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主に長編BL小説置き場です。BLの意味が分らない、または嫌悪感がある方は速やかにブラウザバックでお願いします。

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――いつまでも ずっと――<49>

「――本当だ。貴女、男性だったんですね?」
「ええ。やっと納得してくれたみたいね?」
「すみませんでした、疑ったりして……」
「いえ、構わないわよ。返ってそうやって疑われた方が、私も自信持てるし」
「でも、どうしてそんな事を俺に?」
「貴方、ゲイ……なんでしょ? 毎日通う貴方を見て、ピンと来たの。貴方、Mr.サクライの恋人で、それが彼の両親にバレて、逢わせて貰えなくなったんじゃないかしら?」
 スージーの見解は当たっていた。
 俺は何か得体の知れない、恐怖にも似た感覚を覚える。
 そう、あの占いのお婆さんに会った時のように……。
「どうして……それを?」
 俺が怪訝そうな顔でもしていたのか、スージーはクスッと笑う。
「私、エスパーとかじゃないわよ? この仕事をずっとしてるとね、大体分かるようになるのよ。私の仕事は、人を観察する事だから。話が出来ない人でも、表情を見ればなんとなく言いたい事が分かるようになってね。あんな深い哀しい目をしていたら、意識不明で心配って言うのもあるんでしょうけど、そりゃ分かるわよ。まぁ、勘だけどね?」
 そう言うとスージーは、グラスのコーラを一口飲んだ。
 俺もそれを口に含む。炭酸の爽快さと、コーラ独特の甘さが口の中に広がった。
 緊張して乾いた喉は、それで少し潤った気がした。
「でも、どうして、俺と隼人を逢わせてくれようと思ったんですか? そんな正体がバレるような危険を冒してまで……」
「分かるからよ。同性同士の恋愛が、どんなに辛いか……。私自体は、自分は女の子だと思っていたけれど、周りはそうは見ないじゃない? まぁ、貴方は私とは違うみたいだけど、でも、辛いのは一緒だと思うわ」
 ここにも俺の事を理解してくれる人が居た――。
 それだけで救われたような気持ちになり、先程まで疑心暗鬼していた自分が、途轍もなく小さな人間に思えて恥ずかしくなる。
 だが、本当にそれだけなのか? 何か見返りが欲しいんじゃないか?
 俺は吉岡に騙されたせいか、なかなか信じられずにいた。
「でも、病院にバレたら、貴女の仕事にも支障が出るんじゃないですか? 最悪クビなんて……。そしたらお金に困るんじゃ……その、俺そんなに余裕無いですし……」
「やだ!! お金なんて要らないわよ! そこら辺は大丈夫。策は考えてるわ」
 スージーは俺に向かって、ニッコリと微笑んだ。
 彼女は本当に、善意だけで動いてくれていたようだ。
 こんなにも疑ってしまった自分を恥じて、深々と頭を下げた。
「ありがとうございます……。何度も疑ってしまって、すみませんでした」
「いえ、私もちょっと強引だったから、仕方ないわ。気にしないで?」
「本当にありがとうございます」
 また深々と頭を下げると、スージーはキョトンと俺を見た。俺はハッとして
「あ、これは日本の表現方法で……感謝や謝罪の意を表す時に使うんです」
「そうなの? 日本人って変わった習慣があるのね?」
 そう言ってスージーは微笑む。
 俺は、場が和んだ所で、気になっていた事を訊く事にした。
「あの、話は変わりますけど……隼人の容態はどうなんですか?」
「個人情報だから教えられないわ、と、言いたい所だけど、未だ意識不明のままよ。でもガリガリじゃ無くなったわ。少しお肉も付いて、いい男になったわよ? 王子様系かしら」
 スージーは、俺を励まそうとしてくれてるようだ。言葉の端にそれが伺える。
「そう、ですか……」
 だが俺は、あれから隼人の意識に何ら変化が無かった事を知り、長い溜息を吐いた。
 そんな俺を見て、スージーは同情の眼差しを向けている。俺はハッと我に返った。
 情報をくれ、隼人に逢わせてくれようとしているスージーに、何かお礼をと思うが、何が良いのかさっぱり分からない。
「あの、何てお礼をしたら良いか……。何か好きなものがあれば、遠慮無く言って下さい」
「あら? お礼ならもう、して貰ったわよ?」
「……え?」
「貴方の手料理、本当に美味しかったわ。彼の家族への愛情を感じたもの。そうだわ! それじゃ今度、彼に逢いに来る時で良いから、ライスボール、あれ作って来てくれない? 中にサーモン入ってるの! あれ、すっごく美味しかったの!!」
 スージーは手を胸の前で合わせて、目を輝かせ、期待に満ちた表情をする。
 よっぽど気に入ってくれたのかと思い、嬉しくなった。
 だが、本当にそれだけで良いのだろうか? と疑問に思う。
「え、はい……。でも、そんなもので良いんですか?」 
「ええ、勿論。あ、私の彼、デヴィットの分もね! 彼も美味しいって言ってたわ」
 彼氏にも分けていたのかと少し驚いたが、本当に俺の手料理を美味しいと言ってくれるスージーに、俺は笑顔を向ける。
 彼女はそれを受けてニッコリと微笑むが、咳払いをすると、改まった表情になった。
「今度の金曜が彼の夜警の日で、私も同じ日に夜勤なの。その時、内緒でMr.サクライに逢わせてあげるわ」
「夜警って、スージーさんの彼氏、警備員なんですか? ……でも最近、冷たいって」
「彼が夜警の日だから、貴方をMr.サクライに逢わせてあげようと思ったのよ。やだ、それはカレンに知られないための口実って言ったじゃない? 彼とはハイスクールからの付き合いなの。その頃、私はまだ男で、やっぱり彼の両親から反対されて……」
 悲恋話なのかと思っていると、スージーは嬉しそうに両手を頬に当て、顔を赤らめる。
「でも、彼は私の事が忘れられなくて、私が勤める職場まで探してくれて、私を追って来たの。私がナースをしてるって知った時に、彼はその仕事に就いたの。『君の傍にいたいから』って……それで、今は一緒に住んでいるのよ? 近々結婚するの、私達。これのどこが、上手く行ってないって言うのかしら?」
 ふふふ、と嬉しそうに微笑むスージーは、恋する乙女そのものだ。
「そうだったんですか。それは、おめでとうございます」
 俺はスージーが幸せだと言う事実を知り、満面の笑みを向けた。
「ええ。だから、貴方も幸せになって? 同性同士でも互いに愛し合っていれば、幸せになれるんだって事を証明して欲しいのよ。だから負けないで?」
 その言葉で抑えていた感情が溢れ出し、涙が頬を伝う。
「ありがとうございます、スージーさん……」
「ふふ、困った時はお互い様よ? さて、そろそろデヴィが帰って来る時間だわ。送って行ってあげる。あ、それとも夕飯一緒にする?」
 俺は流れ落ちる涙をハンカチで拭うと、その申し出を断った。
「いえ。ラブラブの所、邪魔しちゃ悪いですから帰ります」
 冷やかすように、ニッと口を横に開けて笑う。
 スージーはそれを受けて、同じように笑った。
「それじゃ、送っていくわよ?」
「バスで帰るので、いいですよ。運転するの怖いんですよね? 無理しないで下さい」
「あ、あら、やだ。怖くなんか……って、貴方が怖いんでしょ! 私の運転」
「あはは、当たり……かな?」
 おどけた表情をするスージーに手を差し出し、握手する。
「ごめんなさいね、送ってあげなくて。それじゃ金曜の二十二時頃に、夜間通用口に来てくれる? 事情はデヴィに話しておくわ」
「はい、助かります」
「そしてカレンの前ではちょっとイチャつくけど、他意は無いから安心して?」
「ええ、分かりました。俺も話は合わせておきます」
 スージーと離れ手を振ると、アパートを出る。

 俺はまだ寒さが厳しい町並みを、バス停に向かってゆっくりと歩いていた。
 しかし、身体はほっこりと暖かく感じる。自然に笑顔が零れた。
 ――人々の優しさが嬉しい。
 カール、リチャード、そしてスージー。
 彼らはそれぞれ、哀しい思いを胸に、しかし、それをバネに力強く生きている。
 周りの理解を得られない、辛い思いをして来たからこその、優しさと強さ。
 彼らの協力、励ましが無かったら、俺はまたネガティブな感情に支配され、人間として最低な生活を送り、堕落して行っただろう。最悪、自分の手でこの命を粗末にして、落としてしまったかも知れない。
 人は独りでは生きて行けない――、改めてそう思う。
 俺はそれぞれの顔を思い出し、深く感謝した。
 丁度、バスが後ろから迫ってくる。俺は意気揚々とし、走り出した。



               ――to be continued――

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