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主に長編BL小説置き場です。BLの意味が分らない、または嫌悪感がある方は速やかにブラウザバックでお願いします。

not the something <30>―R-18―最終話

ここからはR-18指定です。閲覧注意です。

えーと……、ちょっと言い訳させてください^^;
これ、私が初めて書いたEROシーンなんですね。それ以前は書いた事がありませんでした。

今も苦手意識は拭えませんが、この頃はERO無くなれば良いと思うほど、書くのが苦手でした。
他の人が書いたのは全然平気で読めるのに、やはり自分が書くとなると……orz
資料も無い、手探り状態でしたので、そりゃもう……悲惨です(苦笑)
未だに推敲が出来ない産物となりました……orz←なので、今回も出来なかったとかね^p^
そのまま載せちゃった、ごめんね!
急展開過ぎて、びっくりするかも><;;;;;

それを踏まえた上で、閲覧して頂けると有り難いです^^;



(まさか……泥棒? いや、動物とか? 涼太、どっかから何か拾ってきたか?)
 涼太は寂しがりの所もあるから、俺が居ない間にペットでも飼ったのだろう。
 以前、俺が動物は飼ったことが無いので分からないと答えたら、寂しそうにしていた事を思い出す。なんだったか、犬を飼うのが夢だったとか――。
 飼ってみれば結構可愛いかも知れないが、俺はどうして良いか分からず、固まった。
 きっと間違って俺の部屋に紛れ込んだに違いない。呼吸の様子からして結構大きな犬かも知れないと思い、そいつが吠え出さないようにとそっと振り返る。
 暗闇に目が慣れて、ぼんやりと影が映り出されると、違和感を抱いた。
 俺の予想に反して、そこには――……。
 なんと涼太が、俺の枕を大事そうに抱き抱え、眠っているじゃないか!
 俺は一瞬、目を疑った。
(え、えぇっ!? なんで涼太が俺のベットで……?)
 今にも心臓が飛び出しそうな位、胸高らかに心音が耳元まで木霊するのを必死に堪え、息を殺し近寄ってみた。
 涼太は、ぽつりと俺の名を呼んだかと思うと、寝息を立てている。その頬には涙を擦ったであろう跡があった。
 それを見たら、頭の中が真っ白になり、気が付いた時には、涼太の唇に自分の唇を重ねていた。
「ん……っ? ――……は、隼人!?」
 涼太は俺に気が付き、慌てて起き上がると
「ごっ……ごめんっ!! 今日も帰らないと思ったから……今、部屋に戻るよ」と、慌てふためきながら立ち上がろうとした。暗闇でも分かるほどに涼太の頬が赤く染まっている。
 これは間違いなんかじゃない。涼太も俺のことを想ってくれている。そう確信したら、行動を起こさずにはいられなかった。
 その腕を掴み、涼太の瞳を見つめ「……寂しい思いさせて悪かった」と、もう一度キスを落とす。しかし、やはり自分の勘違いかも知れない……そんな不安が頭を掠める。
 涼太の反応が気になる。俺はそっと目を開けてみた。
 涼太は、嫌がる事なく頬を上気させ、されるまま静かに唇を合わせている。
 その様子に安堵し、一度、唇を離すと、俺は今までずっと仕舞っていた胸の内を、涼太に明かした。
「俺、今までどうしていいか……その、わからなくて……。あの時も手が触れただけで避けられたと思ったし……」
 すると涼太は首を横に振りながら
「俺も……どうしていいか、わらなかった……あの時、心臓がバカみたいに速くなって、もう本当に頭が真っ白になっちゃって――。知られたく無かったんだ……恥ずかしくて」
目を泳がせながら、しどろもどろに答える涼太が堪らなく愛しい――。
 涼太を抱き締めながら押し倒し、唇を塞ぐ。
 涼太が可愛い、愛しい。溢れる思いの丈を思いっきりぶつけた。
 零れる吐息の隙間を縫い、舌を絡ませ激しく吸い上げた。吐息と共に涼太の微かな声が聞こえる。聞き慣れたはずの声とは違う、色を纏ったその声は、次第に俺の理性を奪っていく。
 俺は涼太の胸にそっと指先を這わせた。小さな突起が固くなり、俺に触れと言わんばかりに主張してくる。その先を摘むと涼太は身体をビクリと反らした。
「あっ、……は……隼……人」
 今まで聞いた事の無い涼太のその声に俺は、昂ぶりを抑えることが出来ず、更にもうひとつの尖りに指を這わせた。
「ふ……んっ……」
 咽の奥から搾り出すような、切な気な、妖艶極まりない声を放つ涼太に、俺は溺れる。
 男同士だからとか、そんなの関係ない。涼太が欲しい、純粋にそう思った。
 首から舌を這わせ、徐々に下へと移動する。
 その度にいちいち反応して、息を荒げながら身を捩る涼太――
 愛おしさは暴走するばかりだ。
 胸を吸い上げながら、涼太の大切な部分に手を伸ばすと、身体を反らせ更に身を捩りながら「あっ」と、吐息混じりの小さな声を漏らす。
 涼太の屹立は、激しく脈打ち下着を微かに濡らしている。
「やっ……見るなよ……恥ずか……しい」
普段は絶対見せないような仕草。もじもじとしながら、目を泳がせてる涼太。
誰がこの衝動を止められるだろうか――。
「涼太の全部が知りたい、お前の全部が……見たい」
 涼太は頬を上気させ、瞳を潤ませながら俺を見つめると、そっと上瞼を閉じた。
 それを俺は涼太の返事と見なし、下着を脱がせると涼太自身を掌に包み、ゆっくりとその手を自分に施すように動かした。
 びくんと涼太は身体を反らすと小さな声で
「んっ……は……やと……」と俺の名を呼び、頭を引き寄せ唇を重ねる。
 涼太が俺を求めている、そう思ったら嬉しくて仕方が無くなる。もっと涼太を悦ばせたい、必要とされたい――。
 互いを貪るような激しいキスに、俺の胸は昂りを増していく。
「涼太、愛してる……」
 耳元で囁きながら、溢れる想いを抑えられず、手を速めた。
 すると身体を震わせ、身悶えしながら涼太は
「だっ……そんなにしたら……うあっ……イ……クっっ」
 間もなく、白濁を散らし、涼太は身体を何度もびくつかせた。
 息を荒げながら陶酔したように瞳を潤ませている姿は、耐え難いほどの衝動を突き立てる。

 しかし、相手が落ち着くまでは、嫌がられてしまう。
 自分は鈍いから、そこを汲めずに突っ走ってしまったら本末転倒だ。
 別に身体を求めてるわけじゃない、心が欲しい。それだけだから――。
 一旦落ち着かせるために、深く息を吐いた。
(涼太って……凄く敏感なんだな……)
 それはもしかしたら、俺が相手だからと思うとジンと胸の奥が熱くなった。   
 涼太に軽めのキスを落すと、枕元に置いたあったティッシュでそれを丁寧に拭き取り、ごみ箱に捨てた。しかし、ある事に気が付く。
 空だったはずのその中は、既に幾つかのティッシュが捨ててあり、独特の臭気を放っていた。
「涼太……もしかして……?」
 俺が質問すると、今までぼんやりと宙を舞っていた目の焦点が合い、カッと火がついたように顔を真っ赤に染めた。
 涼太は目を逸らしながら恥ずかしそうにして「いや、その……」と、今にも消え入りそうに言った。
 今まで見せた事の無いその可愛らしい姿に、苛めたくなるような衝動が起きる。
涼太のもっと違う顔が見たい、知りたい、俺だけに見せて欲しい――。
 突き上げる衝動は留まる事を知らないようだ。
「一人で……したのか?」
 目が逸らせないように顔を両手で包み、俺に向けさせ、わざと意地悪く言う。
すると観念したように、顔を真っ赤にしたまま
「だって、どうしていいか……隼人と……その……――あの……セ、セックスしたいなんて言ったら、嫌われそうだったし……」しどろもどろに白状した。
(俺……と? じゃあこれは、俺を想って……?)
 俺も同じだった。涼太に嫌われたくない、だから自慰していた。夢の中で涼太を抱きながら……。しかし、そうしたところで虚しさだけが胸の中を支配しただけだった。
(そうか、それで敏感になっていたのか……)
 涼太の胸の内を聞いて天にも昇る気分になる。そんなにも求められているとは気が付かなかった。自分は本当にどこまで鈍いのだろう……。
 涼太は強引にしなければ、自分では言出だせないタイプだと、ここで気が付いた。また、自分の知らない涼太を発見した気がして俺は嬉しくなり、上気した身体を抱き締め耳元で囁く。
「何度でも愛してやる。お前の気の済むまで、何度でも……だからもう一人でするな」
 涼太はその言葉に反応し、涼太のそれはまた頭を擡げ始める。
 その反応で、自分がいかに求められてるかと思うと、堪らなくなる。
 今度はそこを咥えると涼太は「あっ……! まだ……イッたばかりで……それに……」
息も絶え絶えに身を反らせ、必死に言葉を紡ごうとする姿がいじらしい。
 俺はヒートアップしていく自分を抑えることを止めた。
「それに?」
「きた……ない……だろ」 
「涼太のものなら汚くなんかない。寧ろもっと欲しいくらいだ」
 俺の発言に涼太は瞳を潤ませると、一筋の雫を溢した。
 丁寧に愛撫していくと「あっあっ」と、気持ちよさそうにしながら啼き声をあげ、更にそれを固く太くさせていった。
 俺の口いっぱいに育ったそれを吸い上げると同時に舌を絡ませる。涼太は恍惚とした表情を浮かべながら、腰を揺らす。
 そろそろ自分も涼太を欲しているようだ。だんだん余裕が無くなって行く。
 俺は、涼太の窄まりへ指先を滑り込ませるが、指先がなかなか入らない。
「ひ……あっ」
びくんと身体を硬直させて、力を入れた涼太の緊張を解すように、更に口淫を続けると身体全体が痙攣したようになり、二度目の絶頂が近いことを知らせた。
「ああっ……っ――っ!!」
 口から手に切り替えると、涼太のぬるっとした生暖かい液体が掌で弾ける。
それを指先に纏い、ゆっくりと張りのある双丘の間に滑り込ませ、窄まりへと忍ばせた。
 涼太は快感の余韻に浸っている様子で、息を荒げながらボンヤリと天を仰いでいる。するりと、今度はスムーズに指先が入っていった。
「ふ……あっ」
 また力が入り、俺の指を締め付けてくる。涼太の耳元を舌でくすぐりながら
「涼太……ゆっくり息、吐いてごらん?」
 促すとそれに従い、身を震わせながらゆっくりと息を吐く。
 肩の力が抜けると、指が根本まで食い込んだ。
「ん……っはぁ……っ」
「痛いか? ……涼太」
 涼太は首を横に振りながら「俺……変だよ、隼……人」と、艶めかしい表情をし、甘い
吐息を漏らす。
「気持ち……いいのか?」
中を指で弄びながら言うと、びくびくと身を捩りながら「…………っん」と、頬を紅潮させ、可愛らしい声で返事をした。俺のそれは、涼太の姿や声に反応し、我慢するのも段
々と辛くなっていく。
 もう一本の指を増やし、何度も出し入れすると、蕾が収縮し俺の指を更に奥へと導いてるようだった。
 とある所に触れた瞬間、涼太は身を反らせて一際、愛らしい声を上げる。
どうやらそこが涼太のいい所らしい。何度も強弱をつけて突いてやると涼太は頭を横に振りながら
「ぅあっ…………っ、や、だ……おかし……なる……」
俺に縋り付くように背中に腕を回し、身悶えする涼太の艶めかしい姿に堪らなくなり、俺もいい加減はち切れそうになっている自身を、涼太の窄まりへと押し当てる。
「涼……太、挿れるぞ……いいな?」
 瞳を潤ませ、こくこく、と、涼太は頷いた。
 俺は涼太の腰を持ち上げ、ゆっくりとその中へと入って行く。
「う……あぁ!! ……んっあっ」
 肩を震わせ、息を荒げながら涼太は痛みに耐えているようだった。
「涼太……ゆっくり息を吐いて……」
 吐息と共に微かに声がする。それはかなりの痛みを連想させた。
 俺は根元まで涼太に挿れると、暫くそのままでいたが、背筋がゾクゾクするような快感に見舞われ、眩暈が起きる。
 しかし涼太の痛々しそうな表情に、俺はやっぱり引き抜こうと、腰をゆっくり動かし
「辛いなら……止そう?」
声をかけ、涼太から離れろようとした瞬間、腕を掴まれ
「隼人……もう少し……で、慣れると思うから……待って……」と、俺の動きを制止した。
「無理しなくて良いんだぞ?」
「――俺も隼人を感じていたいんだ……」
 涼太は眉根を寄せながら、ニコっと微笑んだ。瞳には涙が滲んでいる。
「あ……っ…中で大きくなっ……」
「ごっ……ごめっ……」
涼太のいじらしい姿が愛おしくなり、反応してしまった俺は、涼太の中で勢いを増してしまっていた。
「隼人の……凄く熱い……よ」
 そう言うと涼太は、突然、腰を揺らした。
「う……うぁ」
 その動きを予想していなかった俺は、思わず声を漏らす。
 すると涼太は俺の反応を楽しむように、更に動きを激しくした。
「あ……ちょっ、涼太……もう少しゆっく……り」
「隼人も……気持ちいい?」
 涼太から発せられる言葉が嬌艶に感じる。啼く声が、乱れる姿が、全ての表情が堪らなくエロくて、普段の涼太からは、とてもじゃないが想像も出来なかった。
 俺は堪らなくなり、涼太の脚を持ち上げると、激しく腰を揺さぶった。
 リズミカルにぶつかり合う音と、水面を叩くような音が入り混ざる。
「はや……と……っんぁ……!! ヤ……バ……、っ……よ……」
「俺もだよっ……涼太」
 快感に身を委ねながら俺は、涼太に激しく唇を重ね、口腔内を愛撫した。涼太もそれに応える。口の端から漏れる吐息が熱を帯びて、息も絶え絶えになり、二人の熱は極限に達
しようとしていた。
「涼太……俺、もうっ!!」
「俺も……また……っ!!」
「くっ……あぁ……っっ!!」
 二人同時に声をあげ、絶頂を迎えた。
 やっと、やっと、本当の意味で結ばれた。二人だけの秘密――。
 身も心も一つになれた悦びで幸福感に浸りながら、涼太を抱き締める。涼太もそれは同じように見えた。頬を上気させながら微笑んでいる。
 優しく全身に口付けると、くすぐったそうにしていた。大きな黒い瞳に俺の姿が映し出されると、俺はそのまま、意識を失うように深い眠りについた。



 気が付けば、隣りで寝ていたはずの涼太の姿は無く、時計を見ると11時近かった。
 俺は身体を起こし、バスルームへ向うと、昨日のままの服を脱いでシャワーを浴びた。
(あれ? 俺、着替え持って来てなかったな……)
 と、思っていた所に脱衣場から声がする。
「隼人、着替え、置いといたから」
 ドア越しに聞こえるその声は、気のせいかも知れないが、いつもより穏やかに聞こえた。
 俺は、風呂場のドアを開けると、涼太の腕を掴み
「おいで、綺麗に洗ってやるから」とキスを落とす。涼太の頬は朱に染まった。
「ば、ばか! こんな明るいところでなんて……」
「いいから、来いよ」
 恥ずかしがる涼太の服を脱がせる。今まで知らなかった涼太の全身は、とてもバランスが取れていて、綺麗だと思った。
「そ、そんなに見るな!」
 顔を真っ赤に染めて視線を泳がせる姿は、俺の欲望を刺激するだけだとは気が付かない様子で、涼太は俺の目を手で覆った。
 あまりに可愛過ぎて、その場で押し倒したくなるが、その腕を掴み、一緒にシャワーを浴びる。熱めの湯だったせいで周りが湯煙に覆われた。
 涼太を抱き締めながら「ごめんな……寝ちゃったな」と言うと、涼太は目を伏せて首を横に振った。
 そして、俺の後ろに回り込み「アザ……すっかり消えたな」と愛おしそうに背中に手を当てると、腕を回してくる。
「ん、……そうだな」
 回した手にそっと自分の手を重ねる。涼太の心音が高まっていくのを背中で感じると、愛しさが溢れ出してくる。暫くの沈黙あと、ぽつりと涼太が口を開く。
「……俺、こんな心臓が壊れそうな位、ドキドキしたの初めてかも知れない……。麻里の時だって此所までは……」と言いかけ
「あ……ごめん……そう言う意味じゃなくて、その……」
 動揺してうろたえる涼太に、俺は振り向くとキスを落とし
「わかってる……。俺は正直、涼太にそんな風に想われてるって思って無かったから……凄く嬉しいよ」
涼太はその言葉を聞き、安心したように微笑むと
「俺だって……まさか隼人が……こんなに激しく想ってくれてるとは……」
「それに、涼太がこんなに可愛いなんて、意外だったな」
 俺はクスっと笑った。すると涼太は
「可愛いって……お前なぁ……。今度は逆でもいいんだけど?」
 ニッと笑ったかと思うと、俺のに手を伸ばし、掴もうとする。涼太の黒い瞳が、獲物を捕らえたと言わんばかりに怪しく光る。
「……やっ、りょ……やめ……」
「身体はやめろとは言って無いみたいだけど?」
 そう言う涼太の表情は、昨晩とは、うって変わり、男のそのものだった。細身ではあるものの、程良く筋肉が付いた肢体が、女とは違う事を示している。
 涼太だって男だ。今の言葉でプライドが傷ついたかも知れない……。軽率な言葉を発し
てしまったと反省した。
 そんな事を考えてるうちに、涼太は俺のそれを咥え、舌で満遍なく愛撫してきた。
「っ……」思わず息が漏れる。
「りょ……た、待て、違うんだ……そういう……意味じゃない」
 俺は身を屈めると、涼太から離れた。
「……イヤ……だったか?」と寂しそうな顔をし俯く涼太に、俺は首を横に振る。
「……そうじゃない。……ごめん、表現の仕方がわからないんだ……女っぽいとかそんな意味じゃなくて……涼太が凄く愛しいから……」
「……わかってるよ」
微笑みながら涼太は「今の隼人だって、凄く可愛かった」と悪戯な瞳で俺を見上げた。
 涼太に、してやられたと思いつつ、安堵の溜息を漏らす。
「涼太……また見たい」
「え?」
「お前が悦ぶ顔が見たい」
そう言うと涼太は頬を紅潮させた。顎に手をかけ、そっと唇を塞ぐ。
「涼太、俺はお前を、こうしてずっと傍で眺めていたいんだ。言っただろ? 何度でも、いつまでも愛してやるって」
 

 そうしてまた俺達はひとつになり、心も魂も繋がった。
 俺は一生、涼太を愛し続けるだろう。
 この先どんな事があっても、二人ならきっと乗り越えられる。
 涼太の温もりは、俺にそう確信させた。


 
                         ―― 第一部 隼人編 fin――



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これの続き……まだあるんですが、読みたいって思ってくれた方は拍手をお願いします>人<
それから検討してみますね^^;; なんかもう自信が無くなってしまって><;;
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not the something <29>

 
 そうして涼太と暮すようになってから三ヶ月が過ぎようとしていた。
 あれから涼太は髪を切った。どことなく怪しげな感じは無くなり、両目が揃った涼太は好青年そのものだった。

 目は、はっきりとした二重で瞳が大きいことに気が付く。
 すっと通った鼻筋や、凛々しい眉、どこか色気のある口元。片目じゃ無くなっただけで、印象は随分変わるものだと思った。

 そして今頃になって気が付いた。涼太は華音に似ていると言う事を――
 無意識のうちに、涼太の陰を華音に重ねていたのだ。
 あれ程までに華音が涼太を拒んだのは、華音はその事に気が付いたからに違いない。
 最後の言葉をふと思い出す。『私は代わりじゃないのよ――』
 もっと早くに気が付いていれば、華音に悲しい思いをさせなくて済んだかも知れない。
 そう思うと心が痛んだ。

 もしかしたら、涼太もそうだったのかも知れない。
 だから麻里に対して恋心を抱いたのかも……。
 
 しかしあれから俺達は、特に何も進展する事も無く、俺は段々と涼太の気持ちが解らなくなって行った。
 あの言葉はただ、麻理への義理立てで、別に俺に特別な感情など抱いてないのかも……そう思うと胸の奥がぎゅっと締め付けられた。

 ある晩飯の時なんか――――。

「隼人、おかわりは?」
「いや、自分でするからいいよ。お前に作ってばかり貰って悪いし……」
「そんなの気にしなくていいし。ほら、茶碗貸して?」
「あ……あぁ、悪いな」

 茶碗を差し出した時、手が触れ合った。
 俺は涼太に触れることが出来て、心臓の鼓動が速くなったが、涼太は身を強張らせ、直ぐさま手を引っ込める。
 反動で茶碗が床に落ち、割れてしまった。まるで今現在の俺の心境のようだった。
 慌てた涼太は「悪い! 怪我無かったか?」と、床に散らばった破片を拾う。

「おい! 素手じゃ危ないぞ!」
「大丈夫、だい……っ!! 痛って……」
「だから言わんこっちゃない」

 心配になった俺は、破片で切った涼太の指を見ようと腕を掴んだ。

「大丈夫だって!!」

 涼太は怒ったように言い放つと、慌てて身を翻す。

「……ちょっと手当してくるから、そこ動くなよ? お前も怪我するから……」

 振り向きもせず、足早に自分の部屋に入って行ってしまった。
 少しして涼太は、掃除機を持ちリビングに戻って来ると

「明日、仕事帰り新しい茶碗買って来るから」

 と、何事も無かった様に掃除機をかけ始めた。

 
 その姿をぼんやりと眺めながら、俺はネガティブな思考に捉われる。
 やはり涼太は、俺の事をただの同居人としか見ていない。

 一緒に住むようになってからは、表情豊かに笑うことも少なくなった。
 ふと、目が合えば、困ったような表情をして背ける。
 涼太は男同士で恋愛とか、きっと気持ち悪いとか思っているに違いない……。

 俺だって最初はそう思っていた。
 街中で見かけるゲイのカップルとか、気が知れないと……。

 だけど涼太を好きだと認識してからは、考え方も変わった。
 その人の考え方、生き様に共感し、気がつけば好きになっている。きっとあのカップルもそうだったのだろう。
 相手が好きならば、性別は関係無いのだと思えるようになっていた。
 麻里が言っていた『魂に男女は無い』とはこういう事を言うのだろう。

 だけど、好きだと思っているのは俺だけで、涼太は俺の事をそんな目で見てはいないのだろう……。
 やはり、親友のままでいた方が良かったのだろうか……。
 心の奥に、重くて大きい氷のような塊が宿り、俺の胸を押し潰した。



 そんな事があって、俺は涼太との接し方がわらないでいる時に、上司から残業を頼まれたのは良いが、近くのホテルで短時間の睡眠で凌がなければならないほどの仕事量で、家に帰れない日が続いた。

 内心、涼太と顔を合わせなくても良いかと思うと、ほっとはしたが、さすがに三日も帰れないでいると、寂しい気持ちの方が勝っていた。
 今日も終わらない仕事に溜め息をつき、携帯を手にすると涼太へ電話をかける。

「あ、俺。今日も帰れそうも無い……うん、それじゃ」

 携帯を置き、仕事に取り掛かろうとした時、その会話を聞いていたのか、年配の上司が話かけて来た。

「何? 彼女かい?」
「え? ええ、まぁ……」

(彼女じゃないけどね……ってか恋人かどうかも危ういけど……)

 俺が浮かない顔をしていると、上司は

「桜井君、今日はもう良いから、帰ってあげなさい」
「は? いえ、しかし……」
「後は私だけで大丈夫だから。すまなかったね、手伝わせて。私もね、最近嫁さんが冷たくてねぇ、こじれる前に帰ったほうが良いと思うよ」

 その上司は、俺が彼女と喧嘩でもしたのだろうと言いたげに、ネクタイを緩めるとニコっと微笑んだ。
 勘違いだとは思ったが、その言葉に甘え帰る事にする。正直、涼太にどう思われていようと、顔を見ないのは寂しい。

「すみません、ありがとうございます」
「こちらこそ助かったよ。気をつけて帰りなさい」

 上司に頭を下げ、俺は身支度を済ませると車に乗り込み、会社を後にした。

 やっと開放されたとはいえ、時計は23時を過ぎた所を示している。
 家に着く頃には確実に0時を回るだろう。

(さすがに涼太、もう寝てるだろうなぁ……ま、でも、寝顔だけでも見れるだけマシと思わないとな)

 寂しさを紛らわすため、途中コンビニに寄り、切らした煙草、ビールとちょっとしたツマミを買う。
 レジにはアルバイトの店員がいて、元気良く働いていた。

(そう言えば涼太と親しくなったきっかけって、コンビニだったよな。あん時の涼太の顔ったら無かったよなぁ、俺を目の敵みたいに睨んで……。今じゃ全然違うもんなぁ。あの頃はこんな風に涼太を想うようになるなんて夢にも思わなかったし……懐かしいな。あの爺さんまだ元気かな……)

 そんな事を思い出しながら、家路までの道のりを走らせる。
 
 マンションの駐車場に車を置き、上を見上げると自宅の明かりは消えていた。
 やはりな、と諦めに近い心境になり、溜息をつく。
 エレベーターを降りて鍵を取り出し、玄関の扉を開ける。
 リビングに小さな明かりを灯し、ネクタイを緩めると俺はソファーに腰かけ、先程買ったビールを一気に飲み干した。

 煙草に火を点け、涼太の部屋の前に立つが、涼太は過敏な所もあるから、起こすのも悪いと思い、またリビングに戻った。
 一服を終えると風呂に入るか迷ったが、疲労が勝り、ざっとシャワーだけ浴びて寝る事にした。

 バスルームに向かい、短時間で身支度を整えると部屋着に着替えて、自室へと向かう。
 ドアを開けて真っ暗い部屋に明かりを灯そうとしたら、ベットから微かに寝息のようなものが聞こえた。




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not the something <28>

 
 その時、俺の背中辺りが白い光に包まれるのを目の端で捉えると、涼太は驚いたように俺の背中を凝視し、

「隼人……おまえ……羽が……?」

 俺から離れようと抵抗していた力が緩む。
 すると何処からともなく麻里の声が聞こえた。

《涼ちゃんっ!! 何やってるのよ!!》

「麻……里? ……麻里なのか?」

 涼太は辺りを見回す。しかし麻里の姿は見当たらない。

《お兄ちゃんがこんなに心配してるじゃない!! どうしてわからないの?! あなたは独り
なんかじゃないのよっ!!》

「麻里……」

 姿の見えない麻里を追い求めるように、涼太は必死で辺りを見回していた。

《涼ちゃん……ごめんね、こんな事になってしまって……。涼ちゃんをこんなにも苦しめてしまった……。私もあちら側から見ていたけど辛かったよ……》

 麻里の悲しそうな声が響くと、涼太は俯いてしまった。

「ごめん……」

 涼太の両目からは涙が止め処なく流れ落ちている。俺はそんな涼太をただ、見守るしか出来なかった。
麻里は暫くの沈黙の後、諭すような口調で語りかけてきた。

《出来る事なら戻りたい。だけど……私はもう戻れない。事故に遭って、魂が身体から抜けた時からずっと見ていたけれど、お兄ちゃんが涼ちゃんの事をどんなに心配していたか、わかる? ねぇ、涼ちゃん……。悔しいけれど、お兄ちゃんの涼ちゃんに対する想いは、私よりもずっとずっと上だわ。――涼ちゃん言ってたわよね? 私は隼人の妹だから、アイツの自慢の妹だから大切にしたいって……隼人の大事なものは俺も大事だって!! なのに何でお兄ちゃんにそんなに悲しい思いさせるの? 涼ちゃん、自分の胸に手を当ててよく考えてみて? 涼ちゃんが本当に大切に想っているのは……お兄ちゃんなんでしょ?》

「――麻理、違う……。確かに隼人は大切だけれど、そんな感情は……」

 涼太は戸惑ったように答えていた。俺もどう反応していいのか分からず、黙り込む。

《――お兄ちゃんも、ごめんね……。本当はお兄ちゃん、涼ちゃんの事、大好きだったのに……気が付かなくて本当にごめんね》

「麻里……俺もそんな風には涼太のこと……」

 麻里はずっと俺たちのことを見て来た。もしかしたら変な勘違いをしたのかと思って否定すると、怒ったような口調で麻里は

《――二人とも本当に鈍いわね……。十年掛かっても、まだ気が付かないの?》
 
 俺たちは顔を見合わせた。

《互いが互いを大切に思えば、それはもう友情を通り越しちゃってるのよ? 友情は愛情と似て非なるもの……だけど友情と愛情は紙一重なのよ。互いの性別が同じだから、そう思い込もうとしてるのよ、お兄ちゃんたちは……。仕方ないわね、真実を見せなきゃ二人とも納得しないんでしょ?》

 ふっと俺の背中に人の気配がした。

《お兄ちゃん、この羽は私が貰って良い? 生きてるお兄ちゃんには使いこなせないみたいだから……。誰かが危機に陥らないと発動しないのよ。それに……使うと、お兄ちゃんの寿命が縮まってしまうの……。だから……》

 麻里の、俺を想う暖かい気持ちが伝わってくる。

「……麻里が、そうしたいなら」

《ありがとう、お兄ちゃん。これで二人に真実を見せてあげる事が出来るわ》
 
 背中に麻里の温もりを感じた次の瞬間、周りが目映いばかりの光に包まれると、そこには大きな翼を広げた麻里と、その胸には晴が、はっきりと目に見える形で姿を現した。

「麻里!!」
「晴!!」
 
 俺達は同時に二人の名を呼んだ。

《ぱーぱ!! おじちゃ!!》

 晴は嬉しそうに両手を振りながら、きゃっきゃと可愛い声をあげて笑っている。

《私は晴と、世界は違うけれど、こうして元気にしているわ。だからもう嘆かないで? それに、この羽を貰えたから、私はもっと上の世界に行けるようになったのよ。お兄ちゃん、ありがとう。涼ちゃん、いい? ちゃんと真実を見てね》

 そう言いながら麻里は、涼太に近づくと羽を一本抜き、涼太の左目に翳した。
 すると羽は溶け込むように、涼太の瞳へと吸い込まれていった。

《涼ちゃん、ほら見えるでしょ?》

「――っ!! 見えるっ!! 見えるよ!!」

《それじゃ二人とも、しっかりと自分達の気持ち、知ってね》

 麻理はまた羽を一枚、そっと抜き取ると天に翳した。
 そこから光が溢れ出し、俺達の記憶が、まるでスライドでも見ているかのように画面となって現れ、高校時代から思っていたことが、涼太の思いは俺の中に、俺の思いは涼太の中に、互いの胸に響き合う。

 涼太の想いが、手に取る様にわかっていく。俺の事を掛け替えのない親友、大切で失いたくないと……。それはまるで俺に恋焦がれてるようでもあった。
 涼太も俺の思っていることがわかったらしく、嬉しそうな笑顔を浮かべながら、涙をその瞳に溜めている。

 どうやら二人は同じ気持ちでいたとのだと、気が付かされた。
 その様子を見て麻里は満足げに微笑むと

《ねぇ、涼ちゃん。今度はその目で誰が本当に大切なのか……しっかりと見て? そして、これからの幸せを掴んでね?》

 そして麻里は、俺に向かって体の位置を変えると

《お兄ちゃんも……いつまでも意地張ってないで素直になったら? やっぱり私達は血の繋がった兄妹ね。同じ人を好きになっちゃうんだもんね?》

 麻里はクスクスと笑う。妹に言われるまで気が付かない俺は、相当鈍いのだろう。
 俺は苦笑いするしか出来ないでいた。

《おじちゃ!! ぱーぱ、なでなで、ね?》

 晴に言われるまま、涼太の頭を撫でながら

「――そうするよ、麻里」

 自分に偽る事無く返事をした。
 すると麻里は安心したように微笑むと、晴を抱きかかえながら大きく羽ばたいた。

《二人とも幸せになってね!! 魂には男も女も無いんだから、もう拘ったりしないで》

《ぱーぱ! おじちゃ! ナカヨシ、ね!!》と、二人はそう言葉を残し、大空へと姿を消していった。
 姿が見えなくなっても俺達は、まだ見送っていた。麻里が残してくれた大切な言葉を胸に抱いて――。

「麻里と晴は、天国に行けたんだな……」

 ポツリと涼太が呟いた。

「ああ……そうだな」

 その瞳にはもう淀みは消えていた。涼太は自分を取り戻したのだろう。
 俺は麻里に感謝しつつ、微笑んだ。
 月明かりが優しく差し込むベランダで、二暫くの間、夜空を眺めていた。  



 俺は涼太を抱えたままなのに気が付く。意識し始めたら、途端に心臓の鼓動が速くなり、それを涼太に悟られないよう、そっと降ろす。
 取りあえず当たり障りの無い会話をしようと思って声を掛けた。

「――お前、痩せただろ? 随分軽かったぞ」
「――そうだな、最近ろくなもの食ってなかったから……」

 涼太もそれは同じ様だった。まともに目が合わせられない。
 すると俺の腹の虫が、ぐぅーっと音を立てて鳴った。

「なんか……安心したら腹減ったな……」 

 俺が照れながら頭を掻いていると、涼太はクスッと笑い

「何か作ろうか?」
「そうだな……サバ……あれ食いたい。凄く旨かったんだよな」

 それを聞いた涼太は「じゃあ、今から釣りに行こうか!」と、満面の笑みで答えた。
 こんな風に涼太がまた、笑う日が来るなんて――
 思ってもみなかった俺は、凄く嬉しくなって不覚にも涙が溢れてしまった。

「隼人……?」
「いや……嬉しくてさ……。またそんな風に笑ってくれた――」

 すると涼太は夜空を見上げ

「麻里のお陰だ……麻里が教えてくれなかったら俺は、ずっと自分の気持ちを偽ったまま、それが当たり前だと信じて生きてただろう…………。やっぱり隼人の自慢の妹だ」
「俺も……ずっと違うと…………。この気持ちは違うと思い込んでいた……ホント、麻里に言われるまで、見て見ぬ振りをしてた……んだと思う。俺はこの通り鈍いから……でもこれからは正直に生きることにするよ」

 ふと俺は、涼太の顔に視線を移し

「もう……その髪型しなくていいんだな」
「そうだな……。明日、髪切りに行ってくるよ。今まで……ごめん……。ずっと俺の事、気にかけてくれてたのに……」
「もう終わった事だ、気にするな」
「……ん」

 いざ、両想いだとわかっても、どうして良いかなんてわからなかった。
 心臓の鼓動が高鳴り、気が遠くなりそうになりながらも、俺は精一杯、涼太にわかるように伝えようと頭を働かせ、ある結論を出す。

「――お前、独りで置いておくと何するかわからないから、一緒に居てやるよ」

 涼太は一瞬、驚いたような表情をする。

「……隼人」

 しかし、意味を理解したのだろう、次第に頬を紅潮させていった。
 その肩を抱き寄せながら俺は、もう一度はっきりと言う。

「もう、お前を独りにはしないから」

 俺達は大切な人を失い、大切な人に気が付いた。
 
 not the same thing 似て非なるもの――
 友情と愛情はそういうものだと思い込んでいた。
 考え方ひとつで、それは友情から愛情へと変化する。
 本来、似ているものは、同じ要素を多分に含んでいるから、似ているのだ。
 
 important as the same 同じく大切なもの――
 俺たちの気持ちは、今、変化する。
 
 涼太の髪を掻き上げると、大きな黒い瞳には俺が映っている。
 今、本当の気持ちをお前に伝えたい。

「……好きだよ、涼太――」
「――俺もだよ、隼人」

 ベランダから差し込む月明かりが、優しく降り注ぎ、二人の影を映し出していた。


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not the something <27>

 
 マンションに着き、俺はエレベーターに乗り込むと、涼太の家の玄関前に立つ。
 呼び鈴を鳴らすと、待ち構えていたようにドアが勢いよく開けられた。

「瀬里奈!! 遅かったじゃ……」

 はっと息を飲み、涼太は俺を凝視した。

「小林じゃなくて悪かったな、涼太」

 涼太は慌ててドアを閉めようとしたが、俺は咄嗟に脚を滑り込ませ阻止する。

「何のつもりだ? 隼人……」

 上目使いに睨みながら、声を低くし、脅すように言う。

「今日、小林は来ない。明日も、これからも、ずっとだ」
「なっ!? お前っ!! 瀬里奈に何したっ!?」

 淀んだ瞳で涼太は、俺に掴み掛かってて来た。
 それを手で払いのけ、俺は涼太の顔面に拳を喰らわせる。
 勢いよく玄関へと倒れこむ涼太に

「いい加減、目を覚ませっ!! この馬鹿ッ!!」

 と、怒鳴りつけると、涼太は口の端についた血を拭い

「――お前に……何がわかる……」

 身体を起こしながら、ズボンに着いた土埃を掃うとリビングへと姿を消した。
 俺は頭に血が上るのを抑えながら、涼太の後を追ってリビングに向かう。
 ネクタイを緩めると外し、廊下に叩き付けるように投げ捨てた。
 しかし涼太に対する怒りが収まらず

 「ああ!! わかんねぇよっ!! 俺はお前じゃないからなっっ!!」

 気が付けば怒鳴り声を上げていた。涼太を殴った右手がやたらと痛む――。
 リビングに入ると電気も点いておらず、月明かりの薄暗い室内で涼太はソファーに腰かけ、窓の外を眺めながら、ポツリと呟いた。

「この広い部屋に……居るはずの人が居ないんだ……。あの時と同じ……俺はまた独りぼっちになった……」
「――――……」

 握った拳が痛む。

「なぁ、隼人わかるか? 帰ってきたら誰も居ないんだ……。お帰りって言ってくれた麻里や晴が……」
「――――……」

 拳じゃない……。痛いのは―――。

「別に誰でも良かった……」

 そう言い終わると涼太は、膝を抱えて蹲った。

 声が、身体が…………心が、震える――。

「俺にだって……大切な妹と甥だった」
「………………」

 痛いのは――俺の心だ。今にも悲痛な叫びを上げて張り裂けそうになるのを、必死で堪えていた。

「実家に帰っても聞こえないんだ、あいつの……麻里の声が……。晴が『おじちゃ!!』って……俺に向かって飛び込んで来ないんだよっ!!」
「隼……人」

 涼太は淀んだ瞳で、俺の顔を見上げる。

「俺だって同じなんだよ、涼太……。お前だけじゃないんだ」

 堪えていた涙が頬を伝った。それを見た涼太は

「――っ、ごめんな隼人……お前の大切な宝物を奪ったのは俺だ……!!」

 そう言うと突然、ベランダの窓を開け、柵を乗り越えようとした。

「馬鹿ッ!! 何やってるっっ!!」

 俺は咄嗟に飛び出し、涼太の身体を後ろから抱きかかえた。

「隼人……ごめん……俺にはこうして償う位しか……だから頼む、放してくれ!!」

 足掻いてもがく涼太を、必死に抑え込み、身体の向きを変えると、顔面を平手打ちし

「そんな事をして麻里や晴が喜ぶとでも思っているのか!!」
「――わからない……どうしていいか……もうわからないんだ……」



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not the something <26>


「ちょ! やだぁ!! オドかさないでよぅー」

 鼻声で甘ったれた声を出しながら、上目遣いで媚ている小林に俺は「いい加減、正体現せば?」と、吐き捨てるように言った。

「やだ……何のコト??」
「本当に質悪いよな、お前! 昔っから!!」

 俺の態度が変わり、今までの事は全部演技だと気が付いたのだろう、小林は開き直ったように腰に手を当て、威嚇するような態度を取ると

「あんたもなかなかの曲モンね! 桜井 !!」

 鼻に掛かった煩わしい声を、学生の頃聞いていた、いつもの地声に戻していた。

「お前、涼太から幾らふんだくったんだ!! あぁ!?」

 俺が怒声をあげると、小林は『やれやれ』と言わんばかりに首を横に振る。

「さぁ……ね、覚えてないわよ、そんなもの。あーやだやだ、すっかり騙されちゃったわ。こんな事ならキタローの所に行けば良かった。今日バック買って貰えたのにぃ」
「ふざけるな!! お前の勤めてる店に通わせて麻里が死んだのを聞き出し、生命保険が下りたの知って涼太に近寄っておいて!? その上まだ毟るつもりか!! しかもお前、坂上と結婚してるじゃないか!!」
「あら、随分な言われ様ね? あっちが勝手に熱上げて貢いできたのよ? あたしはそれをただ素直に受け取っただけだわ。淳也だって喜んでたわよ」

 このままじゃ埒が明かないと思った俺は、大きく溜息をつき、車を発進させようとアクセルを踏むと、小林は窓から腕を突っ込み、ロックを解除しようと身を乗り出し、もがいた。
 そのまま引きずるのは流石に気が引け、仕方なくブレーキを踏む。

「ちょっと!! この瀬里奈様をこんな所に置いて行くつもり!?」
「元々そのつもりだけど?」

 自分に『様』を付ける所からして、相当な馬鹿だ。呆れ果てて溜息すら出ない。

「ふざけんじゃないわよ!! 乗せなさいよ!!」

 先程までの繕った笑顔と甘えた言葉使いは無く、鬼婆のように髪を振り乱しながら叫き散らす小林に、うんざりとする。

「女だから手加減してやってるって……わかって無い様だな。相変わらず頭の悪いヤツ」
「な、何よ!! ちょっと頭良かったからって、頭に乗るんじゃないわよっ!!」

 押し問答もいい加減嫌になった俺は、パワーウィンドーを上げ窓を閉めようとした。

「やだっ!! 何するのよっ!! 腕が千切れちゃうじゃないぃっ!!」
「だったら腕をここから出せば良いだろ?」
「嫌よっ!! 置いて行かれるじゃない!!」
「そうだな。でも、まる三日もあれば下りられるだろうよ」
「ちょっとあんたっ!! 最低っ!!」
「何とでも言えばいい、早くしないと腕もってかれるぞ?」

 じりじりとウィンドウをあげると「そんな脅しに乗るもんですかっ」と、更に腕を突っ込んできた。

「脅しかどうかは身体で確認すればいいさ」

 俺はパワーウィンドウを容赦なく上げる。
「ぎゃぁぁぁぁぁーーーーっ!! 痛いイタイいたいぃぃぃぃっっーーーっっ!!」

 慌てて腕を引っ込めるが間に合わず、中指の生爪を剥がし、そこから流血していた。

「……っ!! よくもやったわねぇ!!」

 小林は黒い涙を流しながら自分の手首を掴み、恨めしそうこちらを睨み付ける。化粧が剥がれ落ち、一見すると、ここに出没すると噂されている幽霊のようであった。

「何度も警告しただろ」

 俺はいつもの煙草に火を点け、また窓を開けると

「涼太に二度と近寄るな……今度はこんなものじゃ済まさないからな……」

 腹の底から唸るように言うと、小林は俺の殺気に気圧されたのか後ずさりする。

「――っ!! 覚えてなさいよ、このクズ野郎!!」
「あぁ、覚えていられたらな」

 俺はそう言い放つと、小林の持っていた荷物を窓から放り投げ、アクセルを目一杯踏み、エンジン音を轟かせると、小林は轢かれるとでも思ったのか、慌てて荷物を拾い上げるとその場を逃げるように立ち去った。
 俺はそのまま車を走らせ峠を下り、涼太のマンションへと向かった。



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