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――時よ 止まれ――<11>

 
 月曜は出張の準備に追われていた。資料を手にし吉岡次長のデスクへと向かう。

「すみません、吉岡次長」
「お! 桜井君、どうした?」
「これなんですけど……」
「どれ? ああ、これはね……」

 互いに資料に目を通しつつ、メモを取っていた。すると次長が困ったような表情をしながら、仕切に万年筆を振っていた。

「どうしたんです?」
「あ、いや……すまない、インク切れだ……何か書くもの貸してくれないか?」
「えぇ、どうぞ」と、俺は前に次長に頂いた万年筆を差し出す。
「ありがとう……そうだ、これもそろそろインク切れそうだったんだ。悪いね、インク切れ寸前のものなんか渡しちゃって。これ、このまま借りていていいかな? 替えのが丁度切らしてしまって……家に帰らないと無いんだよ」

 いつも完璧な次長でも、たまにはそういう事もあるのだと思い、微笑んだ。
「えぇ、構いませんよ、どうぞ」
「そうか、悪かったね。また明日渡すよ」

 バツが悪そうにしている次長に「いつでも良いですよ」と、俺は微笑むとまた資料に目を通した。


 午後一から会議があり出席すると、そこに次長の姿は無かった。会議に参加するであろうと思われる、女子社員を呼び止め、事情を聞く。

「あ、桜井課長、いい所にいらっしゃいました。次長は急にお得意様に呼び出されまして、そちらに向かっております。次長から伝言を承っております。桜井課長、申し訳ありませんがプレゼンお願いできますか? と」
「あぁ、分かった。資料を渡してくれ」
「はい、こちらになります」

 一通り目を通すと、それが頭の中にイメージとしてすんなりと入ってくる。

(さすが次長の資料だ。解り易いな)

 途中、クライアントから質問を受けるが、その対処方も丁寧に書かれていて、俺は会議を滞りなく終える事が出来た。次長の能力の高さを、身をもって知る機会が出来て、良い経験をさせてもらったと思っていると、終業時間を迎えるメロディが、静かに会議室に流れて来た。

(もうそんな時間か。さて……と、出張の準備しなくちゃ……)

 会議の資料を片付けていると、女子社員が「ここは私がやりますので」と、声を掛けてきた。有難く受け入れ挨拶をすると、何故かその社員はしどろもどろに返事をして、視線を避けていた。何か気に障ることでもしたかと思いつつ、会議室を出ると喫煙ルームに向かい歩き出す。途中携帯を手に取り、涼太に遅くなるとメールを打ち込み送信した。
 喫煙ルームはもぬけの空で、俺一人だった。煙草に火を点けゆっくり一服すると、その場を後にする。

(んー、やっぱ喫煙者少ないよな……さっきの娘も煙草の臭いが嫌だったのかも……。涼太も吸わないし、もしかしたらあいつ、口には出さないけど嫌なんじゃないか……? 止めようかな……って止められれば苦労しないよなー)

 そんな事を思いつつ自分のデスクに戻り、出張のための下調べをする。
 パソコンに向かい、資料を入力していく。単調な作業が続く中、気が付くと他の連中は皆帰り、時計の針は22時を回った所だった。

(そろそろ警備員が巡回してくる頃だな……さて今日は帰るか)

 デスクを整理し、パソコンの電源を落とすとUSBメモリを抜き、スーツのポケットに入れる。と、丁度、巡回中の警備員がやってきた。

「お疲れ様です、遅くまで大変ですね」
「お疲れ様です、ありがとう。でも、もう帰りますよ」
「そうですか、じゃあエレベーター動くようにしますね」
「ああ、そうですね、お願いします」

 警備員は挨拶すると、警備室に戻って行った様だった。
 エレベーター前に立つと、今まで消えていた明かりが点る。
 地下駐車場に着くと、車に乗り込みエンジンを掛け、携帯を取り出し、開けた。
 涼太からの連絡が何も入っていない事にガッカリしつつ、次長から届いていたメールに目を通す。

<<お疲れ様です。会議代わってくれてありがとう、助かりました。こちらはお得意様が放してくれなくて、まだ帰れそうも無いです(笑)では明日、チケットと万年筆を渡しますのでデスクまで来てください。>>

(そっか、次長も大変だな……昼休み受付嬢達が噂してたけど、部長の尻拭いさせられても嫌な顔ひとつしないで、偉いよなぁ)

 俺ならキレるかも知れない、と思いつつ携帯を閉じると、駐車場を後にした。


 マンションの駐車場に着くと同時に、涼太からの着信音が鳴る。

「涼太? うん、どうした? ……そうか、今、俺も家に着いたところ。いや、もう少しで終わるんだろ? だったら待ってるよ。一緒に食おう。うん、うん、じゃ」

 涼太の声を聞いただけで、上機嫌になる俺は単純な奴だと思いながら、エレベータを降り、玄関の扉を開け、静まり返った廊下に明かりを灯す。
 俺は、涼太と朝まで一緒にいても、足りないくらいに感じるようになって、ほんの少しでも独りでいる時間が無性に寂しく思うようになっていた。

「……はぁ、こんなんで一週間も持つのかな……俺」

 独り、長い溜息をつきながら呟く。部屋に戻るとUSBメモリを差込み、パソコンの電源を入れると資料作りに取り掛かかった。

(海外出張から少しでも早く帰れるようにしないと、俺が参ってしまいそうだ)

 キーを叩きながら煙草に火をつける。
 集中して作業をしていた俺は、涼太の「――隼人? ただいま」と、いう声に驚き振り返る。と、何時帰ってきていたのか、涼太が部屋にいた。

「え? 涼太 早かったな!!」
「相変わらず、凄い集中力だね」と、クスッと涼太は笑う。
 俺は椅子から飛びあがるように立ち、涼太をそのまま抱き締めた。

「あ! ちょっ!! 今日ツナギのままだから汚れるって……」

 車のオイルの臭いが、涼太の匂いと混じり独特の香りを放っていた。

「じゃあ、そのまま直行する?」と、俺がバスルームを指差すと
「はいはい、冗談はそれくらいにして……まずは腹減ったよ」
 笑いながら涼太は、自分の部屋へと着替えをしに行ってしまった。

(冗談じゃなかったんだけどなぁー……)

 少しガッカリしつつもリビングへと向かい、涼太が朝のうちに用意してくれていた夕飯を出すと、レンジで暖めた後、それをテーブルの上に並べた。
 ビールを出し、涼太のお茶を出し終わる頃、着替えを終えた涼太が姿を現す。

「サンキュ、助かったよ、隼人」
「これくらいしか出来ないけどな」
「いや、本当に助かるよ。じゃ、飯食うか」

 茶とビールで乾杯し、食事をしながら「いよいよ明後日か……」と、俺がぽつりと呟くと涼太は「そんな……一生行く訳じゃあるまいし」と、笑っていた。
 その態度に少しムっとして「俺は、一週間もお前と離れていたくないんだよ」
 声を潜らせ、そっぽを向いてしまった。涼太はそんな俺をなだめる様に

「ごめんごめん、俺だって寂しいよ……でも仕方ないだろ?」
「まぁ……な」
「俺は、今日も明日の夜もずっと傍にいるし、出張から帰ってきても、ずっと隼人の傍にいるよ」と、涼太は優しく微笑んだ。


 二人で片付けを済ませ、一緒にソファに座ると、俺は涼太の肩を抱き寄せる。

「このまま時間が止まってしまえばいいのに……」
「ん……そうだね」
「涼太の傍から離れたくない」

 そっと唇を合わせると、涼太の柔らかい唇が心地良くて離したくなくなる。
 でも、涼太に伝えたい事がまだまだ沢山あるし、話したかった。
 ゆっくりと名残惜しみながらも離れると、涼太の大きな黒い瞳が俺を捉える。

「愛してる、涼太……この先どんなことがあっても俺はお前を守るから」
「……今日はやけにロマンティストだね?」

 くすっと涼太は笑った。黒髪がサラサラと流れると、俺はそれに触れながら

「そうか? いつも俺は想ってるけど……ただ言葉にするのは難しいと言うか」
「ん……そっか、ありがとう。俺だってずっと隼人の事は愛してるし、守りたいと想ってる。この想いは誰にも負けてないつもりだよ? それに……言わなくても隼人の想いはずっと俺に届いてる……今だって」

 そう言うと、涼太は俺の指先に自分の指を絡ませ、握ってきた。
 掌から伝わる温もりが、涼太の想いとシンクロしてるように感じる。

「だけど……あの時はまさか、こうなるなんて思ってなかったよ」

 くすっと涼太はまた笑う。

「ん? ああ、高校の時か?」
「そうそう。今だから言えるけど、むしろ初めは嫌ってたくらいで……」
「えぇ!? 俺は話すようになるまでは、何とも思ってなかったけど……」

 その言葉にショックを受け、項垂れると涼太は慌てて

「いや、違うんだ! ごめん、これは完全な俺の思い込みで……俺、当時人間不信だったし……あいつらと連るんでて、俺にちょっかい出してきてるのかと……。それにただモテたくて弓道部に入ったって思ってたし。あの部はなぜか女子に人気でね、隼人本人は知らなかったんだろう? お爺さんから小さい頃から習ってて、本格的に弓道がしたいからって高校選ぶ時に弓道部が有る所で、って言うのを聞くまで、そう思い込んでいたからさ……。隼人とちゃんと話すようになって気が付いたんだ。全部俺の思い込みだって……自分がいかに小さい人間か思い知って恥ずかしかったよ」
「そんな、涼太は……」
「いや、本当なんだ。隼人に出会えて俺は変われた。人を思いやる気持ちが持てるようになったんだ……ありがとうな、隼人」
「そんな、礼を言われるほどの事は……。俺はそんな大層な事はしてない。もともと涼太は良い奴だったよ。あの女がぶつかって文句言ってきた時も怒る事しなかっただろ? 俺ならぶち切れてたよ、きっと。まぁ、確かにコンビニで袋を突きつけられた時は、俺もムッとしたけどな。ただ、家庭の事情が複雑だったから、色々余裕が無かっただけだろう?」

 ふっと目を細め、涼太は優しい笑みを浮かべながら

「そういうところが……隼人はホント天才だよ。そうやって人を優しい気持ちにさせるんだ……。麻里も同じだった」
「あいつも?」
「うん。そんな二人に愛されて、俺は最高に幸せ者だよ」

 涼太は窓の外をふと眺める。と、大きな瞳を更に大きくさせて

「あ! 流れ星!!」と窓の外を指した。
「え? どれ? あ! まさか麻里のやつ、俺達に嫉妬して……」

 互いに顔を見合わせ、クスクスと笑った。

「でも、麻里が俺達をこうしてくっつけたんだ! 文句は無いだろう!」
 俺がそう言うと「そうだね、きっと麻里も喜んでくれてるよ」と、指を絡めたままそっと唇を重ねる。
「隼人……もう行こうか? あっち」

 涼太は頬を染めながら、バスルームを指差した。

「やっとその気になった?」

 ふと俺が笑うと、涼太は微笑み

「……隼人はそういうところも天才だよ、そうやって俺をその気にさせる」

 俺は涼太をソファから抱えると

「よし! じゃぁ行きますか? 俺の王子様」
「……ばぁか」

 そう言いながらも、俺の胸の中で大人しく頬を染めながら、抱かれている涼太が愛おしかった。
 本当にこのまま時が止まってしまえば良かったのに……。
 幸せなこの時が……ずっとこのままで――。



                        ――to be continued――


イチャイチャし過ぎだって……orz
まぁ、蜜月ってやつですね、仕方ない(笑)

余談ですが隼人の場面の見せ方って、漫画形式なんですよ。
なんか下書き状態の荒いやつで、セリフが横に書いてある感じで。
これを小説に興すのも大変なんですけど、EROシーン突入するといきなりフルカラーになるというね(爆)
しかも、涼太のあんなのやこんなのばっかり……orz
で、横でニヤニヤしながら見て「可愛いだろ?」って自慢して来るんですよね^^;;;
どんだけ変態なんだ、貴様って話ですよ、全く(笑)

それを涼太が発見して、慌てて走って来るとモザイクが掛かるとか(笑)
そして首根っこ掴まれて、隼人が退場するパターンを繰返します。
キャラが立つと、こんな恐ろしいことが脳内で発生するんですよ~(笑)

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――時よ 止まれ――<10>


 目が醒めて、時計を見ると昼の12時を回ったところだった。
 隣りでは涼太が、あどけない表情をして寝息を立てている。
 キスを落としたい気持ちをぐっと抑えて、起こさないようにそっとベットから降り、バスルームへと向かった。

 熱めの湯を浴びながら、ふと、たまには飯でも作ってみるかと思い立つ。
 身支度を整えると、キッチンへ足を運んだ。
 取りあえず傍にあった炊飯器を開けてみると、中は空だった。

(まずは米炊かなくちゃ……って米どこだ?)

 ゴソゴソとそこら辺を漁るが見当たらない。俺は諦めて、米を探してる途中に見つけたパンを焼く事にした。
 トースターのつまみを、パンの絵が付いている所に合わせて回す。
 冷蔵庫を開け、卵を取り出しフライパンに落すが、殻を割る時に力加減が分からず、黄身が全て壊れてしまっていた。

(……ま、オムレツにすればいいか)

 俺は中学の家庭科の授業を受けて以来、まともに料理をした事が無い。
 授業で作ったものは何だったか、取り合えず食えない物体が出来て、班の連中からブーイングを喰らった苦い思い出しか無かったが、涼太にばかり負担をかけるのは心苦しい。

 簡単なものくらい作れるように、これは慣れるしか無いと自分に言い聞かせる。
 オムレツくらいなら、何とか出来るだろうとタカを括っていたのがいけなかった。
 フライパンをガシガシと揺すってみるが、うまく卵が形にならず、苛立ちながら格闘しているとトースターがチンと鳴り、振り返る。

(おっと……取りあえずパン出すか)

 皿を食器棚から出し、焼きあがったトーストを出すが、表面が少し乾いた位で、焼けていなかった。

(あれ……? おかしいな、ちゃんと目盛り合わせたのに……)

 俺は首を傾げながら、もう一度パンを戻し、タイマーをセットする。
 すると、掛けっぱなしにしていたコンロから、黒い煙がもくもくと上がってきた。

(げっ!! ちょ!! 待てって!!)
「――あーーー……」
 溜息混じりにコンロの火を止め、フライパンを持ち上げると、異臭を放つ黒い物体がべったりと底にこびりついていた。

(仕方ない……もう一回………)

 フライパンをキッチンの洗い場に持って行き、力の限りコゲを落としていく。
 その作業は意外に楽しくて夢中になっていた。すると何かが焦げてる臭いが漂い始める。
 臭いの元を辿ってみると、今度はトースターから黒い煙が出ていた。

(なっ!! トースター!! お前もかっーーーー!!)

 慌てて皿を持ち出し、タイマーを止め、トーストを出そうと扉を開け、手を突っ込むと熱線に触ってしまったらしく、指がジュウと音を立てトーストされる。

「あちちっ!! 熱っちいっってっ!!」


 思わず声を上げると、涼太がその騒ぎに気が付き、キッチンへとやってきた。

「隼人……何して……って、えぇぇぇぇっ!!」

 キッチンの惨事を見て、驚くのと同時に俺に駆け寄ってきた。

「火傷してるじゃないか! 早く水で冷やさないと!!」

 蛇口から水を出すと、流水に俺の手を持って行き、涼太は

「これに暫く……最低20分はこのままで」と、心配そうに俺を見上げた。
「は? そんなに?」
「そうだよ! じゃないと火傷が深くなるんだ」
「そうか……涼太、何か、やけに詳しいな」
「ん、工場で事故を想定した訓練、結構してるし、消防庁のサイトとか、よく見るから」

 勉強熱心な涼太に感心しつつ、キッチンを見渡し

「ごめん、なんか余計な事したみたいで……」

 俺がしょぼくれていると、涼太はクスクスと笑いながら

「慣れない事するから……でも嬉しかったよ」

 そう言いながらキッチンを片付け始める。
 手を冷やし終えると、涼太は既に色々なものを作っていた。

「どれ、手見せて?」

 先程まで赤く火照っていた俺の指先は、他の指と変わらない色になっていた。

「暫く痛むかも知れないけど、水膨れは出来てないし。ん、大丈夫そうだね。さて、じゃあ飯にするか!」と、笑顔で最後の料理をテーブルに運ぶ。
 俺が作ろうとしていたものが綺麗に彩られて、しかも他に色々サラダやら、スープまでテーブルに置かれていた。それを俺がじっと見つめていると涼太は

「ん? どうした?」と、首を傾げる。
「いや、見事だなと思って……見惚れていたよ」

 すると涼太は、にっと笑い

「慣れだよ慣れ。俺は子供のころから家事してたからね」
「ホント尊敬するよ、俺なんて……」

 すると涼太は、俺にそっと唇を重ね、また微笑むと

「昨日、隼人は言ってくれたろ? 俺の作る飯は世界一だって。俺は隼人にこうして、飯を作るようになってたんだよ、きっと。隼人に旨いって言ってもらえると俺も嬉しい。だから全然苦じゃないんだ。それに隼人は隼人で、人が持っていないような才能を持ってるじゃないか。俺は隼人みたいに車の運転巧くないし、研ぎ澄まされた感覚も無いから、弓道なんか、出来ないよ。能力は人それぞれだろ?」

「ん……」

 ドリップしたコーヒーを俺に手渡すと

「さ、そんな顔してないで飯食おうぜ!! 腹減ったよ俺! それに……そんな顔されると昨日みたいにしたくなるだろう?」

 にっと笑う涼太が、とても愛おしい。今すぐにでもこの手に捕らえたくなる。

「そんな事言ってると、また逆襲にあうぞ?」

 互いを見つめ合い、クスクスと笑いながら食事を済ませた。
 そうしていつもと変わらぬ平穏な週末を過ごし、幸せに満たされた。
 しかし明日からは、涼太と離れなければならない仕事の日々が始まる。
 眠りに就いた涼太を腕に抱きながら、俺は長い溜息をついた。



                        ――to be continued――


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――時よ 止まれ――<9>―R-18―

 
 食事を終えると店を出てタクシーを拾う。車内に入るといつも通りに話しかけた。

「これからどうする? カラオケにでも行くか?」
「いや、ごめん、もう腹いっぱいで限界みたいだ……。今日はもう帰るよ」
「そうか、そうだな……帰ろうか」
「隼人、飲み足りなかったか? 家に確かまだビールあるけど……」
「いやいや、たまに外出したから行きたいところ無いかなと思ってさ」

 タクシーの運転手が、不審気にミラー越しから俺達を見ているのが、目の端に映った。そう言えばここら辺の近くに『ハッテン場』と呼ばれる、男同士の出会いの場があると聞いた事がある。それは明らかに疑っているような視線だ。俺は咄嗟に

「ま、たまには兄弟で飲むのも悪くは無いだろ?」

 涼太もその事に気が付いたのか、視線を俺に向けたまま運転手の様子を伺う。

「ああ、兄貴に会うの久しぶりだし。うちで続きするか?」
「ん、そうだな」

 途端に運転手は安堵の表情を浮かべ、前を向き「お客さん、どうします?」と、普通に話しかけてきた。
 涼太が運転手に自宅の住所を告げると、車はゆっくり発車する。
 やはり世間の目は冷たい。そんな視線に涼太が晒されると思うと、ゾッとする。理解のない者からしたら、俺達は異端者なのだろう。

 それでも……。この愛しいと思う気持ちを、誰にも邪魔されたくない。ずっと寄り添って生きていたい。
 車中、鞄を楯にしミラーに写らない角度で、そっと涼太の手を握る。
 涼太も車窓から外を眺めながら握り返して来る。
 その互いの指先を絡ませると、窓硝子に写る涼太の顔がほんのりと赤く染まった。


 マンションに着くと俺は待ち切れなくなり、涼太を抱えバスルームへと向う。
 すると涼太は一瞬戸惑った様子で「隼人……降ろしてくれ……」と、呟いた。

「ん……どうした?」
「俺……男なのに……こんな事されたら自信無くなる……」
「――そうだよな、ごめん……」

 先程反省したばかりなのに、もう、やらかしてしまった自分に嫌悪感が増す。
 俺は涼太を降ろすと、軽くキスを落とし、部屋に戻ろうとした。

「隼人! 待ってて!!」

 涼太は俺の腕を掴み制止した。

「違うんだ……その……俺、色々コンプレックスがあるから言い出せ無かったけど……体格や身長だって負けてるし……男としての財力を含めた力とかも……だけど……!! 俺だって隼人を守りたいと思うし、抱きたいんだ!!」

 そう言うと涼太は俺に覆い被さって来た。

「今日は俺が隼人を、気持ち良くさせてやるから……」

 積極的な涼太に、俺は一瞬戸惑ったが、涼太にばかり抱かれる側を強要するのは、確かに理不尽な話だ。まして涼太は妻子まであった身だ。
 涼太がそうしたいならそうさせてやろう……と思い、静かに目を閉じた。
 涼太は唇を重ねると、舌を絡ませながら俺の胸へと手を伸ばして弄ってくる。

 いつもの可愛らしい涼太とは違い、雄の色香を醸し出している。
 涼太と視線が合うと、何故か恥ずかしくなり視線を背けた。するとその反応を愉しむように涼太は、小さな俺の突起を部分を指先でなぞる。

 背筋にぞくぞくと、何とも言えない感覚が走り、思わず息を漏らした。
 涼太はそんな俺の反応を確かめながら、首筋から舌を這わせていく。

 絡み付くような愛撫に、俺自身も反応し始めると「隼人のそんな顔……初めて見た」と、俺をからかうようにクスッと笑う。

「バカ!! それはお前が……」

 途端に恥ずかしくなり、声を荒げてしまった。そんな俺を眺めながら涼太は

「そんな隼人も好きだよ……俺にされて、もうこんなにしてるじゃないか」

 涼太がこんなに雄々しくエロいとは思っていなかった。言葉で攻められるとこんなに恥ずかしいとは……と複雑な気分になる。多分、涼太も同じ思いをしていたのだろう。
 確かに抱かれる側は抵抗があると思いながら、涼太に身を任せる。

 ゆっくりと弄ぶように舌を這わせ、指先は内側の太腿を焦らしながら俺自身の先端へと辿る。涼太の愛撫が妙にいやらしくて、段々息使いが荒くなっていく。それを涼太は愉しみながら俺の顔を覗き込んでは、雄の笑みを浮かべる。恥ずかしさも極限に達した俺は、思わず目を伏せた。
 しかし、視覚を閉ざしてしまった事で、ダイレクトに感覚が伝わり、一気に快感が押し寄せると、次第に恥ずかしさよりも快感に押される。

 指先で円を描き俺の先端をなぞりながら、掌で俺のを包み込む感覚がした。
 しかし、何か違和感を覚え、目を薄く開けて見ると、涼太自身も俺のに重ね合わせている。涼太の先端からは透明な液体が出て、ぬるりとした感触が俺のに触れ、擦れるとゾクゾクと背筋から快感がこみ上げてくる。

(うわわっ!! 何だこれ!! 涼太いつのまにこんな技……)

 驚きながら涼太を凝視すると、涼太は照れくさそうに

「……俺だって隼人がどうしたら、気持ち良くなってくれるか考えてるんだよ?」

 首を傾げながら俺を見つめる姿が、堪らなく愛おしい。抱かれる側とはまた違う魅力で、俺を翻弄する。やはり、無理強いしていたのかと、やや切なくなったのも事実ではあるが……。
 このまま涼太の好きにさせてやろうと、再び目を閉じ身を任せる。
 次第に涼太の息も上がり、堪らなくなってきたのだろう、ローションで濡らした指先を俺の後ろへと忍ばせてきた。

「隼人のもっと啼く声が聞きたい」

 しかし涼太の指先が俺のそこを刺激するほどに、快感より痛みの方が増すばかりで、次第に俺自身は威力を失って行った。するとそれを察した涼太は
「隼人……ごめん……痛かったよな?」と、優しく言うと俺自身を咥えた。
 涼太の温かい体温が伝わり、次第に回復していく。絶妙な舌使いや、テクは俺以上かも知れないと自失してしまいそうだった。
 暫くの間、丹念に俺のを愛撫していた口許が、甘い息を漏らす。

「……隼人、俺……こうされるの……結構、好き……なんだよ?」
「……え? あ、あ……そうなの……か?」
「うん……。今まで、その、されてばっかりだったから……。隼人と俺は、ちょっと違うみたいだったし」

(なるほど、ちょっと違っていたのか……。って言う事は、それを教えるため……? いや、だって、涼太が抱きたいって言うんだから……違うんだろうな)

 そんな事をぼんやりと考えていたら、強い刺激が与えられ、俺は身体を反らせた。
 涼太はそのまま俺のを扱きはじめ、快感が頂点に達してしまった俺は口腔内に白濁を散らしてしまった。

「ご、ごめん、涼太……」
「――隼人のってこんな味なんだ」

 涼太はそれを飲み込んでしまったらしい。口の端を拭う姿が、妙にいやらしく写る。

「いや、その……」

 俺が目を泳がせていると、涼太はクスッと笑い

「隼人……隼人だってこんなに可愛い」
「――ごめん、もう言わないよ……」

 涼太に責められてる気がして謝ると、涼太は首を横に振り

「いや、違う……。分かったよ、隼人の気持ち……」
「うん……、え?」
「俺、勘違いしてた……隼人に可愛いって言われる度に男らしくないとか、そう言う風に取ってしまっていたけど……これは違うって」

 にこっといつものように涼太は微笑むと

「隼人の可愛いは、愛しいなんだって、そう思ったよ」
「涼太……」
「こっちこそ、ごめん……変にイジけてた」

 穏やかな笑顔を携えて、涼太は俺に抱きついてきた。
 涼太を抱き締めると、胸の奥からふつふつと愛おしさが込上げてくる。
 涼太にキスを落としながら

「俺はお前のものなんだから、好きにして良いんだぞ? お前まだ……」
「ん、それじゃ好きにさせて貰う!」

 悪戯な瞳をして、にこりと微笑むとまた俺のを咥える。
 俺も覚悟を決めて、涼太を受け入れようと思い、快感に身を委ねる。
 すると、一旦俺から離れ涼太は、自分の窄まりに俺のを押し当てると、ゆっくりと腰を降ろしてきた。
 一瞬、何が起こったか理解出来なかった。

「ンあっ……隼人の……凄っ……」
「え? えっ? 涼太……いいのか? 挿れちまって……。無理しなくて良いんだぞ?」

 涼太は首を横に振り
「隼人のが欲しくて堪らなくなった……。俺をそういう風にした責任は、取って貰うんだからな……」と、顔を紅潮させ恥ずかしそうに言う。

 そんな涼太が愛しくて堪らなくなり、頭を引き寄せ唇を重ねた。

「ん……ン」

 舌を絡ませると、涼太の雄は大きく脈打って、濃厚な蜜を滴らす。どうやら本当に、俺がそういう身体にしてしまったらしい。
 そうと分れば俄然、愉しませてやりたくなる。

「今日は寝かせない……一週間も逢えないんだからな……。涼太が満足するまで可愛いがってやるよ」
 耳朶を啄ばみ、薄紅の尖りを触れるか触れないかの感覚で、刺激を与える。
「ふ……ぁ……」

 いつもの愛しい啼き声が、俺を昂らせて行く。最奥まで一気に突き立ててやると、涼太は身体を小刻みに震わせ、白濁した液体を放出した。

「涼太、これからが本番だけど?」

 俺が意地悪く言うと、涼太は顔を紅潮させ、恥ずかしそうにしながらも回復させていく。

「や……、そん……な……」
「だけど、ここは期待してるよな?」

 先程俺が施された事を、今度は指先で再現してやると背中をわななと震わせる。

「――ん、あっ……ば……かぁ……」

 その啼き声を聞いた途端、俺の心臓は破裂しそうなほど鳴り響く。頭から湯気が出そうな勢いだ。下手したら鼻血が噴出してしまうかも知れない、と思うほどだった。

(ばかぁ……って!! 今までこんな超エロイ声、聞いた事無いぞ? それに目が蕩けて、ぽわんとしちゃってるし!! うわ! どうしよう、超可愛いんですけど!! ってか、本当に弱いんだな、ここの部分……。うん、今日はいい情報貰った)

 上機嫌になり、唇を重ね涼太から一度離れる。名残惜しそうにわななく身体を丁寧に洗うと抱き上げ、一旦バスルームから出ると、俺の部屋に戻り朝まで互いを貪るように激しく愛し合った。


 何度肌を重ねようと、この愛しさは表現できない。
 それほどまでに、俺は涼太が愛しい。涼太もそう想っていてくれているのだろう。
 幸せな時間が二人の中を流れている。共有できる時間を――。



                      ――to be continued――

リバかと思いきや、ただの襲い受けだったという(笑)
ってか……お前らちょっと自重しろよ(爆)
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――時よ 止まれ――<8>

 
 マンションに着くと既に涼太の車が駐車場に置いてあり、俺は荷物を取り出し部屋へと急ぐ。その足取りもいつもより軽く感じた。ドアノブに手をかけると鍵が開いていた。

「ただいま!」

 すると廊下の電灯が灯り「おかえり」と、笑顔で涼太が出迎える。
 あまりの可愛さに、涼太を抱き締めたくなる。だが、衝動をぐっと堪えた。帰りっぱなからそんな風にしたら、涼太は引いてしまうかも知れない。本来、涼太はいきなりイチャ付かれるのは、あまり好きではないようだ。いつも、時間をかけてゆっくり話をしてから、ベットインする。

 確かにいきなり襲ったりしたら、ただの野獣と思われかねない。前に嫉妬したお陰で、事を急いてしまった事があった。その時の涼太は、明らかに困惑していた。そんな失敗はもう、したくない。
 だが上機嫌だったせいで、顔が緩んでいたのだろう、涼太は俺を見上げてクスッと笑う。

「隼人、今日は本当に機嫌が良いね?」
「うん、まぁね。その話は飯でも食いながら話すよ」
「じゃあもうタクシー呼ぼうか?」
「そうだな。じゃあ着替えて来るよ」

 俺は自室に入ると着替えをし、スーツをハンガーにかけ、近くの棚に引っ掛けるとそのまま身支度を整えた。

(明日クリーニングに出すし、いいな、このままでも……)

 リビングに行くと涼太も支度を終え、ソファに腰かけ、テレビを眺めていた。
 俺に気が付くと「あ、あと十分位で着くってさ」と視線を向けた。

「やっぱ週末は混むんだなー」
「それにしても隼人の私服姿って、久しぶりに見た気がする」
「そうか?」
「いつもスーツか、下着じゃん」

 クスクスと笑いながら涼太は俺を見上げた。

「お前……それじゃ俺が他に服持って無いみたいだろー」

 そう言いながら涼太の横に腰かけ、手を繋ごうと腕を伸ばしたら、車のクラクションの音が短く二回鳴った。
 ちょっと甘い雰囲気になりかけてたのに、と多少ガッカリする。

「タクシー、来たみたいだね。行こうか」

 涼太のその声に釣られ、窓から下を確認すると、タクシーがハザードをあげ道路に止まっていた。

「そうだな。行くか」

 その場を立ち、玄関に鍵をかけエレベーターに乗り込み下に降りると、涼太はタクシーに声をかける。

「あの、予約入れた蓬田ですけど……」
「はい、蓬田さんですね? どうぞ!」

 タクシーに乗り込むと行き先を告げ、車内のラジオの音に耳を傾ける。俺は涼太に触れたくて仕方がなかったが、密室とは言え人目がある。いつ気付かれるとも分らない場所で、それはあまりにも無謀だ。
 手にしていたセカンドバックをモジモジと弄びながら、悶々としているうち目的地に到着した。


 タクシーの支払いを済ませ店に入ると、香ばしい焼肉の薫りが漂う。

「おぉ、混んでるなー」
「ああ。家族連れが多いな……」

 少し寂しげな表情を浮かべる涼太に俺は「…別の店に行こうか?」と、言うと笑顔で

「大丈夫、ここで良いよ。それにしても腹減って来るなぁ、この匂いは」

 涼太が言い終わるか終わらないの内に、俺の腹の音がぎゅるると豪快に鳴り響く。

「……だな」

 二人で顔を見合わせ大笑いしてしまった。暫くすると店員が来て席を案内された。
 注文を済ませ、飲み物が先に来ると乾杯をする。
 涼太も俺に合わせてくれて、瓶ビールを注文し、それをグラスに注ぐと軽く乾杯して、一口飲み、焼肉を鉄板に並べた。

「旨いな、俺も少しはアルコールに慣れて来たのかな」

 涼太はアルコール自体弱いが、味は嫌いではないらしい。最近は少しずつビールも呑むようになって来た。それは俺の晩酌に付き合うために、努力しているようにも見える。健気でいじらしい涼太が愛しくて仕方がない。
 帰ったらどうしてやろうか、などと考えていた。
 ニヤニヤと顔が綻ぶと、それに気が付いた涼太がふと目を細める。

「ところで、何があったんだ?」

 変な下心を悟られなかったかと、一瞬、焦った。が、すぐにその事じゃないか、と気が付く。元々食事に誘ったのは、海外出張の話をする為だ。

「ん? ああ、……実は結構大きなプロジェクト手伝う事になってさ」
「へぇ! 良かったな!! うん、隼人……やっぱ凄いなぁ……」

 涼太はニコニコと微笑み、上機嫌に焼けた肉を俺の皿に盛る。
 自分の事の様に喜ぶ姿がとても愛しく、その場で抱き締めたくなる衝動を抑えながら

「ん……ありがとう、でも」
「でも?」
「……来週から上司と海外出張する事が決まったんだ」
「そっか……で、どれ位滞在する事になるんだ?」
「予定では一週間」
「そっか……うん、まぁ土産、楽しみにしてるよ」
「ん……何がいい?」
「別に……隼人が選ぶ物だったら……」

 少し間を置いてから、涼太は小さい声で

「その上司って……前に言ってた人か? なんかこの前、孫が生まれたとか……」
「ああ、その人は違う人。吉岡さんって知らないよな? 俺の3つ上で、来春、部長になる人なんだ。あの歳で部長になるなんて、異例も異例の切れ者だよ。俺もあんな風になれたらなぁ」
「……他には? その人だけ?」
「ん? そうだけど……?」

 すると涼太は少し不機嫌そうになり、グラスのビールを一気に飲み干した。

「おい! 大丈夫か? そんなに一気に飲んで……」

 涼太の顔がみるみると赤くなって行く。俺は小さな声で、上司に対して嫉妬しているかと思い、弁解する。

「吉岡さん男だし、彼女居るし! って、いや、そうじゃなくて、他の誰にも興味ないから……」

 それを聞いた涼太は、首を横に振り

「違う、確かにそれもあるけど……。その人、30手前で部長になるんだろ? そんな人と一緒に仕事が出来る隼人だって、凄いじゃないか……。でも俺は凡人だから……同じ男なのに、どうしてこんなに差があるのかと思う……」

 フっと自嘲したように笑うと、俯いてしまった。
 涼太は男として強いコンプレックスを抱いているのだろう。だから可愛いと言うと、悲しげな表情をするのだと気が付いた。女っぽいとか、そう言う意味では無かったのだが、涼太の心を傷つけたのは確かだ。それに、ベットでは抱かれる側にしてしまった。それも原因ではあるのだろうと思う。
 俺は本当に鈍い奴だと反省した。でも、涼太は涼太の凄い所がある。
 今まで言葉にした事は無かったが、涼太には尊敬の念がある事を口にした。

「何言ってるんだ? 涼太だって凄いじゃないか。働きながら勉強して整備士の資格取ったし、車にだって詳しいだろ? 俺は簡単な仕組みしか理解してないから尊敬するよ」
「隼人だったら、あんなのすぐ覚えるよ……」
「仮にそうだったとしても、俺は物を造ったり直したりする才能が無い。涼太は人とセンスが違う。だから会長さんだって目をかけてくれてるんだ……それに……」

 俺は身体を乗出し、涼太にだけ聞こえるように言う。

「お前が作る飯は世界中で一番だ! 格別だよ!!」

 すると涼太は、酔った火照りとは別に顔を赤くし

「そんな事……誰だって出来る……」
「いや、誰も真似出来ないよ、あのセンスは」

 涼太は俺をマジマジと見つめて「……本当にそう思うか?」と、真偽を探っているような口調で問う。

「あぁ、お世辞でも何でも無い。涼太は物を創り出す才能があると思う」
 涼太は俺を見上げると目を細めて、照れ隠しなのか肉を口の中に放ると、俯き加減で嬉しそうに微笑んでいた。




                       ――to be continued――


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――時よ 止まれ――<7>

 
 次の日、涼太に会社まで送って貰うと、地下駐車場に行き、昨日の荷物を取り出す。
 そこに、吉岡次長も姿を現した。

「お早うございます」
「お早う! 昨日は本当に助かったよ」
「いえ、俺の方こそ……抜擢して頂いて光栄です」
「昨日、一応専務にメール入れておいたが、確認してくれてるか……ま、後で顔出すけど。今日はそのまま法務局行ってパスポート取りに行って良いよ、桜井君」
「はい、それじゃそうさせて頂きます。会議には間に合うようにしますので」
「ああ。どんな企画を持ってきたか楽しみだよ」

 俺はそのまま車に乗り込みエンジンを掛けると、次長に会釈し、駐車場を後にした。
 用事を済ませ、腕時計を見ると、昼休みも半ばを過ぎたころだった。

(腹減ったな……でも食事に行ってる時間は無さそうだ……)

 公園の横のパーキングに車を止め、向かい側にあるコンビニへ行こうとしたが、俺はふと今朝、涼太から手渡された荷物を思い出し、開けてみると保冷剤に包まれた弁当箱が入っていた。

(あいつ……昼、暇だったら開けて見ろなんて、ちゃんと弁当だって言ってくれないと、食えなかったかも知れないだろうよ……あ? ああ、そっか。それであんな照れたような顔してたのか……。鈍いなぁ、俺……)

 胸の奥がじんと熱くなる。
 どんな時でも俺の体調に気を遣い、手料理を作ってくれ笑顔を絶やさない。
 穏やかで優しい奴だ。女だったら確実にモテていただろう。
 そう考えると、俺なんか相手にもされなかったかも知れない……。

 この間の奴だって、涼太に相当入れ込んでいた。もしかしたら他にそういう奴が男女問わず居るかと思うと、気が気じゃない。
 涼太が俺を選んでくれて、本当に良かったと思いつつ、手製の弁当を頬張った。
 涼太独特の味付けが、俺の食欲を満たす。

(はぁー……あいつの手料理以外は食えなくなりそうだ……美味すぎる)

 幸福な気分に包まれながら空になった弁当箱を仕舞うと、腕時計で時間を確認し、煙草に火を点け車を走らせた。


 会社に着くとちょうど昼休みが終了し、社員たちがそれぞれの配置についていた。
 そこに吉岡次長が現れる。

「桜井君、パスポートは取れたかい?」
「えぇ、お陰さまで。ありがとうございました」
「そうか、っと、そろそろ会議の時間だ。行くか」
「はい。でもその前に目を通して頂けませんか?」

 俺は鞄から企画書を取り出し、次長に手渡す。次長はそれにざっと目を通すと、ぽんぽんと紙面を叩き「流石だ。非の打ち所が無いよ」と笑顔で返してよこした。一応、自信はあった企画だったが、次長にそう言われると、太鼓判を押されたのも同然だ。
 ほっと息をつき、次長に視線を合わせる。

「あ、そうだ。君に渡そうと思っていたものが……」

 次長は、そう言うとジャケットのポケットを弄り、重厚な趣の万年筆を、俺の胸ポケットにしまうと、肩を軽く叩きながらニコっと笑った。

「そんな安物のボールペンより、数段使いやすぞ」
「え? でもこんな高そうなもの……」
「君にはこれから世話になるからね、俺のお古で悪いけど、物は良いやつなんだ。それに課長たるもの身なりは勿論だが、持ち物にも気を配らなくては……な?」

 確かに次長の言う通りだった。

「すみません、それじゃ遠慮なくお借りします」
「いやいや、受け取ってくれよ。俺の気持ちだ」

 にっと笑うと次長は会議室に向かって歩き出した。その後を俺も続く。



 会議を終えると終業時間が間近に迫っていた。

「うん、見事なプレゼンテーションだったよ! 桜井君」
「ありがとうございます」

 廊下を歩きながら次長は自販機を見つけると、ドリップ式のコーヒーを2つ購入し、ひとつを俺に手渡した。

「お疲れ、後は他の連中に任せれば良いな……。ところで悪いんだが、出張の予定が早まってしまってね、専務の我侭にも困ったものだよ。来週の水曜からなんだが、大丈夫かな?」

(え? まだ涼太に話してない上に、予定が早まったのか……)

 俺は、動揺しながらもミニパソコンを取り出すと、予定表を呼び出した。

「……ええ、特に大きな打ち合わせは無いみたいです」
「そうか、まぁ雑用は他の連中に任せても大丈夫だ。それじゃ頼んだよ! 来週からよろしくな!」

 いつもの調子で、俺の肩をポンポンと叩く。

「はい、こちらこそよろしくお願いします」

 次長は紙コップをゴミ箱へ捨てると立ち去ろうとした。俺は慌てて引き止める。

「あ、すみません吉岡次長! 滞在期間はどの位に……」
「お!! 悪い悪い!! 肝心なこと話してないよ! ん……予定では一週間だが、現地の調査の進行によっては遅れることも考えられる。着替えは多めに用意してもらった方が良いかも知れない」
「はい、わかりました」
「それじゃ、よろしくな」

 颯爽と立ち去る姿に、俺は上司としての吉岡さんをとても尊敬していた。余裕をもって人に接する事ができる器が羨ましかった。
 いつか自分もあんな風に振舞えるくらいになりたいと。

 終業時間になり帰り支度を終えると、俺は地下の駐車場に降り車に乗り込む。
 煙草に火を点け一服を終えると、携帯を取り出した。
 週末だし、涼太も今日は早いはずだ。たまには外食も良いだろう。

 いつもあいつに作らせてばかりじゃ悪いし、かと言って俺が作ると未知の物体が出来上がるだけだ……それに今日は、何より気分が良い。この分だとすんなり海外出張の話も出来るだろうと思い、携帯を開いた。
 画面に目を落とすと、既に着信履歴があり、メールも届いていた。

《今日は何食べたい? 買い物して帰るから》

 メールが届いた時間を見ると十分位前だった。
 携帯にマイクをセットし、車を駐車場から出すとリダイアルする。

「あ、涼太? 俺も今帰る所……いや、今日は何処か食いに行かないか? うん、焼肉なんか……あぁ良いな! あそこ旨いし……うん……あ、そうだ、涼太もたまには飲むの付き合ってくれよ。今日ちょっと良い事あってさ……うん、うん、それじゃまた後で」

 涼太の声を聞くだけで自然に顔が綻ぶ。
 ヤバイ位惚れてるのが自分でも分かるが、この想いは止まらなかった。



                     ――to be continued――


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――時よ 止まれ――<6>―R-18―

「挿れるぞ……涼太」

 耳朶を啄ばみ、甘い声で囁いてやれば、焦点の合っていない黒目が更に色濃くなる。それだけで、涼太が俺を欲している事を悟るには充分だ。

「ん……、き……て……?」

 舌足らずに誘う色香に、思わず溺れそうになる。俺は息を整えると涼太に被さり、そっと可憐な窄まりに俺自身を押し当てる。

「ふっ……んん」

 顔を紅潮させながら、息遣いを荒くし、力を入れる。

「まだ力、入ってる……。痛いのか?」

 その問いに涼太は首をふるふると小さく振る。

「ちが……、隼人が……すごい……熱い、から」

 何度繰返しても、最初はやはり違和感が拭えないのだろう。俺は涼太の緊張を解すように、胸の小さな尖りを刺激する。

「ふぁ……ああ……」

 同時に涼太の雄に手を伸ばし、鈴口を焦らすように弄ぶ。

「あ、あ……あ……あ……」

 甘い息が零れるのと同時に、涼太の窄まりは徐々に俺を受け入れる。相変わらずの狭さを覚えながらも、傷付けないよう細心の注意を払って、何度かローションを足していく。
 俺の先端を受け入れたところで

「息吸って……ゆっくり吐いて」と、吐息でくすぐるように囁くと、涼太はそれに従い深呼吸した。
 それと同時に涼太の緊張した蕾は、ゆっくりと花を咲かせる
 俺はそれに合わせ、根元まで一気に押し込むと、涼太は身体を反らせ身悶えする。

「ぅ……あ……ああ……ふ、あ……」

 秘めた所がひくついて、俺のを全て淫欲に飲み込むと、涼太の中はとても熱く、俺のに吸い付くように絡み付いてきて、今にも絶頂を迎えそうになった。 

「っ……」

 俺は息を吸い込み下半身に力を入れると涼太は「――もう……イキそう? 我慢しなくていいから……」と、俺の辛そうな表情を察したのか、潤んだ大きな黒い瞳で見上げた。

「甘いな……これからだ」

 涼太に悟られてるのが何だか悔しくて、強がってみる。
 薄らと笑みを浮かべるその唇を塞ぎ、涼太の口内を支配すると溢れる吐息と同時に中も熱を帯びて、根元が締め付けられる。
 涼太も感じてくれてる事が嬉しくて、唇を解くと耳たぶを軽く噛み、外耳に舌を這わせる。 

「ん……く……ぅ……」

 涼太の艶かしいその声だけで、正直最後まで持つか自信が無かったが、ゆっくりと腰を揺らした。

「はぁ……あ……んんっ……」

 いつにも増して、可愛く啼く涼太に俺は、はち切れそうになる。
 気を紛らわす為、違うことを考えてるうち、車の中での会話を思い出し、質問する事にした。

「なぁ、どうして……中学の時のダチに、会わせてくれなかったんだ?」
「―――――…………」
「なぁ、答えてくれよ」
 すると涼太は、色香が漂う口元から、息も絶え絶えになりながらも
「だっ……て、会わせたら……俺より仲良く……なるかも……って」
「……え?」
「隼人……凄く、そのバンド……好きなんだろ……?」
「あ、ああ……好きだよ?」
「……隼人が――俺よりも……そいつと仲良くなるのが……嫌だったんだ……」

 その言葉を聞いたら、嬉しくて堪らなくなり、愛しさが後から後から溢れ出して来る。

「――他の誰も要らない、お前だけ……。涼太だけ愛してる……」

 涼太は嬉しそうに微笑むと、唇を重ねてきた。激しく舌を絡ませると息も絶え絶えになる。身体の向きを変えるように両手で抱えながら促すと、それに従い、無駄の無い整った背面を俺に向け、黒い髪をしなやかに揺らす。
 右手で涼太の屹立を掴むとゆっくりと手を動かした。
 先程まで、勢いを無くしていたそれは徐々に張り詰めて、勢いを増して行き、先端に雫を溜めはじめる。

「ああぁ……ん……んん……んくっ……」

 震えながら雫をこぼし、俺の手をゆっくりと濡らしてゆく。

「気持ち良いか? 涼太……」
「き……もち……いぃ……もう……俺……」

 途切れ途切れに、息を切らしながら答える涼太の上擦った声は、絶頂を間近に控えているのを察するには十分だった。俺は右手に力を篭もらせると、先端から中ほどにかけて包むように握り締めた。

「ふっ……ああ……んっ……」

 身体を反らせながら喘ぐ涼太に後ろから勢いよく腰を打ち付けると、涼太のそれは根元から太く硬くなっていく。

「ふっ……あ、ああああああ…………」

 身悶えしながら必死に耐えている姿が愛おしい。快感に身を委ね、惜しげもなく啼く声は俺の欲望をそそる。
 水面を小さくかき混ぜるような音と、乱れる涼太の声が淫らで、俺も次第に根元から熱いものが込み上げて来た。

「涼太……イクぞ……」

 涼太はコクコクと頷くだけで、息を飲み込んでいる。俺は右手の力を緩めた。
 すると涼太は腰を跳ね上げ、全身が痙攣したように震えながら

「っっ……あっっ!! いくっうっ……ああああっ!! ――っっ!!」

 ひと際高い声が、バスルームに木霊すると、熱い液体が俺の手に勢い良く飛び込んできた。身体を小刻みに震わせながら、涼太は何度も身体を反らせる。
 同時に俺も涼太から離れ、白濁した体液を散らした。
 二人とも息を荒げながら抱擁し、互いの唇を重ね合う。
 色香を放つ涼太の耳元で、そっと「愛してる、涼太」と、囁く。
 涼太は潤んだ瞳で見上げ、俺に擦り寄ると小さく何度も頷いていた。
 それはまるで、猫が愛情表現している様にも思えて、ふっと微笑む。


 バスルームを出ると涼太は「ごめん……仕事あるのに……」と、申し訳なさそうに俯いていた。
 俺は涼太の頭を撫でると笑って見せ

「大丈夫。俺タフだから! 明日早いんだろ? ゆっくりお休み」

 軽く涼太の唇に自分の唇をちょんと当て、部屋に戻った。
 チョッと頑張り過ぎたと思いつつ、机に置いてあった煙草を手に取り、火を点け天井を仰いだ。漂う煙を目で追いつつ、溜息を漏らす。

(はぁー……どうすっかな、言い出しにくいよな……やっぱ、滞在期間長いんだろうなぁ)

 俺は、涼太に海外出張が決まったのを、どう切り出して良いか迷いながら、パソコンの画面に目を落とす。

(まずはこれを片付けてからだな)

 資料を再確認した後、補足的な部分を打ち込み、それが終わると、再来週に控えた出張のためのパスポートの申請手続きの仕方を調べる。

(なるほど、これは明日以降だな……)

 パソコンの電源を落とし、腕時計を見ると既に午前1時を回っていた。
 一旦、部屋から出てリビングに向かい、キッチンへと足を運ぶ。


 冷蔵庫から缶ビールを取り出し、視線を移すと、先程までは何も無かったテーブルの上におにぎりが2つ置いてあった。

(涼太のやつ……自分だって疲れてるくせに、本当に甲斐甲斐しいというか……)

 心の奥から暖かい気持ちが湧き上がる。
 その手製の握り飯を口に運ぶと、口いっぱいに味噌と紫蘇の香が広がる。

(うまっ!! あのスナックのツマミなんかよりずっと美味い! さすが涼太だ)

 ホクホクとしながら食事を終えると、ビールを流し込んだ。
 先程まで疲れ切っていた俺の身体は、次第に体力を戻していく。

(ん、これも涼太のお陰だな……。さて、寝るか)

 欠伸(あくび)をしながら涼太の部屋の前を通ると、扉から明かりが漏れている。

(あれ? まだ寝ていないのか?)

 ドアをノックしてみるが反応が無い。
 そっと扉を開けて中を覗くと、涼太は探し物の続きをしていたのであろう、ダンボールに上半身を預けたまま眠り込んでいた。

(あらら……このままじゃ風邪引くな……。それにしても可愛い寝顔だよなぁ)

 そっと涼太を抱えるが、相当疲れているのだろう、気が付かず寝息を立てている。
 そのまま自分の部屋に連れて行くと、ベットにその身を横たえた。

(可愛いなぁ涼太……可愛いって言うなって言うほうが無理だよな……こいつは自分がどんなに可愛いか知らないんだよな、きっと。それにしても……また襲いたくなる……うう、ガマンガマン……)

 俺は涼太に軽くキスすると隣に身を置く。
 背中から涼太の温もりが伝わってきて、とても心地良く、俺は直ぐに深い眠りへと落ちて行った。




                      ――to be continued――


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――時よ 止まれ――<5> ―R-18―


 涼太はエンジンを止めると、キーをロックしながら

「明日、会社まで送ってやるよ。俺さ、朝早いんだ」
「また偶然?」

 意地悪に質問してみせると涼太はにっと笑いながら「そ、偶然!!」と、ジーンズのポケットに車のキーを仕舞い、視線を俺に投掛けた。
 クスクスと笑いながら、いつものようにエレベータを降り、我が家に辿り着くと涼太にキスを落とす。

「ありがとう、助かったよ」
「ん? どういたしまして」

 俺は、明日の会議でプレゼンする資料を再確認しなきゃ、と思い、深い溜息をつく。

「悪いけど、少し仕事持ってきたんだ。先に休んでていいぞ」
「いや、俺もやることあるから起きてるよ」
「そうか? それじゃまた後で」

 そう言いながらまた涼太に唇を重ねた。

「ん、待ってる……。まだ話したい事もあるし」

 顔を赤らめて恥らう涼太が、愛しくて堪らなくなる。
 しかし、先に仕事を片付けないと落ち着かないと思い、我慢して涼太から離れた。
 互いの部屋に戻ると俺はスーツを脱ぎ、パソコンを立ち上げ、USBメモリを差込み企画書を呼び出す。すると涼太の部屋から何やらドサドサと物凄い音がして、俺は急いで部屋を飛び出し、涼太のところへ向かった。

「どうした!?」

 部屋の扉を開けると、ダンボール箱が散乱していた。その中に埋もれ涼太が顔を出す。

「あ痛たた……あ、悪い!! 邪魔した?」
「いや、そんな事より怪我は無いか?」
「ああ、大丈夫。それよりごめんな、邪魔して」

 涼太は照れ笑いをしながら、散乱したダンボールを片付けていた。

「もしかしてさっき言ってた……」
「うん、気になっちゃってさ。あれどこ行ったかなぁ……」

 一つ一つのダンボールを丁寧に調べている涼太に

「そんなのいつでもいいよ、明日早いんだろ? 休めよ」
「……隼人が仕事終わるまで、探してるよ」

 顔を赤らめる姿が愛おしくなり、俺は涼太を抱きしめた。

「隼人、仕事しないと……ごめん、もう邪魔しないから」
「そんなの後でいい。今すぐお前が抱きたいんだ」

 俺は涼太に唇を塞ぐ。
 暫く戸惑った様子だった涼太も反応し、舌を絡ませてきた。互いに混ざる吐息に、次第に鼓動も欲望も高まって行く。
 耳元がジンジンと煩いくらいに、自分の鼓動を木霊させる。

「ん……ふ……んん……」

 涼太の息使いが段々と荒くなり、屹立が激しく脈打ってるのが俺の腹に当たった。
こんなにも求められていると、俺は嬉しくなってしまう。

「ごめんな、待たせて……」

 涼太は顔を紅潮させながら首を横に振った。そっと首筋に舌を這わせると小刻みに震える。その姿が、俺を苦しいほどに捉える。永遠に離したくない、愛しい恋人が見せる仕草は、極上の媚薬だ。
 シャツのボタンをはずして行き、胸の突起した部分を舌で転がすと「はっ……」と小さく溜め息のような、甘い吐息と喘ぎ声を漏らした。
 涼太のそれは苦しそうに俺の腹のところでもがいている。早く開放してやりたくて、ベルトを外しファスナーを下ろすと涼太自身は勢いよく反り返っている。甘い蜜を滴らせるその姿は、俺の理性を吹き飛ばしてしまう。

「あ……や……っ」

 声を上げ、恥ずかしそうに俯く涼太に

「愛してるよ、涼太……ここも、涼太のものなら全部」

 耳元で囁きながら、指先で下腹部からなぞるように、敏感になっている先端に触れる。
 下着の上から、焦らすように下から上へとなぞると「ふぁ……あ……」と艶かしい声をあげ、涼太は身体を反らせ、小刻みに震えながら脱力していく。
 力の抜けた涼太をそのまま抱き抱え、バスルームへと連れて行くと、着ていた服を脱がせながら全身を舌でくまなく愛撫する。

「あ、あっ……あっ……」

 熱を帯び紅潮した頬に指先を這わせ、唇を重ねながら舌を絡める。
 俺も服を脱ぎ、腰くらいまで湯が張ってあるバスタブに涼太を入れた。

「隼人……はやく……」

 真っ黒な瞳を潤ませ、ねだる涼太が堪らなく愛おしかった。涼太は普段、あまり俺を頼らない。何でも自分でこなしてしまうタイプの人間が見せる甘えと言うのは、痺れるくらいに情動的だ。
 たっぷりとローションを馴染ませ、涼太の引き締まった双丘から、淫らに窄まりへと指を滑り込ませる。

「あっ、あぁ……あっ……隼……人っ……!!」

 喘ぎ声も高らかに、俺にしがみつくように抱きついてきた。絹のようにきめ細かな肌が触れる。
 密着した涼太のそれは、俺の腹で激しく揺れながら先端には、トロトロの蜜を滴らせる。

「もっと気持ち良くさせてやるよ、涼太……足開いてごらん?」
「やっ……だっ……て」

 毎晩のように愛し合っていると言うのに、未だに恥らう涼太が愛しくて仕方ない。どこまも俺を虜にする、小悪魔のようだ。
 引き締まった腿に、舌を這わせながら指で中を弄ぶ。淫らな水音がバスルームに響く。指を鉤型に変形させて、いい所を何度も擦ってやる。

「んあぁ……や、そんな……に、したら……、ああぁっ……!!」

 涼太は身体を反らせ、ひと際高めの声で啼き、白濁した体液を勢いよく散らした。息を荒くしながら肩を小刻みに震わせて、快感の余韻に浸っている涼太自身を咥えると、残っている精液を絞る取るように、扱きながら徐々に吸い上げた。口の中に涼太の味が広がる。

「くっ……ぁぁ…んっはぁ……ああぁ」

 身体をびくんびくんと何度も反らし、快感に酔いしれる涼太に、俺のそれも我慢の限度を超える。



                    ――to be continued――


あ行、は行の羅列が始まった途端、目飛びが激しくなるのは、私の仕様なのでしょうか?(笑)
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――時よ 止まれ――<4>

 
 俺はネクタイを緩めると駅の喫煙所へと向かいながら、我慢していた煙草を取り出そうと胸ポケットを探った。会社の殆どの人は煙草を吸わないため、俺は肩身が狭い。
 そして先程の次長とのやりとりを思い出し、溜息をつく。

(吉岡次長の彼女攻撃には参ったよなぁ……次長、彼女いたんだ。まぁ、あれほどの人なら当然か。彼女って、やっぱりどこかの社長令嬢だったりするのかな? あの口調は、きっとそうなんだろうな、お嬢様っぽい感じだったし)

 喫煙所に入ると、溜息を漏らしつつ煙草に火を点け、紫煙を目で追う。

(俺は――本当の事なんか口が避けても言えないよな……別に悪い事してる訳じゃないけど……。俺は、ただ涼太が好きなだけで、男が好きって訳じゃない……だけどやっぱ世間ってそういう偏見の目で見るだろうし、次長も俺の事、そう言う風に見るんだろうな……。まぁ、それは別に構わないけど、俺と付き合ってる涼太がなんて言われるか……なんだかなぁ)

 深く煙を吸い込むと、溜息交じりで吐き出す。ぼんやりと行き交う人を眺めていたら、疎らになっている事に気が付き、慌てて携帯を取り出すと、涼太へと連絡を入れる。

「あ、俺。ちょっと飲みに誘われて今電車に乗るところ……え? 良いよ別に…………うん、そうか……分かった、じゃあ駅の前で待ってる」

 煙草の灰が落ちそうになり、灰皿へ放り込む。
 俺は涼太との待ち合わせに向けて、駅前へと歩き出した。
 客待ちのタクシーの列が並ぶ中、駐車出来そうなところを探しているところに、涼太の車の排気音(エキゾーストノート)が聞こえ、黒のインプレッサが姿を現す。助手席へ乗り込むと、涼太の慎重な性格が現れている運転へと身を預けた。

「待った?」
「いや、意外に早くてびっくりしたよ」
「俺も仕事で丁度こっち方面走ってて、直帰するところだったんだ」
「はは、タイミングが良いよな、俺たち」
「ん……そうだね」

 涼太はなにか意味有り気な態度を取った。もしやと思いカマを掛けてみる。

「――もしかして探していたのか? 俺のこと」
 すると涼太は顔を赤らめながら「偶然だよ! ぐ・う・ぜ・ん!!」と、口を尖らせステレオのボリュームを上げた。
 図星だったとその横顔を眺めながらクスクスと笑うと、更に涼太の顔が紅潮して行った。

「も、もう! 何だよ」
「いや? 別に?」

 ニヤニヤと横顔を眺めると、段々と真っ赤になって行く。
 照れる涼太が可愛くて、つい見惚れると涼太の好きそうなメロディーが車内に心地良く響いていた。
 俺はからかうのを止めて、音楽に耳を傾けながら

「そう言えばどこ行ったかな、あのCD」
「ん?」

 さっきまでの照れ顔は色薄くなり、少々がっかりする。
 もっと見ていたかったけれど、話を振った手前そう言う訳にも行かず、俺は言葉を繋ぐ。

「ほら、俺達が話す切っ掛けになった……」
「ああ、あれか」
「俺のは実家に置いといたらお袋が間違って捨てちゃってさ……まぁ、涼太が持ってるから良いやと思っていたんだけど……」
「んー……俺も引越しのときにどこかに仕舞って……どこだったかな」
「そう言えば、一度もその友達に合わせてくれなかったよな?」
「え? 何の?」
「ほら、親父さんがバンドのメンバーだったって……」
「ああ……」

 そんな会話をしているうちにマンションへと着いた。



                       ――to be continued――

はわ~><;; 自動更新切れてたのに気がつきませんでした><;;
一日分抜けちゃって、ごめんなさいね^^;
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――時よ 止まれ――<3>

 
 エレベーターを降りると何軒かのスナックが看板を出していた。

「桜井君、こっちだ」

 指す方向を見ると小洒落た店構えの扉があり、次長はその中に入って行く。

「あ! 吉岡さん、いらっしゃい!」

 年齢は俺達と大差無い位の、人の良さそうな髭面のマスターがグラスを拭きながら笑顔で出迎えた。

「マスター、今日は会社の奴、連れて来たんだ。旨いもの頼むよ」

 カウンター横のテーブル席に腰を降ろすと、次長はマスターに告げる。

「了解! ところで今日は何飲みます?」

 マスターは次長に話しかけながら視線を移し俺の方を見た。

「えっと……じゃあ俺は生で」
「俺も。後でボトル貰うよ」

 注文するとマスターはおしぼりを手渡しカウンターに戻り、ジョッキにビールを注ぐと、通しと一緒に俺達にビールを手渡した。
 そのままジョッキを手にし、次長は乾杯のポーズをとると「それじゃ、お疲れ!」と、労う言葉を掛け、待っていた。
「お疲れ様です」と、俺はそのジョッキに自分のジョッキを軽く当て乾杯をする。

「いやいや、相変わらず堅いなぁ、桜井君は。もっとフランクに行こうよ」

 笑顔で俺の緊張を解す様に言うと、肩をぽんぽんと叩く。

「ええ、じゃあ遠慮なく」

 暑さで喉が乾いていた俺はそれを一気に飲み干した。

「お、好い飲みっぷりだねぇ! マスター、もう一杯頼むよ」

 次長は笑顔で、通しをつまみながら話す。暫くはマスターも交えて世間話をしていた。
 しかし俺は、時間も気になり、先程から気になっていた話題を振る事にした。

「吉岡さん、今日はどうしたんです? 俺、何かミスでも……?」
「いやいや、桜井君は良い仕事してくれてるよ!!」 

 その場を察してか、マスターはカウンターに戻っていた。
 次長は俺に視線を向け、座り直すと改まった様子で

「うん……実は俺、今度の昇進で部長になる事が決まったんだ」
「そうですか!! おめでとうございます!!」
「ありがとう。それでだ……」

 次長はビールを一口飲み込むと続けて

「それと同時に大きなプロジェクトを任されてね、君に手伝って貰いたくて」

 あまりの唐突な話に、俺は返す言葉が思いつかず黙っていると

「君は、どの部下よりも優秀だ。是非、力になって欲しい」

 真剣な眼差しで俺に告げる。

「……俺なんかで役に立てるか」と、戸惑いながら答えると

「謙遜しなくて良いよ。君はいずれあの会社で大物になる。それは間違い無い」
「いえ、そんな……買い被りし過ぎですよ、吉岡さん」
「そんな事は無い。その証拠に君は同期の連中の中で……いや、俺の同期やそれより上の連中の他の誰よりも出世しているだろ? それは君が稀に見る優秀な人材だからだよ」

 確かにまだ26という年齢で課長と役職を与えられているのは、年功序列重視のうちの会社の歴を見ても異例と言われていた。
 しかし、それ以上に30手前で部長と言う地位に着く吉岡次長は、更に優秀な逸材であることを物語っていた。

「いえいえ、俺なんか吉岡さんの足元にも及びませんよ……」
「はは、随分と謙遜してるね? もっと自信を持ったらどうだ?」

 ぽんぽんと俺の肩を叩きながら、次長は溜息をつく。
「はぁ……」と、俺が生返事をすると、次長は俯き加減に、眉を顰めながら俺を見た。それは、本当に困っている時に見せる、次長の表情だ。

「……正直、君にしか頼めないんだ。後の連中では悪いが、不安なんだよ……」

 俺は意を決した。ここまで信頼されて、断る理由が無い。

「――わかりました。吉岡さんがそこまでおっしゃって下さるなら……」
「そうか! 引き受けてくれるか!!」

 そう言うと、嬉しそうな笑顔で俺を見て、ビールを一気に飲み干した。

「はい。お役に立てるよう努力します」
「いやぁ、正直断られるんじゃないかとヒヤヒヤもんだったよ! 桜井君は今、結構忙しいって聞いてたし、やけに謙遜するから……。あぁ、良かった……安心したら喉が乾いたな……マスター、俺のボトル持ってきてくれないか」

 マスターはにこやかに次長のボトルと、諸々を運んできた。一見変わったリシャール・ヘネシーと書かれたボトルは、高級感が漂っている。
 見たことも無いようなボトルに視線を落としていると、マスターは息を荒くして自慢げに話し出した。

「これね、手に入れるの、結構大変だったんですよ! なんせ市場価格が……おっと! これを言ったら売り上げバレちゃいますか!」

 マスターは頭を掻きながら次長に視線を落とすと、特に気にした様子は見せず微笑んでいる。

「それにしても良かったですね、吉岡さん! この間からずっと心配してましたもんね」
「いやいや、ホントひと安心だよ。マスターも一緒にどうだい?」
「えっ!? ヘネシーなんて上玉拝めるなんてラッキーですわ!! これも桜井さんのお陰ですね。それじゃ遠慮無くイタダキます!!」

 マスターは上機嫌に俺達に水割りを作った後、グラスをひとつ手に取り、自分の水割りを作ると腰に手を当て、乾杯のポーズをとった。

「吉岡さんの昇進祝いと、プロジェクトの成功を祈って!!」
「乾杯!!」
「乾杯!」

 俺は乾杯の後、水割りをひとくち口に含むと腕時計を見る。針は22時を回っていた。
 その様子を見て次長は気を遣い「そうか、明日の書類も纏めなくちゃいけないしな……。悪かったな、桜井君。つき合わせてしまって……」と申し訳なさそうに言った。

「いえ、大丈夫ですよ。ある程度は仕上げてますから」
「本当に君は頼りになる。俺も大船に乗ったつもりで安心できるよ! ん……そうだ。ところで桜井君、パスポートは持っているか?」
「パスポート……ですか? 俺、今まで出張は国内ばかりだったんで……」
「そうか、それじゃ十年の有効期限があるものを貰って来てくれ。これから現地調査とかで結構海外出張が多くなるからな。早速で申し訳ないんだが、再来週出張があるんだよ」
「わかりました。用意しておきます」
「……っと、そろそろ俺もその用意しなくちゃだな。うん、いやー、本当に今日はいい日だったよ。ありがとう桜井君」

 吉岡次長は俺に向かい、右手を差し出し握手を求めた。

 俺はそれに応え握手する。「でも彼女に悪いかな? 帰れない日が続くと女ってすぐ拗ねるから」
 笑いながら俺の肩をぽんぽんと叩き、手を離すと

「ところで桜井君、結婚は? 彼女いるって聞いたけど? 彼女ってもしかして外車好きなんじゃないの? だから俺の車に急に試乗したいなんて……」

 俺は、事実なんて言える訳がない、と苦笑いを浮かべながら

「はぁ、実はそうなんですよ……急だったのに、快く貸して下さって助かりました。でも今は仕事のほうが楽しくて……まだ考えてないです」
「そっかー、分かるわかる。でもそんな事してると彼女に逃げられるぞ? って俺も人の事言えないか。この間も喧嘩しちゃってね……どうして女って仕事に理解が無いのかな? 私と仕事とどっちが大事かなんて、低レベルの質問されても本当に困るよな? まぁその方が可愛いって言えば可愛いけれどね。それにしても外車好きかぁ……案外、君は派手な娘(こ)が好みなのかな? でも苦労するよ、そう言う娘は……っと、無駄口叩いてる場合じゃなかったな、待ってるんだろ? 彼女」

 次長はよほど機嫌が良いのだろう。捲し立てる様に一気に話したかと思えばニッと笑い、俺の肩を2、3回軽く叩くと腕時計を見た。

「それじゃ頼りにしているよ、桜井君」

 そう言うや否や、俺の肩に腕を回し、嬉しそうにしている。
 そして思い立ったように「そうだ、タクシーで君のうちまで送るよ、その方が逢える時間が長くなるだろう?」と携帯を手にした。

 以前、会社の飲み会で遅くなった時にタクシーに同席した事があるが、次長のマンションとは真逆の方向だった。都心のど真ん中だ。ここら辺からだと、俺の方が近い。
 俺は迷惑が掛かると思うと同時に、上司とはいえ一緒にタクシーで帰ったら、流石に涼太もいい思いはしないだろうと思い、慌てて「いや、電車で帰りますよ! まだ時間ありますし」と申し出を断った。

「遠慮しなくて良いんだぞ?」

 それを遠慮と勘違いしたらしく、次長は携帯のコールボタンを押そうとしていた。

「たまには電車も悪くないですよ。第一、車ばかり乗ってると身体も老化しますし……この年で加齢臭とか漂っちゃ嫌われますから」

 俺は冗談交じりに、間髪入れず言うと、次長は手にしていた携帯を閉じ、ポケットに仕舞いながら「そうか、そうだな。桜井君はいい事言うなぁ、マジ勘弁だなそれ! よし!俺も今日は電車で帰ることにするよ!!」と、俺から離れ意気揚々と歩き始めた。

 ほっと安堵の吐息を漏らす。俺達は店を後にすると駅へと向かった。

「じゃあ、また明日! 専務には俺から話しておくから」
「はい、お願いします」

 振り返り様に笑顔で手を振り、次長は電車のホームへと姿を消していった。





                     ――to be continued――


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――時よ 止まれ――<2>

 
 エレベーターを降りると、吉岡次長が自分の車の前で待っていた。
 小林を騙す時に借りたランボルギーニは、この次長のものだった。
 出来る男というのは、持ち物までも違うらしい。

「すまないね、忙しい所」
「いえ、大丈夫です。ところで、この間は車を貸して頂いて、ありがとうございました。とても良い車ですよね、私も欲しくなっちゃいました」

 そう言うと次長は、機嫌を良くして笑顔になる。

「気に入って貰えたみたいだね、良かったらまた貸そうか?」
「いえいえ、そんな……いつかは自分で手に入れますよ」

 言ってはみたものの、外車なんか興味ない。あれは馬力がバカみたいに有るだけで、普通に走るだけなら軽自動車の方がよっぽど環境に良いだろう。
 確かに見た目はスポーティーで格好いいが、エネルギーを食い荒らす化け物だ。余程、金の使い道が無くて困っているならいざ知らず、などと考えてると

「そうか、桜井君ならすぐにでも買えそうだけどね? この車もそろそろ買い替えようと思ってたから、良かったら譲るよ?」
「いえ! 滅相も無いです。私には、まだ早いですし……」

 好意は嬉しかったが、正直、涼太が丹精篭めてチューニングした車には愛着がある。涼太同様、大事な相棒だ。

「はは、そうか、残念だな。見ず知らずの人に買われるよりは、良いかと思っていたんだがね……」

 次長も車には愛着があるのだろう。前に借りた時、隅々まで磨き上げられていて、感心したものだ。
 小林の血が付いた時は、正直ビビッた。何とか綺麗に掃除したが、バレないかと冷や冷やした思い出が蘇る。
 確かに言う通りだと頷いていると

「んー……ここで立ち話もなんだから、何処か飲みにでも行くか?」
「そうですね、それじゃ車、置いて行きますよね?」
「そうだな、その方が安心だろう? 代行頼んで、傷付きでもしたら目も当てられないからな」
「じゃあ、上でタクシー拾って来ますね」
「ん、そうだな……いや、たまには歩くのも良いだろう? ここから歩いても、大した距離じゃないし」
「あ、そうなんですか? だっだらその方が良いですね」

 必要な荷物以外は自分の車の中に置き、俺達は駐車場を後にした。
 地下駐車場を出ると、先程まで小降りだった雨は上がり、蒸し暑い空気が身体に纏わりついて来る。

「うわ、蒸しますね」

 俺はポケットからハンカチを取り出し、額の汗を拭った。

「まぁこれ位暑い方がビールも美味いだろ?」

 にっと笑い、次長は俺の肩を叩く。

「そうですね……ところで何処に行きます?」
「ん? この間、良い店見つけたんだ。ここからわりと近くてね」
「へぇ、こんなオフィス街の所にですか?」
「店は小さいんだけどツマミが旨くてね、マスターがまた話上手でさ、面白い所だよ」
「それは楽しみですね」
「ほら、見えてきた。あそこだよ」

 次長が示す先には、オフィス街の光景に似使わない、小さなビルがちょこんと大きなビルに挟まれ建っていて、その中には何件かの飲み屋が入っているようだった。

「ここの3階なんだ」

 そう言うと次長はエレベーターのボタンを押した。

「ところで吉岡次長、私に話って……」
「ん? まぁ店で乾杯でもしてから話すよ。ところで会社を出たらその次長っていうの、あんまり呼ばれたくないなぁ。さん付けで構わないよ? 何なら呼び捨てでも」

 悪戯する子供のような目で、冗談交じりに俺の方を見た。
「あ、はい、わかりました」と、答えつつ、上司を呼び捨てなんか出来る訳無いだろう、と苦笑いする。

「そうだな……君のその敬語も、ちょっと堅苦しいかな。普段通りの話し方で構わないよ?」
「ええ、わかりました。それじゃ、そうさせて頂きます」

 だが、次長は「……君は、本当に真面目だねぇ」と、困ったような顔をした。すると、チンとエレベーターが音を立てて止まる。



                     ――to be continued――


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――時よ 止まれ――<1>

  
 涼太に言い寄る奴が田舎に帰ったと聞き、俺はほっと安堵の吐息を漏らす。
 あの一件以来、涼太は素直に俺に愛情を示すようになっていた。
 今までも愛情表現は、涼太なりにしていたのだと思う。

 しかし、あの日からは見えない壁のようなものが外れたように、涼太の事が分かり易くなった。俺はそれが嬉しくて仕方が無く、毎日が幸せで充実していた。
 世間にどう見られていようが関係無い。

 愛すべき人を愛して何が悪いと言うのだ。それがたまたま同性だっただけの話だ。
 ……とは言うものの、やはり自分達の事を周りに知られ、好奇の目で何かと煩く言われるのは望まないし、何より涼太に迷惑が掛かるのは一番辛い。義兄弟と言う事で通していた方が何かと便利だった。



 その日は雨が降り、じっとりとした嫌な日だった。
 まるでこれからの俺達の未来を予想したかの様に……。

 終業時間が過ぎ、俺は帰り支度をしていた。

「桜井君、ちょっと良いかな?」

 3年程先に入社した、吉岡晃(よしおかあきら)という先輩に呼び止められ振り返る。

「何でしょう、吉岡次長」
「今日これから用事が無いなら、付き合って欲しい所があるんだが……」

 腕時計を見た。まだ19時を回る前で涼太が帰って来るには、2時間程余裕があった俺は、取りあえず用件を聞く事にした。

「ええ、分りました。しかしながら、明日は会議が入っているので、あまり遅くまでは……。多少なら構いませんけど……」

 とっくの昔に企画書など終えていたが、涼太に逢えない時間が増えるのは好ましくない。
 まだ途中と言う雰囲気を醸し出すのに、俺は俯き加減で話した。
 次長はそれにうまく引っかかってくれたようだ。普段は凛々しい眉を下げ気味に声を掛ける。

「悪いな、そんなに遅くまでは引き止めないよ。それじゃ地下の駐車場で待ってる」
「分かりました、私も直ぐに行きますので」
「じゃあまた後で」

 穏やかな笑みを湛えて颯爽と歩く姿が、女子社員達の目を惹いていた。
 周りから色めきだった吐息が聞こえてくる。

 俺が勤める会社の三共栄物産は、総合商社だ。あらゆる事業に従事している。
 自動車は勿論の事、船舶や航空、幅広い建設機械のなど販売、輸送や物流、果ては事業投資も行なう。
 また、化学品分野にも携わっている。ゴムの成型品、塗料、印刷インキ、医薬部外品、食品添加物、工業用油脂など扱っている会社だ。

 その中で俺が所属しているのは、プロジェクト本部という部署になる。経済、社会の発展と、より良い地球環境作りに必要なインフラを提供するという役目を担っている。インフラはインフラストラクチャー の略で、生産や生活の基盤を形成する構造物を指す。分りやすく言えば、ダム・道路・港湾・発電所・通信施設などの産業基盤、および学校・病院・公園などの社会福祉・環境施設がそれに該当する。

 ま、簡単に言ってしまえば、何でも屋と言った所か。
 吉岡次長は優秀な社員だが、気さくで誰にでも好かれるタイプの人物だ。
 後輩や先輩を飲みに誘ってはコミニュケーションを図り、会社での雰囲気を明るくしている。そのお陰なのか、うちの部署の業績は順調で退職する者も少ない。

 こういった人物は会社には欠かせない貴重な存在だろう。
 しかも容姿も整っていて、通った鼻筋の鷲鼻は知性を漂わせている。
 切れ長の二重の亜麻色瞳は、時と場合により変化し、仕事ではクールに、遊びでは無邪気に輝いていた。少し明るめの頭髪は歩く度に、さらさらと流れるように靡く。

 背丈も俺より有り、182cmくらいだろうか。いや、もう少し高いかもしれない。
 そんなだから、常に女性社員の注目を浴びており、人気の的だ。
 この間会社で行なわれたイベントで、ちょっとした人気投票が行なわれたが、社内で結婚したい男性で一番なのだとか。まぁ、誰もが納得できる結果だろう。
 
 俺は身支度を済ませ地下の駐車場へと急ぐ。


                         ――to be continued――


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important as the same ――時よ 止まれ――

涼太に言い寄る影が去り、二人は更に絆を深めて行く。そんな平穏な日々に忍び寄る新たな影が……。
隼人と涼太が織り成す物語の第三部です。

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拍手お返事です^^

こんにちは、竜樹です^^

第二部まで読んで下さった皆様、誠にありがとうございました!

隼人と涼太のこの物語は、私がまだBLもよく分ってなくて(未だに分ってないかもですが;;)小説も殆ど読んだ事がない三年前に、生まれたものです。
当時、漫画にしようと思ってプロットを立てていたら、この子達、キャラ立ちしてしまって、一人歩きを始めてしまいました。
絵を描くのが遅い私は、この子達の見せる場面に追いつかず、やむなく文章で……と、今まで書き綴ってきました。
読み手さんの事をあまり考えず書いた文章だったので、読みにくかったと思います。それで、つまらないんじゃないかと思いまして、正直、第一部が終了した時点で、この話は載せるのを止めて、こちらのブログも削除しようかと思ってたんです。

でも、沢山の拍手や、励ましのコメントを頂いて、とっても励まされました。
こんなにコメントを頂けるとは思ってなかったので、本当に、本当に嬉しいです。


次回から、かなり深刻な話になって行きます。R-18の騒ぎじゃないっていう程、内容が酷いかも知れません。
特に終盤の方は、悲惨な事になってしまいました><;;;

でも、それがこの子達の、見せてくれた物語なんです。
この子達の話はまだ途中ですが、いずれ書き上げたいと思います。
取りあえずは、出来上がっているところまで載せて行くので、良かったらお付き合いして下さい^^

作者として、なんとか完結まで頑張りたいと思います。

それでは、――9――に拍手コメントを入れてくれた方に、お返事したいと思います^^
心当たりの方は、続きからどうぞ^^*


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important as the same<10>――最終話――

 
 気が付くと俺はベットで寝ていた。左手に違和感を覚え、見てみると点滴の管が繋がっている。周りを見渡してみると、白い壁が目に入り、カーテンの隙間から紅く色ついた光が差し込んでいる。壁に掛かっていた時計を見ると、6時の所を針は示していた。

 状況からして、一夜明けたのだろう。それにしても朝なのか夕方なのか区別が付かない。
 携帯を探そうとして起き上がってみると、足元の布団に重さを感じた。
 見ると隼人がうつ伏せで腕を組み、顔をこちらに向けて居眠りをしていた。
 俺が動いたのに気が付いた隼人が目を開ける。

「ん……目が覚めたか、涼太。気分はどうだ?」
「……俺は一体?」
「ん、急性アルコール中毒で、もう少し運ぶのが遅かったら危ない所だったんだぞ」
 長い溜息をつくと、隼人は「もう、あのガキには関わるな」と、厳しい表情をする。
「ごめん……」

 俯き、黙り込むと、隼人は俺を優しく抱き寄せた。ふと左腕に白いものが見え、それが包帯だと気が付く。

「あ……それ……?」
「ああ、これか? 気にするな、大した怪我じゃない」

 そう言われて昨日の出来事を思い出す。隼人が来てくれなかったら、俺は柳瀬にそのまま流され、それだけじゃ済まず、下手したら命を落としていたかも知れない……。
 情けなくなり、布団をぎゅっと握り込んだ。

「もう、終わった事だ。気にするな」

 そう言うと隼人は俺にキスを落とす。

「涼太……もしお前が嫌じゃなかったら、仕事辞めて家に居てもいいんだぞ?」
「え?」
「仕事しながら家事も全部こなしてたら、疲れるだろう? お前一人面倒見るくらい……」

 隼人は柳瀬に言われた事を気にしているのだろう。
 でも、別にそれは苦じゃない。むしろ楽しんでやっている。
 それに……いい歳した男が、ずっと家に居るっていうのは抵抗がある。

「――隼人の気持ちは嬉しいけど、やっぱり俺、車好きだし、仕事は楽しいから……」
「……だよな。――でも、あのガキと同じ職場かと思うと……それに、お前がまた他の誰かに言い寄られたらと思うと……気が気じゃないんだ。お前は優しいから、誰にでもそういう風にするし……」

 隼人の鳶色(とびいろ)の瞳が、心配そうに俺を覗き込む。

「もう、関わらないよ――。本当に心配掛けてごめん……」

 俺は自分の安易な行動を恥じると共に、後悔の念に駆られた。

「ごめん……」

 何度も謝る俺に、隼人は首を横に振る。

「いいよ、もう……。お前が無事だっただけで」

 記憶が鮮明になるにつれて、俺はふとある疑問を抱いた。どうして隼人は俺の居場所が分かったのだろうと。率直に隼人に聞いてみる事にする。

「ところで隼人……どうして俺の居場所が?」

 すると隼人は顔を赤くし、そわそわとしながらそっぽを向いた。

「……?」

 俺は訳が分からず、じっと隼人を見つめると

「その……なんだ……。メール見たら落ち着かなくてさ、久しぶりに弓道でもして落ち着こうと思って、道具積んで車で出かけたら、お前から着信あって……。出てみたらお前、気が付いて無いみたいでさ、間違いだと思って切ろうとしたら……なんか怪しい雰囲気になってるし、その……携帯でGPS使って……」

 途中で隼人の声が聞こえた気がしたのは、気のせいじゃなかった。
 隼人に俺の携帯を持ってきて貰い、履歴を確認してみると、確かにリダイヤルの履歴があった。携帯を上着の胸ポケットに入れていたから、あの騒動の時に何らかの形でリダイヤルされたのだろう。
 それで柳瀬が俺を好きだと言っている事が分かったはずだ、と納得する。

「隼人、ありがとう……」
「え?」

 隼人は意外という目で俺を見る。

「いや、その、嫌じゃないか? こんなストーカー染みたの……」

 頭を掻きながら俯く隼人が、愛おしくなり抱きしめる。

「涼太……」
「隼人が来なかったら、俺、本当にやばかったから……俺、正直こんなに隼人に想われてるって思ってなかったから、凄く嬉しいよ」

 隼人にキスを落とそうとした時、病室のドアが突然開き、慌てて離れる。

「お早うございます、お加減はいかがですか? 蓬田さん」

 にっこりと微笑みながら医師と看護師が姿を現す。

「は、はい、大分良いです……」
「そうですね、ん? でもまだ顔が赤いですね、熱が出たかな? でもまぁ一通り検査が終わって異常が無かったら、帰っても大丈夫ですよ」

 顔が赤いのは、隼人とのキスシーンを見られそうになったからで、とは言えない。
 俺は恥ずかしくなりながらも、医師の言葉に安堵の溜息をつく。
 朝の体温測定やら、血圧測定やらを済ませると、医師たちは忙しそうに他の病室へと行ってしまった。
 二人でほっと息をつくと、顔を見合わせてクスクスと笑う。

「見られる所だったな」
「そうだな」

 誰も居なくなった病室で、隼人にキスを落とした。
 隼人は俺をそっと抱き寄せ、何度も頭を撫でると

「今日は俺も会社休むよ、帰ったら二人でゆっくり過ごそう?」

 俺が頷くと、隼人は満面の笑みを浮かべた。



 連休が開けて、会社に向かう。柳瀬とこれからどう接して行こうかと考えながら、ハンドルを握る。
 退院してから、家に帰って隼人に言われた言葉を思い出す。

『お前は自分が人からどう見られているとか、考えなさ過ぎる。もう少し自覚した方が良いよ……。アザラシの子供なんて可愛いだろ? それってお前が可愛いって言ってる様なものだろうよ』

 今まで付き合った女の子からも、可愛いと言われた事がある。麻里にも……。
 しかし、それは女の子特有の、何に対しても可愛いと言うものだと思っていた。

 だが俺は、どうも男から見ても可愛いと思われるようだ。隼人から見ても可愛いらしい。
 自分ではそれなりに男らしいと思っていたが、人から見るとそうでもないと言う事なのだろうと思うと、複雑な気分になる。それはまるで男として劣っている、と言われているようで、かなり切ない。

 だが、事実がそうなのだから仕方ない……。
 柳瀬は本気だった。だから俺も誠意を示して真摯に受け止めて、互いに痼りが残らないように話し合って、これまでと同じようにならなくても、先輩、後輩でいよう。

 そして男同士だから、恋愛感情は抱かないと思い込むのは、もう止めにする。
 現に俺は隼人を愛している。人を愛するのに男女の隔たりは無い。

 柳瀬の言葉が胸を刺す。『人を好きになるのに理由があるんすか』
 そう、理由なんか無い。ただ、その人が好きなだけだ。

 溜息をつき、会社に着くと、俺はロッカーへと足を運ぶ。
 すると、柳瀬の荷物が丸ごと消えていた。
 聞くと急に田舎に帰る事になったのだとか……。

 真実を知るのは、多分俺だけだろう。そう思うと胸の奥が痛む。
 柳瀬とは違う形で会いたかったと切に思った。
 あいつには幸せになって欲しい、勝手な願いなのは十分承知だったが、そう願わずには居られなかった。


                      ――第二部 柳瀬×涼太編 fin―― 



今回の話は短めでしたが、いかがでしたでしょうか? ^^;
私は受け目線と言うのが、どうにも苦手でございまして……。
と言うか、この子達って攻×攻って気もしないでも無いんですが><
未だにBL的萌えが分らず、彷徨ってます(笑)

次回は隼人目線に戻ります。
前半から絶好調状態(ERO的に)なんですけど……orz
ホント書いてる最中、何度白目剥いた事か(笑)
だけど後半は、かなり痛い展開になって来ます^^;
楽しみにしてて頂けると嬉しいです人^^*
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important as the same<9>

 
 意識も朦朧としかけた時、アパートの前で車のギャギャギュアとタイヤが高音で鳴る、物凄いスキール音が響き、止まったかと思うと玄関の扉を勢いよく叩く音がした。

「涼太!! 居るんだろ!! ここを開けろ!!」

 隼人の声だった。俺は我に返ると精一杯の声で名を呼び、中に居る事を知らせた。
 咄嗟に柳瀬が両手で俺の口を塞ぐと、異常を察した隼人が

「頭を下げていろ!!」

 声がするのと同時に玄関横の台所の窓ガラスが割れ、風を切る音が頭上を掠めると、壁に矢が突き刺さる。柳瀬はそれに驚き、目を丸くして凝視した。

「な……っ!? これって……矢か!?」

 近くにあったタオルで俺に口枷をすると、柳瀬は玄関に向かう。

「あんた、何するんだよ!! 人ん家のガラスぶち破りやがって!! ってか、矢って、どこの戦国時代だっつんだよ!?」
「それはこっちの台詞だ! 貴様、涼太に何してやがるっ!! さっさと此処を開けないと窓ごとぶっ壊して中に入るぞっ!!」

 扉を蹴り上げる音が玄関に鳴り響く。玄関の覗き窓を眺めながら柳瀬は

「あんたなんか俺、知らないっすよ? 誰かと間違えてるんじゃないっすか? ってか戦国時代の人に知り合いなんかいないっすけどね!」
「つべこべ言ってないで此処を開けろ!! 涼太が中に居る事は分かってるんだ!!」

 何度も扉を蹴り上げる音が響くと、近所の目を気にしてか、渋々柳瀬は玄関のドアを開けた。

「こんな夜中にいきなり人ん家のガラス破って、騒がしくして一体何の恨みがっ!! 落ち武者かっつーのっ!!」
「煩い、黙れ!! 涼太は何処だ!!」
「涼太? 誰すか、それ? あんた勘違いしてるんじゃないっすか? ってか、普通の人かよ!?」

 あくまでシラを切ろうとする柳瀬に、隼人は痺れを切らし土足で部屋に上がる。

「落ち武者じゃなくて良かったな。だったら今頃、取り殺されてただろうよっ!!」
「ちょ!! 何勝手に入って!! 警察呼び……」

 柳瀬は隼人に俺を見せないように、必死に制するも、隼人の方が力は上のようだった。
 柳瀬の制止を振り切り、奥の部屋まで来ると、俺のあられも無い姿を見て固まった。
 次の瞬間、隼人は力一杯握り拳をして低く唸るような声を上げる。

「貴様ぁ……涼太に何したっ!? あぁ!?」

 凄まじい形相をし、柳瀬の首元を鷲掴みにすると殴りつけ、柳瀬は勢いよく壁に叩きつけられると、その場にへたり込だ。

「涼太!! 大丈夫か!?」

 隼人は俺に駆け寄り、口枷を外し腕に絡まっている服を解く。

「……まさかお前、あいつに……」
「――まだ……」

 俺の返答に、隼人はほっと息を吐く。と、同時に、怒鳴り声が頭上に響いた。

「このバカっ!! 俺が間に合わなかったらどうするつもりだったんだ!!」
「っ……ごめん」

 強く抱きしめられ安心した俺は、隼人の胸の中で小さく震えていた。
 隼人は溜息をつき、そっと俺の頭を撫でると、顔を覗き込む。

「涼太、お前、顔色が悪すぎる……病院に行こう」

 俺を立ち上がらせようと腕を掴んだが、腰が抜けたようになり立ち上がれなかった。隼人が俺を抱きかかえようとしたその時、ふと視界の端に人影が過ぎる。

「あぶなっ……!! 隼人!!」

 俺の声に隼人は、素早く反応し身を躱すが、左腕に柳瀬が振り下ろしたレンチが当たる。
 隼人の服が破れ、そこから流血していた。

「隼人!! 腕が……止めてくれ、柳瀬!!」
「渡さない……ギダさんは渡さない!!」

 頭に血が上っている様子で、柳瀬は俺の言葉など耳に届いてない様子だった。

「貴様、涼太がそんなに好きなら、どうしてこんな事をした!! どうせ嫌がる涼太に無理やり呑ませたんだろうがっ!! 見てみろ!! 全身の血の気が引いて、顔が真っ青じゃないか!! 急性アルコール中毒に気が付かないで、涼太にもしもの事があったらどうするつもりだったんだ!! 自分の事しか考えられないガキくせに、好きだの何だの!!」
「う、煩い!! あんただってギダさんに何もかも家の事させてるくせに!!」

 隼人と柳瀬が睨み合う中、俺は気分が悪くなり嘔吐してしまった。
 はっと我に返った柳瀬は、俺を見下ろすと

「……大丈夫っすか!? ギダさん!!」

 レンチを放り投げ、座り込むと俺に触れようとした。
 伸ばした手を途端に隼人に撥ね退けられ、柳瀬は隼人を睨む。

「涼太は俺が病院に運ぶ。貴様はそこで大人しくしていろ!!」

 そう言うと隼人は、近くにあった毛布に俺を包むと抱きかかえ、部屋を出ようとした。

「……どういうつもりだ? 貴様」

 朧気な意識の中で、柳瀬が玄関前に立ち塞がっているのが見えた。

「俺が……俺が連れて行くっす!! あんたなんかに任せられない!!」

 隼人は大きな溜息をつくと

「酔っ払っていて? それで車を運転するつもりか? どこまで浅はかなんだ、貴様。そんな安易な考えしか出来ないガキに涼太を愛する資格など無い!! 一刻を争うんだっ!! 失せろ!!」

 隼人に一喝され、柳瀬はその場に座り込んでしまった。
 柳瀬の肩が震え、何かを呟いていたが、良く聞き取れなかった。

「……貴様にその日は来ない」

 隼人はそう言うと、アパートを後にする。

「大丈夫か? 今、病院に連れて行くからな」

 隼人が心配そうに覗き込む。俺は頷くのが精一杯だった。
 車の助手席に身を置くと、眠るように意識を失ってしまった。



                       ――to be continued――


隼人、落ち武者扱いされてるしwwwまぁ、そりゃ矢が飛んできたら、びっくりするよねw
こんな修羅場状態でギャグ連発とか……orz 
いや、うん。それが私の作品という事で←

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important as the same<8>―R-18―

 
 すると、柳瀬は大きな溜息をつく。

「ギダさん、もしかしてお嫁さんが居なくなったショックで、そいつに走ったんじゃないすか? だったら本当にそいつ、ギダさんのこと利用しようとしてますよ」
「違う! 隼人は高校からの付き合いで……その、色々あって、互いに行き違ってただけだ……あいつは独りになった俺の事を心配してくれて……」
「……ふーん。で、今一緒に暮らしてるんすか。それって、本当に財産狙いとかじゃなかったら、そいつはただギダさんに同情して一緒に居るだけなんじゃないっすかね?」

 柳瀬の言葉が胸に突き刺さった。小さな針で刺されたように、チクチクと痛み出す。
 段々、柳瀬の言う事が正しい事のように思えて、思考が混乱する。

「そいつ、ギダさんのこと大事にしてくれてますか? 最近ギダさん疲れてるみたいで、ずっと眠そうにしてるじゃないっすか……さっき料理作った時思ったんすけど、ギダさん凄い手馴れてるし、もしかして家事とか全部ギダさんがしてるんじゃないっすか?」
「……それは俺が好きでしてる事だ。別に押し付けられてる訳じゃない……」
「でも、そいつギダさんがしてくれてるのをいい事に、手伝ってもくれないんじゃないっすか? それってただの都合の良い……」
「いい加減にしろ!!」
 俺は怒鳴り声を上げ、全身に力を込め柳瀬を跳除けた。
 これ以上柳瀬と話をしていると、自分の中の信条が揺らぎそうで怖かった。

「ギダさん……」
「柳瀬、お前の気持ちは分かったよ……だけど、俺はそれには応えられない……」
「……」
「隼人は掛替えの無い大切な人だから……ごめん」
「……ギダさん、そう思い込もうとしてるんじゃないっすか」
「違う。俺は隼人を愛してる……お前には分からないかも知れないけど、俺達は互いを大切だと思ってるんだ」

 すると柳瀬は踵を返し、テーブルに戻ると不機嫌そうにどっかりと座り込み、焼酎のボトルを抱えてグラスに注いだ。


 俺はその様子を眺めながら、ベットから降りると柳瀬の横を通り過ぎる。

「ごめんな、柳瀬……」

 そう声を掛けて部屋を後にしようとした時だった。
 後ろからきつく抱き付かれ、身動きが取れなくなる。

「柳瀬……頼む、分かってくれ」
「嫌だ!! そんなの分かりたくなんか無いっすよ!!」

 柳瀬の声が震えていた。俺の首筋に暖かい雫が伝う。
 痛いほどの柳瀬の気持ちが胸に響く。だけど、俺にはその気持ちを受け止める事は出来ない……。
 今、この場の雰囲気に流されてしまったら、俺は一生後悔する。
 力一杯柳瀬を振り解き、走ろうとした。しかし、まだ酔いが残っている体は言う事を聞かず、再びその場に倒れそうになった。

「危ない!!」

 柳瀬は咄嗟に俺を庇い、抱き抱えようとするがバランスが取れず、縺(もつ)れる様に床に倒れこむ。しかし柳瀬が回した腕のお陰で、俺は何処にも衝撃を受けなかった。

「ご、ごめん、柳瀬……」

 ふと見上げると、目前に柳瀬の顔がある。
 頬を涙が伝った跡が確認出来るほどの距離に、俺は眼を背けた。

「大丈夫っすか? ギダさん」
「ああ……」

 起き上がろうとすると柳瀬は、そのまま俺に覆い被さり、動きを制止する。

「柳瀬、頼む……俺はお前の事をそんな風には考えられない……」
「だっだら、考えるようにするだけっすよ! 俺の事を怨んでもいい!! 嫌われても構わない!! ギダさんが少しでも俺の事を考えてくれるようになるだったら俺は!!」

 そう言うと柳瀬は俺の着ているシャツを捲くり上げ、腕の所で裾を縛り両手の自由を奪う。
 慌てて起き上がろうと必死にもがくが、柳瀬も力尽くで押さえ込む。

「柳瀬、止めろ!! 頭を冷やせ!!」

 俺の言葉を無視し、柳瀬は先程グラスに注いだ焼酎を口に含むと、無理やり俺の顔面を固定し、口移しで流し込んで来た。
 何とか飲み込まないようにしてみるが、アルコールの嫌な臭いが鼻に付き、執拗に重ねた唇は、それを吐き出すのを許さなかった。
 次第に息が苦しくなり、俺はそれを飲み込んでしまう。喉が焼ける様に熱くなると、醒めかけた酔いがぶり返し、目の前が回りはじめる。

「帰さない!! そんな奴の居る所になんか返してやらない!! 忘れさせてやるっ!!」
「頼む……柳瀬、落ち……着いて……くれ!」

 息も上がり、言葉さえまともに出て来なくなる。
 暴れれば暴れる程、酔いが回るのが早くなり、次第に意識が遠のく。

「嫌だ!! そいつの元に返す位なら、いっその事このまま俺のものにするっすよ!!」
「やめ……」

 歯止めが利かなくなった柳瀬は、俺の中に着ているシャツを力尽くで引き裂き、肌を露にする。はっと息をのみ、柳瀬は俺の肌を舐めるように眺めながら

「っ――綺麗だ、ギダさん……」
「放……せ」

 必死に藻掻き抵抗するも、柳瀬は力の限り俺を押さえ付けた。ふと何かに気が付いたような表情をすると、舌打ちをする。

「でも……ここ……痕がある……」

 指先で胸の真ん中辺りをなぞられ、背筋に悪寒が走る。柳瀬は俺の顔を見ながら、そこに吸い付いた。

「……っ!!」
 
 柳瀬は舌を這わせながら、隼人の痕を辿り、消すようにそこを吸い上げる。まるで俺のモノだと言わんばかりに……。
 隼人のそれとは明らかに違う感触に、俺は身の毛がよだつ。
 柳瀬は次第に息が上がってきて、俺を求ている反応を示していた。

 瞳に熱がこもり、俺に視線を向ける様は、隼人のそれと似ている。
 柳瀬は本気だ。俺は自分の考えの甘さを後悔した。
 足をばたつかせ、必死に逃がれようと後退した。するとまた焼酎を口に含み、口付けてくる。それを吐き出そうとするが、咄嗟に口と鼻を抑えつけられてしまった。

 苦しくなってそれを飲み込むと、また同じ事を何度も繰り返す。心臓の鼓動が早鐘のように頭の中で鳴り響き、虚ろになる。俺は朦朧とした意識の中で隼人の名を呼んでいた。
 遠くから隼人の声が聞こえた気がして、はっと、我に返り見上げると、柳瀬の瞳には涙が浮かんでいた。

「どうして……こんなに好きなのに……もっと早くに出会えていれば、少しは俺の事……」

 強く抱き締められ、肌が触れ合う。柳瀬の想いは痛いほど伝わってくる。
 俺だって隼人に他に好きな人が居たらと考えると、身が引き裂かれる想いになるだろう。

 でも……ここで押されてしまったら、取り返しのつかない事になる。
 それだけは避けたい、隼人を裏切りたくない!!
 息が上がりながらも、自分を保とうと必死になるが、思うようにならなくて悔し涙が込上げてくる。

「ギダさん……」
「頼……む、放して……くれ」
「嫌っす!! 放したらもう二度とこの手には戻ってくれないじゃないすか!!」

 堂々巡りで埒が明かない……次第に考える事が億劫になってくる……。

「い……やだ」
「ギダさん……好きです、好きなんです……俺、大切にしますから」

 そう言うと、柳瀬はズボンのベルトに手を掛けてきた。慌てて身を捩り、逃れようと抵抗すると、柳瀬はまた酒を流し込んできた。
 絡められた舌の感触が、気持ち悪くて吐きそうになる。好きでもない相手とは、こんなにも違うものだと思いながら俺は、虚ろに陥いり、抵抗するのも次第に億劫になってくる。



 意識を保つ気力も尽きかけた事に気が付いた柳瀬は、俺に熱い眼差しを向けると

「ギダさん……やっと分かってくれたんすね? 俺、嬉しいっす」

 そう言い、俺のズボンのファスナーを静かに下ろした。
 下着に手を入れられ、俺のものに触れると柳瀬は、熱い吐息を漏らす。

「ずっと、こうして触れたかった……。ギダさん、暖かい……」
「や……やめ……」
「今にそんな事言えないくらい、感じさせてあげますよ、ギダさん」

 ――――もう、駄目だと思った。
 どんなに抵抗しても、言葉を返しても、柳瀬は一向に止める気配を見せない。
 それどころか、背中に押し当てられた柳瀬の屹立は、勢いを増す一方だ。
 どんなに後悔した所で、逃げ場は無かった。俺は、失望と諦めの心境になっていた。



                   ――to be continued――

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important as the same<7>

「ギダさん、なんか具合悪そうっすよ? 横になった方が……」
「いや、悪いけど、この話はまた今度……帰るよ」

 立ち上がろうと、テーブルに手を着き腰を浮かせた瞬間、足がもつれバランスを失うと俺はその場に倒れこんでしまった。

「あ! ちょ、ギダさん大丈夫っすか!?」

 柳瀬は慌てて俺の傍まで来ると、見下ろしながら心配そうな表情を浮かべる。

「……大丈夫。はは、本当に俺、酒に弱くて……」

 後輩の前でドジを踏んでしまった事に恥ずかしくなり、早く起き上がろうとしたのがいけなかったらしい。またバランスを崩し、今度はテーブルに頭をぶつけてしまった。

「あ! ちょっとギダさん!? 無理しない方が良いですって!!」

 そう言うと、柳瀬は俺を抱きかかえ、自分のベットへと向かう。

「うわ! ちょ、柳瀬!!」
「あーもう!! じっとしてて下さいよぉ!! 落ちちゃうじゃないっすか」

 隼人以外の奴に抱えられるなんて、内心穏やかじゃなかった。こんな所、隼人に見られたら確実に誤解される。

「いや、良いから!! 自分で歩けるし!!」
「何言ってるんすか? そんなフラフラで……少し休んだ方が良いですって」

 ベットにそっと俺を下ろすと、柳瀬は台所に向かい、凍らせるだけの氷枕を持って

「本当にもう、世話の焼ける先輩っすね」と、茶化すように言うとそれを俺の額に置いた。
「すまないな、柳瀬……」

 恥ずかしくなり、氷枕のタオルで顔を隠すと

「でも、ギダさんの意外な一面が見られて、俺嬉しいっす」

 ベットの端に腰かけながら柳瀬は、ニッと口を大きく開けて笑った。

「そんな……俺は柳瀬が思っているような人間じゃない……」

 すると柳瀬は窓の外を眺めながら、暫く沈黙していた。
 しかし振り返りじっと俺を見つめ大きく息を吸うと、決したようにぽつりと呟いた。

「――本当は俺……ギダさんの事が……彼女と別れたのも……ギダさんの事が気になって、それで……」
「……柳瀬?」
「俺も良く分らないんっす……ギダさんはその……嫁さん居ると思ってたし……こんな事急に言われても困っちゃいますよね?」

 柳瀬は俺を見つめたまま、寂しそうに微笑んだ。
 俺がそれには答えないで居ると、視線を落とし、項垂れながら

「やっぱ、そうっすよね……こんなの気持ち悪いっすよね……すんません、今の忘れて下さい、酔っ払いの戯言(たわごと)だと思って……」

 柳瀬が俺の事をそんな目で見ているとは、気が付かなかった。
 聞けば柳瀬に彼女は居た。どうやらゲイと言う訳でも無いらしい。
 きっと憧れる気持ちが高じて、柳瀬はそれを好きだと勘違いしてしまったのだろう。
 ここで隼人の事を言ってしまえば、諦めてまた彼女と縁りを戻すかも知れない。
 俺の事が気になって別れたのならば、日にちもそうは経っていないだろう。
 そう思った俺は

「柳瀬、悪いけどお前の想いには応えられない……」
「分かってます、こんな男からなんて……でも気持ち知って貰えて良かったっす。いっそ、そう言う風に思われた方が俺も諦めが……」
「気持ち悪いとか……そんなのは思ってないよ」
「え?」
「俺の今の恋人が……その義兄(あに)だから」
「――へ?」

 驚いたようにこちらを凝視する柳瀬に続けて俺は

「だから柳瀬が思うような悪い奴じゃないし、お前の想いには応えられない、それだけだだから……俺の事はきっとただの憧れが高じただけだと思う。だから今からでも彼女と和解すれば良いよ」
「ギダさん……」

 複雑な表情で見つめる柳瀬に、俺はふと溜息をついた。

「な? だから俺にはもう……柳瀬、今日はありがとうな。俺も本当の事を話せてスッキリしたよ。そろそろ帰らないと、あいつ心配してるから……」

 氷枕を外し、起き上がろうとした時だった。
 腕を掴まれ、そのままベッド上に組み伏せられ驚き、柳瀬を凝視する。

「な……? 柳瀬?」
「……帰さない」

 いつものあどけない柳瀬の表情とは違い、真剣な眼差しで俺の顔を覗き込む。

「柳瀬、俺はさっきも言ったけど……」
「だったら尚更、帰さないっすよ、ギダさん……俺がどんな想いでずっと我慢してたと思ってるんすか? 憧れとか、そんなんじゃ無いっすよ。俺は、本気でギダさんが好きなんす……あの日からずっと想ってました。学校の工場見学で会った日から……」

 柳瀬が学生の時? 懸命に思い出そうと試みるものの、思い当たる節が無い。

「それ、誰かと間違えてるんじゃ……」

 すると柳瀬はドングリみたいな目を丸くして「あー!! ギダさん酷いっすよ!! 俺が工場内迷ってる時に案内してくれたじゃないっすか!!」と、抗議する。
 そう言われて、はっと思い出す。2年前、確かに迷っている学生がいた。

「あ、ああ……あれ柳瀬だったんだ?」
「そうっすよ! あん時はギダさん左目の方、髪で隠れてましたよね? 俺ちゃんと覚えてるっすよ! それなのに……」

 一瞬悲しそうな表情をされ、戸惑う。
 だが柳瀬は、俺に視線を投げると、いつものようにニッと口を横に開き、笑みを浮かべる。

「でも、そんな抜けてるギダさんも、可愛くて好きっす」
「可愛いって……からかうのは止めてくれ」
「からかってなんか無いっす! 俺、ギダさんに初めて会った時から思ってたっす!!」

 少し不貞腐れたような表情を浮かべ、柳瀬は不満そうにしている。

「……まさかとは思うけど、そのアザラシに似てるから、とか……?」
「ち、違うっすよ!! それは後から似てるって思っただけで……」
「だったら何で、男の俺なんか……お前、彼女居たんだろ?」
「……彼女は居たっす。だけど、その子以上にギダさんの事を好きになっただけっすよ。人を好きになるのに、理由なんかあるんすか? じゃあギダさん……だったらその人の事何で好きになったんすか? ギダさんだってお嫁さん居たんでしょう?」

 確かに柳瀬の言う通りだ……。
 俺は多分、ずっと隼人の事が好きだった。それに気が付かないで隼人と似ている麻里に恋をした。いや、正確には隼人の影を麻里に見ていて、好きだと思い込んでいたのだと、今ならそう思う。

 でも、麻里と暮らした3年間、俺は麻里を本当に愛していた……。
 もし、麻里がまだ生きていたなら……それで隼人への想いに気が付いてしまったら?

 俺は麻里と別れてまで、隼人を選んだだろうか……。
 柳瀬は彼女と別れてまでも、俺の事が好きだと言っている……。
 俺にはそんな勇気があるだろうか――――。

 俺は何も言えなくなり、暫くの間沈黙が続た。

                    ――to be continued――


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important as the same<6>

 
 それから乾杯をし色々と話をした。主に仕事の話とか、趣味の話だった。
 内心、麻里の事を何時切り出していいか、頃合いを見計らっていたが、柳瀬はかなりのハイペースで呑んでいたせいなのか、出来上がってきて上機嫌になり話に熱が入る。
 暫くその話に付き合っていると、柳瀬はいきなり立ち上がり、台所へと向かった。

「ギダさん、料理教えて下さいよぉー、俺も割と作るの好きなんすよねぇー」

 冷蔵庫の中に仕舞ってあった、食材を取り出しながら満面の笑みを浮かべる。
 二人で台所に立ち、話ながら料理を作っていると柳瀬は

「ギダさんって凄いっすよね! 仕事もあんなに出来てこんなのもすぐ作れて……」

 尊敬していると言う様な眼差しで、俺をじっと見つめていた。
 正直、そんな風に見られるのはあまり心地良くない。料理も仕事も覚えてしまえば誰だって手際が良くなる。年月を重ねていれば尚更だ。

「何言ってるんだ、柳瀬は俺よりも資格が上だし、覚えたらきっとお前の方が腕前は上だと思うよ」
「そんな事無いっすよ! ギダさんは俺の憧れっす!!」

 子供のように無邪気に笑う柳瀬を見て、俺は晴を思い出していた。

(あいつも大きくなっていたらこんな風に接してくれたのかな……)

 天国に行けたとは思っていても、やはり失った悲しみが癒えた訳じゃない。
 俺は暗い表情をしていたのだろう、そに気が付いた柳瀬は

「ギダさん? どうかしたんすか? もしかして何か俺、まずい事でも……」

 俺は首を横に振り

「いや……違うんだ。実はお前にまだ話してない事があって……」
「……え? なんすか?」

 神妙な顔付きをし、柳瀬はじっとこちらを伺う。

「うん、立ちながらも何だから……これ向こうで食べながらでも……味見してみるか?」

 出来上がったマグロのカルパッチョを一切れ、柳瀬の手の上に乗せ指指し促す。
 柳瀬はそれを不思議そうに眺めていたが、口の中に放り込んだ。

「っ! うっわ! 凄ぇ美味いっす!! 俺、初めて食いましたよ、こんなの!! マグロって刺身以外にこんなのもあるんすねぇ、ギダさん天才っす!!」

 満面の笑みを浮かべ、柳瀬はもう一切れというようなポーズをとった。

「後はあっちで食べような」

 クスクスと笑いながら、俺はそれを皿に盛るとテーブルへと運ぶ。



 テーブルを挟み、向かえ合わせに座ると柳瀬は

「ほんと、俺、ギダさんに憧れるっす。優しいし、何でも出来て……俺なんか全然まだ何も出来ないし、皆の足引っ張るだけだし……」

 いつもの柳瀬とは、少し違う感じがした。視線を自分の膝の上に落とし、寂しげに笑う。

「そんな……まだ入ったばかりで、何でも出来るような奴なんか居ないよ」
「そうかも知れないっすけど、やっぱ俺、悔しいっすよ。未熟なのは百も承知なんすけど先輩達の手際の良さ、見ただけで分かる判断力、自分にはまだまだ欠けていて……」

 そう言うと柳瀬は、ぐいっと煽るようにウーロンハイを一気に流し込んだ。

「それは、仕事をしていたら自然に身に付いてくるものだから……俺なんか最初なんて酷いもんだったよ、オイルエレメントの交換頼まれてさ、違う所外しちゃって、そりゃもう油まみれになるわ、怒られるわでさ」
「え? ギダさんがすか?」
「うん。皆、最初はそんなもんだよ」
「へへ……なんか意外すね、ギダさんでもそんなミスしてたなんて」

 柳瀬はニッと笑うと、先程のマグロを頬張る。

「あーホント美味いっすね、これ! やっぱお嫁さんと一緒に作ったりするんすか?」
「――……」

 とうとう、話さなければならない時が来たようだ。俺は取りあえず麻里の事だけ話そうと考えていたら「ギダさん?」と、声を掛けられ、意を決した。

「……さっき、話してない事があるって言ってたろ? その事だけど……実は嫁さん、事故で去年……今はもう居ないんだ……」
「――……え」

 柳瀬は驚いた表情をすると黙り込んでしまった。

「ごめんな、隠してた訳じゃないんだ……なかなか言い出すきっかけが無くて」

 柳瀬は俯くと、しきりに目の辺りを擦っていた。ふと出した声が震えていて驚く。

「や、柳瀬?」
「……すんません、俺バカっすよね…………」
「あ、そんな、お前が泣くこと無いだろう? それにちゃんと話してなかった俺の方が」

 目の前で後輩に泣かれるとは思っていなくて、どうして良いか分からなくなる。

「……ギダさんの気持ちも分からないで、調子に乗って……俺、ホントどうしようもない奴だ……謝ったって済む事じゃないのに……」
「そんな、大袈裟な……大丈夫だよ、今は兄貴も居るし……」

 すると、柳瀬はティッシュで鼻をかみながら、こちらを見上げ

「でも……本当の兄弟じゃないんすよね?」

 思わず隼人の事を話題にしてしまい、先を考えていなかった俺は正直、焦った。

「……まぁそうだけど、あいつとは高校からの付き合いだし」
「え? じゃあ同級生だったっすか? その人と……」
「うん、まぁ……」
「そうだったんすか……」

 取りあえずは無難に済んだと思っていた。が――。

「ギダさん、失礼を承知で聞きますけど……なんでその人と一緒に住むことになったんすか? だっておかしいじゃないすか? 今はお嫁さん居ないんだったら……」

 俺は柳瀬に本当の事を話すか迷っていた。暫く沈黙が続く。
 するといきなり柳瀬は立ち上がって

「ギダさん、もしかして脅されたりしてるんじゃないすか? その人ちゃんと働いてるんすか? あっ!! もしかして!! 一緒に住んでるのって財産とか狙ってるからじゃないっすか!?  確かギダさんて持ち家でしたよね? 妹のだから俺にも権利があるとか何とか言って来てるんじゃないっすか!?」

 急に熱い口調で話しだす柳瀬に、俺はぶっと吹出し笑った。

「無い無い! あいつはそんな奴じゃないよ」と、グラスを手にしてウーロン茶を飲み干した。
 味の異変に気が付くと、全身の血が沸騰するかの如く身体中熱くなる。
 俺は間違って柳瀬のウーロンハイを飲んでしまっていた。

(……ヤバイ! 酒だった!!)

 しかし俺のそんな様子に気が付く様子も無く、柳瀬は続けた。

「そんなの分かんないじゃ無いっすか! 今はそうじゃなくても、後々言いがかり付けて居座る気だとしたら……」
「そうじゃないんだ、柳瀬……」
「じゃあ、どうして……ってあれ? ギダさん、顔、真っ赤っすよ?」
「ああ、どうも柳瀬のやつ、間違って呑んだらしい……」

 段々と息が上がって苦しくなってくる。意識も朦朧としてきて、柳瀬を見上げるのが精一杯だった。




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important as the same<5>

 
 柳瀬は俺の車に気が付くと、手を振りながら駐車できる場所を案内した。

「やー! すんません、何か我侭言っちゃって……でも、ギダさんに来て貰えるなんて! 俺、感激っすよー!! ささ、汚い所っすけど上がって下さい!」

 嬉しそうに出迎え、部屋の中へと案内される。俺はまた柳瀬が犬っぽく見えてしまい、クスクスと笑うと

「や、すんません、ホント散らかってて」と、勘違いしたのだろう、部屋に散らばっていた雑誌をせっせと拾い集めていた。
 しかし本人が言うほど散らかっては無く、柳瀬の誤解を解こうと

「違う違う! そうじゃなくて。柳瀬って本当なんか、大型犬みたいだなぁーと思って」
「あー! 酷いっすねぇーって、でも俺、よく言われるんですよ、なんでかな?」
「自分の事って案外自分じゃ分からないものかもな、俺も自分がアザラシみたいだなんて思ってなかったし」

 クスクスと笑いながら、俺は買い物袋を台所に置く。

「あ、ギダさん、違いますよ! 大人のアザラシじゃなくて、子供の方ですよ!!」

 大人と子供に何の差があるのか、よく分からなかったが取りあえず頷いておく。
 すると柳瀬は満足そうに笑うと「そうそう、その感じ!」と、何かのポストカードを見せてきた。

「ね? 似てるでしょ?」

 ポストカードに視線を移すと、白い毛玉のようなアザラシが氷の上を仰向けで転がり、空を眺めている傍を、ペンギンが歩いているものだった。

 俺は初めて、そのゴマフアザラシという生き物をマジマジと見た。
 アザラシってこんな生き物だったのか……水族館で見た事があるけれど、アザラシだのドドだのアシカだの、それらは皆全部同じような感じで区別が付かない。

 興味が無い事には、本当に関心が無いのだと改めて気が付く。
 それにしても、このまるまるとした生き物が俺に似てるとは……。
 複雑な心境になりながら、苦笑いし

「……柳瀬だって、酷いじゃないか。これが俺に似てるって……」
「いや! よく見てくださいよ!! この辺とかこの辺とか、もうそっくりで」

 指差す先に視線を移すと、真っ黒い瞳が眠たそうに半開きになっている。

「ギダさん、昼飯食った後って、いつもこんな顔してるんすよー」
「――……今度から気を付けるよ」
「いやいや、そうじゃなくて!! あー!! もう、分かんないかなぁ」

 自分の言いたいことが伝わらないもどかしさなのか、柳瀬は床の上をゴロゴロと転がっている。その様子を見ていると可笑しくて、つい笑ってしまった。

「柳瀬だって、そうしてると犬が転がってるように見えるよ」
「うー、もう良いっすよ、犬でも何でも。ところで、腹減りません? さっき買って来た惣菜で良かったら一緒に……」
「だったら、簡単なものでも作ろうか?」
「あ! それだったら俺も教えて貰いたいんで、後で一緒にやりましょうよ! 先になんか飲まないっすか?」と、床から起き上がり、グラスを用意していた。

 俺は取りあえず食材を近くにあった冷蔵庫に仕舞い、部屋の奥に向うと小さなテーブルには先程買った惣菜と、柳瀬が好きであろうと思われる焼酎とウーロン茶が置かれていた。

 柳瀬は機嫌良く座椅子を差出し「良かったらこれに腰かけて下さいよ! 何飲みます?」

 そこに座るように促し、俺はそれに従い腰を下ろした。

「んじゃこのウーロン茶でも」と、自分でグラスに注ごうとした瞬間
「やだなー! 俺に注がせてくださいよ!」

 柳瀬はペットボトルを俺から奪うように取り上げると、グラスに注ごうとしたが、はっと何かに気が付いたように
「あ、すんません、俺の好みしか置いてなくて……そうだ!! ギダさんさえ良かったら泊まっていきません? そしたら酒も飲めるだろうし! 良かったらそこのコンビニでビールでも買って来ましょうか?」

 柳瀬はすくっと立ち上がり、財布を尻のポケットに仕舞うと、部屋を出ようとした。

「いや、待ってくれ柳瀬! 俺は酒は呑まないんだ。それにあんまり遅くまでは……」

 そう答えると柳瀬は残念といった表情をする。

「そうっすよね? 今日はギダさんに無理に来てもらったのに……へへ、ちょっと浮かれちゃってました! すんません! それにしてもギダさんって酒、強そうなんすけどね?」

 座り直すと、先程のウーロン茶を注いだ。



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important as the same<4>

 
 それから数日が平穏に過ぎて行った。
 変わらず仕事を終えると、明日からは三連休だ。隼人は午前中残った仕事を片付けると言っていたが、それでもいつもより長く隼人と過ごせる時間が嬉しかった。

(最近手の込んだ飯、作ってなかったなぁ……よし、久し振りに気合入れるぞ!)

 俺は仕事を終えると、休み日の為のレシピを考えながら、二十四時間営業のスーパーマーケットへと足を運ぶ。
 買い物カゴを手にし、食材を選んでいると「あれ? ギダさんじゃないっすか?」と、聞き覚えのあるその声に振り向く。

「あれ? 柳瀬か」
「やっぱそうだ! 買い物、お嫁さんに頼まれたんすか?」

 屈託の無い笑顔で話かけてくる柳瀬に「ああ……まぁ」と、言葉を濁し返答する。
 すると、柳瀬はまるで犬が鼻を突っ込むように、俺のカゴの中を覗き

「へぇ! ギダさんのお嫁さんって結構手の込んだもの作れるんすねー!! 羨ましいっすよ!! 俺なんか……」
 自分の持っているカゴを見せると「ね? 惣菜ばっかり」

 持ち上げたカゴを下ろし、がっかりしたような表情をした。

「柳瀬も何か作ってみれば良いじゃないか? 作ってみたら案外楽しかったりするよ」
「え? それじゃギダさん、料理したりするんですか?」
「少しくらいなら……テレビで旨そうで簡単そうなの、ほら、えっと何だかって俳優の人が作ったりしてるだろ? それを真似てみたりとか」
「ギダさん偉いなぁ!! 俺なんか彼女居たら、全部任せっきりにしちゃいますもん。ギダさんのお嫁さんてどんな人なんだろう? 見てみたいなぁ……あ! 今度ギダさん家遊びに行って良いっすかね? そん時、料理の仕方とか教えて下さいよー!」

 俺は段々と自責の念に駆られる。今はもう居ない麻里の事を、こうして居るように話すのは抵抗がある。本当の事を話してしまったほうが、気が楽だろうか……。
 だけど、隼人の事は何て説明すればいい? 思考が纏(まと)まらずにぼんやりしていると

「……ギダさん?」

 肩に触れられ、はっと我に返る。

「あ、あぁ、ごめん。考え事してた」
「そうだ! 明日行っても良いっすかね?」
「え?」
「ギダさん家」
「あ、いや……今ちょっとうち、色々あって……」
「そ、そうっすよね? すんません、調子に乗っちゃって……あ! だったら俺ん家は?」

 柳瀬は目を輝かせながら誘って来たが、俺は隼人の事もあるしと思い

「悪い、明日はちょっと……」
「あ、そう言えばお兄さんも居るんですよね、皆一緒にどうすか?」

 柳瀬は執拗に誘ってくる。よっぽど暇なのだろうか……。
 何とか断る手段は無いものかと、模索していると柳瀬は寂しそうに項垂れた。

「はぁー……なんか最近ダチも忙しいって遊びに来なくなったし、彼女には振られるし散々で俺、滅入ってて……すんません、ギダさん忙しいのに……それじゃ、また」

 寂しそうに微笑むと軽く会釈し、立ち去ろうとした。
 そんな事情だったのかと、俺は慌てて柳瀬を引き止める。

「いや、大丈夫! その、明日は予定があるから無理だけど、今からだったら何とか……柳瀬の家寄るくらいなら大丈夫だよ」

 すると柳瀬は再び目を輝かせ

「ええ!? 良いんすか!! 俺ん家散らかってますけど!! 良かったら!! わー! 超嬉しいっす!! それじゃ会計しちゃういましょう!」

 意気揚々と俺の腕を掴み、レジへ向った。
 買い物を済ませ、駐車場まで来ると柳瀬は「俺ん家わかりますよね? それじゃ待ってますから!」と、自分の車に乗り込み走り去って行った。

 テールランプが見えなくなるのを確認すると、俺は携帯を手にし、隼人に連絡を入れる。
 しかし運転中なのか繋がらない。取りあえず遅くなるとメールして柳瀬の家へと向う。
 この間の事もあるし、隼人が勘違いして怒ってしまうのではないかと少々不安ではあったが、寂しそうにしている柳瀬の事が放っておけなかった。

 独りでいる時間が、どれほど苦痛かと言う事は身に染みている。
 それに柳瀬に本当の事を話しておいたほうが、後々気が楽だ。
 しかし、麻里を失った事実は話せても、隼人の事は何と説明したら良いものだろうか。
 隼人を愛している事実は変わらないのだから、周りから何と言われようと構わない。
 だけど、隼人には迷惑は掛からないようにしないと……。なるべくなら、この話はしたくない。

 でも、柳瀬がこう頻繁に誘ってくるようであれば、この話もしなくてはいけなくなる。
 俺がそう言う嗜好なのだと分かったら、柳瀬は気味悪がって、もう誘って来なくなるだろう。そのほうが良い……変に誤解されて隼人を失う方が怖い。
 そんな事を考えているうちに、柳瀬のアパートが見えてきた。



                  ――to be continued――



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important as the same<3>―R-18―

 
 俺はそれを見届けると携帯を取り出した。時計は二時近くを示していた。
 届いてたメールを読んでみると《何時位に帰れる?》とだけ書かれていた。

(……隼人さすがに寝てるよな、起こしちゃ悪いし……)
 
 メールの返信をやめ、携帯を閉じる。貯め息をつき、そのまま自宅へと向った。
 マンションの駐車場に車を止め、荷物を持ち、ふと自室のある辺りを見上げると、殆どの窓が暗い中、自宅のリビング辺りにぽつんと光が点っていた。

 俺は慌ててエレベーターに乗り込み、玄関の扉を開けるとリビングに向かう。
 隼人はソファーに腰掛け、テレビの画面を眺めていた。俺に気が付くと、ニコッと微笑んで「お帰り」と、声を掛けてくれた。

「ごめん隼人、遅くなった……」
「いや、無事なら良いよ、疲れただろ? 風呂沸いてるから」と、隼人は笑顔で答える。

 しかしテーブルの上に置かれた灰皿には、山のような吸い殻があった。
 俺からの連絡が無かった事で、心配していたのかも知れないと思うと胸が苦しくなる。

「本当にごめん……途中で連絡入れようと思ったんだけど、会社の後輩が居て……。残業終わってから飯食ってたから……」
「そっか」
「今の時期、丁度忙しいのと、新人指導で結構遅くなるんだ。暫くこのくらいの時間になるかも知れないから、隼人、先に休んでても良いよ。隼人だって疲れるだろうし……」
「ん、俺も遅くなる事があるから別に……それはお互い様だろ?」

 笑顔でそう言うと、隼人は灰皿を片付けにキッチンへと向かった。
 隼人のその言葉に、安堵の吐息を漏らすと、キッチンから隼人が声を掛けてきた。

「涼太、何か飲むか?」
「あ、サンキュ。じゃあコーヒーでも」

 俺はソファーに腰掛け、テレビに映し出された天気のニュースを見ていた。
 キッチンから戻ってきた隼人から缶コーヒーを受け取ると、隼人の手にしている缶ビールにそれを当て「お疲れ」と、乾杯した。

 テレビの画面を眺めてるうち、先程柳瀬が言っていた占いの話を思い出す。

「そう言えばさ、なんか動物占いってあるんだって?」
「何か前に流行っていたような……それが?」
「うん、それがさ、今日後輩に俺、ゴマフアザラシの子供みたいだって言われて」
「……へぇー」
「そいつがさ、犬みたいな奴なんだけど、そいつからアザラシ言われるとは思わなくって。俺ってさ……」

 話の途中で、隼人は俺の腕を引き寄せると抱き締めキスをした。
 早急な隼人の行動に、困惑する。そんな俺の気持ちなど、お構い無しと言った様子で、隼人は舌を絡ませてきた。
 隼人の香が俺の口腔内を埋め尽くす。いつもよりきつい煙草の香りに咽そうになる。
 息をつく暇も無いほどの激しいキスに戸惑いながら、俺は一度隼人から離れた。

「ちょ、隼人? なんか……」

 そう言う俺の口を塞ぐように、隼人は再び唇を重ね合わせる。困惑しつつも身体が反応し始めると、隼人は俺をその場に組み伏せた。

「隼人、どうしたんだよ!? お前らしくもない……」
「俺らしいって、何だよ?」
「いつもはこんな風じゃ……」
「……」

 隼人は無言のまま、怒ったような表情を浮かべていた。

「ごめん……連絡しなかった事、やっぱり怒ってるんだろ?」
「……そんな事は気にしてない」
「じゃあ何で……」

 隼人はそれには答えず、再び唇を重ねた。それと同時にシャツのボタンに手を掛けると引き剥がすように一気に外して行く。

「ちょ、ちょっと待ってって!!  本当にどうしたんだよ!?」
 隼人は俺の言葉など耳に入っていない様子で、激しく愛撫をする。痛いほどに首筋を吸い上げられ、俺は慌てて隼人を引き離した。

「あ、バカ! そんな事したら痕が……」

 しかし、またキスをされ強引に口を塞がれる。俺が何か言う事を拒絶するように……。
 口では怒ってないと言いながらも、連絡を入れなかった事に腹を立てている……?
 隼人が口にしたビールのアルコール分で、少し酔ってしまったらしい。
 思考が混乱する中、気が付けば俺は隼人に抱えられバスルームに向かっていた。

 バスルームの湯煙が立ち込める中、浴槽に入れられると、そのまま激しく攻め立てられ、眩暈(めまい)が起きるほどの快楽に身を委ねると、隼人も頂点に達したようだった。
 それから隼人は俺から無言のまま離れ、自分の部屋に向って行ってしまった。

 俺は話し出すきっかけを失い、どうする事も出来ないまま暫く佇んでいた。しかし、いつまでもそうしてる訳にも行かず、身支度を整え自室に戻ろうとバスルームを出る。
 途中、隼人の部屋の前を通り掛かった。すると中から隼人が俺に話かけてきた。

「……涼太、さっきは悪かった」

 その声は、いつもの覇気のある隼人とは違い、どことなく沈んでいるようだった。
 隼人だって疲れているのに、俺の事を待っていてくれた。
 それなのに、俺は……そう思うと胸の奥がズキズキと痛む。

「いや、連絡入れなかった俺の方が……」

 すると足音が近付いてドアの前で止まる。ドア越しから消え入るような声で隼人は

「そうじゃない……涼太が他の誰かと一緒だったかと思うと……それに、そいつの事をそんな楽しそうな顔して話されたら頭に血が上って……済まなかったよ」と、呟いた。

(……え? まさか……隼人が……嫉妬してる?)

 俺は隼人がそんな風に思っていたとは考えていなくて、驚きを隠せなかった。
 ドアを開け隼人を見上げると、耳まで赤くして視線を泳がせている。

「隼人それって……?」
「……お前、俺の事、よく天然って言うけど、お前も相当天然だと思うぞ?」

 隼人は視線をずらしながら、頭を掻いている。いつも隼人だ。
 安堵と嬉しさが込み上げ「ごめん……」と、言いながら俺は隼人を抱き締めると、速く波打つ鼓動が伝わってくる。

「こっちこそ、ごめんな……」

 恥ずかしそうに呟いた。そんな隼人が愛おしくて堪らなくなる。

「今日は、こっちで寝てもいい?」

 こくりと隼人は頷くと、俺の頬にそっとキスをして

「ベット、もう少し大きいの買おうな。今度からずっと一緒に寝よう」

 その言葉に頷き、二人でベットに潜り込む。繋いだ掌から伝わる体温と、隼人の匂いが心地良くて、気が付けば深い眠りへと誘(いざな)われていた。


                   ――to be continued――

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important as the same<2>

 居酒屋までの距離は大した事無いが、柳瀬の家は俺の家の反対方向だった為、そのまま車を出した。
 5分程すると目的地に着く。
 小さいながらも繁盛している店内で適当に注文を済ませ、俺は携帯を手にした。
(隼人もう寝てるかな……)
 見るとメールが届いていた。隼人からだった。
 この場で読みたい気持ちを抑えつつポケットに携帯を仕舞うと、その様子を見ていた柳瀬は

「お嫁さんからすか? すんません、こんな夜中に食事なんか誘っちゃって……」
「いや、そう言うんじゃ無いよ、迷惑メールだから」
「ああ、なんだ、俺も結構入りますよ! ホント迷惑っすよね! あ、だから迷惑メールって言うんですよね?」

 にっと笑いながらウーロンハイのジョッキを片手に、料理を頬張りながら機嫌よく食事をする柳瀬が、子供みたいで、微笑ましくある。いつのまにか柳瀬の行動一つ一つに目を配らせてしまっていた。
 それに気が付いた柳瀬は、何故かそわそわし出し、ふと何かを思いついたように話題を振ってきた。

「ギダさん、動物占いってやったこと有ります?」

 唐突な質問に、訳が分からず「何だ? それ」と、返す。

「結構前に流行ったんすよ! 学生の頃、女の子が持ってきた占いかなんかの本に書いてあって。あれ、結構当たるんすよね! ちなみに俺、狼でした!!」

 その答えについ、ぶっと吹き出す。すると柳瀬はきょとんとしてこちらを見た。

「いや、ごめん、ごめん。なんかイメージぴったりだなと思って」

 クスクスと笑いながら料理に箸を運ぶと、おもむろに柳瀬は携帯を取り出し

「そうっすか? えーと確か……あ、あった! ギダさん生年月日は?」

 どうやらその占いのサイトを見ているらしい。別に興味が無かった俺は

「いや、俺、別にそういうの興味無いし……」と、率直に言うと
「占いの動物には居ないっすけどね、なんかギダさんて、ゴマフアザラシの子供っぽいって言うか、あ! 見た目がですよ? こう、目がくりっとして黒目がちで大きいし、ぽわんとしてるって言うか……なんか見てると癒されるんすよねー」

 柳瀬の言葉に、自分が人からどう見られてるとか、あんまり考えた事が無かった俺は首を傾げながら、その言葉の意味を考えてみる。しかし、ゴマフアザラシの子供って……と思い、複雑な心境になりながら生返事をした。
 そんな俺の心境を感知したのか、柳瀬は携帯を仕舞うと、別の話題を振ってきた。

「そう言えば、ギダさんのお嫁さんて歳、幾つなんすか? ギダさんは俺の4つ上だから26歳っすよね? いつ結婚したんですか?」
「ん……柳瀬と同じ歳かな、3年前に……」
「わ! 良いなぁ!! どこで知り合ったんすか?」 

 柳瀬に悪気が無いのは百も承知だったが、俺はその話について追求されるのが嫌だったので適当に答えると、仕事の話にさり気なく移した。

 すると柳瀬は目を輝かせ、将来の夢や車について語っていた。
 柳瀬は結構酒豪らしく、しこたま飲み、いい具合に出来上がっていて長々と話は続く。
 携帯を見ると、既に午前1時を過ぎていた。周りの客も引けて来た為、柳瀬に帰るように促すと、名残り惜しそうにしながら「ああ、まだギダさんと話したかったなぁー。でも明日も話せるから良いかぁー」と、独り言のように呟いていた。

 その店を後にし、柳瀬を自宅まで送り届ると「ごちになりやしたー! ギダさん、明日も頑張りましょうね!」と、上機嫌に手を額に当てて敬礼のような挨拶をし、アパートの中へと入って行った。



                   ――to be continued――


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important as the same<1>

 十年という時を経て、俺達は恋人同士になった。
 あの日、麻里が教えてくれなかったら、俺はずっと気が付かずに大切な人との日々を無駄に過ごしていたかと思うと、正直ぞっとする。

 隼人は、俺が思っていた以上に愛してくれていた。それが分かった時、凄く嬉しかった。
 それなのに、俺はまだ隼人に対して、素直になれないでいる。
 同性同士ということもあって、正直に言えばどう接して良いかまだ分からない。

 肌を重ねあう今となっても、それは変わらない。多分、同等でいたいという自分の中のコンプレックが邪魔をして、気持ちを素直に表せないのだろうな、とは思う。
 初めて肌を重ねたあの日からは、今までの互いの溝を埋めるように求め合った。

 俺の名を呼び、心から俺を欲する隼人の熱い眼差しが、心地良くもあり、しかし時には困惑する事もある。俺はこのままで良いのかと。
 身も心も隼人に溺れて行く自分が怖かった。
 この幸福は何時まで続くのだろう……そんな考えがふと過ぎる時がある。
 もし、隼人を失うような事態に陥った時、俺は自分を保てるのか……自信が無い。
 それ程までに、深く隼人を愛しているのだと、自覚はしているんだけど……。

 麻里のお陰で左目が見えるようになると、俺はすぐに車の免許を取得した。
 隼人は別に無くても足になってやると言ってくれたが、麻里の事もあるし第一、車の整備士が免許を持っていないのはシャレにならない。一旦辞めた会社ではあったが、事情を知った会長の計らいがあり、休職復帰と言う形で俺は職場に戻っていた。



 その日、納期が遅れている車を整備する為、俺は残業する事にした。
 春のこの時期は、忙しい。車検やら、免許取立てのやつが車をぶつけたりして、整備に追われる。酷い時は朝方まで残業しても追いつかなくて、上からクレームが付いたりする。

(今日も遅くなりそうだ……隼人の飯作っておけば良かったな……)

 溜息をつき、携帯を手にすると、隼人に連絡を入れる。

「あ、俺。うん、ちょっと仕事終わらなくて……悪い、うん、それじゃ」

 携帯をポケットに仕舞うと、また軍手を嵌めて作業に戻った。

「ギダさん、彼女っすか?」

 今の会話を聞いていたのか、今年から入った新人の柳瀬隆(やなせたかし)が、屈託の無い笑顔で俺に声を掛けて来た。返答に困っていると、それに気が付いた周りの連中が
「柳瀬! 無駄口叩いてる暇があったら手ぇ動かせや!!」と、気を使った様子で柳瀬を諭した。
 柳瀬は事情が飲み込めず、怒られたとでも思ったのか、慌てて「すんません!」と、工具を手にして車のエンジンルームを開け、そのボンネットに身を隠す。

 俺は周りの連中に会釈し、柳瀬の横に行くと背中を軽く叩き

「柳瀬、違うんだ、皆、お前の事を叱った訳じゃない……俺ん所さ、ちょっと色々あって……兄貴なんだ。今、事情があって一緒に住んでるんだよ」

 柳瀬は、安心したのか、緊張して強張らせていた肩の力を抜く。

「そうだったんすか、すんません。俺、気ぃ利かないって言うか……」
「いや、こっちこそ悪かったよ」

 すると柳瀬は、ほっと吐息を漏らすと微笑み

「ところでギダさん、今日は残るんすか?」
「ん、納車遅れてるからな。クレームが来ないうちに仕上げないと」
「じゃあ、俺も残って良いっすか?」
「柳瀬、入社してからずっと残業続きで大丈夫か? 慣れない仕事で疲れただろ? 今日くらい無理しないで帰ったほうが……」
「俺、体力には自信あるんっすよ! 大丈夫っす!! それにギダさんに教えて貰いたい事あるんで、一緒に残ります!!」
「教える事なんて……俺よりもっと知ってる佐藤さんとかの方が……」
「いえ、ギダさんって凄い器用じゃないすか、そのやり方どうやったら出来るのかなぁって、前から気になってて。邪魔しませんから……」

 俺の顔を首を傾げ覗き込みながら、熱心に語る柳瀬に根負けし、微笑む。

「分かったよ、それじゃまずはこの車から片付けよう」

 俺の返答に上機嫌になった柳瀬は「はい!」と、鼻歌交じりで作業を始めた。

 柳瀬は車が凄く好きで、仕事熱心な後輩であった。
 後輩とは言っても、資格は専門学校を出た柳瀬の方が全然上だ。
 俺が柳瀬と同じ資格を取ろうと思えば、あと3年の実務経験が必要になる。

 だが、柳瀬は机上の理論より実践の方が大切だと、他の先輩たちも含め、俺の事を立ててくれている。
 正直、この業界は資格が物を言う。でも、そうやって、若干22歳で人を立てる事の出来る柳瀬は、将来上に立つ事になっても、人を傷つけるような事はしないだろう。

 いつも明るくて、作業場に柳瀬が居ると皆、笑顔になる。人懐っこい大型犬のような、そんな感じが見た目にも表れていて、ちょっと前に出っ張り気味の鼻と、どんぐりみたいに丸い目、大きな口元は笑うと八重歯が二本、ひょっこりと顔を覗かせる。茶色い短髪は少し硬そうな感じでツンツンと跳ね、ゴールデンレトリバーの短毛種を彷彿させた。

 黙々と作業を進める中、他の職員が1人、2人と次々に帰り、残るは俺達だけになった。
 暫くの間、沈黙が続いていたが、俺の横で作業していた柳瀬は、ふと思い出したように

「でも俺、兄弟いないから羨ましいっすよー」と、笑顔で話し掛けて来た。
「そうなんだ? 俺も一人っ子でさ」
「――へ?」

 柳瀬は作業する手を止め、、どんぐりみたいな目を更に丸くして俺を凝視した。

「そっか……柳瀬は知らなかったんだよな。俺、結婚してて、その兄だから……」
「ええ!? じゃあ、お嫁さんのお兄さんって事すか?」
「まぁ、平たく言うと義兄(ぎけい)って事だよね」

 すると柳瀬は複雑な表情を浮かべて「なんか……ホントすんません」と、一言だけ言うとまた黙々と作業を始めた。

「いや、そんな謝る事なんか何も無いよ……っと、もうこんな時間か」

 柳瀬を指導する傍ら、車を仕上げ、工場の時計を見ると二十四時近かった。
 俺は柳瀬に「今日はもう止めにして、また明日にしよう? お疲れさん」と、声を掛け帰り支度を始めると、隣で工具を仕舞っていた柳瀬の腹がぐるると音を立てた。
 柳瀬は頭を掻きながら苦笑いすると「ギダさん、腹減りません? 俺もう腹減りすぎて」
 疲れきった表情で柳瀬は食事に誘って来た。

「え? あぁ! 悪かったな、気が付かなくて……奢るよ!! え……と、この時間だとそこの居酒屋しか空いて無いけど、柳瀬呑むか?」
「えっ!? 奢ってくれるんすか!! やっりぃー!! 呑みます、呑みますよー!! で、ギダさんは?」

 途端に元気を取り戻した柳瀬を見て、俺はクスクスと笑いながら

「俺は飯だけにするよ、それじゃ帰り車で送ってやるから」
「えぇー!! 良いんっすか!?」
「柳瀬、今日も頑張ったからな」

「それじゃ遠慮無くお言葉に甘えさせて頂きまっす!! ギダさんってホント優しいっすよね!!」と、口を大きく開けニカっと笑う。まるで後ろに尻尾があって、それが左右に振れてるように見えて、俺はクスッと笑いながら「じゃあ行こうか?」と、会社のシャッターを閉めると駐車場に向かった。



                   ――to be continued――

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important as the same ――温度差――

important as the same ――温度差――

十年と言う時を経てimportant as the same『同じく大切なもの』と認識した、隼人と涼太。
しかし、涼太にはまだ戸惑いが有り、温度差が生じている。
隼人の気持ちは分かるのだけれど、素直になれない――。
そんな涼太の心情を綴ったnot the something第二部。

今回のお話は、少し短めです。

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not the something <30>―R-18―最終話

ここからはR-18指定です。閲覧注意です。

えーと……、ちょっと言い訳させてください^^;
これ、私が初めて書いたEROシーンなんですね。それ以前は書いた事がありませんでした。

今も苦手意識は拭えませんが、この頃はERO無くなれば良いと思うほど、書くのが苦手でした。
他の人が書いたのは全然平気で読めるのに、やはり自分が書くとなると……orz
資料も無い、手探り状態でしたので、そりゃもう……悲惨です(苦笑)
未だに推敲が出来ない産物となりました……orz←なので、今回も出来なかったとかね^p^
そのまま載せちゃった、ごめんね!
急展開過ぎて、びっくりするかも><;;;;;

それを踏まえた上で、閲覧して頂けると有り難いです^^;



(まさか……泥棒? いや、動物とか? 涼太、どっかから何か拾ってきたか?)
 涼太は寂しがりの所もあるから、俺が居ない間にペットでも飼ったのだろう。
 以前、俺が動物は飼ったことが無いので分からないと答えたら、寂しそうにしていた事を思い出す。なんだったか、犬を飼うのが夢だったとか――。
 飼ってみれば結構可愛いかも知れないが、俺はどうして良いか分からず、固まった。
 きっと間違って俺の部屋に紛れ込んだに違いない。呼吸の様子からして結構大きな犬かも知れないと思い、そいつが吠え出さないようにとそっと振り返る。
 暗闇に目が慣れて、ぼんやりと影が映り出されると、違和感を抱いた。
 俺の予想に反して、そこには――……。
 なんと涼太が、俺の枕を大事そうに抱き抱え、眠っているじゃないか!
 俺は一瞬、目を疑った。
(え、えぇっ!? なんで涼太が俺のベットで……?)
 今にも心臓が飛び出しそうな位、胸高らかに心音が耳元まで木霊するのを必死に堪え、息を殺し近寄ってみた。
 涼太は、ぽつりと俺の名を呼んだかと思うと、寝息を立てている。その頬には涙を擦ったであろう跡があった。
 それを見たら、頭の中が真っ白になり、気が付いた時には、涼太の唇に自分の唇を重ねていた。
「ん……っ? ――……は、隼人!?」
 涼太は俺に気が付き、慌てて起き上がると
「ごっ……ごめんっ!! 今日も帰らないと思ったから……今、部屋に戻るよ」と、慌てふためきながら立ち上がろうとした。暗闇でも分かるほどに涼太の頬が赤く染まっている。
 これは間違いなんかじゃない。涼太も俺のことを想ってくれている。そう確信したら、行動を起こさずにはいられなかった。
 その腕を掴み、涼太の瞳を見つめ「……寂しい思いさせて悪かった」と、もう一度キスを落とす。しかし、やはり自分の勘違いかも知れない……そんな不安が頭を掠める。
 涼太の反応が気になる。俺はそっと目を開けてみた。
 涼太は、嫌がる事なく頬を上気させ、されるまま静かに唇を合わせている。
 その様子に安堵し、一度、唇を離すと、俺は今までずっと仕舞っていた胸の内を、涼太に明かした。
「俺、今までどうしていいか……その、わからなくて……。あの時も手が触れただけで避けられたと思ったし……」
 すると涼太は首を横に振りながら
「俺も……どうしていいか、わらなかった……あの時、心臓がバカみたいに速くなって、もう本当に頭が真っ白になっちゃって――。知られたく無かったんだ……恥ずかしくて」
目を泳がせながら、しどろもどろに答える涼太が堪らなく愛しい――。
 涼太を抱き締めながら押し倒し、唇を塞ぐ。
 涼太が可愛い、愛しい。溢れる思いの丈を思いっきりぶつけた。
 零れる吐息の隙間を縫い、舌を絡ませ激しく吸い上げた。吐息と共に涼太の微かな声が聞こえる。聞き慣れたはずの声とは違う、色を纏ったその声は、次第に俺の理性を奪っていく。
 俺は涼太の胸にそっと指先を這わせた。小さな突起が固くなり、俺に触れと言わんばかりに主張してくる。その先を摘むと涼太は身体をビクリと反らした。
「あっ、……は……隼……人」
 今まで聞いた事の無い涼太のその声に俺は、昂ぶりを抑えることが出来ず、更にもうひとつの尖りに指を這わせた。
「ふ……んっ……」
 咽の奥から搾り出すような、切な気な、妖艶極まりない声を放つ涼太に、俺は溺れる。
 男同士だからとか、そんなの関係ない。涼太が欲しい、純粋にそう思った。
 首から舌を這わせ、徐々に下へと移動する。
 その度にいちいち反応して、息を荒げながら身を捩る涼太――
 愛おしさは暴走するばかりだ。
 胸を吸い上げながら、涼太の大切な部分に手を伸ばすと、身体を反らせ更に身を捩りながら「あっ」と、吐息混じりの小さな声を漏らす。
 涼太の屹立は、激しく脈打ち下着を微かに濡らしている。
「やっ……見るなよ……恥ずか……しい」
普段は絶対見せないような仕草。もじもじとしながら、目を泳がせてる涼太。
誰がこの衝動を止められるだろうか――。
「涼太の全部が知りたい、お前の全部が……見たい」
 涼太は頬を上気させ、瞳を潤ませながら俺を見つめると、そっと上瞼を閉じた。
 それを俺は涼太の返事と見なし、下着を脱がせると涼太自身を掌に包み、ゆっくりとその手を自分に施すように動かした。
 びくんと涼太は身体を反らすと小さな声で
「んっ……は……やと……」と俺の名を呼び、頭を引き寄せ唇を重ねる。
 涼太が俺を求めている、そう思ったら嬉しくて仕方が無くなる。もっと涼太を悦ばせたい、必要とされたい――。
 互いを貪るような激しいキスに、俺の胸は昂りを増していく。
「涼太、愛してる……」
 耳元で囁きながら、溢れる想いを抑えられず、手を速めた。
 すると身体を震わせ、身悶えしながら涼太は
「だっ……そんなにしたら……うあっ……イ……クっっ」
 間もなく、白濁を散らし、涼太は身体を何度もびくつかせた。
 息を荒げながら陶酔したように瞳を潤ませている姿は、耐え難いほどの衝動を突き立てる。

 しかし、相手が落ち着くまでは、嫌がられてしまう。
 自分は鈍いから、そこを汲めずに突っ走ってしまったら本末転倒だ。
 別に身体を求めてるわけじゃない、心が欲しい。それだけだから――。
 一旦落ち着かせるために、深く息を吐いた。
(涼太って……凄く敏感なんだな……)
 それはもしかしたら、俺が相手だからと思うとジンと胸の奥が熱くなった。   
 涼太に軽めのキスを落すと、枕元に置いたあったティッシュでそれを丁寧に拭き取り、ごみ箱に捨てた。しかし、ある事に気が付く。
 空だったはずのその中は、既に幾つかのティッシュが捨ててあり、独特の臭気を放っていた。
「涼太……もしかして……?」
 俺が質問すると、今までぼんやりと宙を舞っていた目の焦点が合い、カッと火がついたように顔を真っ赤に染めた。
 涼太は目を逸らしながら恥ずかしそうにして「いや、その……」と、今にも消え入りそうに言った。
 今まで見せた事の無いその可愛らしい姿に、苛めたくなるような衝動が起きる。
涼太のもっと違う顔が見たい、知りたい、俺だけに見せて欲しい――。
 突き上げる衝動は留まる事を知らないようだ。
「一人で……したのか?」
 目が逸らせないように顔を両手で包み、俺に向けさせ、わざと意地悪く言う。
すると観念したように、顔を真っ赤にしたまま
「だって、どうしていいか……隼人と……その……――あの……セ、セックスしたいなんて言ったら、嫌われそうだったし……」しどろもどろに白状した。
(俺……と? じゃあこれは、俺を想って……?)
 俺も同じだった。涼太に嫌われたくない、だから自慰していた。夢の中で涼太を抱きながら……。しかし、そうしたところで虚しさだけが胸の中を支配しただけだった。
(そうか、それで敏感になっていたのか……)
 涼太の胸の内を聞いて天にも昇る気分になる。そんなにも求められているとは気が付かなかった。自分は本当にどこまで鈍いのだろう……。
 涼太は強引にしなければ、自分では言出だせないタイプだと、ここで気が付いた。また、自分の知らない涼太を発見した気がして俺は嬉しくなり、上気した身体を抱き締め耳元で囁く。
「何度でも愛してやる。お前の気の済むまで、何度でも……だからもう一人でするな」
 涼太はその言葉に反応し、涼太のそれはまた頭を擡げ始める。
 その反応で、自分がいかに求められてるかと思うと、堪らなくなる。
 今度はそこを咥えると涼太は「あっ……! まだ……イッたばかりで……それに……」
息も絶え絶えに身を反らせ、必死に言葉を紡ごうとする姿がいじらしい。
 俺はヒートアップしていく自分を抑えることを止めた。
「それに?」
「きた……ない……だろ」 
「涼太のものなら汚くなんかない。寧ろもっと欲しいくらいだ」
 俺の発言に涼太は瞳を潤ませると、一筋の雫を溢した。
 丁寧に愛撫していくと「あっあっ」と、気持ちよさそうにしながら啼き声をあげ、更にそれを固く太くさせていった。
 俺の口いっぱいに育ったそれを吸い上げると同時に舌を絡ませる。涼太は恍惚とした表情を浮かべながら、腰を揺らす。
 そろそろ自分も涼太を欲しているようだ。だんだん余裕が無くなって行く。
 俺は、涼太の窄まりへ指先を滑り込ませるが、指先がなかなか入らない。
「ひ……あっ」
びくんと身体を硬直させて、力を入れた涼太の緊張を解すように、更に口淫を続けると身体全体が痙攣したようになり、二度目の絶頂が近いことを知らせた。
「ああっ……っ――っ!!」
 口から手に切り替えると、涼太のぬるっとした生暖かい液体が掌で弾ける。
それを指先に纏い、ゆっくりと張りのある双丘の間に滑り込ませ、窄まりへと忍ばせた。
 涼太は快感の余韻に浸っている様子で、息を荒げながらボンヤリと天を仰いでいる。するりと、今度はスムーズに指先が入っていった。
「ふ……あっ」
 また力が入り、俺の指を締め付けてくる。涼太の耳元を舌でくすぐりながら
「涼太……ゆっくり息、吐いてごらん?」
 促すとそれに従い、身を震わせながらゆっくりと息を吐く。
 肩の力が抜けると、指が根本まで食い込んだ。
「ん……っはぁ……っ」
「痛いか? ……涼太」
 涼太は首を横に振りながら「俺……変だよ、隼……人」と、艶めかしい表情をし、甘い
吐息を漏らす。
「気持ち……いいのか?」
中を指で弄びながら言うと、びくびくと身を捩りながら「…………っん」と、頬を紅潮させ、可愛らしい声で返事をした。俺のそれは、涼太の姿や声に反応し、我慢するのも段
々と辛くなっていく。
 もう一本の指を増やし、何度も出し入れすると、蕾が収縮し俺の指を更に奥へと導いてるようだった。
 とある所に触れた瞬間、涼太は身を反らせて一際、愛らしい声を上げる。
どうやらそこが涼太のいい所らしい。何度も強弱をつけて突いてやると涼太は頭を横に振りながら
「ぅあっ…………っ、や、だ……おかし……なる……」
俺に縋り付くように背中に腕を回し、身悶えする涼太の艶めかしい姿に堪らなくなり、俺もいい加減はち切れそうになっている自身を、涼太の窄まりへと押し当てる。
「涼……太、挿れるぞ……いいな?」
 瞳を潤ませ、こくこく、と、涼太は頷いた。
 俺は涼太の腰を持ち上げ、ゆっくりとその中へと入って行く。
「う……あぁ!! ……んっあっ」
 肩を震わせ、息を荒げながら涼太は痛みに耐えているようだった。
「涼太……ゆっくり息を吐いて……」
 吐息と共に微かに声がする。それはかなりの痛みを連想させた。
 俺は根元まで涼太に挿れると、暫くそのままでいたが、背筋がゾクゾクするような快感に見舞われ、眩暈が起きる。
 しかし涼太の痛々しそうな表情に、俺はやっぱり引き抜こうと、腰をゆっくり動かし
「辛いなら……止そう?」
声をかけ、涼太から離れろようとした瞬間、腕を掴まれ
「隼人……もう少し……で、慣れると思うから……待って……」と、俺の動きを制止した。
「無理しなくて良いんだぞ?」
「――俺も隼人を感じていたいんだ……」
 涼太は眉根を寄せながら、ニコっと微笑んだ。瞳には涙が滲んでいる。
「あ……っ…中で大きくなっ……」
「ごっ……ごめっ……」
涼太のいじらしい姿が愛おしくなり、反応してしまった俺は、涼太の中で勢いを増してしまっていた。
「隼人の……凄く熱い……よ」
 そう言うと涼太は、突然、腰を揺らした。
「う……うぁ」
 その動きを予想していなかった俺は、思わず声を漏らす。
 すると涼太は俺の反応を楽しむように、更に動きを激しくした。
「あ……ちょっ、涼太……もう少しゆっく……り」
「隼人も……気持ちいい?」
 涼太から発せられる言葉が嬌艶に感じる。啼く声が、乱れる姿が、全ての表情が堪らなくエロくて、普段の涼太からは、とてもじゃないが想像も出来なかった。
 俺は堪らなくなり、涼太の脚を持ち上げると、激しく腰を揺さぶった。
 リズミカルにぶつかり合う音と、水面を叩くような音が入り混ざる。
「はや……と……っんぁ……!! ヤ……バ……、っ……よ……」
「俺もだよっ……涼太」
 快感に身を委ねながら俺は、涼太に激しく唇を重ね、口腔内を愛撫した。涼太もそれに応える。口の端から漏れる吐息が熱を帯びて、息も絶え絶えになり、二人の熱は極限に達
しようとしていた。
「涼太……俺、もうっ!!」
「俺も……また……っ!!」
「くっ……あぁ……っっ!!」
 二人同時に声をあげ、絶頂を迎えた。
 やっと、やっと、本当の意味で結ばれた。二人だけの秘密――。
 身も心も一つになれた悦びで幸福感に浸りながら、涼太を抱き締める。涼太もそれは同じように見えた。頬を上気させながら微笑んでいる。
 優しく全身に口付けると、くすぐったそうにしていた。大きな黒い瞳に俺の姿が映し出されると、俺はそのまま、意識を失うように深い眠りについた。



 気が付けば、隣りで寝ていたはずの涼太の姿は無く、時計を見ると11時近かった。
 俺は身体を起こし、バスルームへ向うと、昨日のままの服を脱いでシャワーを浴びた。
(あれ? 俺、着替え持って来てなかったな……)
 と、思っていた所に脱衣場から声がする。
「隼人、着替え、置いといたから」
 ドア越しに聞こえるその声は、気のせいかも知れないが、いつもより穏やかに聞こえた。
 俺は、風呂場のドアを開けると、涼太の腕を掴み
「おいで、綺麗に洗ってやるから」とキスを落とす。涼太の頬は朱に染まった。
「ば、ばか! こんな明るいところでなんて……」
「いいから、来いよ」
 恥ずかしがる涼太の服を脱がせる。今まで知らなかった涼太の全身は、とてもバランスが取れていて、綺麗だと思った。
「そ、そんなに見るな!」
 顔を真っ赤に染めて視線を泳がせる姿は、俺の欲望を刺激するだけだとは気が付かない様子で、涼太は俺の目を手で覆った。
 あまりに可愛過ぎて、その場で押し倒したくなるが、その腕を掴み、一緒にシャワーを浴びる。熱めの湯だったせいで周りが湯煙に覆われた。
 涼太を抱き締めながら「ごめんな……寝ちゃったな」と言うと、涼太は目を伏せて首を横に振った。
 そして、俺の後ろに回り込み「アザ……すっかり消えたな」と愛おしそうに背中に手を当てると、腕を回してくる。
「ん、……そうだな」
 回した手にそっと自分の手を重ねる。涼太の心音が高まっていくのを背中で感じると、愛しさが溢れ出してくる。暫くの沈黙あと、ぽつりと涼太が口を開く。
「……俺、こんな心臓が壊れそうな位、ドキドキしたの初めてかも知れない……。麻里の時だって此所までは……」と言いかけ
「あ……ごめん……そう言う意味じゃなくて、その……」
 動揺してうろたえる涼太に、俺は振り向くとキスを落とし
「わかってる……。俺は正直、涼太にそんな風に想われてるって思って無かったから……凄く嬉しいよ」
涼太はその言葉を聞き、安心したように微笑むと
「俺だって……まさか隼人が……こんなに激しく想ってくれてるとは……」
「それに、涼太がこんなに可愛いなんて、意外だったな」
 俺はクスっと笑った。すると涼太は
「可愛いって……お前なぁ……。今度は逆でもいいんだけど?」
 ニッと笑ったかと思うと、俺のに手を伸ばし、掴もうとする。涼太の黒い瞳が、獲物を捕らえたと言わんばかりに怪しく光る。
「……やっ、りょ……やめ……」
「身体はやめろとは言って無いみたいだけど?」
 そう言う涼太の表情は、昨晩とは、うって変わり、男のそのものだった。細身ではあるものの、程良く筋肉が付いた肢体が、女とは違う事を示している。
 涼太だって男だ。今の言葉でプライドが傷ついたかも知れない……。軽率な言葉を発し
てしまったと反省した。
 そんな事を考えてるうちに、涼太は俺のそれを咥え、舌で満遍なく愛撫してきた。
「っ……」思わず息が漏れる。
「りょ……た、待て、違うんだ……そういう……意味じゃない」
 俺は身を屈めると、涼太から離れた。
「……イヤ……だったか?」と寂しそうな顔をし俯く涼太に、俺は首を横に振る。
「……そうじゃない。……ごめん、表現の仕方がわからないんだ……女っぽいとかそんな意味じゃなくて……涼太が凄く愛しいから……」
「……わかってるよ」
微笑みながら涼太は「今の隼人だって、凄く可愛かった」と悪戯な瞳で俺を見上げた。
 涼太に、してやられたと思いつつ、安堵の溜息を漏らす。
「涼太……また見たい」
「え?」
「お前が悦ぶ顔が見たい」
そう言うと涼太は頬を紅潮させた。顎に手をかけ、そっと唇を塞ぐ。
「涼太、俺はお前を、こうしてずっと傍で眺めていたいんだ。言っただろ? 何度でも、いつまでも愛してやるって」
 

 そうしてまた俺達はひとつになり、心も魂も繋がった。
 俺は一生、涼太を愛し続けるだろう。
 この先どんな事があっても、二人ならきっと乗り越えられる。
 涼太の温もりは、俺にそう確信させた。


 
                         ―― 第一部 隼人編 fin――



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not the something <29>

 
 そうして涼太と暮すようになってから三ヶ月が過ぎようとしていた。
 あれから涼太は髪を切った。どことなく怪しげな感じは無くなり、両目が揃った涼太は好青年そのものだった。

 目は、はっきりとした二重で瞳が大きいことに気が付く。
 すっと通った鼻筋や、凛々しい眉、どこか色気のある口元。片目じゃ無くなっただけで、印象は随分変わるものだと思った。

 そして今頃になって気が付いた。涼太は華音に似ていると言う事を――
 無意識のうちに、涼太の陰を華音に重ねていたのだ。
 あれ程までに華音が涼太を拒んだのは、華音はその事に気が付いたからに違いない。
 最後の言葉をふと思い出す。『私は代わりじゃないのよ――』
 もっと早くに気が付いていれば、華音に悲しい思いをさせなくて済んだかも知れない。
 そう思うと心が痛んだ。

 もしかしたら、涼太もそうだったのかも知れない。
 だから麻里に対して恋心を抱いたのかも……。
 
 しかしあれから俺達は、特に何も進展する事も無く、俺は段々と涼太の気持ちが解らなくなって行った。
 あの言葉はただ、麻理への義理立てで、別に俺に特別な感情など抱いてないのかも……そう思うと胸の奥がぎゅっと締め付けられた。

 ある晩飯の時なんか――――。

「隼人、おかわりは?」
「いや、自分でするからいいよ。お前に作ってばかり貰って悪いし……」
「そんなの気にしなくていいし。ほら、茶碗貸して?」
「あ……あぁ、悪いな」

 茶碗を差し出した時、手が触れ合った。
 俺は涼太に触れることが出来て、心臓の鼓動が速くなったが、涼太は身を強張らせ、直ぐさま手を引っ込める。
 反動で茶碗が床に落ち、割れてしまった。まるで今現在の俺の心境のようだった。
 慌てた涼太は「悪い! 怪我無かったか?」と、床に散らばった破片を拾う。

「おい! 素手じゃ危ないぞ!」
「大丈夫、だい……っ!! 痛って……」
「だから言わんこっちゃない」

 心配になった俺は、破片で切った涼太の指を見ようと腕を掴んだ。

「大丈夫だって!!」

 涼太は怒ったように言い放つと、慌てて身を翻す。

「……ちょっと手当してくるから、そこ動くなよ? お前も怪我するから……」

 振り向きもせず、足早に自分の部屋に入って行ってしまった。
 少しして涼太は、掃除機を持ちリビングに戻って来ると

「明日、仕事帰り新しい茶碗買って来るから」

 と、何事も無かった様に掃除機をかけ始めた。

 
 その姿をぼんやりと眺めながら、俺はネガティブな思考に捉われる。
 やはり涼太は、俺の事をただの同居人としか見ていない。

 一緒に住むようになってからは、表情豊かに笑うことも少なくなった。
 ふと、目が合えば、困ったような表情をして背ける。
 涼太は男同士で恋愛とか、きっと気持ち悪いとか思っているに違いない……。

 俺だって最初はそう思っていた。
 街中で見かけるゲイのカップルとか、気が知れないと……。

 だけど涼太を好きだと認識してからは、考え方も変わった。
 その人の考え方、生き様に共感し、気がつけば好きになっている。きっとあのカップルもそうだったのだろう。
 相手が好きならば、性別は関係無いのだと思えるようになっていた。
 麻里が言っていた『魂に男女は無い』とはこういう事を言うのだろう。

 だけど、好きだと思っているのは俺だけで、涼太は俺の事をそんな目で見てはいないのだろう……。
 やはり、親友のままでいた方が良かったのだろうか……。
 心の奥に、重くて大きい氷のような塊が宿り、俺の胸を押し潰した。



 そんな事があって、俺は涼太との接し方がわらないでいる時に、上司から残業を頼まれたのは良いが、近くのホテルで短時間の睡眠で凌がなければならないほどの仕事量で、家に帰れない日が続いた。

 内心、涼太と顔を合わせなくても良いかと思うと、ほっとはしたが、さすがに三日も帰れないでいると、寂しい気持ちの方が勝っていた。
 今日も終わらない仕事に溜め息をつき、携帯を手にすると涼太へ電話をかける。

「あ、俺。今日も帰れそうも無い……うん、それじゃ」

 携帯を置き、仕事に取り掛かろうとした時、その会話を聞いていたのか、年配の上司が話かけて来た。

「何? 彼女かい?」
「え? ええ、まぁ……」

(彼女じゃないけどね……ってか恋人かどうかも危ういけど……)

 俺が浮かない顔をしていると、上司は

「桜井君、今日はもう良いから、帰ってあげなさい」
「は? いえ、しかし……」
「後は私だけで大丈夫だから。すまなかったね、手伝わせて。私もね、最近嫁さんが冷たくてねぇ、こじれる前に帰ったほうが良いと思うよ」

 その上司は、俺が彼女と喧嘩でもしたのだろうと言いたげに、ネクタイを緩めるとニコっと微笑んだ。
 勘違いだとは思ったが、その言葉に甘え帰る事にする。正直、涼太にどう思われていようと、顔を見ないのは寂しい。

「すみません、ありがとうございます」
「こちらこそ助かったよ。気をつけて帰りなさい」

 上司に頭を下げ、俺は身支度を済ませると車に乗り込み、会社を後にした。

 やっと開放されたとはいえ、時計は23時を過ぎた所を示している。
 家に着く頃には確実に0時を回るだろう。

(さすがに涼太、もう寝てるだろうなぁ……ま、でも、寝顔だけでも見れるだけマシと思わないとな)

 寂しさを紛らわすため、途中コンビニに寄り、切らした煙草、ビールとちょっとしたツマミを買う。
 レジにはアルバイトの店員がいて、元気良く働いていた。

(そう言えば涼太と親しくなったきっかけって、コンビニだったよな。あん時の涼太の顔ったら無かったよなぁ、俺を目の敵みたいに睨んで……。今じゃ全然違うもんなぁ。あの頃はこんな風に涼太を想うようになるなんて夢にも思わなかったし……懐かしいな。あの爺さんまだ元気かな……)

 そんな事を思い出しながら、家路までの道のりを走らせる。
 
 マンションの駐車場に車を置き、上を見上げると自宅の明かりは消えていた。
 やはりな、と諦めに近い心境になり、溜息をつく。
 エレベーターを降りて鍵を取り出し、玄関の扉を開ける。
 リビングに小さな明かりを灯し、ネクタイを緩めると俺はソファーに腰かけ、先程買ったビールを一気に飲み干した。

 煙草に火を点け、涼太の部屋の前に立つが、涼太は過敏な所もあるから、起こすのも悪いと思い、またリビングに戻った。
 一服を終えると風呂に入るか迷ったが、疲労が勝り、ざっとシャワーだけ浴びて寝る事にした。

 バスルームに向かい、短時間で身支度を整えると部屋着に着替えて、自室へと向かう。
 ドアを開けて真っ暗い部屋に明かりを灯そうとしたら、ベットから微かに寝息のようなものが聞こえた。




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not the something <28>

 
 その時、俺の背中辺りが白い光に包まれるのを目の端で捉えると、涼太は驚いたように俺の背中を凝視し、

「隼人……おまえ……羽が……?」

 俺から離れようと抵抗していた力が緩む。
 すると何処からともなく麻里の声が聞こえた。

《涼ちゃんっ!! 何やってるのよ!!》

「麻……里? ……麻里なのか?」

 涼太は辺りを見回す。しかし麻里の姿は見当たらない。

《お兄ちゃんがこんなに心配してるじゃない!! どうしてわからないの?! あなたは独り
なんかじゃないのよっ!!》

「麻里……」

 姿の見えない麻里を追い求めるように、涼太は必死で辺りを見回していた。

《涼ちゃん……ごめんね、こんな事になってしまって……。涼ちゃんをこんなにも苦しめてしまった……。私もあちら側から見ていたけど辛かったよ……》

 麻里の悲しそうな声が響くと、涼太は俯いてしまった。

「ごめん……」

 涼太の両目からは涙が止め処なく流れ落ちている。俺はそんな涼太をただ、見守るしか出来なかった。
麻里は暫くの沈黙の後、諭すような口調で語りかけてきた。

《出来る事なら戻りたい。だけど……私はもう戻れない。事故に遭って、魂が身体から抜けた時からずっと見ていたけれど、お兄ちゃんが涼ちゃんの事をどんなに心配していたか、わかる? ねぇ、涼ちゃん……。悔しいけれど、お兄ちゃんの涼ちゃんに対する想いは、私よりもずっとずっと上だわ。――涼ちゃん言ってたわよね? 私は隼人の妹だから、アイツの自慢の妹だから大切にしたいって……隼人の大事なものは俺も大事だって!! なのに何でお兄ちゃんにそんなに悲しい思いさせるの? 涼ちゃん、自分の胸に手を当ててよく考えてみて? 涼ちゃんが本当に大切に想っているのは……お兄ちゃんなんでしょ?》

「――麻理、違う……。確かに隼人は大切だけれど、そんな感情は……」

 涼太は戸惑ったように答えていた。俺もどう反応していいのか分からず、黙り込む。

《――お兄ちゃんも、ごめんね……。本当はお兄ちゃん、涼ちゃんの事、大好きだったのに……気が付かなくて本当にごめんね》

「麻里……俺もそんな風には涼太のこと……」

 麻里はずっと俺たちのことを見て来た。もしかしたら変な勘違いをしたのかと思って否定すると、怒ったような口調で麻里は

《――二人とも本当に鈍いわね……。十年掛かっても、まだ気が付かないの?》
 
 俺たちは顔を見合わせた。

《互いが互いを大切に思えば、それはもう友情を通り越しちゃってるのよ? 友情は愛情と似て非なるもの……だけど友情と愛情は紙一重なのよ。互いの性別が同じだから、そう思い込もうとしてるのよ、お兄ちゃんたちは……。仕方ないわね、真実を見せなきゃ二人とも納得しないんでしょ?》

 ふっと俺の背中に人の気配がした。

《お兄ちゃん、この羽は私が貰って良い? 生きてるお兄ちゃんには使いこなせないみたいだから……。誰かが危機に陥らないと発動しないのよ。それに……使うと、お兄ちゃんの寿命が縮まってしまうの……。だから……》

 麻里の、俺を想う暖かい気持ちが伝わってくる。

「……麻里が、そうしたいなら」

《ありがとう、お兄ちゃん。これで二人に真実を見せてあげる事が出来るわ》
 
 背中に麻里の温もりを感じた次の瞬間、周りが目映いばかりの光に包まれると、そこには大きな翼を広げた麻里と、その胸には晴が、はっきりと目に見える形で姿を現した。

「麻里!!」
「晴!!」
 
 俺達は同時に二人の名を呼んだ。

《ぱーぱ!! おじちゃ!!》

 晴は嬉しそうに両手を振りながら、きゃっきゃと可愛い声をあげて笑っている。

《私は晴と、世界は違うけれど、こうして元気にしているわ。だからもう嘆かないで? それに、この羽を貰えたから、私はもっと上の世界に行けるようになったのよ。お兄ちゃん、ありがとう。涼ちゃん、いい? ちゃんと真実を見てね》

 そう言いながら麻里は、涼太に近づくと羽を一本抜き、涼太の左目に翳した。
 すると羽は溶け込むように、涼太の瞳へと吸い込まれていった。

《涼ちゃん、ほら見えるでしょ?》

「――っ!! 見えるっ!! 見えるよ!!」

《それじゃ二人とも、しっかりと自分達の気持ち、知ってね》

 麻理はまた羽を一枚、そっと抜き取ると天に翳した。
 そこから光が溢れ出し、俺達の記憶が、まるでスライドでも見ているかのように画面となって現れ、高校時代から思っていたことが、涼太の思いは俺の中に、俺の思いは涼太の中に、互いの胸に響き合う。

 涼太の想いが、手に取る様にわかっていく。俺の事を掛け替えのない親友、大切で失いたくないと……。それはまるで俺に恋焦がれてるようでもあった。
 涼太も俺の思っていることがわかったらしく、嬉しそうな笑顔を浮かべながら、涙をその瞳に溜めている。

 どうやら二人は同じ気持ちでいたとのだと、気が付かされた。
 その様子を見て麻里は満足げに微笑むと

《ねぇ、涼ちゃん。今度はその目で誰が本当に大切なのか……しっかりと見て? そして、これからの幸せを掴んでね?》

 そして麻里は、俺に向かって体の位置を変えると

《お兄ちゃんも……いつまでも意地張ってないで素直になったら? やっぱり私達は血の繋がった兄妹ね。同じ人を好きになっちゃうんだもんね?》

 麻里はクスクスと笑う。妹に言われるまで気が付かない俺は、相当鈍いのだろう。
 俺は苦笑いするしか出来ないでいた。

《おじちゃ!! ぱーぱ、なでなで、ね?》

 晴に言われるまま、涼太の頭を撫でながら

「――そうするよ、麻里」

 自分に偽る事無く返事をした。
 すると麻里は安心したように微笑むと、晴を抱きかかえながら大きく羽ばたいた。

《二人とも幸せになってね!! 魂には男も女も無いんだから、もう拘ったりしないで》

《ぱーぱ! おじちゃ! ナカヨシ、ね!!》と、二人はそう言葉を残し、大空へと姿を消していった。
 姿が見えなくなっても俺達は、まだ見送っていた。麻里が残してくれた大切な言葉を胸に抱いて――。

「麻里と晴は、天国に行けたんだな……」

 ポツリと涼太が呟いた。

「ああ……そうだな」

 その瞳にはもう淀みは消えていた。涼太は自分を取り戻したのだろう。
 俺は麻里に感謝しつつ、微笑んだ。
 月明かりが優しく差し込むベランダで、二暫くの間、夜空を眺めていた。  



 俺は涼太を抱えたままなのに気が付く。意識し始めたら、途端に心臓の鼓動が速くなり、それを涼太に悟られないよう、そっと降ろす。
 取りあえず当たり障りの無い会話をしようと思って声を掛けた。

「――お前、痩せただろ? 随分軽かったぞ」
「――そうだな、最近ろくなもの食ってなかったから……」

 涼太もそれは同じ様だった。まともに目が合わせられない。
 すると俺の腹の虫が、ぐぅーっと音を立てて鳴った。

「なんか……安心したら腹減ったな……」 

 俺が照れながら頭を掻いていると、涼太はクスッと笑い

「何か作ろうか?」
「そうだな……サバ……あれ食いたい。凄く旨かったんだよな」

 それを聞いた涼太は「じゃあ、今から釣りに行こうか!」と、満面の笑みで答えた。
 こんな風に涼太がまた、笑う日が来るなんて――
 思ってもみなかった俺は、凄く嬉しくなって不覚にも涙が溢れてしまった。

「隼人……?」
「いや……嬉しくてさ……。またそんな風に笑ってくれた――」

 すると涼太は夜空を見上げ

「麻里のお陰だ……麻里が教えてくれなかったら俺は、ずっと自分の気持ちを偽ったまま、それが当たり前だと信じて生きてただろう…………。やっぱり隼人の自慢の妹だ」
「俺も……ずっと違うと…………。この気持ちは違うと思い込んでいた……ホント、麻里に言われるまで、見て見ぬ振りをしてた……んだと思う。俺はこの通り鈍いから……でもこれからは正直に生きることにするよ」

 ふと俺は、涼太の顔に視線を移し

「もう……その髪型しなくていいんだな」
「そうだな……。明日、髪切りに行ってくるよ。今まで……ごめん……。ずっと俺の事、気にかけてくれてたのに……」
「もう終わった事だ、気にするな」
「……ん」

 いざ、両想いだとわかっても、どうして良いかなんてわからなかった。
 心臓の鼓動が高鳴り、気が遠くなりそうになりながらも、俺は精一杯、涼太にわかるように伝えようと頭を働かせ、ある結論を出す。

「――お前、独りで置いておくと何するかわからないから、一緒に居てやるよ」

 涼太は一瞬、驚いたような表情をする。

「……隼人」

 しかし、意味を理解したのだろう、次第に頬を紅潮させていった。
 その肩を抱き寄せながら俺は、もう一度はっきりと言う。

「もう、お前を独りにはしないから」

 俺達は大切な人を失い、大切な人に気が付いた。
 
 not the same thing 似て非なるもの――
 友情と愛情はそういうものだと思い込んでいた。
 考え方ひとつで、それは友情から愛情へと変化する。
 本来、似ているものは、同じ要素を多分に含んでいるから、似ているのだ。
 
 important as the same 同じく大切なもの――
 俺たちの気持ちは、今、変化する。
 
 涼太の髪を掻き上げると、大きな黒い瞳には俺が映っている。
 今、本当の気持ちをお前に伝えたい。

「……好きだよ、涼太――」
「――俺もだよ、隼人」

 ベランダから差し込む月明かりが、優しく降り注ぎ、二人の影を映し出していた。


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not the something <27>

 
 マンションに着き、俺はエレベーターに乗り込むと、涼太の家の玄関前に立つ。
 呼び鈴を鳴らすと、待ち構えていたようにドアが勢いよく開けられた。

「瀬里奈!! 遅かったじゃ……」

 はっと息を飲み、涼太は俺を凝視した。

「小林じゃなくて悪かったな、涼太」

 涼太は慌ててドアを閉めようとしたが、俺は咄嗟に脚を滑り込ませ阻止する。

「何のつもりだ? 隼人……」

 上目使いに睨みながら、声を低くし、脅すように言う。

「今日、小林は来ない。明日も、これからも、ずっとだ」
「なっ!? お前っ!! 瀬里奈に何したっ!?」

 淀んだ瞳で涼太は、俺に掴み掛かってて来た。
 それを手で払いのけ、俺は涼太の顔面に拳を喰らわせる。
 勢いよく玄関へと倒れこむ涼太に

「いい加減、目を覚ませっ!! この馬鹿ッ!!」

 と、怒鳴りつけると、涼太は口の端についた血を拭い

「――お前に……何がわかる……」

 身体を起こしながら、ズボンに着いた土埃を掃うとリビングへと姿を消した。
 俺は頭に血が上るのを抑えながら、涼太の後を追ってリビングに向かう。
 ネクタイを緩めると外し、廊下に叩き付けるように投げ捨てた。
 しかし涼太に対する怒りが収まらず

 「ああ!! わかんねぇよっ!! 俺はお前じゃないからなっっ!!」

 気が付けば怒鳴り声を上げていた。涼太を殴った右手がやたらと痛む――。
 リビングに入ると電気も点いておらず、月明かりの薄暗い室内で涼太はソファーに腰かけ、窓の外を眺めながら、ポツリと呟いた。

「この広い部屋に……居るはずの人が居ないんだ……。あの時と同じ……俺はまた独りぼっちになった……」
「――――……」

 握った拳が痛む。

「なぁ、隼人わかるか? 帰ってきたら誰も居ないんだ……。お帰りって言ってくれた麻里や晴が……」
「――――……」

 拳じゃない……。痛いのは―――。

「別に誰でも良かった……」

 そう言い終わると涼太は、膝を抱えて蹲った。

 声が、身体が…………心が、震える――。

「俺にだって……大切な妹と甥だった」
「………………」

 痛いのは――俺の心だ。今にも悲痛な叫びを上げて張り裂けそうになるのを、必死で堪えていた。

「実家に帰っても聞こえないんだ、あいつの……麻里の声が……。晴が『おじちゃ!!』って……俺に向かって飛び込んで来ないんだよっ!!」
「隼……人」

 涼太は淀んだ瞳で、俺の顔を見上げる。

「俺だって同じなんだよ、涼太……。お前だけじゃないんだ」

 堪えていた涙が頬を伝った。それを見た涼太は

「――っ、ごめんな隼人……お前の大切な宝物を奪ったのは俺だ……!!」

 そう言うと突然、ベランダの窓を開け、柵を乗り越えようとした。

「馬鹿ッ!! 何やってるっっ!!」

 俺は咄嗟に飛び出し、涼太の身体を後ろから抱きかかえた。

「隼人……ごめん……俺にはこうして償う位しか……だから頼む、放してくれ!!」

 足掻いてもがく涼太を、必死に抑え込み、身体の向きを変えると、顔面を平手打ちし

「そんな事をして麻里や晴が喜ぶとでも思っているのか!!」
「――わからない……どうしていいか……もうわからないんだ……」



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not the something <26>


「ちょ! やだぁ!! オドかさないでよぅー」

 鼻声で甘ったれた声を出しながら、上目遣いで媚ている小林に俺は「いい加減、正体現せば?」と、吐き捨てるように言った。

「やだ……何のコト??」
「本当に質悪いよな、お前! 昔っから!!」

 俺の態度が変わり、今までの事は全部演技だと気が付いたのだろう、小林は開き直ったように腰に手を当て、威嚇するような態度を取ると

「あんたもなかなかの曲モンね! 桜井 !!」

 鼻に掛かった煩わしい声を、学生の頃聞いていた、いつもの地声に戻していた。

「お前、涼太から幾らふんだくったんだ!! あぁ!?」

 俺が怒声をあげると、小林は『やれやれ』と言わんばかりに首を横に振る。

「さぁ……ね、覚えてないわよ、そんなもの。あーやだやだ、すっかり騙されちゃったわ。こんな事ならキタローの所に行けば良かった。今日バック買って貰えたのにぃ」
「ふざけるな!! お前の勤めてる店に通わせて麻里が死んだのを聞き出し、生命保険が下りたの知って涼太に近寄っておいて!? その上まだ毟るつもりか!! しかもお前、坂上と結婚してるじゃないか!!」
「あら、随分な言われ様ね? あっちが勝手に熱上げて貢いできたのよ? あたしはそれをただ素直に受け取っただけだわ。淳也だって喜んでたわよ」

 このままじゃ埒が明かないと思った俺は、大きく溜息をつき、車を発進させようとアクセルを踏むと、小林は窓から腕を突っ込み、ロックを解除しようと身を乗り出し、もがいた。
 そのまま引きずるのは流石に気が引け、仕方なくブレーキを踏む。

「ちょっと!! この瀬里奈様をこんな所に置いて行くつもり!?」
「元々そのつもりだけど?」

 自分に『様』を付ける所からして、相当な馬鹿だ。呆れ果てて溜息すら出ない。

「ふざけんじゃないわよ!! 乗せなさいよ!!」

 先程までの繕った笑顔と甘えた言葉使いは無く、鬼婆のように髪を振り乱しながら叫き散らす小林に、うんざりとする。

「女だから手加減してやってるって……わかって無い様だな。相変わらず頭の悪いヤツ」
「な、何よ!! ちょっと頭良かったからって、頭に乗るんじゃないわよっ!!」

 押し問答もいい加減嫌になった俺は、パワーウィンドーを上げ窓を閉めようとした。

「やだっ!! 何するのよっ!! 腕が千切れちゃうじゃないぃっ!!」
「だったら腕をここから出せば良いだろ?」
「嫌よっ!! 置いて行かれるじゃない!!」
「そうだな。でも、まる三日もあれば下りられるだろうよ」
「ちょっとあんたっ!! 最低っ!!」
「何とでも言えばいい、早くしないと腕もってかれるぞ?」

 じりじりとウィンドウをあげると「そんな脅しに乗るもんですかっ」と、更に腕を突っ込んできた。

「脅しかどうかは身体で確認すればいいさ」

 俺はパワーウィンドウを容赦なく上げる。
「ぎゃぁぁぁぁぁーーーーっ!! 痛いイタイいたいぃぃぃぃっっーーーっっ!!」

 慌てて腕を引っ込めるが間に合わず、中指の生爪を剥がし、そこから流血していた。

「……っ!! よくもやったわねぇ!!」

 小林は黒い涙を流しながら自分の手首を掴み、恨めしそうこちらを睨み付ける。化粧が剥がれ落ち、一見すると、ここに出没すると噂されている幽霊のようであった。

「何度も警告しただろ」

 俺はいつもの煙草に火を点け、また窓を開けると

「涼太に二度と近寄るな……今度はこんなものじゃ済まさないからな……」

 腹の底から唸るように言うと、小林は俺の殺気に気圧されたのか後ずさりする。

「――っ!! 覚えてなさいよ、このクズ野郎!!」
「あぁ、覚えていられたらな」

 俺はそう言い放つと、小林の持っていた荷物を窓から放り投げ、アクセルを目一杯踏み、エンジン音を轟かせると、小林は轢かれるとでも思ったのか、慌てて荷物を拾い上げるとその場を逃げるように立ち去った。
 俺はそのまま車を走らせ峠を下り、涼太のマンションへと向かった。



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not the something <25>

 
 小林を助手席に乗せ、俺は車を走らせる。

「何だかフシギねぇー。あたしが運転してるみたいだわぁ!」

 小林は俺の演技とは気付かずに、舌っ足らずな口調で話し、舞い上がり浮かれている。 
男にそんな態度を取れば、可愛いとでも言われると思っているのだろう。低脳な女だ。

「俺の隣はもう、君のものだな……」
「桜井クンって、運転すっごくジョウズなのねぇ。あたしぃ、車にヨイやすいから、ヘタな人だとすぐにわかるのよぅ。それにぃ……高校のトキよりずっとステキになったわぁ」
「そうかな? 君の方が眩しいくらいに素敵になったよ」

 目的地に着くまで俺は、こんな演技を続けるのかと思うと、うんざりだった。
 それに反し小林は嬉しそうに、もじもじと身をくねらせながら

「そんな風に言ってもらえてスゴくうれしいわ……。セリナはもう、アナタのものよ……放したりしないでね」と、色めいた声で言いながら、俺の肩に凭れ掛かってきた。
「ほら、危ないよ? もう少しで着くから」

 悪寒がしてきた俺は、さりげなく小林を元の位置に戻す。

「うふふっ……女慣れしてると思ったら、意外にウブなのねぇ、桜井クンって。照れちゃってカ~ワイイっ」

 勘違いしてくれて良かったと思いつつ、ハンドルを握る。
 次第に細い路に入り、山道を行くと、小林は不審に思い始めたのか、表情を曇らせる。

「ねぇ……? どこに行くの?」
「ん? 夜景がとても綺麗なところがあってね、だけどあんまり知られてない、俺だけの特別な場所なんだ……。君との仲を誰にも邪魔されたくないから……」

 小林は俺の言葉を信用した様子だ。またも鼻に掛かった声で「そうなの?」と、嬉しそうに聞いてきた。

「どうしても君に見せたくてね」

 いい加減、歯の浮く台詞に俺も吐き気を催してきた頃、ようやく頂上が見えてきた。

「わぁ!! ホントぉー!! き~れ~いぃ~」

 小林は歓喜の声を上げながら、窓の外を眺めている様子だった。 
 車窓から流れる景色は、宝石をちりばめたように輝いている。
 大学時代、華音に振られた場所だ。ここは何一つ良い思い出がない。小林を連れてきたのも、俺にとっては縁があまり無い場所だからだ。
 車酔いするという小林に、ここで思いっきり攻め込んで、五臓六腑が飛び出すぐらい揺さぶっても良かったが、それだけではこの女には効かないだろう。
 頂上に着くと俺は小林を外に誘い出す。

「外で見ると一段と綺麗だよ……でも君の美しさには敵わないか」
「やだ、桜井クンってば……」

 俺のべた褒め攻撃が効いたのか、小林はすっかりその気になっている。
 少し歩くとベンチがひとつだけあり、その奥には古びた自販機があった。
 俺は自販機を指差すと

「瀬里奈……俺、喉渇いちゃって……。普段あんまり歩かないから、少し疲れたのかな。いや、きっと君の隣で緊張したのかも……。悪いけどあそこで何か買ってきてくれる?」

 社長という設定で自販機の飲み物なんて、無理があるかも知れないと思いつつ、小林を見下ろしながら、駄目なら他にと考えていると

「うふっ、桜井クン、ほんとシャチョウさんなのね~! イイわよぅ~。ナニがいい?」

 何の疑いも無く引っ掛かる、小林の頭の悪さに感謝した。

「君の選ぶものなら、何だって構わないよ」

 小林に小銭を渡そうと財布を取り出し、さりげなくびっしりと詰まった札束と、ゴールドカード数枚を見せる。

「あ、ごめん……小銭切らしてるかも」

 すると小林は、目を輝かせながら「これっくらい、あたしが出すわ」と、上機嫌で自販機の所まで歩いて行った。

 俺は、その後ろ姿を確認すると、気付かれないようにそっと車に戻る。
 車のエンジンを掛けると、異変に気がついた小林が駆け寄ってくる。
 運転席側の窓を半分だけ開け、車のドア全部をロックした。



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