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主に長編BL小説置き場です。BLの意味が分らない、または嫌悪感がある方は速やかにブラウザバックでお願いします。

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――いつまでも ずっと――<33>

 病院に着くと、柳瀬が玄関先で待っていた。
「ギダさん、大丈夫でしたか? 随分掛かりましたね?」
「うん、俺は大丈夫……。それより悪かったな、こんな遅くまで付き合って貰って」
「いや、別に構わないっすよ。こんな所で会えたのも、何かの縁っすよね」
 ニコっと柳瀬は、以前と変わらず笑う。
 その横で、先程隼人を助けてくれた医者が、不機嫌そうに立っていた。
「あ、すみません、先程はお世話になりました……本当に義兄を助けて頂いて、何てお礼をしたら良いか……それに遅くまで申し訳ないです」
 礼を言い、頭を下げる。それに対して医者は
「……いや、構わない。私は自分の責務を果たしたまでだ。君のお義兄さんは、今、ICUに入っている。意識はまだ戻っていない。面会もまだ無理だ」
 と、ぶっきらぼうに答えた。
「直哉! どうして、そんな冷たく言うんだよ!?」
 柳瀬の問いに、その医者は顔を背けた。
「ったく、すんませんギダさん……。普段はこんなんじゃないっすけど……」
 柳瀬は俺に頭を下げた後、その医者に向かって宥めるような口調で言った。
「そりゃ、救急車に金掛かるなんて知らなかったけどさ、払わせて悪かったけど……。でもそんなに怒る事は無いだろ?」
 柳瀬の言葉に俺は慌てて、財布を取り出し金額を聞く。
「生憎、そんな端金の事で怒るほど、私は困ってませんから」
 鋭い目つきで睨まれ、なんとなく予感がした俺は、金を柳瀬に手渡しながら話しかける。
「柳瀬、悪かったな。足りないかもしれないけど……」
「いや、いらないっすよ! ギダさん」
 柳瀬が両手を振りながら拒絶するが、敢えてその医者に見えるように柳瀬の両手を掴み握り締めさせた。
 するとその医者の表情は益々厳しいものとなり、舌打ちをすると背を向けた。
 その様子で確信した俺は、柳瀬に小声で耳打ちする。
「あのさ柳瀬、間違ってたらごめんな? もしかして彼、お前の事好きなんじゃ……」
 すると柳瀬は、途端に顔を真っ赤にさせ、目を丸くした。
「な!? どうして分かったんすか!?」
 そんなに敵対心を剥き出しにされたら誰でも分かるよと、心の中で呟く。
 それに気が付かない柳瀬は、もしかしたら隼人並みに天然かも知れない。
「……なんとなく。お前、付き合ってるんだろ? あの人と」
 柳瀬は耳まで真っ赤に染めて、コクリと頷いた。
 新たな恋人を見つけ、幸せそうで良かった、と安堵の溜息を吐く。 
 しかし、柳瀬達には悪いけれど、今はそれどころじゃなかった。
 面会謝絶にしても、せめて傍にいたいと思い、その医者に話し掛ける。
「あの、隼人は今、どの階に居るんでしょうか? せめて近くに……」
 するとその医者は
「三階だ。案内してやるから着いて来い」
 と、また不機嫌そうに答え、先にスタスタと歩き出した。
 柳瀬が怒った様子で、「直哉!!」と、その医者の後ろから声を掛ける。
 俺は、柳瀬の肩に手を掛けて首を横に振った。
 柳瀬は意味が分からないと言った、きょとんとした表情で俺を見る。
「お前、気が付いてないのか? 彼は……嫉妬してるんだよ?」
「へっ!?」
「そりゃ、そうだろう? 恋人が見ず知らずの人と、仲良く話していたら……」
「ええっ? 直哉が……?」
「俺が直哉さんの立場だったら、柳瀬が自分の知らない他の人と仲良さそうに話していたりするのを見るのは、やっぱり嫌だけど?」
 それを聞いた柳瀬は嬉しそうに微笑むと、その彼氏の許へと駆け寄った。
 やれやれと思いつつ、俺もその後を追従する。

 三階に着くと、広いフロア一体が厳重に各扉で覆われ、ナースステーションが、ぽつりと明るくそこだけを照らしていて、忙しく行き来するナース達の影が見えるだけだった。
「ここの一番奥に運ばれた筈だ。後はもう良いだろう?」
 医者はそう言うと、柳瀬を見た。
 俺は一礼し
「本当にありがとうございました。このお礼は必ずします。日本に帰ったら……」
 と、あとの言葉を続けようとした。
「いや、別に構わないと言った筈だ。隆にもう関わらないでくれ。君は、隆がどんな思いをしてきたか、知っているのか? やっとここまで立ち直ったんだ」
 険しい表情をし、俺を上から見下すような目付きをする。
「何言ってるんだよ! 直哉!! そんな昔の事なんか……」
 柳瀬が制止するのも構わず、医者は続ける。
「隆はな、生死の境を彷徨ったんだ。お前が振った後に、やけになった隆は、車で大きな事故を起こした。一命は取り留めたものの、酷い鬱になっていて、何度も自殺未遂を繰り返して……私が居なかったら彼は今頃、この世に居なかったかも知れないんだ!」
 その事実を聞き、胸が苦しくなる。
「――ごめん、柳瀬……そんな苦しい思いをさせていたなんて……」
「そんな、ギダさんのせいじゃないっすよ!! オレが弱かったから……でも、今はすんごく幸せすっから!!」
 そう言うと柳瀬は屈託の無い笑顔で、医者の腕に絡みついた。
「隆……」
 医者は少し照れたような表情をする。
 その顔を見て柳瀬は、満足そうに微笑む。
「ギダさんに振られて、あの事故が無かったら、直哉にも出会えなかったし、またこうしてギダさんに会わなかったら、直哉がこんなにヤキモチ焼きだって分からなかったし!! だから、逆に感謝したいっすよ」
 口を横に開き、二カッと屈託ない笑顔を浮かべた。
 その言葉に救われた気持ちになる。柳瀬が今、幸せなのは表情で分かった。
 彼の前で見せる屈託の無い笑顔が、何よりの証拠だ。
「だから直哉も、そんなに怒るなよなー。オレ、もう直哉以外、誰も目に入らないから」
 柳瀬はその医者に向かって、真直ぐな視線を送る。
 すると険しい表情をしていた医者は、一転して、とても優しい表情を浮かべ、柳瀬に微笑みかけた。
 彼の本来の姿は、その優しそうな微笑を携えた姿なのだろう。
 互いに、大切な相手なのだろうと察するには十分な光景だった。
「柳瀬、ありがとう。いくら礼を言っても足りないけれど……」
「いえ、そんなの気にしないで下さい! ギダさんに会えて良かったっす!! 彼氏、何も無いと良いすっね」
「うん、こんな遅くまで二人とも有難うございました」
「それじゃ私達はこれで失礼するよ。君も彼氏を大切に」
「はい、本当にありがとうございました」
 俺はその場で一礼すると、柳瀬達の影が見えなくなるまで見送る。
 二人の幸せそうな笑顔が、羨ましく感じた。



                   ――to be continued――


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