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主に長編BL小説置き場です。BLの意味が分らない、または嫌悪感がある方は速やかにブラウザバックでお願いします。

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――扉を開けて――<19>

 ハッとして目を覚ますと、そこは一面白い壁だった。
 何が起こったのかよく分からないまま、辺りを見回すと「隼人、気がついたのか!?」と、蓬田さんが心配そうに俺の顔を覗き込んでいた。
「……ここは?」
「病院だよ。突然倒れたから、救急車を呼んで……」
「そうだったんですか……」
 俺は小さな点滴ボトルに目を向けた。管からチタチタと落ちる水滴を眺める。
「気分はどうだ……ですか? まだ落ち着かない?」
「いえ……頭痛は治まりましたけど……。どれくらい意識を失っていましたか?」
 また長い間意識を失っていたとすると、蓬田さんの仕事に影響を及ぼしてしまう。
 そう思い、蓬田さんを見上げた。
「一時間くらいでしたでしょうか。その間に検査もしたのですが、どこも異常はないと言われましたので、安心して下さい。その点滴は、少し脱水症状があったので、と」
 蓬田さんは安堵したように微笑んだ。俺もその答えにホッと息をつく。
「そうですか……。迷惑を掛けてしまって、申し訳ないです」
「そんなの気にしないで下さい。何もなくて良かったですよ。でも、かなり魘(うな)されていましたが、いつもこんな風に?」
「夢を……見ていました」
「……夢?」
「ええ。麻里と……晴って子供が、俺を吉岡から救ってくれる夢を……」
 俺の話を聞いた蓬田さんは、顔色を変える。
「え……、麻里と晴が? 吉岡って……思い出したのか?」
 俺は首を横に振る。
「思い出した訳じゃない……。いつも俺の前に姿を現す男がいるんです。俺はそれが幻覚だと思っていたんですが……その男は『晃』と名乗り、それを手掛かりに親父から聞きました。そいつが俺をこんな風にした犯人、吉岡晃だと。でもその吉岡は違うと言っている。だけど麻里は騙されるなって……」
 蓬田さんは戸惑ったように視線を泳がす。そして口を開けかけた時、扉が開く音がした。
「涼太、桜井さんは?」
 カールさんだった。慌てた様子で室内に入ってくる。
「あ……、うん。今、気が付いたところ」
 カールさんは蓬田さんの隣に立ち「良かった……、驚いたよ、急に倒れたって……」と深い溜息を零した。
 俺は上半身を起こすと、カールさんに視線を向ける。
「……すみません、心配をお掛けして……」
「いや、何もなかったみたいで良かったですよ。でも、どうして急に?」
「いつも昔のことを思い出そうとすると、頭痛がするんです。今まではこんな意識までなくなるような事はなかったんですが……」
「……そうだったんですか」
 カールさんは蓬田さんと視線を合わせる。蓬田さんはカールさんに向かって
「カール、申し訳ないんだけど、やっぱり明日からずっと俺、隼人に付いているよ」
「え? だって仕事は?」
「うん、明日の午前中だけ行って来る。事情を説明して辞めさせて貰うよ」
「そうか、分った。何かあったら連絡してくれ。オレもできるだけ協力するから」
 二人の会話を聞きながら、俺は自責の念に駆られる。
 自分一人の為に、こんなにも人を巻き込み迷惑を掛けてしまっていると思うと、情けなくなった。
「……すみません、二人とも……」
 カールさんは俺に笑顔を向ける。
「気にする事はないですよ、桜井さん。オレは全部承知で引き受けたんですから。あなたの病気が早く良くなってくれればそれで」
 蓬田さんも微笑みながら
「そうですよ、気に病まないで下さい。俺も隼人が回復すれば、それだけで充分ですから」
 二人の気持ちがとても嬉しかった。蓬田さんは吉岡の言うような悪人ではない。
 カールさんだってしっかりとした信頼が無ければ、蓬田さんに対してこんな風に接したりしないだろう。
 やはり真相を思い出さなくては。だが、この頭痛が厄介だ。
 自力で思い出そうとすると、どうしても激しい頭痛が襲って来る。今回のように倒れたりしたら、それこそまた迷惑を掛けてしまう。
 俺は意を決し、口を開いた。
「蓬田さん、カールさん。俺、本当の事が知りたいです。自力で思い出そうとすると、またあなた達に迷惑をかけてしまうかも知れません。教えてはくれませんか?」
 カールさんは戸惑ったように蓬田さんを見つめた。蓬田さんはそれを受けて、意を決したように頷いた。
「分りました。家に帰ったらその話をします。取りあえず今は、意識が戻ったら連絡してくれって医者に言われているので、ちょっと行ってきますね」
 蓬田さんはそう言って、病室を後にした。
 残されたカールさんは俺に視線を合わせる。
「桜井さん。もし、あなたにとってショックな話でも……涼太から離れないって、約束してもらえますか?」
「……え?」
「あなたは涼太とって、掛け替えの無い存在なんです。たとえ記憶を無くしていても、それは変わらない。だから……」
 俺は、ロスで入院していた時に、蓬田さん自身もそう言っていた事を思い出していた。
「掛け替えのない……存在?」
「この先、涼太と暮らして行けば、それはきっと分ると思います。オレはあなたが入院している時、涼太がどんなに苦しい思いをしたか知ってます。もう、そんな思いを彼にさせたくない。彼はオレにとって家族同然だから。もしあなたが離れて行くのなら、オレは彼をアメリカに連れて行こうと思います。それでも聞きたいですか?」
 蓬田さんが俺の前からいなくなる――。その言葉に、どうしょうもない寂しさを覚えた。
 俺が沈黙をしていると、カールさんは
「あなたにその決意が無いなら、聞かないほうが良いと思います。どうしますか?」
 真剣に問われ、俺は意を決する。
「どんなショックな話だろうと、俺は受け止めるつもりです。そして蓬田さんから離れないって約束します」
 それを聞いたカールさんはホッと息をついた。
 そこに蓬田さんが白衣の男性と共に、室内へと入ってくる。
「桜井さん、気分はどうですか?」
 白衣の男性は無表情で、お決まりの台詞を言う。
「あ、はい。だいぶ落ち着きました」
「そうですか。それではその点滴が終わりましたら帰っても宜しいですよ。特に異常な所はありませんでしたので」
「そうですか。ありがとうございました」
「いえ、それではお大事に」
 その男性は業務的な口調でそう告げると、室内を後にした。その後、点滴を終えた俺は、二人と共に病院から出た。



               ――to be continued――

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