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主に長編BL小説置き場です。BLの意味が分らない、または嫌悪感がある方は速やかにブラウザバックでお願いします。

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――いつまでも ずっと――<55>

 ようやく定時に上がれて、急いで身支度を整えるとバスに乗り込む。
 見慣れた道を駆け足で走り抜け、病院に着いて一息ついた時だった。
 人影が目の端に映り、振り返るとスージーがそこに立っていた。
 いつもの白衣ではなく、私服で俯いている。
 その様子が俺の胸中に、どんよりと薄黒い影を落とした。不安な気持ちを振り払うように、勤めて明るく声をかけた。
「あ、スージーさん。今日はデビットさんとデートでも?」
 スージーはハッとして俺を見上げた。
 俺は微笑んで見せようとしたが、口の端が少し引き攣ったようになってしまった。
 でも、そんな俺の姿など見ていないようで、視線を落としたまま首を横に振る。
 俺の不安は更に広がる。
「待ってたの。リョウタ、外で……話しましょう?」
「え……?」
 スージーの声が曇っていた。心なしか震えてるようにも聞こえる。
 雰囲気で嫌な予感を察した俺は
「隼人に……何かあったんですね?」
 辺りをキョロキョロと窺い、誰もいない事を確認してからコクリと小さく頷くスージーに、俺の意識が遠のいて行った。
 仕事に気が乗らない時に、いっそ休みを貰って病院に行けばよかったと後悔しても、時既に遅しとはこの事だ。
 軽く眩暈を起こし、その場に倒れ込みそうになるのを、必死で堪える。
「リョウタ……顔色が悪いわ。大丈夫?」
「ええ。それよりスージーさん、もしかして、ずっと俺が来るのを待っていてくれたんですか?」
「そう。貴方の連絡先、分らなかったから。携帯の番号を聞いておけば良かったわね」
 そう言って、ぎこちない笑みを浮かべる。
「すみませんでした、俺も気が付かなくて……。でも、隼人の入院の時に、ここの病院に連絡先を渡した筈なんですが……」
「ええ。でもそれはもう抹消されていたから……」
「そう、だったんですか」
 スージーは自分の職場で個人情報を漏洩する事が、どんな結末を迎えるか承知の上で来てくれたのだろう。
 それも俺がいつ来るかも分らないのに、ここで待っていてくれた。
 スージーは辺りを窺うと、小声で
「それより……、もうここを出ましょう?」 
 気が動転して、そこまで気遣う事ができなかった自分を恥じ、頷いた。
 俺はスージーの後に付き、縺れる足と戦いながらその場を後にした。

 病院の玄関前には、スージーのミニクーパーが停まっていた。
 運転席にはデヴィットが座っている。スージーは助手席側のシートを前に倒し、後ろに座るように促した。
「狭いけど、ごめんなさいね」
「いえ……。お邪魔します」
 デヴィットも浮かない顔をしている。俺の心境はそれだけで、地に落ちてしまいそうだった。
「リョウタ……家に行くから」
 それだけ言うと、デヴィットはハンドルを握った。
 車窓から流れる景色を見るともなしに眺めていると、スージーのアパートに着く。
 無言のままの二人に、部屋の中へと促される。ソファーに座るように言われ、それに従った。押し黙る二人に耐えられなくなった俺は、意を決して声を出す。
「……隼人に何があったんですか?」
 スージーは暫くデヴィットに視線を送っていたが、デヴィットが頷くと同時に重い沈黙から口を開いた。
「……リョウタ、気をしっかり持ってね?」
 ゴクリと唾を飲み込んだ。嫌な予感しかしない。まさか、と思い恐る恐る問う。
「まさか……、隼人の容態が変わったん……ですか?」
 声が掠れて震える。その様子を見ていたデイビットは首を横に振って「いや、それは無いから……」と、フォローを入れる。その言葉に安堵の息を漏らしつつ、スージーに視線
を向けた。すると困ったように眉根を寄せ、囁くように話す。
「あのね……Mr.サクライは、転院したのよ」
「え? どういう事ですか、それ!」
 驚きのあまり、ソファーから立ち上がる。
「どうして、そんな事に……?」
「リョウタが帰った後、彼は幻覚症状を発症してしまって……。うちでは診られないってDrが家族に話したら、日本に連れて帰るって……」
 意識を回復したからと言って、すぐに動けるような状況じゃないのは、素人の俺でさえ分る。隼人は一ヶ月以上寝たきりだったのだ。
「え……、そんな無茶な! 隼人はまだ目覚めたばかりで」
「ええ、勿論Drは止めたわ。他の病院を紹介するからって。でも……。今日の、午後の便で……」
 そうまでして隼人の両親は、俺に会わせたくないと言う事だろうか――。
 絶望感に打ちひしがれ膝が折れたようになり、ガクンとソファーへと腰を下ろした。
 スージーは俯き「力になれなくて、ごめんなさい」と、呟いた。
 俺は首を横に振るしか出来ずにいた。まるで夢の中の出来事のように、身体が重い。
 そんな俺を励ますように、デヴィットは肩をポンと叩く。
「リョウタ、でもMr.サクライは意識が戻ったんだ。これから記憶を取り戻すかも知れない。君も帰国した方が良いんじゃないかな?」
 確かにデヴィットの言う通りなのだが、多分、隼人の両親はそれを危惧して引っ越してしまうだろう。
 携帯電話は既に違う番号になってしまって繋がらないし、帰国したとしてもまた一から出直しだ。
 俺は途方に暮れて、返事すら出来なかった。



               ――to be continued――


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