史は、その事が気になり、口篭もらせながら
「でもボク、約束したから……遊べなくなったって、言いに行かないと……」
「いけません!!」
 母親の厳しい口調に、尚史はビクリと身を竦ませた。その様子に母親は一瞬悲しそうな表情を浮かべたが、諭す口調で静かに話す。
「いい? その子が怖くなかったからって会いに行ったら、急に変わっちゃうかもしれないでしょ? きっと寂しいだろうから、尚史を連れて行こうとするかも知れないのよ? お母さんとお父さんと、二度と会えなくなっても良いの?」
 尚史は首を大きく横に振った。
「嫌だよ、そんなの! ボク、お父さんとお母さんと一緒に居たいよ!!」
「だったら、お母さんの言う事、聞いてちょうだい?」
 尚史は、母親の真剣な眼差しをじっと見つめ、徒(ただ)ならぬ気迫に渋々と頷いた。
 母親は、尚史が諦めた事にホッと息を吐くと、いつもの優しい風貌に戻る。
「さ、その子の事は忘れて、お風呂行きましょう? ついでにさっき見てきたけど、ここのお風呂広いのよ~! お父さんと泳いじゃダメだからね?」
 尚史は、母親の機嫌が直ったと思い、小さく息を漏らす。
「……わかったよ。じゃあ、ボク、お父さんとお風呂行くね?」
 肩を落としている尚史に、父親はすかさずフォローを入れて明るい口調で
「よし! それじゃ行くぞ! 背中洗ってくれるか?」
 ニコニコと顔を寄せる父親に、尚史もやっと諦めがついた様子で、微笑んで見せた。
「うん、いいよ。それじゃお父さんの背中、羊みたいにモコモコにしようかなぁ?」
「おー、そりゃ楽しみだ! どっちが上手に洗えるか競争だ」
 父親は満面の笑みを浮かべ尚史を抱えると、幼児を扱うように『高い高い』をした。
「わぁー!! お父さん、ボクもう赤ちゃんじゃないよ!!」
 そうは言いながらも、尚史は父親よりも目線が上に行く、この『高い高い』が大好きだった。
 母親を見下ろし、アハハと笑うと、皆それにつられて笑顔になる。
 先程の険悪な空気はどこかに去り、家族団欒の暖かい空気が流れた。



               ――to be continued――


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