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主に長編BL小説置き場です。BLの意味が分らない、または嫌悪感がある方は速やかにブラウザバックでお願いします。

――時よ 止まれ――<16>―R-18―最終話

 
 吉岡に呼ばれて姿を現したのは、高校の時のあの坂上だった。
 しかし、かなり窶れ、目は淀み生気を失っている。

「な……! 坂上!?」

 俺の声に反応し、坂上はこちらを見ると、にやっと嫌な笑みを浮かべた。

「なんだ、桜井か……久し振りだなぁ?」
「どうして……お前が? 小林と結婚してたんじゃないのか?」
「してたさ、ただ俺は吉岡様に店でホストしてる時に気に入られてね、今はこうして飼われてるんだよ」
「何、訳の分からない事を……」

 すると次長は、意外というような表情をして「淳也、隼人と知り合いだったのか?」と、質問すると、坂上はそれに対し「ええ、吉岡様……高校のときのダチですよ」と、答えた。
 俺は咄嗟に「誰がこんな腐った野郎とダチなものかっ!!」と、叫ぶと、坂上はこちらを見下ろしながら腕を組み
「酷いなぁ……ま、これから仲良くしようぜ? 瀬里奈にした事も全部許してやるよ……まぁ、もうどうでも良いけどな。それにしてもお前……あのキタローと……意外だったよ。道理で瀬里奈に手を出さない訳だ、そっちの人間じゃあな。キタローの嫁が死んだ時、ああ…お前の妹だったけか? 瀬里奈に、ただ傍に居てくれって泣いて頼んでたんだってさ、あいつ。まぁ、あの女とはもう別れたけど。好き勝手に生きてるしな。吉岡様の言う通り、女なんか皆同じだよ。その点、吉岡様は優しいぞ? 言うことさえ聞いていれば何でもしてくれる……」

 そう言って坂上は、吉岡に甘えた表情をし、何かをねだっている様子だった。
 次長は溜息をつくと、胸ポケットに仕舞ってた先程の煙草を坂上に手渡した。
 坂上は嬉しそうに笑うと、吉岡の手を握り締め、その甲に口付けをする。

「そうだ、淳也。隼人をうんと気持ち良くさせてやれよ? お前はそれだけの玩具なんだからな。その為だけに飼ってやってるのを忘れるなよ? それから、今度から隼人の事を呼び捨てにしたら、即、お払い箱だ!! 名を呼んで良いのは俺だけだ、分かったか?」
「は、はいっ!! 吉岡様、ご無礼をお許し下さい……」

 坂上は仕切に頭を下げ、仕舞には土下座して、吉岡の靴に口付ける。
 それを見下ろしながら吉岡はは、鬱陶しいそうにし「もういい」と、だけ告げる。

(狂っている……人を人とも思わない……こいつは正真正銘、狂人だ)

 冷酷な目をし坂上を躾ける様な口調で話す、目の前の上司だった人間に、悪寒が走る。いや、正確には人間であるかすら怪しい所だ。
 そんな俺の心情など、解る筈も無いだろう。吉岡は俺の方を見ると、上機嫌な様子で

「さぁ隼人、俺が調教した玩具だ、愉しむがいいよ」と、俺に口付けた。

 坂上は次長の許しが貰えた事で安心したのだろう、目の色を変えながら、その煙草に火を点けると恍惚とした表情を浮かべる。
 辺りに煙が漂うと、俺はまた気分が悪くなってきた。

 俺の顔を眺めながら、吉岡はふっと鼻で笑うと

「隼人にはまだ早かったかな? 大麻」
「なっ……!! 吉岡!! 貴様そんなものを何処でっ!! くそぉっ!! この気持ち悪さはそのせいだったのかっ!!」
「気持ち悪く感じるのは、初めのうちだけだよ。そのうちトリップして媚薬の効果と相乗し、より気持ち良くなるさ。ほら、そろそろ効いてきたんじゃないか? もうここ、待ちきれないって言ってるが?」
 淫らな笑みを浮かべ、吉岡は俺の先端をゆっくりと指で撫で回す。
 全身を突き抜ける様な、痺れたような快感が突き抜ける。

「かはっ!! ………やめ……ろっ!!」
「言葉とは裏腹だな……そんなに気持ちよさそうな顔してるくせに……ま、そのうち素直に俺を欲しがるようにさ……」

 俺の顔を引き寄せ、耳元で囁く。

「さあ、これからが本番だよ、俺の愛しいLOVE・DOLL……」

 坂上が漂わせる煙で、俺は段々と意識が遠のいていく。
 そのうちこれが現実の出来事なのか、分からなくなって来た。

「好い顔だよ、隼人……もっとよく見せて?」

 そう言いながら吉岡は、俺の唇に吸い付くように唇を重ねる。
 朦朧とした意識の中で、俺はされるがままになっていた。
 縛られていた手足を解かれ、ベットに運ばれる。
 もう自分の身体なのか、感覚さえも失って行った。遠くで他者を見るような、そんな感覚に支配され、次長達の会話の意味すら理解出来ない程に堕ちて行く。

「さぁ、淳也、隼人を満足させてやってくれ」
「はい、吉岡様」

 生温い感触が、俺のそこに纏わりつく。思わず声が漏れる。

「可愛い声だ……もっと聞かせておくれ」

 次の瞬間、俺は後ろのあたりに違和感を感じた。ぬめぬめとした吉岡の指先が、俺の後ろを刺激する。

「気持ちいいだろう? 隼人」

 淫欲な表情で吉岡は,俺の後ろを刺激しながら、息を荒げていく。
 俺はもう何をされているのか、理解する事が出来なかった。空間が歪んで見える。
 自分のものとは思えない声を上げ、身悶えする、ただの欲望の塊へと身を投じる他、この苦痛から解放される術は無かった。
 その声に反応し、吉岡はグっと弱いところを突いてきた。
 目の前に火花が飛び散るような感覚の後、じわりと言いようの無い疼きが起こる。


 ただひたすら快感を求めるように、腰を跳ね上げる人形……俺は理性を失った。
 人影が見え、俺のをその中に引き入れると、じわりじわりと攻め立てて来た。
 堪らず声を上げる。すると後ろを刺激していた指の動きが止まり、俺は抱き起こされた。

「やっと……やっと、俺のものになるんだ……」

 耳の後ろから切なげな声が囁いた。もう、誰の声かすら分からない……。
 それとは別に歓喜の声が聞こえる。上下から人の体温が伝わった。
 と、同時に俺の後ろに、雄ものが侵入してきた。
 今まで味わったことの無い感覚に、俺は発狂しそうになる。

「ずっと……これからはずっと一緒だよ、隼人……もう離さない、俺の可愛いDOLL」

 それから先のことは朧気で、何がどうなったか分からない……。
 ただ 涼太の笑顔が記憶の片隅に浮かんでは消えて行った……。

 涼太ごめんな……。
 お前との約束、守れなかった。
 ずっと傍にいてやるとお前を護ると誓ったあの日には

 ――二度とは戻れない…………。

 愛しい涼太――。
 ずっと…………。
 ずっとお前を見守りたかった。
 傍で笑っていたかった。
 同じ時を歩んで行きたかった――。

 でも……もう……。
 涼太…………。
 これが俺にできる最後の事だ。
 俺はお前を護れただろうか……。
 どうか幸せに……。
 俺が戻れなくても、幸せな日々が送れますように………。


「涼太……愛してる…………」

 ぽつり、と、その言葉が虚しく頭の中に響いた。

 そして時間も空間も、全ては幻のような感覚に陥り
 自分がどこの誰で、何をしているのかさえ分からなくなって行った――――。



   ―― 第三部 晃×隼人編 fin――


実はこんな話だったんですね^^;
いや、まだ続きますけど……。
私の場合、キャラが物語を見せてくれるのを追っている形なので、私自身、こんな事になっていようとは思いもよらず。
振り返ってみると、前半の隼人がしつこいくらいに涼太とのイチャイチャを見せていたのは、こうだったからなんだなぁって思ってみたり。
ちょっと隼人に同情しちゃいましたね。

さて、次はちょっと番外編を挟みます。
こんなに長くなる話とは思っていなくて、全部一人称で書いていたら、さすがに無理が生じてきました。
なので、補足的な形で書いた物です。
キャラが増えると、それぞれの視点があるので、楽しいといえば楽しいんですけどね^^;

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――時よ 止まれ――<15>―R-18―

 
 鼻先にツンとした刺激臭を感じ、はっと意識を取り戻す。

(俺……寝ちまったのか?)

 そう思うのと同時に、身体の自由が利かない事に気が付く。

(あ……れ? 手足が……転んだ拍子に何処かぶつけて……? それともまだ、体調が……? そう言えば、次長はどうした?)

 俺は慌てて首を振り、そこの自由が利く事を確認する。すると口に違和感を覚えた。
 目の端に白いものが映る。見ると俺は口枷をされ、衣類は全て剥ぎ取られており、全裸で手足を椅子に縛り付けられていた。

(な、何だ!? 何がっ……っ!!)

 俺は状況が飲み込めず、ジタバタともがいていると、目の前には不敵な笑みを浮かべ立つ次長がいた。

「お目覚めはいかがかな? 可愛い桜井君」
「――っ!!」
「この時を……どれだけ俺が待ち侘びた知ってるか? 4年だよ、4年……長かったよ」

 そう言いながら俺の首筋に舌を這わせる。抵抗しようと必死に足掻くが、次長はくっくと喉の奥から嫌な笑い声を漏らし

「ふふ……無駄だよ」

(何が一体、どうなっているってんだ!? 待ち侘びたって……まさか俺を!?)

 俺の胸に手を這わせながら、なぞる様にねっとりと舐め回す。
 あまりの気持ち悪さに、背筋が氷を浴びせられたような感覚に陥る。
 しかし意思とは相反し、俺のそれは はち切れんばかりに威きり勃っていた。
 心臓の鼓動がやけに早く感じる。俺は訳が分からず、次長を睨み付けた。
 すると、次長はふっと鼻で笑い

「効いてるみたいだね、俺の特製媚薬……こんなにして可愛いよ、桜井君……いや、隼人」

 俺のを指先で弄びながら、次長は淫欲な顔つきで笑う。

(嘘だろ……? 何で俺なんか……。ってか、次長ってそうだったのか!? くそ、完全に騙されてた!)

 唸り声を上げ抵抗するがお構い無しに俺のを扱き始め、俺の耳元に噛み付くような愛撫をする。次長の息の上がっていく様が、耳元で聞こえて、堪らなく気味が悪かった。

(嫌だっっ!! やめろーーーーっっ!!)

 声にならない声で必死に叫ぶ。唸り声のような俺の声が部屋中に響くと

「キス出来ないのがとても残念だよ、隼人……でもこれを見れば、少しは静かに俺の言う事を聞いてくれるかな?」と、ニヤっと口の端を上げ、俺の前にノートパソコンを置く。

(パソコンで何を……?)

 不審に思い、俺は次長を睨みつける。

「そうだ、君は目が悪かったんだね。ほら、これでよく見えるだろう?」

 外していた眼鏡を俺に掛けると、パソコンを操作する。
 何かのフォルダを開けると動画が再生された。
 俺はその動画を見た時、全身の血の気が引いて行くのが分かった。
 あまりの出来事に、全身の毛が逆立つ。
 そこに映し出されていた映像――――。

 それは、俺と涼太の情事の様子だった。

 音声こそ無いが、どうやってその動画を入手したのかと、考えを巡らせる。そして、あることに気が付いた。

(そうだ……あの万年筆だっ! くそっ!!)

 舐める様な視線で眺めつつ、次長は
「可愛いな、隼人……まさか君がこちら側の人間だったなんてね。これを見たとき飛び上がるくらい嬉しかったよ……。彼女って言ってたから、その女にこれを見せて売るって脅かして別れさせようと思っていたんだけど……手間が省けたよ。君がこちら側の人間なら、君を脅せば済むからね。この君の可愛い恋人……涼太君だっけ? 弟って言ってたけどこの男の会社にこれ、送ったらどうなるかなぁ……?」
 淀んだ目つきで次長は言う。俺の反応を愉しみながら続けて
「そうそう。君に贈った万年筆……あれに小型カメラ仕込んであるって気が付かなかっただろう? お陰でこんなに素敵なものが手に入ったよ。君はお人好しだねぇ、会社の人間を信用するなんて……まぁ、そこが君の良い所でもあるけれど」

 くっくっと喉の奥から搾り出すような、嫌な笑い声を上げ、笑う。

「さて……どうする? 恋人が破滅するのを見るか? それとも……俺の可愛い従順な恋人になるか?」

 俺の眼鏡を外すと、顔面に舌を這わせながら、口枷を外した。

「――吉岡っ!! 貴様ぁっ……っっ!!」
「おー怖い怖い! そんな顔して睨むなよ……俺はただ、君が好きなだけで、恋人になってくれって言ってるだけじゃないか?」

 俺の顎を掴むと引き上げ、じっと見据える。亜麻色の瞳が邪悪に染まり、妖艶な光を放つ。それをじっと睨み付けるが、まるで蛇に睨まれた蛙の心境になる。

「ふ……ざけるなっ!! 誰が貴様の言う通りになんかっ……っ!!」

 俺は自分の出せる限界まで声を低くして威嚇してみるが、それを一笑し

「んーそうか、残念だなぁ。こんな奴より、俺の方がどんなに好いか、君はまだ分からないか……」

 投げる視線が冷徹な光を帯びる。それを見たら、流石の俺も背筋が寒くなった。自慢じゃないが、誰に挑まれても怯んだ事などない。だが、次長は何かが違う。俺の本能が警鐘を鳴り響かせている。
 それを払拭するように、声を荒げた。

「貴様などの言いなりになる位なら、ここで死んだ方がマシだっ!!」
「そうか……ふふ、それじゃあこの男……どうなるんだろうねぇ?」

 俺は次長の、その冷淡な顔つきに身震いした。
 この二面性……こいつはそれ相応の実力者だ。おまけに頭の回転も速い。会社でどんな手を使って伸し上がって来たか、今、理解出来た。この男なら、どんな手段を使っても涼太を陥れようとするだろう……それ位の事は容易い筈だ。
 警鐘はなおも鳴り響く。そして本能が命令する。『逃げろ』と――。圧倒的な知恵の差に、俺は初めて味わう敗北感に、打ちひしがれた。

 俺が俯き黙っていると顎に手掛けた手に力を込め、強引に引き上げると唇を重ねてきた。
 と、同時に何かを舌の上に乗せられ、吐き出そうとしたが、飲み込まされる。

「隼人は抱く側だったみたいだからね、抱かれる側になって貰うよ? その為にもう少し欲情して貰わないと……。君は案外辛抱強いんだね? 大抵の人間はさっきのでで充分なんだが……今度のは、もっと強力だから凄く気持ちよくなるよ?」

 クスクスと笑いながら、次長は俺のものに手を伸ばす。
 心臓の鼓動が先程よりも早くなり、全身の血が滾るような感覚に陥ると、俺のは今にも頂点を迎えそうになる。必死に歯を食いしばり耐えるが、指でそこを弾かれると、途端に白濁を散らしてしまった。
 堪らず腰を跳ね上げ息を漏らすと、次長は口の端を上げ、にやりと微笑む。
「どうだ? 俺に色々して欲しくなって来ただろう?」
 全身の血がそこに集中するかのように、俺のは熱くなったまま衰えることなく、白濁した体液を放出しつつも脈打っている。止まらない射精に腰が抜けそうな感覚になる。

「――っ……っっ!?」

 体験したこと無い現象に、俺は戸惑った。

「な? まだまだ終わらないよ? どうする?」
「……くっ!! 貴様ぁ……」
「耐えてる姿も可愛いよ、隼人……」

 そう言うと次長は、恍惚とした表情を浮かべながら俺を眺め

「あぁ、本当に長かった……君が入社した時から一目惚れでねぇ。その秀出た才能といい人格といい、全てが理想的だったよ。しかし君は女性に興味があるみたいだったからね、君に近付く女は全部俺が排除したよ……。それは結構大変だったさ! やはり女という生き物は、優秀な人物を嗅ぎ分けるのが得意だからね。入社当時から人気者だった君を狙う女は、星の数ほど居たからな。合コンのセッティングしたり、ホストに溺れるように仕向けたり……まぁ、君は鈍くて気が付いて無いみたいだったがね?」

 何という事だ……。今まで女に縁が無かったのは、皆こいつのせいだったのかと憤りを感じた。俺が睨み付けると、次長はフッと鼻で笑う。

「そうそう、君が入社当時付き合ってた女、あの受付嬢、名前なんだったけ? あいつなんか俺がちょっと色目使っただけで、尻尾振って抱かれたよ。女なんか皆同じ……男の地位、財産、容姿、これしか見ない。餌に群がるハゲタカ……いや、それ以下の下等動物、蠅だ。その点、男は違う……互いに尊敬し合い、高めて行く事が出来る。そう、特に君は俺をもっと高みへと上らせてくれるだろう――。俺がどんな想いで、君をここまで押し上げたと思ってる? 嫌なジジィ共に愛想笑いして、おべっか使って……呑みに付き合って散々愚痴聞かされて……。金も相当使ったさ。愛人手配してやったり……ちょっと煽てると調子に乗って、馬鹿な連中だ。あいつらなんか実力も無いくせに、権力振り翳す、ただの生ける屍だよ……君は俺と同じ器の人間だ、解るだろう? 隼人……君だけだ、俺を理解出来るのは」
「……何、ふざけた事言ってるんだ? 俺は貴様とは違う!!」
「同じじゃないか。男が好きなのも、優秀なのも」
「違うっ!! 俺は涼太が好きなだけだっ!! 涼太が女であろうが、男であろうが、涼太が好きなんだっ!! 貴様なんかと一緒にするなっ!!」
「そんなにその男が大事なのか? 君は騙されてるんだよ? 気が付かないのかい?」 
「何故そんな事が言えるっ!! 根拠はっ!? 馬鹿馬鹿しいにも程があるっ !!」
「俺はその手の男を相手にして来たからね。大体見れば分るんだよ。今は君を好きだと思い込んでいる様だからね、そりゃ嫌われないように清楚に振舞うだろうさ。だが、この手のタイプは皆、肉欲に弱いからね。じゃあ仕方ない……。この男は何処か、そう言う嗜好の人達が集まる店のペットにしてやろうか……そしてその店に、君を連れて行ってあげるよ。そうしたらきっと、この男の正体が分かると思うよ?」
「……何を言ってるんだ?」
「君は、この男に誘惑されたんだろう? こいつ、君の事狙っていて、妹さんを何らかの形で葬り去ってから、君をモノにしたんだろう?」

 次長の言っている意味がさっぱり分からない。

「この男はただの淫乱なゲイだよ、君の事を騙してるだけだ」
「貴様、頭がおかしいんじゃないのか? 涼太はそんな奴じゃない!! いい加減にしろ!!」
「可哀相に、すっかり騙されてしまって……まぁ良い」

 次長はクスクスと笑いながら、俺の顎を掴むと顔を寄せ、涼太の画像で一時停止し、冷淡な瞳で俺を見ると

「さぁ、どうする? 大人しく言うこと聞けば、君のその思いに免じて、この男には危害加えないけど?」

 画面に映る涼太の顔が、滲んで霞む……。

「それにしてもこいつ、君の恋人だと思うと虫唾が走るな。この媚びた目、恍惚とした顔……本当に腹が立つ。君の前でこんな顔しやがって……!!」

 怒りに満ちた表情で画面の見つめる次長に、俺は危機感を覚えた。この思い込みの激しさは尋常じゃない。どこをどうやったらそんな考えに行き着くのか、俺には理解出来ない。
 常人の理解の範疇を超えた存在ほど、厄介なものは無い。こいつに何を言った所で、捻じ曲げて捉えてしまうだけだ。
 そして、この殺気は本気だ。喧嘩程度で身に付くものじゃない事くらい、察しがつく。この男は、闇で様々な人を社会的に葬って来た人間だ。

 俺は歯を食いしばり、今にも流れ落ちそうな涙を堪えるのに、必死だった。

「…………っ……だな?」
「ん? 何だって? もう少し大きな声じゃないと聞こえないなぁ」

 俺を見下ろしながら次長は、くっくと喉仏を上下に揺らす。

「――……本当だな?」
「ああ、約束するよ。別れては貰うけどね。と言うか、もう日本に帰ることは無いと思うが、念のため」
「――……分かった……。俺の事は好きにすればいい……但し!! 約束を破ったら貴様……殺すからな………っ!!」

 すると次長は、先程の鬼気に満ちた表情を一転して変えると、子供のように無邪気な、とても嬉しそうな笑みを浮かべ俺を抱き締めた。

「――本当だね? 俺の気持ちを理解してくれたんだね? あは、凄く嬉しいよ……そうだ!! ご褒美に君に玩具を与えよう……俺の飼ってるペット……この日の為に調教しておいたんだ……淳也! 入れ」
「はい、吉岡様……」



                     ――to be continued――


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――時よ 止まれ――<14>

 
 俺の様子に気が付き、次長は
「桜井君、大丈夫かい? 何だか顔色が優れないようだが……時差ボケかな? 今日は外出するの止めて、ルームサービスでも取ろうか?」と、室内に設置してある電話に手を掛けた。俺は直ぐに気分が良くなるだろうと
「いえ、多分久し振りに煙草吸ったから、ちょっとクラッっとしただけですよ」と、苦笑いしながら答えると
「いや、随分顔色が悪いぞ? 今日は大事を取った方が良いんじゃないか? 明日の仕事に支障をきたしても困るし」

 心配そうな表情をし、次長は俺の顔を覗き込む。

「ええ、そうですね……。それじゃ、そうさせて貰います、すみません……」
「それが賢明だと思うよ。じゃあ適当に頼むけど、酒は? 呑まない方が良いかな?」
「いえ……ビール、お願いします」
「そっか、酒が飲める元気があるなら、明日は大丈夫そうだな」

 次長はそう言うとニッコリと笑い、フロントに電話をかけ注文をしていた。
 先程火を点けたまま置きっぱなしにしてあった、次長の煙草の煙が室内を漂っている。
 きっと、俺の事で消すのを忘れてしまったのだろう。既に短くなった煙草は、自然鎮火していた。
 フロントとの通話を終えた次長が、それに気が付く。

「ああ、点けっぱなしだったか……。悪かったね、桜井君。煙たくなかったか?」
「いえ、大丈夫です……。俺も吸いますし、それほど気になりませんでした」

 正直言うと、他の銘柄の煙草の匂いはあまり好きじゃない。特にこの葉巻の類は独特で、長時間嗅いでると吐き気すら催してくる。だが、正直にそれを言ったら、次長は気兼ねしてしまうだろう。部屋に押しかけてる身としては、それを口にするのは憚れる。

「そうか? それじゃ悪いが、もう一本、吸わせてもらうかな。殆ど口にしないでいたから……」
「はい、どうぞ」

 次長の長い指が優雅な動きで葉巻をケースから取り出し、重厚なオイルライターに火が点る。一連の動きが自然で、厭味が全く無い。これが俺だったら、気障ったらしくて目障り極まりないだろう。世の中には選ばれた人間というものが存在する。次長は当に『選ばれた』人間だ。

 また独特の香が漂う。嫌な匂いでは無いが、好みの香りではない。その煙を目で追っているうちに、また頭がぼんやりとして来る。
 俺は疲れが出たのかとネクタイを緩め、ジャケットを脱ぐと椅子に掛けた。
 しかし一向に気分は良くならず、返って悪化していくようだった。
 そんな俺の様子を気にして次長は「大丈夫か? ベットに横になっても構わないよ?」と、更に心配そうに煙草を揉み消しながら俺を見る。

「いえ、大丈夫です……。ちょっと空調が効き過ぎてるみたいで……。あの、ところで俺の部屋は……」
「ああ、一緒に言っておいたよ。後でボーイがキーを持ってくるって」

 次長はエアコンのリモコンで温度を下げながら、俺を気にしてる様子で話しかける。

「すみません、何から何まで……」
「いや、そんな事は構わないよ。俺も少し暑い気がしてたんだ。それより早めに休んだほうが良さそうだな。食事が済んだら直ぐに部屋に戻るといいよ……そうだ。何ならこのまま部屋を、チェンジしても構わないが?」
「いえ、そんな……」
「遠慮する事は無いよ。どうせ似たような部屋だから」

 それを聞き、ホッと息をつく。こんなに体調が悪いのは何時振りだろう。一種、風邪を引いたときと似ている。寒気こそ無いが、熱る身体を持て余し気味に、ぼんやりとする頭を振った。
 次長はそれを返答と勘違いした様子だった。

「頼むから無理はするな。これは上司命令でもあるんだぞ、桜井君」
「そうですか……それじゃ、そうして頂けると助かります」

 これが時差ボケと言うやつなのかと思いながら、ぼんやりとテーブルを眺めていた。

 次長が心配したのだろう、ミネラルウォーターを持ってきてくれた。

「大丈夫かい? 桜井君……」
 と、ドアのチャイムが鳴る。
「お、食事が来たようだな。ちょっと待っててくれ」
「すみません、次……吉岡さん」

 振り返り様に手を振りながらニコっと微笑み、ドアを開けると室内に次長位の背の高い、金髪碧眼の端正な顔立ちをしたボーイが入って来た。
 ボーイは穏やかな笑みを湛えながら、テーブルに食事と飲み物を置き、綺麗に飾り付けして行く。飾り付けを終えたボーイは
「本日は当店をご利用頂きまして有難うございます。ごゆっくりとお過ごし下さいませ。それでは失礼します」と、お決まりの文句を言うと、次長に部屋のキーを手渡した。
 次長はジャケットのポケットからチップを取り出し渡すと、それをボーイに手渡す。
 一瞬驚いた表情をしていたが、ボーイは上機嫌な調子で握手し、去っていった。

「それじゃ、早めだけど食事を済ませて休むといい。俺もそうするよ」
「ありがとうございます……」

 俺はビールの瓶に手を伸ばす。次長のグラスに注ぎ、俺の分を注ぐと

「それじゃ、プロジェクトの成功を祈って」と、次長はグラスを持ち上げた。
「乾杯」と、俺は次長のグラスに自分のグラスを軽く当て、乾杯すると食事をする。
 次長はサラダを頬張りながら

「本当は打ち合わせしたかったけど、また明日でいいな」と、独り言のように呟いた。
「すみません、本当に……」
「いやいや、体調を戻す事のほうが大事だからね、気にしないでくれ」
「ありがとうございます……」

 俺も実際、資料を見て貰いたかったが、先程から体調が良くなる所か悪くなる一方で、正直食事をするのも辛かった。
 しかし、これ以上次長に迷惑を掛ける訳には行かないと思い、無理やり食事を喉に通すとビールで流し込む。

「桜井君、そんなにがっついて大丈夫か? 気分が悪いなら俺、自分の部屋に……」
「いえ……大丈夫ですよ。はは、なんか腹減っちゃって……」

 気を使う次長に申し訳が無くて、俺は咄嗟に嘘を言う。

「そうか、それなら良いが……そうだ! 君と飲もうと思ってね、持ってきたんだけど」

 次長は鞄を漁ると、ワインを取り出す。俺は普段、そんな気取ったようなものは呑まないので詳しくは分からなかったが、年代ものの高級そうなものだった。

「どうだい? 付き合わないか?」

 俺はそれどころじゃなくて、早く横になりたい位に体調は悪化していた。
 呼吸は乱れ、やけに喉が渇く。しかし上機嫌にワインを手にする次長に申し訳なくて
「はい、それじゃ頂きます」と、笑顔で答えた。

 次長はワイングラスを棚から出すと「ん? これ汚れているな……結構、綺麗なホテルだと思っていたが、こう言う所は杜撰だな……向こうで洗ってくるよ」と、洗面所に向かい歩き出す。

「あ、俺やりますよ!」

 慌てて立ち上がろうとするが、体が思うように動かない。

「いやいや、これ位俺にも出来るから。桜井君は座っていてくれ」
「……すみません、ありがとうございます」

 次長が洗面所に行くと、俺は聞こえないように小さく嘆息を付いた。

(何で……こんなに体調がおかしいんだ? 慣れない土地だからか? それとも、熱が出たんだろうか……。さっきから暑くて仕方ない……)

 自分の不甲斐なさに苛立ちを覚える。すると次長が戻ってきた。

「すまないね、食器を洗う洗剤が無くて、水だけで洗ったからまだ少し汚れてるけど……拭くものもタオルじゃ何だか気持ち悪いし、このままで良いかな?」

 見ると、水が底にほんの少しあった位で、気にする事の程でも無い。

「そんなの構いませんよ、ありがとうございます」
「すまないね」そう言いながら次長はワインを注ぐ。
 先程から喉がいやに渇いていたせいで、俺はそれを一気に飲み干す。

「んー、相変わらず好い飲みっぷりだね」
 次長はニコニコとしながら俺を眺めている。

「そうですか? あ! すみません、こういうのって味とか匂いとか楽しんでから……」
「いやいや、そんなのは構わないよ。見ているこちらが気持ち良い位、好い呑みっぷりだなと思っただけで。君の為に用意した甲斐があったってもんだよ」

 次長の笑顔を眺めながら話を聞いているうちに、目の前が霞んでくる。
 先程の体調不良も重なり、目も開けていられない程の強い眠気が襲って来た。

(ヤバイ……このままじゃ……)

「あ……、ちょっと、見て頂きたい資料が……」

 何とか意識を保とうと、立ち上がろうとした。が、手足が鉛のように動かないままバランスを崩し、その場に倒れこむ。

「く……」

 情けなく唸り声を上げる俺に、次長は慌てる様子も無く近寄り、身を抱き起こすと

「本当に好い飲みっぷりだよ、桜井君……。どれだけ、この時を待ち侘びた事か……」

 薄れる意識の中で、次長が不適に笑ったように見えた。



                     ――to be continued――


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――時よ 止まれ――<13>

 会社に着くと自分のデスクに向かう。いつものように業務をこなし、就業時間を迎えた。
 フライトの時間まで余裕があった俺は、パソコンを立ち上げ資料の最終確認を行い、プリントアウトしてから一通りの資料を揃えると、鞄に詰め込んだ。
 そこに、荷物を携えた吉岡次長が姿を現す。

「お疲れ桜井君、準備は整ったかい?」
「お疲れ様です。ええ、何時でも行けますよ。もう出発しますか?」

 次長は腕時計を見ると「そうだな、行こうか」と、俺に言い部署の皆に「じゃあ、俺達がいない間、頼んだよ!」と、笑顔で手を振った。
「お気をつけて」「お土産楽しみにしてますよ、吉岡次長、桜井課長!!」と、様々な方向から皆の声がした。
「ああ! それじゃ行ってくる」

 俺も手を振り、会社を後にした。

 

 駅のホームに着くと成田行きの電車が到着する。
 電車に乗り込み、空いてる席に俺達は腰を下ろした。

「桜井君は海外ってこれが初めてだよな? 確か」
「ええ、長い時間飛行機の上ってまだ体験したこと無いです」
「そうか、結構ゆっくりできるぞ? 今回は初めての桜井君のためにビジネスじゃなくてファーストクラスを取って置いたから」

 次長は笑顔で俺の肩をポンポンと叩く。胸ポケットからチケットを取り出すと、確かにファーストの文字が記してあった。

「すみません、ありがとうございます、気を遣っていただいて……」
「いやいや、俺も君のお陰で得したよ! 俺なんかいつも慣れてるだろうからって、ビジネスばっかりで、正直キツイんだよね」

 笑いながら俺の肩を叩くと「お! 忘れるところだった……これ、昨日渡しそびれたたやつ……」と、ポケットを弄り万年筆を手にしていた。
 前に頂いたのとは別物のように見える。俺が首を傾げ見ていると次長は

「いや、実はあの万年筆、先がもうダメになっていてね……代わりにと言っては何だけど、受け取ってくれるかい?」
 頭を掻き
ながら、申し訳なさそうに言うと俺に手渡した。

「ええ、返ってお気を遣わせてしまって申し訳ないです……有難く頂きます。こちらも素敵なデザインですね」
「そうか、気に入って貰えたみたいで安心したよ」

 次長は安心したように、ほっと息をついた。
 今回のプロジェクトの概要を、ざっと次長が説明する内に成田に到着し、俺達は目的の地へと旅立った。

 約十時間ほどのフライトを終え飛行機は目的地へと到達する。
 空港に降り立つと、次長はタクシーを拾った。流暢な口調で英語を話し目的地を告げるとタクシーは走り出す。俺は慣れないフライト時間と環境で、少々疲れを感じていた。

「桜井君、疲れたろ? チェックイン済ませたら何か旨いものでも食いに行こうな」
「ありがとうございます。ほんと長旅ですね。それにしても、飛行機の上で時刻合わせるって初めてですよ」
「ああ、そうだな、時差は日本と17時間程あるから。日本に居た時は夜だったのに、こちらは前の日の14時なんておかしな感覚になるだろう?」
「ええ。飛行機の中で寝ていたのに、また夜を迎えるなんて、本当に不思議ですよ」
「俺もこれは慣れないけどな。ま、明日の調査に備えて、今日はゆっくり過ごそうじゃないか。少しばかり贅沢な気分になるな」と、次長は笑う。

 約10分ほど車が走ると、わりと高級そうなホテルに着いた。チェックインを済ませるとそれぞれの部屋に荷物を置く。緊張が解けた俺は、ほっと息をついた。
 そして長い間、煙草を吸っていなかった為、一服しようと灰皿を探した。

「あれ……無いぞ?」

 置いてそうな所を探すも見当たらず、無いと思うと気分も段々とイラついて来て、無性に吸いたくなる。

「ったく、飛行機でも全面禁煙なんて、どうかしてるよ……。空港には喫煙所すらないし、おまけに此処でも吸うなってか?」
 不機嫌になりながら独り言を呟いていると、ドアをノックする音がした。次長だとは思ったが、ボーイの可能性もあるから、一応、英語で返答する。

「はい? どなた様ですか?」
「吉岡だ。桜井君、綺麗な発音だな。ところで、準備できたかい?」

 会社では電話対応で話す事もあったが、本場で直接対峙して話のは初めてだから、幾分緊張していた。次長に発音を褒められ、ほっと胸を撫で下ろす。
 準備は整っていたものの、一服したかった俺は取り合えずドアを開け

「はい。有り難うございます。ただ……ちょっと一服しようかと思ってたんですけど、灰皿が見当たらなくて……」
「あれ? 君、喫煙者だったけ? ごめんごめん、それは悪かった。てっきり吸わないものだとばかり……聞いておけば良かったな……。こちらは喫煙者はあまり好まれないからね、殆ど禁煙室なんだ。後で部屋を変えて貰うから、取りあえず俺の部屋で一服すると良いよ」
「ありがとうございます、それじゃお言葉に甘えて……」
「それじゃ、荷物も一緒に持ってきた方が良いかな、フロントに電話して、部屋を変えて貰うように頼んでみるから」
「わかりました、そうします」

 荷物を纏めると鍵を閉め、次長の部屋へと移動する。

「いや、本当に悪かったね、こっちは喫煙大丈夫だから。さ、どうぞ」

 申し訳なさそうにしながら、次長は扉を開けた。

「いえ、こちらこそ申し訳ないです……。それじゃお邪魔します」

 シングルルームの割には、先程の部屋より広く感じた。
 ベットもアメリカンサイズなのか、セミダブルというよりはダブルベットに見える。
 俺がキョロキョロと辺りを見渡していたせいか、それに気が付いた次長は

「喫煙室って限定されてるから、ダブルルームしか空いて無かったんだよ。なんか悪いね俺だけ広い部屋で……まぁ、君が喫煙者だって知ってれば、一緒の部屋でも良かったんだけど、流石に男同士でダブルってのは……なあ?」
「……はぁ、そうですよね」

 俺は苦笑いを浮かべた。
 確かにこちらはその趣向の人が多いと聞く。次長はそれを勘違いされるのが嫌なのだろう。まぁ、俺も涼太以外の人には興味無いが、少し複雑な気分になる。
 そんな心情を知ってか知らずか、次長はテーブルに置いてあった灰皿を差し出し

「じゃあ、俺も、もう一服するかな。はい、これ灰皿」と、灰皿を手渡した。
 俺はその灰皿を受け取り、煙草に火を点け一服すると、落ち着きを取り戻す。

「はぁー、落ち着きますね……でも吉岡次長も煙草吸うんですね? 知りませんでした」
「俺は本数はあまり吸わないからね、会社でも飯食った後位かな」
「食後の一服は格別ですよね」
「ああ、そうだな……」

 そう言うと、次長も煙草に火を点けた。葉巻タイプの煙草は、次長に良く似合っている。その煙を目で追いながらふと、今まで嗅いだ事の無いような香りだと思い
「次長の煙草って、変わった匂いしますね?」と、話し掛けた。
「そうかな? 俺は慣れてるから気が付かないけど……。それより前にも言ったけど、その次長って何か堅苦しいんだよなぁ、桜井君は本当に生真面目だね?」
 と、俺の肩をいつものようにポンポンと叩く。

 年齢が近いせいなのだろう、次長は俺に対してフレンドリーだ。
 だが、呑みに行く時などは皆に対してもそうだ。俺だけ特別という訳じゃない。
 会社の上司である以上、俺としてはそんなにフランクには付き合えないと思うのだが、次長はそれが嫌なのだろうか。

 弓道の歴が長いせいか、どうしても年上の人には敬語を使ってしまう。例え会社の部下だったとしても、それは変わらない。この癖はなかなか抜けるものじゃないし……。
 そんな事を考えているうちに、何だか頭がボーっとしてきた。長旅が祟ったのだろうか。ファーストクラスの乗り心地は確かに良かったのだが、やはりどうも落ち着かない。
 ろくに眠れなかったせいかも知れないと思い、頭を軽く振って眠気覚ましをする。すると、クラリと眩暈を覚えた。




                      ――to be continued――


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――時よ 止まれ――<12>―R-18―

 いよいよ海外出張の日が訪れた。横で寝ている涼太を起こさない様にそっとベットから降りてバスルームに向いシャワー浴びて身支度を整える。
 するとそこに涼太も起きて来た。

「おはよう、朝飯作るから少し待ってて」

 入れ替わりにシャワーを浴びる涼太のシルエットに俺はまた欲情してしまう。
 バスルームに入り後ろから抱き締めると、涼太は俺の腕にそっと頬を寄せ

「隼人……時間大丈夫なのか?」
「ん、大丈夫。涼太と今日から一週間も逢えないと思うと……」

 涼太は振り向くと、俺に唇を重ねる。

「俺だって寂しいよ……」

 切ない表情を浮かべる涼太が愛しい。
 身体を洗っていた途中の、泡だった涼太の後ろに俺のを押込むと、涼太は身体を反らせた。

「あ……ンんっ……いきなり……」
「ごめん……でも我慢出来なかったんだ……お前が欲しくて」

 そう言いながら、涼太の首筋を強く吸い上げる。

「隼人! そんな事したら痕が……」
「涼太は俺だけのだって証拠付けさせて? 誰にも触らさせたくないんだ……」
「隼人……」

 俺はまた首筋と鎖骨の辺りを強く吸い上げた。

「は……んン……」

 甘い声を漏らしながら、涼太は身悶えした。
 艶かしい声と表情に、眩暈が起きそうになる程の快楽が押し寄せる。
 涼太の先端へと手を伸ばし、扱き始めると息を荒くし身体を震わしている。

「あっ……ぁ……ン……」

 俺も我慢出来なくなり、腰を揺さぶった。

「隼人……隼人ぉ……ああっ……」

 甘えた声で俺の名を呼びながら、涼太は頂点を迎える。と、同時に俺も達した。

「涼太……ごめんな……朝から」

 涼太は首を横に振ると、俺に凭れ掛かりながら

「ん……いいよ……俺も隼人とこうしたかったから……」と、顔を紅潮させる。
 重ねあう唇から甘い吐息が漏れると、涼太は寂しそうな顔して
「隼人……もう準備しないと……」

「分かってる……分かってるよ」

 名残惜しさを振り払い、バスルームを出て身支度を整え荷物整理をし、リビングに向かうと、キッチン横のテーブルの上には朝食が並べられていた。

「隼人、食べよう?」
「あぁ、美味そうだな! でも……涼太の作る飯も、一週間食えないんだよな」
「帰って来たら、飛びっきり手の込んだ、ご馳走食べさせてやるから」

 笑顔で涼太は俺に、マグカップにコーヒーを注ぎ、手渡す。

「ん、楽しみにしてるよ」

 朝食を終えると、涼太を抱き締め唇を重ねる。

「じゃあ行って来る」
「ん……気をつけて」
「愛してるよ、涼太」
「俺もだよ、隼人」

 後ろ髪を引かれるような気分を、何とか振り払うと涼太から離れる。
 荷物を車に積み込み、俺は煙草を咥えエンジンをふかすと会社へと走らせた。



                   ――to be continued――


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