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主に長編BL小説置き場です。BLの意味が分らない、または嫌悪感がある方は速やかにブラウザバックでお願いします。

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――いつまでも ずっと――<57> 最終話

「……それで、隼人はもう、日本に帰った……らしい」
 部屋には重い空気が漂う。壁に掛けた時計の音だけがカチコチと響いた。
 何度か衣擦れの音がする。カールは足を組み替え、天井を仰いでいる。
 リチャードは腕を組み、テーブルの上に置いてあるマグカップを凝視していた。
 きっと二人は俺の為に何か出来ないかと、考えているに違いない。
 それを申し訳なく思ったが、今の俺は言葉がうまく出てこない。ただ項垂れているだけだった。
 暫く時計の音だけを聞いていた。すると、時間を知らせるメロディーが静かに流れる。
 それを合図にしたように、リチャードはカールと顔を見合わせると頷き、俺に問う。
「涼太、君はどうしたい?」
 どうしたい――と聞かれても即答できる筈も無く、口篭らせた。
「……俺は、隼人がもうここにいない以上……君たちの世話になる訳にもいかない。でも、日本に帰っても……」
 まるで錆びたナットを必死に回して、部品を分解しようとしているようだ。
 いくら必死になっても、そのナットは回ろうとしないのと同じで、考えが固定されてしまい、ネガティブな思考に囚われる。
 日本に帰っても、隼人にはもう、俺は必要じゃないのかと――。
 俺は行き場を失った、沈没船にでもなった気分だった。
「日本に帰っても」
 リチャードが続きを言おうとした時、カールがそれを制し、口を挟む。
「涼太、オレも行くから」
 その言葉の意味が理解できずに、カールをじっと見つめる。
 リチャードは最初、驚いたように目を瞠っていたが、カールに笑顔を向けた。
「そうだね、君も一緒に日本に行ったほうがいい。正直私も、このまま涼太を一人にするのは気乗りしなかったんだ」
「だからオレもそう思って。どうせまた日本に研修に行かなきゃならなかったんだ。少し時期を早めたって良いよね?」
 カールはそう言ってリチャードに笑顔を向ける。
「え、いや、そうしたら君達は離れ離れになっちゃうじゃないか。そんなの……」
 カールはリチャードと顔を合わせると頷いて、オレに視線を移す。
「涼太、オレはね、どのみち研修に行く事になっていたんだ。本当は一年後だったんだけどね。だけど、時期を早めるのなんて大した事じゃないし、今までだってオレ達は距離的にはそんなに近いところにいた訳じゃない。だからそんな事は気にしないで、一緒に日本に行こう、涼太」
 カールは俺の手を握り締め、満面の笑みを浮かべる。
「だけど…………」
 チラリとリチャードを仰ぎ見たら、カール同様、笑みを浮かべて
「なに? カールが君に言い寄るとでも思ってる? それだったら心配要らないよ。私達の絆はそんなに浅いものじゃないからね」
 おどけた表情をして、カールにウィンクを投げた。
「そうだよ。オレ達はどんな障害も乗り越えてきた。確かにオレは涼太の事は気に入ってるけど、そういう意味の『好き』じゃないから、安心して」
 カールもまた同様にして、俺にウィンクを投げる。
 二人の気遣いは嬉しくもあるが、俺の為に二人が離れ離れになるのは心苦しい。それに、明日にでも身を投じようと決意した心が揺らいでしまう。
「カール、リチャード。本当にありがとう……でも、俺、一人で頑張ってみる。例え隼人とはこれから先、逢えなくなるとしても、出来るだけ前向きに考えるように……」
 こう言えばきっと、ついて来るとは言わないだろうと思った。
 そうしたら二人は俺が居なくなっても日本に帰ったと思い、探したりはしないだろう。
 だが予想に反し、二人は顔を見合わせた後、俺に視線を向ける。
 カールは俺の手を一段と強く握った。
「そう、か。でも涼太、少しの間、オレも同行しても構わないだろ?」
「どうしてそんな……。俺は一人で帰れるから、そこまでしてくれなくても……」
 カールは首を振る。
「さっきも言ったけど、どのみち日本へは行く事になっていたんだ。君にガイドを頼みたい。それでもダメ?」
 カールは困ったような笑顔を向ける。
 きっとそれは本心ではないのだろう。そう察しが付くのはカールが以前、日本に留学に来ていたと話していた事と、心配しているような瞳を俺に向けるからだ。
 リチャードはそんなカールを暖かい眼差しで見守り、俺に視線を向けた。
「涼太、私からも頼むよ。日本でカールをサポートして欲しい。慣れない土地で何かあったら、それこそ頼りにでるのは君だけなんだ。引き受けてはもらえないのかな?」
 リチャードの言葉は、カールを気遣っているようで俺に向けての言葉だった。
 彼らの親族が経営するホテルは、世界各国に支店がある大規模なものだ。
 その中で『頼れるのは君だけ』などと言う事は有り得ない。
 どうやら二人は俺の心中を察しているようだ。
「……君達はまるでエスパーみたいだ」
 思わず呟いた一言に、カールが答えた。
「それは違う。涼太はね、とても感情が豊かなんだ。だから、見ていれば分るよ。君の恋人も、涼太のそんなところに惹かれたんじゃないかな?」
 続けてリチャードも
「そうだね、君は本当に感情が豊かで人間味が溢れている。だからとても魅力的なんだ。大丈夫、カールがきっと君の力になってくれるはずだから、もうそんなに思い詰めた顔をしないで。ね?」
 やはり完全に見抜かれていた。この二人には敵わない――。
「――分ったよ、カール。リチャードも……ありがとう」
 ぽたりとカールの手に、俺の落とした雫が弾けた。
 カールはそっと俺の肩を引き寄せ、またハグをしてくれた。
 二人の暖かさに触れ、俺は新たに決意をする。
 もう何があろうと、決して自ら命を絶つ事を考えるような馬鹿な真似はしない、と。
 この異国の地で知り合った、何ものにも代えがたい友の為に――。
 例えどんな結果が待っていようとも、大切な人たちが教えてくれた愛情を胸に、俺は自分らしく生きて行く。いつまでもずっと隼人を想いながら――。


 それから間もなく、俺とカールは日本へと飛び立った。


important as the same ――いつまでも ずっと――   涼太編 FIN


長らくご愛読いただきまして、誠にありがとうございました^^*
これで『important as the same――いつまでも ずっと――涼太編』は終了となります。
この子は語りがとても遅かったので、本当に苦労しました^^;
長かった……本当に長かった><
途中何度挫折しそうになったことか(遠い目)
暫く寝かせていた期間もあって、最初の方と中篇と最後の方で、なんか文章が変わってきちゃって、読みにくかったと思います^^; 
しかし、無事に終えることが出来まして、本当に感謝感謝です!
これはひとえに、読んで下さる皆様が居たお陰です。
本当にありがとうございました!

次回は最終章、隼人編になります。
最後までこの子達の物語を見届けて頂けると、作者冥利に尽きます><///
それでは、また近いうちにお逢いしましょう^^ノシ 

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