FC2ブログ

お話倉庫

主に長編BL小説置き場です。BLの意味が分らない、または嫌悪感がある方は速やかにブラウザバックでお願いします。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

このページのトップへ

――扉を開けて――<16>

「あ、テーブル、そのままで良いですからね?」
 安堵したような表情をして、そそくさとその場から離れる。やはり嘘くさい。
 俺は用事が済んだら、その事を聞いてみようと思った。
 ところが、来客だったらしく、話す機会を逃してしまった。リビングに現れたのは、昨日、親父に話していた外国人のようだ。金髪に碧眼で、アメリカ系といった感じだ。
 背が蓬田さんと大差がないのと、細身でセミロングな髪型のせいか、どちらかというと中性的に見える。その外国人は俺を見ると、ニッコリと微笑んだ。
「ハジメマシて、サクライさん。オレは、カール・ウィルソンっていいマス。カールって呼んでクダサイ。アナタをリョウタが探してイルとき、知り合いマシタ。ヨロシクでス」
 握手を求められて、俺は椅子から立ち上がるとそれに応じた。
 カールという人物はそこそこ日本語が話せるようだが、やはり外国人なまりがあって、話しにくい。俺は英語で答える事にした。
「初めまして、カールさん。よろしくお願いします」
 カールさんは一瞬、目を見開いたが
「さらっと話されちゃうと、こっちが面食らうよ。だけど、涼太が言ってた通りの方ですね。発音もきれいで、完璧だ」
 英語に切り替えると肩を竦ませ、おどけた表情を見せる。
 蓬田さんは俺とカールさんの様子を見守っている様子だった。
 カールさんは真面目な表情に戻ると
「それで涼太から話は聞いてるとは思うけど、涼太の仕事の目処が付くまでオレがあなたの側にいます。それに異存は無いですか?」
「ええ、勿論。しかし、こちらには仕事か何かでいらっしゃっているんでしょう? それは大丈夫なんですか?」
「ええ、問題は無いですよ。ご心配なく。それよりも……」
 カールさんは蓬田さんにチラリと視線を送った後、言いにくそうに尋ねた。
「記憶は……まだ、戻ってないんですか?」
「ええ……。中学卒業あたりまでは思い出せたんですが、それから先が……」
「そう、ですか。でも、これから思い出すかも知れないし、希望は捨てないでゆっくり過ごすと良いですよ」
 とは言いつつも、カールさんもなぜか悲しそうな瞳を向ける。
「あのさ、カール。こんな所で立ち話も何だから、そこのソファーに座ってて。今、紅茶淹れるから。隼人もそっちに移動してくれると話しやすいと思うので……」
 蓬田さんも英語で話しつつテーブルを片付け始めた。俺は言われたとおり、リビングのソファーへと移動する。
「あ、涼太、洗い物か? オレも手伝うよ」
 カールさんはそのままキッチンへと向かってしまった。
 一人で座っているのも申し訳ないと思い、立ち上がると
「あ、桜井さんは座ってて下さい。オレはこれでも調理場を任されてるんですよ」
 ウィンクを投げられ、幾分戸惑う。どうも外国の風習には慣れないと思っていると
「すみません、すぐ終わりますから……。テレビでも見ますか?」
 蓬田さんも気を利かし、テレビのスイッチを入れてくれた。
「あ……、どうも」
 確かに俺が手伝ったとしても、二度手間になるかも知れない。そう考えてまたソファーへと腰を下ろした。
 二人は親しげな感じで談笑しながら、片付けものをしていた。時間にすれば十分程度ではあるが、やけに遅く感じる。
 笑い声など聞こえたら、そっちが気になってテレビなど集中できなかった。
 なぜかモヤモヤとするような嫌な気分になり、画面をただ凝視する。
 お笑い芸人がネタを披露しているのも、なんだか絵空事のように感じた。
 二人が揃ってリビングに向かってくると、モヤモヤとした気持ちが強くなる。
 なぜそんなに苛立つのか、自分でも訳が分からなかった。
「お待たせしたね、桜井さん。オレ特製のミルクティーなんですよ、どうぞ」
 カールさんはニコニコと笑顔を向けてくるが、俺は口の端をあげるのが精一杯だった。
「……どうも」
 カップを受け取りそれを口に含むが、蓬田さんの料理の味が消える気がして、それ以上は口をつけなかった。
「口に合わなかった? 桜井さん」
 カールさんが心配そうに見つめていた。
「あ、いえ……。今はお腹が一杯で……」
「そう? だったら良いけど、好き嫌いがあったら言ってくれないと、オレも分らないから。これから昼食はオレが作ることになるし、遠慮しないで言って下さいね?」
「あ、はい。そうします」
 それを聞いてガッカリする自分に驚いた。考えてみれば当然のことなのに、俺はてっきり昼食も蓬田さんが作り置きしてくれるものかと思い込んでいた。
 昨日の夜、会ったばかりだと言うのに、なぜか蓬田さんに依存している自分がいる。
 こんな甘えた考えは捨てなければ……。
 一人で考えに耽っていると、カールさんが蓬田さんに話しかける。
「涼太、仕事はどれくらいで落ち着きそう?」
「そうだな、明日会社に辞表を出しても、一ヵ月後、かな」
「そうか。でも休日は? 土日か?」
「うん。土日祝日が休みだから、その間は俺が。カールは本業に戻って?」
「了解。夜はどれくらいで戻って来れる?」
「そうだなぁ、大体、夜の7時前後かな」
「分った、それじゃ下ごしらえはして置くから」
「ありがとう、助かるよ」
 俺の為の話をしてくれていると言うのに、気が高ぶるのはなぜだろう。自分でも訳が分からず、この感情が治まるのを待っていた。
 だが、気持ちはささくれる一方で、落ち着かなくなった俺は、部屋に戻る事にした。
「あの……、薬を飲まないといけないので、俺はこれで……。申し訳ないですが、薬を飲んでしまうと、とても眠くなるんです。だから部屋に戻りますね」
「あ、ああ。そっか、それじゃ明日からよろしくね、桜井さん」
「……はい、こちらこそよろしくお願いします」
 カールさんに悪いところなんて全く無いのに、苛立つ自分が情けなくなる。
 軽く会釈をしてからグラスに水を入れ、部屋へと戻った。



               ――to be continued――

毎日お昼に更新☆気に入って頂けたらポチお願いします^^*
にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村

にほんブログ村 小説ブログ BL長編小説へ
にほんブログ村
スポンサーサイト
[PR]

[PR]

このページのトップへ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。