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お話倉庫

主に長編BL小説置き場です。BLの意味が分らない、または嫌悪感がある方は速やかにブラウザバックでお願いします。

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――時空を超えて――<1>

 幼い頃、この道を歩いた事があるような気がする――。
 ふと、管野尚史(かんのひさし)はデジャヴを覚えた。何の変哲も無いただの峠道。強いて言えばまだ舗装がされていない足場の悪い砂利道が暫く続くだけの道路。
 だが、尚史には何か引っかかるものがあった。
 たった今、辿ってきた山道を、車のギアをバックに入れて戻ってみた。
(――やっぱりそうだ。ここ、なんとなく見覚えがある)
 車を邪魔にならない所に停めると、尚史は車の外へ出た。
 山全体を覆う木々の葉が紅く色付き、さわさわと風に揺られて静かにその葉を豊かな土壌へと自然の恵みを落としていた。
 尚史はその情景を眺めながらゆっくりと息を吸い、眼鏡を外すと目頭を押さえる。
 長時間運転していたせいで、肩が凝り、目もシバシバとしていた。
 休憩を取るには丁度良い頃だ。再び眼鏡を掛けると、山々を見渡し大きく息を吸う。
心地良い秋風が吹いて、耳まで素直に伸びた黒髪を揺らした。
「はぁ~、やっぱ自然はいいな」
 誰に言うでもなく、伸びをしながら呟くと周りを見渡し、幼い頃の朧げな記憶を頼りにデジャヴを覚えた場所まで歩いてみる事にした。
 砂利のボコボコとした感触が、スニーカーの底に伝わって心地良い。
(ん~、確かここにバス停があって……あ、あった!)
 レトロな感じのバス停は、今はその路線が廃止されてしまったのか、薄汚れいて近くの木の蔦(つた)が絡まっている。
 それを手で避けて、時刻表が書かれている場所に視線を落とすと、その時刻表の表示は剥がされていて、今はもう使われていないと確信し、溜息を吐(つ)いた。
(……やっぱりな、もう廃止されちゃったよな。二十年も前の話だもんなぁ)
 肩を落として車に戻って行く。
 ドアを空け運転席にその身を収めると、気を取り直して忘れていた記憶を辿る。
(もしかしたら、あの旅館、まだあるのかな? 行ってみるか)
 ハンドルを握り車のギアをドライブに入れると、砂利を小さく跳ねらせてゆっくりと走り出した。

 
子供の頃は長く感じた道程も、車で行けばあっという間だった。
 その温泉宿は、改築されて小さくなっていたものの、そこに健在していた。
 駐車場に車を停めると、エンジンを切って思い出を辿っていた。
 
 幼い頃、尚史(ひさし)は常人には見えない存在を見る事が多々あった。
 例えば遠足などの行事で、こんな山道を歩いていると、虫かと思ったら羽の生えた小人で、驚いた尚史は友達にそれを話すと、首を傾げられ『そんなの居ないよ』と、言われたり、母親と買い物帰りに通った道路に人が立っていて、車が来たから危ないと告げると、母親は苦笑いして半ば強引に尚史の手を引き、足早にその場を去ったり……。
 電柱の所に花束が置いてあるのを目にして、それを不思議に思った尚史は家に帰ってから母親に尋ねたら、それは悲しい事故の痕跡だと知らされ、自分は他の人と違う能力があるのだと、なんとなく知ったのだった。
 幸い、尚史の両親は幼少時から自分達の子に、何か特別な力がある事を理解していた。
 しかし、それを誰彼構わず言うと変人扱いされてしまう可能性が高かったので、それによって尚史が深く傷付いてしまうのではと危惧した両親は、自分達以外に話すことを禁じていた。
 尚史も成長するにつれて、両親の言ってる意味を理解した。
 幼い頃は、異世界と通じる事があると聞いたことがある。大人になるにつれ、その現象が薄くなる人も居れば、濃く出る人も居るとも耳にした。
 尚史は、今ではそのような体験を全くしていなかった。大人になれば薄れるタイプ、そうだったのかも知れないと思っていた。
 だが尚史の場合、ある日をきっかけに、ぱったりと体験しなくなったのだ。
 今日、この場所に立つまで、あの日の出来事を忘れていた。
 それは二十年前の、尚史がまだ八歳の少年だった頃、この山道の奥にある旅館に泊まってからだった。
 当時、尚史はこの山道を父と母、尚史の三人で山脈の小高い丘の上にある、バス停から二、三十分くらい歩けば到着する旅館を目指していた。
 尚史の母親は病弱で、病院通いをする事が多かった。それを心配した父親が、温泉で療養しようと思いつき、三泊四日の予定で泊まる事にしたのだった。
 父親は車で事故に遭ってから運転するのが苦手になり、公共機関を使うことが多かったが、尚史にとっては家族が手を繋いで歩けるほうがずっと良かった。
 その日の母親の顔色も良く、ゆっくりとした足取りではあったが、皆この温泉旅行を楽しみにしていたので、旅館に着く過程すら楽しんでいた。
 そんな小旅行で、家族との楽しい思い出として過ごせる筈だったのだが――。



                ――to be continued――


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