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お話倉庫

主に長編BL小説置き場です。BLの意味が分らない、または嫌悪感がある方は速やかにブラウザバックでお願いします。

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――扉を開けて――<32>

「それでその因縁のある先祖が、今度は成長したお兄ちゃんを狙ったらしいの。お兄ちゃんはあの事件で命を落とす予定だった。だけど、それを護ってくれたのが涼ちゃんなんだ。涼ちゃんは自分の運を下げる事で、私達を生き長らえさせてくれた恩人なの」
「え、運を下げるって、そんな事できるのか? 自分の意思で?」
「涼ちゃんはね、誰かを好きになる事でその力を発揮する、特異体質らしいの。それを自分で分ってないから、疫病神だなんて思ってる。でも涼ちゃんは、一人の人しか護れないみたい。きっとあたしも護られていた。だけど、晴が産まれてその力が分散しちゃったから、あたしと晴は命を落としたんだと思う。確かに護られてはいたけど、きっともっと想われていたら……。悔しいけど仕方ないよね。だから、ちゃんと最後まで一緒に居てあげてね?」
「そう、だったのか……。でも蓬田さんは今も、麻里や晴くんを大切に想っている。現にそのために必死になって行動してくれてただろう?」
「うん、分ってるよ。だけど、あたしは結局、お兄ちゃんに負けたちゃった。けど、お兄ちゃんだから許せる。あたしもお兄ちゃんが大好きだから」
 麻里はそう言って微笑んだ。
 俺は複雑な気持ちになりながらも、麻里に笑みを返す。
「まだ人生の旅が続けられるのは、みんな涼ちゃんのお陰なの。結果的には私達の代で終わってしまう事にはなったけど、お兄ちゃんがまだ現世で経験を積めるようにしてくれたのは、涼ちゃんなんだからね。人は肉体が滅んだ時、全ての記憶を神に返す。現世でのその経験は神の記録に刻まれた後、リセットされる。そしてまた違う経験をするために、転生を繰返す。そうやって人間は巡っているんだよ。だから『桜井隼人』として生まれた人生は一度きりだから、残りの人生を楽しんでね」
「そっか……。色々教えてくれてありがとうな、麻里」
 俺は麻里と晴くんを抱きしめた。麻里は照れたようにしながらも、嬉しそうに微笑んだ。
「お兄ちゃん……あたしの分まで、涼ちゃんを幸せにしてあげてね?」
「ああ、分ってるよ。でも、先祖がどうこうじゃなくても、麻里に言われなくても、俺はずっと蓬田さんの側にいるつもりだ」
 麻里は口を大きく横に広げて、とっておきの笑顔を見せ、羽を広げる。
「もーやだ、のろけ? ま、良いけど。あ、そろそろ終わったみたい。私も天に戻らなくちゃ。暫く他の仕事サボってたから、怒られちゃう」
「悪かったな麻里……」
「いいのよ。吉岡みたいな迷ってる人を導くのが、あたしの仕事でもあるの。ホントあいつ頑固だったから、手間が掛かっちゃっただけ。だけど……あいつも根は悪い人じゃないから……。さ、お兄ちゃん、もう帰って。涼ちゃんが待ってるから」
 麻里にそっと背中を押され、俺は白い雲を突き抜け下に落ちていく。
 最後に麻里の声が聞こえた。
『桜井家の人々と涼ちゃんに出会えて、幸せだったよ。またどこかで会おうね』と。
 俺は心の中でそっと応えた。
『俺も麻里に出会えて、幸せだった。生まれ変わってもまた、晴くんも含めて家族になろうな』と――。

 気がついた時は、俺は波多を抱きしめていた。
「晃……あきらぁ……」
 波多は泣きながら吉岡の名を呼んでいた。
 吉岡と波多は和解したのだろう、俺はそっと波多から離れる。
「あき……ら?」
「すみません、吉岡さんはもう離れたみたいです……」
 俺がそう言うと、波多は俯きながら「そうですか……」と答え、俺から離れた。
「……蓬田さん、晃は本当に……いたんですね。疑ったりして、すみませんでした……」
 涙ぐむ波多に向かい、蓬田さんも目を赤くして、泣いていたのだろう、目許を擦ると首を横に振る。
「いえ、俺も占いのお婆さんに聞くまで、確信は持てませんでしたから」
「……占い?」
「ええ。この場所が分ったのも、そのお婆さんのお陰なんです」
「そうでしたか……。来てくれて……ありがとうございました」
 波多は俺と蓬田さんに向かって、深々と頭を下げた。最初の印象とは大きく変わり、実直な好青年に見えた。
 きっと吉岡と話すことで、心に蟠った大きな傷を癒やしたに違いない。
 さわさわと潮風が吹き、吉岡の墓石の花を揺らした。蓬田さんはその花を眺めながら
「こちらこそ、会えて良かったです。吉岡さんも、もうこれで苦しまなくて……」
「はい、なんて礼を言ったら……。先程は、本当に失礼をしました。桜井さんにも……辛い思いをさせてしまって……。晃ももう、あなたを解放してくれると思います」
 何が起こっていたのか分らないが、きっと吉岡はここに留まるのだろう。
 なんとなく波多さんの側に立っているような気がした。
 俺は波多さんに視線を合わせると、頷いた。
「そうですね、もう彼も間違ったりしないと思います」
「……そう言って貰えると……あなたには申し訳なかったけれど、嬉しいです。僕はこれからもずっと、晃と共にここで生きて行きます。晃が迎えに来るその日まで――」
 潤んだ瞳で見上げながら微笑む姿は、吉岡が恋したであろう、凛としたものだった。
 波多さんの言葉に応えるように、潮風が吹き抜けていく。しばしの沈黙が続いたのち
「それじゃ俺達はこれで……。波多さんも身体に気をつけて」
 蓬田さんはそう言うと、波多さんに礼をした。俺も一緒に頭を下げる。
「あなた達も気をつけて……。これから幸せになって下さい」
 俺達は再び波多さんに頭を下げると、その墓地を後にした。



                ――to be continued――
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