FC2ブログ

お話倉庫

主に長編BL小説置き場です。BLの意味が分らない、または嫌悪感がある方は速やかにブラウザバックでお願いします。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

このページのトップへ

――いつまでも ずっと――<35>

 ふと、人影が見えて頭を上げると、リチャードが飲み物を手に、ドア前に立っていた。
「涼太、私こそ君に謝らなければならないよ……。一瞬でも君を疑ってしまった。私はあの男の言う事を信じて、君がストーカーかと思ってしまった……。だから隙を突かれてしまって、君を危ない目に遭わせてしまったんだ。本当に申し訳ないよ……」
「そんな……俺だって立場が逆だったら、そう思っていたかも知れない。それ程に吉岡という人間は、人の心理を探るのが巧かったんだ……」
 俺が落ち込んでいると、カールは気まずい空気を払うように切り出した。
「ここで立ち話も何だからさ、まずは飯食おうぜ? オレ、向こうから飛んできて、まだ何も食ってないんだ」
 カールはおどけた表情をして、腹を摩りながら、首を傾げる。
「ご、ごめんカール、気が付かなくて……」
「いいって、いいって! さぁ、食おう?」
 ドアを閉めて、それぞれソファーに腰を下ろすと、リチャード達は、テーブルに持ち寄った食事を並べた。
「これ、オレ特製のスタミナバーガーなんだぜ? 美味いから食ってみろよ」
 カールはそう言うと、ハンバーガーを一つ手に取り「ほら、涼太」と、手渡す。
「うん、ありがとう……カール」
 それを受け取ると、香ばしい匂いが漂った。
 にっこりと微笑みながら、カールはそれを頬張る。
 リチャードも同じく手に取ると、微笑みながらカールを親指で示した。
「カールは調理場の監督も任されてるから、腕は確かだよ」
 彼等が見守る中、俺は一口それに噛り付く。
 芳醇な香が鼻元を掠めると、口いっぱいに濃厚な肉と新鮮な野菜の味が広がる。
「うん、凄く美味しいよ、カール」
「だろ?」と、カールはウィンクして微笑んだ。
 彼等が居なかったら、俺はまた食事も摂らずに眠れないまま、病院に足を運んでいたかも知れない。そうしたら医者の話もまともに聞けたかどうか……。
 気を使ってくれる彼らに感謝しつつ、それを頬張った。
 話したい事は山ほど有ったが、言葉が見付からずに、暫く無言のまま食事をしていた。

 皆が押し黙ったままの空間で、テレビの音だけが聞こえていた。
 それをぼんやりと聞いていると、先程、見損ねたと思っていたニュースが流れる。
 俺達三人は、手を休め、その画面を食い入る様に見た。
 今日この場で起きた事件が取り上げられ、このホテルが映し出される。
 レポーターの女性は、簡潔に事件の容貌だけを伝え、邦人一人が死亡、一人は行方不明、残る一人は重態で、病院に運ばれたと告げた。
 そして、吉岡と坂上の顔写真と、隼人の顔写真が画面下に映し出される。
「――きっとこれ、日本にも流れてるだろうな……。直後から報道されてたから」
 画面を見つめながら、カールが口を開く。
「――そう、だろうね……」
 今日起きたばかりの事件だ、それは話題となって当たり前だろう。
 カールの発言から、既に何回かニュースで流れた事は察しがつく。
 俺の沈んだ顔を眺めながら、リチャードは少し躊躇った様子で話しかけてきた。
「君の恋人のご両親は、この事……知ってるの?」
 俺は首を横に振った。
「そう……。それじゃ、これから連絡を?」
「うん……そうしようと思ってる」
 項垂れる俺に、カールは励ますように肩に手を置き、
「涼太、大丈夫か? オレ、日本語少しは話せるから、オレから連絡しようか?」
 そう言ってカールは咳払いをすると、日本語で
「お早うございマス。わタシはカール・ウィルソン、デス。ヨロシクね。日本トッテモ好きデース……どウ? リョウ太、ナカナカのもの、だろウ?」
 カールが話す日本語を初めて聞いたが、あの外国人独特の、ちょっと発音が訛っている程度だった。
「カール、結構話せたんだね? 日本語」
「まぁね。学生の時にちょっとだけど留学してたんだ。結構、忘れちゃったけどね。涼太はもう英語ペラペラ喋れてたから、敢えて日本語で話さなくても良かったけどさ、一流のホテルマンとしては日本国語くらいはマスターしておかないと、ねぇ?」
 カールは意味ありげにリチャードを見た。
 するとリチャードは肩を竦ませ、視線を背ける。
 何だろう、と、俺が見ていると、カールはそれに気が付いたようで
「折角だから、涼太に聞いてもらおう? リチャードの日本語」
 ニヤニヤと笑いながら、リチャードを嗾ける。
 仕方ない、という顔をして、リチャードが口を開く。
「オ、オーファヨーゴザィル? ヴァータスィ、リチャード・アグレィ、イウノーネ……」
 お世辞にも巧いとは言い難い、リチャードの日本語だった。
 外見が端整であるだけに、そのギャップに戸惑う。
 カールは腹を抱えて、色白な顔を真っ赤にして笑っている。
 それにつられて俺も、クスッと笑ってしまった。
 リチャードは赤面しながら
「――カール、どうしていつも君は、私が日本語を話すのが一番苦手なのを知っててわざと……」
 カールはリチャードにウィンクして見せ「たまにね、聴きたくなるんだよ! それに、君のそんな困った顔も見てみたいし!」と、目配せをしている。
 彼なりの配慮なのだろう、暗い雰囲気を何とか明るくしようとしてくれている。
 それに気が付いたリチャードも、また日本語で話してくれた。
 カールは笑いながらも、フォローを入れる。
「オレよりも外国語話せるのに、日本語だけはダメなんだよな?」
 リチャードは、頭を掻きながら「聞く方は大体分かるんだけどね、うまく口がまわらなくて……日本の発音、難しいよ」と、照れ笑いした。
 そんな二人の優しさが、本当に嬉しかった。



               ――to be continued――


毎日お昼に更新☆気に入って頂けたらポチお願いします^^*
にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村

にほんブログ村 小説ブログ BL長編小説へ
にほんブログ村
スポンサーサイト
[PR]

[PR]

このページのトップへ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。