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主に長編BL小説置き場です。BLの意味が分らない、または嫌悪感がある方は速やかにブラウザバックでお願いします。

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――いつまでも ずっと――<51>

 逸る気持ちを抑えながら、俺はスージーに渡す料理に取り掛かっていた。
 いよいよ今日の夜、隼人に逢わせてもらえる。
 たかが三日が、こんなに長く感じた事はないだろう。
 喜びに打ち震え、踊り跳ね回る心臓が痛いくらいだ。
 バスの時刻を確認すると、それに合わせて仕上げに取り掛かる。
「……よし、出来たぞ!!」
 思わず声が出てしまう。自分でも浮き足立つ気持ちを抑えられなかった。
 出来立ての弁当を鞄に詰めて、その足でそのままバス停へと歩き出した。
 白む息さえも、生きている実感で満たされる。
 バス停に着く間に、俺は隼人の顔を想像していた。
 スージーが言うには、もう、やつれてはいない。
 前の隼人に近い状態なのだろうか、それともまだシャープな面持ちなのだろうか……。
 どちらにしても、早くその顔が見たい。
 浮き足立ったままバスに乗り込むと、自然に頬が緩む。

 病院に着いたのは、二十二時の十分前だった。
 幾分、早目かとも思ったが、気持ちが急いてしまう。夜間通用口に立ち、インターホンを押した。と、直ぐに野太い声が聞こえる。
「はい、どうしましたか?」
「あの、俺、涼太って言います。スージーさんから……」
「ああ! 君がスージーの言ってた人だね? どうぞ、入って」
 程なくして通用口の鍵が開く音が聞こえる。心は隼人に逢えると言う、期待で高まって行った。ドアノブに手を掛けると、手が震えるくらいに。
 扉を押して、そのまま中に入ると、隼人くらいの背の高さで、がっしりとした男らしい白人が現れた。髪は明るめの茶色で短め、瞳の色も同じく、堀の深い顔立ちが警備の制服を引き立てていた。
「ハイ、リョウタ。俺はデヴィットだ、宜しくな」
「ええ、話は伺ってます。今日はどうも有り難うございました!」
 右手を差し出すとデヴィットも右手を差し出し、握手する。節のあるゴツイ手だ。
 気さくな印象で、スージーはこういう男性が好みなのかと、繁々と眺めていると野太い声は握手を解き、静かに話しかける。
「リョウタ。これからカレンは巡回の後、仮眠に入る。その間にスージーと逢うんだ。分ったね? もし、カレンに見付かったら『遅くまで面会してた人の隙を狙って入った、スージーに逢いたかった』って言えばいい。そうれば、あとはスージーが何とかしてくれる筈だ」
「すみません……。見ず知らずの俺なんかの為に……」
「なぁに、気にする事はないさ。リョウタ、今日は思う存分、恋人の顔を見てくるんだな」
 ニコと微笑む姿は、男らしさの上に、優しさも兼ね備えている事が伺える。
 俺は抱えていた袋から、スージーの分とは別に作った弁当を手渡した。
「大したものじゃないけど、良かったら食べて下さい」
「おお! サンキュ!! リョウタの日本料理は、本当に旨かったんだよな。楽しみだよ」
「ありがとうございます、それじゃ俺はこれで」
「ああ、こっちこそ、ありがとうな。グッドラック・リョウタ!」
 親指を立てるポーズをすると、デヴィットはニッコリと微笑んだ。
 俺も同じポーズをし、その姿を後に廊下を足早に抜けて、階段を静かに駆け上がって行った。
 期待で高鳴る胸は、寒かった外気など忘れてしまったようで、薄らと額に汗が浮かぶ。
 ナースステーションまで来ると、スージーの姿を探した。
 機械音だけが静かな病棟に鳴り響く。
 そこに懐中電灯を灯した白衣が見えて、俺は咄嗟に観葉樹の陰に身を隠した。
 もしかしたらもう一人のナースかも知れない。
 緊張で身が固くなると、聞き覚えのある声が俺に掛けられた。
「あら、来たのね? 今、カレン、仮眠室に行った所だったから、丁度良かったわ」
 その言葉にホッと息が漏れる。正直、演技とは言え、いちゃつく事は避けたかった。
 バレないかと肝を冷やすと言うのもあるが、良くしてもらってる二人が、もしかしたら喧嘩してしまうかも、と思うからだ。
 デヴィットは演技と分っていても、やはり胸中は穏やかじゃないだろう。
「リョウタ? そこに居るんでしょう?」
 考え事をしてたせいで反応が遅れた。俺は慌てて観葉樹の影から姿を見せる。
「スージーさん、ありがとう。今日は……」
 ふふっと微笑み、スージーは
「いいのよ。さ、カレンが仮眠の間、短いけれど二時間はあるわ。Mr.サクライの意識はまだ戻ってはいないけれど……行ってきて?」
 その言葉に幾分肩を落とすが、覚悟していた事だ。顔が見られるだけで充分だと、自分に言い聞かせ、鞄の中身を探った。
「本当にありがとう。これ、約束の……」
 弁当を手渡すと、スージーは嬉しそうに受け取った。
「ありがとう! ちょっと忙しくて夕飯食べ損ねたから、おなかペコペコだったの! ああ、良い匂い……」
「デヴィットさんにも、同じもの渡しておいたから」
「デヴィも喜ぶと思うわ、ありがと。さ、早く行ってあげて」
 そわそわとする俺に、スージーはウィンクを投げると微笑んだ。
 背中をそっと押され、俺は早足に隼人の病室へと向かった。



               ――to be continued――


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