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お話倉庫

主に長編BL小説置き場です。BLの意味が分らない、または嫌悪感がある方は速やかにブラウザバックでお願いします。

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――扉を開けて――<30>

 暫く歩くと自然に囲まれた所に、ぽつぽつと墓石らしきものが見え出した。
 その奥に人影が見えて、俺と蓬田さんは顔を合わせると頷いた。
「多分、波多だと思う。俺が主に話をするから、隼人は俺の横に居て?」
「はい、分りました」
 蓬田さんの横に並びながら、その人物へと近寄る。
 灰色の墓石の前に蹲り手を合わせながら、ぼんやりと『吉岡』の文字を眺めてる。
 蓬田さんは「波多さん、お久し振りです」と、声を掛けた。
 驚いたのだろう、その人が振り返ると、確かに俺に面影が似ている。
 特に髪質が似ているように思えた。だが、釣り人の言うように華奢な感じで、その他はあまり似ていないようにも思う。
 俺は蓬田さんの横に立ち、様子を見ていた。すると、その波多とか言う人物は
「……お前は――蓬田?」
 怪訝そうに蓬田さんを見上げた。
「何しにここに来た? よくここが分ったな」
 不機嫌そうな声色を出し、波多は立ち上がる。そして俺に目をやると更に憮然として渋い声を上げた。
「ああ、助かったんだ? 晃は逝ってしまったというのにね」
「波多さん、その事についてお話があります」
「なに? わざわざこんなところまで来て、俺の恋人は助かりましたって、報告?」
 厭味な口調に、俺は気分を害していた。だが、事情が分らない以上、口出しも出来ない。
 波多には波多なりの考えもあるだろう。そう思い、見守っていた。
 蓬田さんは顔色を変える事なく、静かな口調で話しかける。
「そんな事を言いに来た訳じゃないです」
「それじゃ、嘲笑いに来たんだ? こんな辺鄙な所をわざわざ調べて? 随分と暇なんだね、あんたら」
 波多は蓬田さんを侮蔑の眼差しで眺めていた。
 蓬田さんはそれに臆する事無く、口を開く。
「嘲笑いに来るほど暇じゃないです。大事な事を聞きに来ました。波多さんは死して尚、魂が残るって信じるタイプですか?」
「は? いきなり宗教の勧誘? 大事な事ってそんな事かよ!? 馬鹿らしい! 帰ってくれ!!」
 波多は激高し、蓬田さんを怒鳴りつけた。
「違います。吉岡が……まだ隼人に取り憑いているんです」
「へぇー、そう。時差ボケで頭でもおかしくなった? 晃はもう、この世には居ないんだよっ!! そこの男に誑(たぶら)かされたばっかりにっ!!」
 波多は眉をきつく上げ、瞳を潤ませていた。鬼のような形相で俺に掴みかかる。
「なぁ、あんた! 晃を誑かして楽しかったか? 楽しかったかって聞いてんだよっ!! 木偶(でく)の棒みたいに突っ立てないで、何とか言えよっ!!」
 蓬田さんは慌てて「やめろ、隼人は誑かされた方なんだ!」と制するが、俺は蓬田さんを制した。波多は今でも吉岡を愛してる。その物言いが全てを語っていた。
 確信した俺は、波多の目をじっと見つめ、答える。
「……覚えてないです。吉岡という人物が、どんな人だったかとか」
「随分、都合の良い言い訳だね。なに? 僕に遠慮でもしてるってわけ?」
 波多は更に顔を歪めて、俺に食い下がる。
「それは違います。俺は一度、死に掛けました。そして記憶を失い、思い出せたのはほんの一部で、その先が分らないんです。でも夢には出て来ます。いつも俺を連れて行こうとします。俺は死に掛けたからなのか、頻繁にその夢を見ます」
「……夢に出てくる? どういう事だ?」
 波多は俺を掴んだ腕を緩め、怪訝そうにしながらじっと見上げる。
「はい。いつも白い空間に漂っていて、片手には俺の記憶の欠片を抱いて、これと融合すれば記憶が戻ると言います。けれど俺の死んだ妹が、そこで受け取ると俺も死ぬと言います」
 波多は何かを考えるように、宙を仰いだ。そして視線を俺に戻すと
「……つまり、晃は霊として存在してるって……事か?」
「多分。吉岡さんは俺に、とても執着してるように思います」
「……それは、晃があんたの事を好きだから……だろう。そんな事をわざわざ報告しに来たのか? こんな所で墓守をしている僕を哀れんで、か?」
 波多は嫉妬にも取れる眼差しで、俺を睨み付けた。
「そんなんじゃないです。……本当に好きなのは、波多さん、あなたなんじゃないかって思うんです」
「……え?」
 波多は驚いたように俺を見上げた。
「見ての通り、俺はあなたに似ています。吉岡さんとあなたがどんな離れ方をしたなんて俺には分りません。でも、吉岡さんは俺を、あなたの代わりにしていた可能性は高いと思います」
 俺の言葉に波多は動揺しているようだった。
 顰めていた顔を緩め、地面へと視線を落とす。
「でも……晃はあんたに惚れていたんだろう? だって晃は……、もう僕の事なんか……」
 戸惑うように視線を泳がす波多を見ているうち、目の前が霞み、意識が遠ざかって行った。



               ――to be continued――
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