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主に長編BL小説置き場です。BLの意味が分らない、または嫌悪感がある方は速やかにブラウザバックでお願いします。

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――いつまでも ずっと――<31>

 それはまた、動画のようだった。幾つかの中の一つを警部は選び、再生する。
 すると今度は隼人だけが映し出されていた。椅子に腰をかけたまま、動かない。
 見覚えの無い部屋だ。生活感の無いその部屋は、ホテルの一室のようにも見える。
 拉致された直後だろうか、髪の毛が短かくて、肌蹴たシャツから覗く胸板は、逞しいままだった。しかし、手足はベルトのようなもので拘束され、眼鏡が外されている。
 少し間を置いて、それとは別に、痩せ細った腕が映し出された。
 その腕は先程見かけた、坂上のものに似ている。
 カチャカチャと、何か、スプーンで皿を擦る様な音がして、その後に坂上の声がした。
『ほら、食べないと身体に毒ですって。吉岡様が最高級の食事を用意してくれて……』
 坂上は日本語で話していた。警部は首を傾げながら画面を見ている。
 隼人はスプーンを口許まで持って来られると、一点を睨み付けた思ったら、頭を横に振り拒絶する。 と、スプーンが顔に当たって落ちてしまい、カチャリと音を立てた。
『あーあ、もう!』
 ブツブツ文句を言う声と、ガサガサと何か音がする。
 坂上が落とした食べ物を片付けているようだ。隼人は項垂れたまま動かない。
『吉岡様が今、ここに居ないからって、拗ねないで下さいよぅ』
 どうやら、吉岡が日本で仕事の時は、坂上に世話をさせていたらしい。
 その様子が、流れる音声で把握出来た。
『言うこと聞かないとあの映像、キタローの会社に流すってさー。アイツがどうなっても知らないぞ? あっ、と、じゃなくて、知りませんよ……っと』
 その言葉を聞いた隼人は、ふと顔を上げ、坂上が居るであろう方角を睨んでいた。
 そしてまたスプーンが口許に置かれると、仕方無さそうに小さく口を開く。
『もっと大きく口、開けて下さいよ。そうそう、その調子ですよーって、また口閉じちゃ駄目じゃないですか!!』
 坂上は一向に進まない食事介助に、苛々としている様子で声を荒げるが、何かに気が付いたように咳払いをして、また平静を装ったような声を出す。
『あーもう……吉岡様が送ってくれる映像、見せてあげるから、お願いですから言う事、聞いてくださいよ?』
 そう言うと坂上は、ノートパソコンを隼人の傍に置いた。
 隼人はそれを見つめていたかと思うと、ふと、俺に向けて見せていた、あの優しい笑みを浮かべた。
 食事を促されている時の殺気立った空気とは全く別の、柔らかい雰囲気が隼人を纏う。
 察するに、先程の盗撮されていた、俺の日常風景でも見ているのだろう。
 坂上は《吉岡が送ってくれる映像》と言っていた。もしかしたらライブで流されていたのかも知れない。
 だから、似たような映像であるにも関わらず、そこのフォルダの数が多いのは、ライブで見ながら録画されていたと言う事だ。
 推測するに、俺の無事を確認出来しなければ隼人は、全て拒否していたのだろう。
 そんな隼人を見たら、胸が締め付けられ、今にも泣き出しそうになる。

 坂上は小さく溜息を吐くと、吉岡様にもそんな顔してやりゃ良いのに、と、呟いた。 
『――ほらね、キタロー元気そうにしてるでしょ? 吉岡様だって、ちゃんと約束守ってるんだから、桜井様もね、言う事聞かないと……。じゃないと、キタローの奴、ヤク漬けにして、売り飛ばすって言ってましたよ?』
 坂上の言葉を聞き、隼人は眉根をぴくりと動かすと、それっきり無表情になってしまった。
 暫く人形のように、ただ口を動かす隼人が映し出され、そして最後の一口を隼人が飲み込むと、坂上の溜息が聞こえ、何やらごそごそと音がする。
 ぶつぶつと小さな声で呟きながら、坂上は注射器を取り出した。
『それじゃ褒美にこれ、打っちますよぉって……あっ!! バカ! 動くな!! あ、いや、バカじゃなくて……動いちゃ駄目ですよぉ、桜井様』
 隼人は注射器を見た途端、必死にもがき出す。縛り上げられた手首に薄らと血が滲み、それは掌を伝って零れ落ちた。痛々しいその姿に、俺は目を背ける。
 目の端に、坂上が隼人を押さえつけ、注射している姿が映る。
『ふー……ホントにもう、子供より手が掛かるな、桜井様は』
 またゴソゴソと音がして画面に視線を戻すと、坂上が隼人の手首を消毒していた。
 注射で打たれた薬が効いてきたのか、隼人はぼんやりと正面を見つめている。
 その視線は定まらずに宙を彷徨い、やがて、瞼を閉じて項垂れてしまった。
『あーあ……面倒臭ぇな……。じゃなくて、仕方ないですね、桜井様は……。ちょっと汚れちゃったんで、着替えますからね?』
 坂上は隼人を縛り付けているベルトを外し、椅子から下ろしてその場に寝かせると、着替えさせていた。
 吉岡に叱られるからなのか、何度も言い直しながら、隼人に対して坂上は、口調は面倒臭そうにしているものの、甲斐甲斐しく世話をしているように見える。
 先程の手首の所に、坂上は丁寧に包帯を巻いていた。
 そう言えば高校の時、坂上は隼人の事を親友だと、クラス中に公言していた。
 本当はコイツも、隼人と仲良くなりたいと思っていたのかも知れない。
 どう言う経緯で、吉岡の奴隷のようになっていたのかは知らないが、坂上も吉岡に利用された、哀れな奴なのかも知れないと思い、画面を眺める。
 綺麗に身支度を整えられた隼人は、そのまま眠ってしまったようで、動かなかった。
『吉岡様、桜井様はこの通り退屈してます。早くこちらに来てください』
 ぷつり、と、そこで再生は終り、静粛が訪れる。

 終始、隼人の声は聞こえなかった。多分、これは吉岡宛のビデオレターだ。
 隼人の事だから、意地でも声を出さなかったのだろう。吉岡を喜ばせない為に……。
 その後に開いたフォルダーも、皆、同じような感じではあったが、月日が重なるごとに隼人の髪が徐々に伸び、痩せ細って行き、そして段々薬に侵されて行く様が映し出された。
 最近の映像だろうか、隼人の眼は虚ろで、もう起きる事すら困難なように見えた。
 その姿が痛々し過ぎて直視出来ずに、途中から坂上の声だけを聞いていた。
 しかし、隼人が食事を拒否してる様子が、坂上の話かける言葉から聞き取れ、ふと顔を上げ、その様子を見る。すると隼人が、何か呟いたのが口の動きで分かった。
 また同じように坂上は、ノートパソコンを隼人の傍に置くと、溜息を吐く。
 虚ろだった隼人の目に光が宿る。そして一言『涼太』と、俺の名を呼び微笑んだ。
 それを見たら画面が歪み、掠れて見えなくなっていた。
 殆ど動けない状態で居るにも拘らず、それでも隼人は俺を護ろうと必死だったのだろう。
 ずっと俺の安否を確認しなければ、全てを頑なに拒否していたようで、坂上はブツブツ文句を言っていた。そして、吉岡はそんな隼人を心配していると、坂上は悲しそうな声を出し隼人に告げる。しかし、それには全く反応しなかった。
 皮肉な事に俺はこの映像で、隼人にこんなにも強く想われ、護られていたのだと知った。




                     ――to be continued――


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