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主に長編BL小説置き場です。BLの意味が分らない、または嫌悪感がある方は速やかにブラウザバックでお願いします。

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お知らせ

皆様、お久しぶりです。

長らくブログを放置しておりましたが、これからも更新が難しい状況となってしまいました。
いつか復活できたらとは思っていたのですが、なかなか目処が立たなく、応援してくださった方々には大変申し訳なく思います。

訪問してくださった皆様、本当にありがとうがとうございました。
多数の拍手やコメントを頂き、どんなに嬉しかった事でしょう。しかしSSなどリクエストしてくださったのに、お応え出来なかったのが非常に心残りです。ご期待に添えず、大変申し訳ありませんでした……。
以前コメントを下さった皆様、一括でお返事となってしまい申し訳ない限りですが、一つ一つは私の中の宝物となりました。
この物語が少しでも皆様の心に残って頂ければ、作者冥利に尽きます。
なお、記事に関してはお返事ができるか不明なので、コメント欄は閉ざさせていだきます。

後の一週間をもちましてブログ村からは外れますが、夢を追っていた頃の記念として(笑)ブログは残しておきます。
それではご愛読いただきまして誠にありがとうございました。


東堂竜樹 拝

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――隣人がおかしな件について――<18>最終話

 エピローグ

 愛梨はペンタブレットのペンを置くと、麻里にデータを転送して、ほっと息をついた。
「良かった……間に合ったぁ……」
 独りごちして大きな伸びをすると、束ねた髪を解き、眼鏡を外した。
 キャラクターのプリントされたTシャツの裾をつまみ、バフバフと風を送る。
「はぁ、暑ぅーいぃー!  パソコンの前に居ると、暑さ倍増だわね」
 座っていた椅子から立ち上がり、長年愛用している、色落ちしてゴムの部分が伸び切った、
ずり落ちそうになるズボンを上げると、台所に向かった。
「あー……のど渇いたし、お腹空いたぁ。何かあったかな?」
 冷蔵庫の中をゴソゴソと漁り、デートの為に買い込んだ残りのトマトを取り出すと、ガブ
リと齧り付く。
「ん~っ、冷たくって、おいひ! さて、須藤さんにメール入れなきゃ」
 トマトを頬張りながら片手に携帯を持つと、器用に謝罪の分を打ち込んだ。
 しかし、暫く経ってもそれに対しての返信は無い。
 溜息をつき、また独りごちる。
「あー、やっぱリア充なんて、面倒臭いかも……。田中さんは、いかにも男っぽくて攻めっ
て感じで、押されそうだったから断ったけど……。須藤さんも、ああ見えてやっぱり男の人
なのねぇ、ちょっと、疲れちゃった。それにしても……」
 昨日の青葉と海里のやり取りを思い出し、ニヤリとほくそ笑む。
「あの二人って、絶対そうよね? なんか、あの超イケメン、青葉さんだっけ? 須藤さん
にご執心って感じだったけど。私と話してても、チラチラ須藤さんの様子伺ってたし。しか
も機嫌が悪くなればなるほど、嬉しそうにしてわよね? あれは絶対、須藤さんの気を引く
為だわ! あーもー気になるぅ~! ちゃんとデートしたのかしら?」
 愛梨は携帯の画面を眺めながら、メールの着信を待つ。
「ん~来ないなぁ。あ、もしかして、うまく行ったのかな? だからメール来ないのかも。
だったらそれはそれでまぁいっか~! そうだ。おいしいネタ、一つ増えた事だし、冬コミ
に向けてちょっとプロット立ててみようっと」
 ウキウキとしながら再び眼鏡をかけて、パソコンに向かうと、カタタタタと物凄い速さで
キーボードを叩く。
 丁度、起承転結の起の部分を打ち終えた頃、携帯のメロディが短く鳴る。
「あ、須藤さんだ、やっと来たわ。何て返信かしら~? もしかしたら『ごめん、俺、アイ
ツと――』だったりして!」
 キーボードに置いた手を休め、携帯を開く。
『愛梨さん、昨日は俺の方こそ、ごめんなさい。明日、話したい事があるので、屋上で逢い
ませんか?』
「なぁ~んだ、違ったかぁ。でも、何だろう、話したい事って……。もしかして、私、本当
に振られちゃうかも? ん、まぁ、でも、今はまだ創作の方が楽しいし、きっと私の本性知
ったら、須藤さん倒れちゃうかも知れないし。パンピーってそう言うの嫌いらしいから、バ
レないようにしないと……。やっぱ彼氏にするなら、腐男子かオタの方が趣味が合って良い
のかなぁ?」
 ブツブツと呟きながら、返信を終えると時計を見て
「あ、ヤバ! そろそろ寝ないと! また明日会社かぁ……でも、夏コミまで後ちょっと!
この日の為に貯金してたって言っても、過言じゃないんだから! 頑張ろうっと」
 大きな伸びをすると、データーを保存してパソコンの電源を落とし、ざっとシャーワーを
浴びるとベットに潜り込んだ。

 次の日の朝、バタバタと支度を済ませると、バス停までの道程を走る。
「あー、もう! お弁当作るの、面倒臭っ!!」
 独りごちすると、すれ違い様のサラリーマンに、クスクスと笑われてしまった。
 やだ、私ったら! いつもの癖で……部屋じゃないんだから、気を付け無いと!
 それにしても、朝はギリギリまで寝ていたいわ、疲れちゃう……。
 やっぱ、リア充目指すより妄想で生きようかしら? その方が私に合ってるかも。
 そうよね、三度の飯よりヤオイが好きなんだもの! BLが無くなったら死んじゃうわ!!
 須藤さんには悪いけど、あの日、ちょっと怖かったって話して、普通の後輩に戻ろうかな。
 大丈夫よね? まだ、何もしてないんだし。
 息を弾ませ、思考を廻らせながら、バスに乗り込む。

 会社に着き海里の姿を探すも、今日は外回りらしく昼前に戻る予定だと、ホワイトボード
に記されてあり、ホッっと息をついた。
 雑務をこなしているうちに、いつの間にか時計は昼近くを指していた。
 そこに海里が息を弾ませ、入り口に飛び込んでくる。
 どうやら、愛梨との約束を守るため、駆けて来た様子だ。
 それを同期の田中が茶化すと、海里は苦笑いを浮かべていた。
 須藤さん、汗びっしょりで……よっぽど急いでたんだろうな。
 なんか振るの、ちょっと可哀想かも……。
 でも……。あんなに普通の人と、うまくやって行く自信、無いしなぁ……。
 夏コミを人の名前と勘違いするなんて、どうしたら良いのよって話よね?
 きっと……ここで情けを出したら後悔するもん! 私!!
 流されちゃ駄目よ! お弁当渡して、謝って……うん、そうしよう。
 愛梨が思考を廻らしている間に、昼休みが始まるベルが鳴る。
 海里とふと目が合うと、愛梨は引き攣りそうになるのを堪えて、精一杯笑みを作る。
 そして姿が見えなくなるのを確認すると、トイレに寄って化粧を直してから屋上へと向か
った。
「すみません、須藤さん……お待たせして」
 すると海里は笑顔を向けながら「いや……また、あそこに座ろうか?」と、ベンチを指差
す。その笑顔が、何だか不自然に思えて、愛梨は予感がした。
 ……やっぱり、振られちゃうのかな? なんか、そんな気がする。
 だとしたら……須藤さんは、あの超イケメン青葉さんと……?
 やだ、どうしよう!! 訊きたい~~~っ!!
「あ、あのっ! 土曜日はごめんなさいっ!! 本当に急用が入ってしまって……」
「い、いや、俺こそ……。ごめん、目の前で喧嘩なんかして……怖かっただろ?」
 やだ、やっぱり!! 
 そうよね、仲が良いほど喧嘩するって言うものね!
 んふふ、もっと訊きたいわ!
「あ、はい……ちょっと。でも、お二人とも仲良さそうに思ったんですけど……」
「あ、ああ? うん……。え、と、ごめん、腹減らない? 俺、急いで帰ってきたから……」
 濁してるわ! 
 そうよね、付き合ってるなんて言えないものね!
 ここはじっくり、誘導しようかしら……。
「あ、あの、これ……土曜日のお詫びって思って、作ってきたんですけど……」
「あっ! 今日は俺……弁当持って来てて……ごめん、気持ちは嬉しいんだけど……。そう
だ、これ、返さなきゃって思って……」
 海里はそう言って、ピンクの布を差し出す。
 ピシッと隅まで綺麗に、アイロンが掛かっていた。
「あ、すみません。こんなにちゃんとして頂いて、返って手間掛けさせちゃって……」
「俺がした訳じゃないし……あ、いや、ううん! アイロンって結構難しいね? 練習する
には持って来いだったよ! 今時、男でもそれくらい出来ないとね? あはは……」
 なに、なに? どういう事? この慌てぶり!
 それに須藤さんって、いつもコンビニ弁当だったわよね?
 って事は、彼のお手製かしら?! それにアイロン掛けたのも……?
 そうだわ、この慌て方は、きっとそうよ!!
 早く中、開けないかしら? 見てみたいわ、彼弁!!
「あ、そうですか? それなら良かったです、ありがとうございました。あ、時間無くなっ
ちゃいますね……、ごめんなさい。それじゃ、食べましょうか?」
「あ、うん……そうだね」
 海里は手にしていた鞄から弁当箱を取り出すと、愛梨の期待は高まって行く。
 シックな色の包まれた弁当箱は、二段に分かれていた。
 それを愛梨は、横目でチェックを入れる。
 卵焼きにレンコンの挟み揚げ、ハンバーグに胡麻和え、きんぴらごぼうにはんぺんの和え
物、後は……鮭の切り身をちゃんと手で解したのが、胡麻と一緒にご飯に散りばめられてて、
彩りも鮮やかで……え、別の容器ににデザートまで付いてるの? すっごい豪華!
 やるわね! 野菜とお肉と魚、それに果物、絶妙なバランスだわ!!
 愛梨がチェックを入れてるとは気が付かず、海里は両手を合わせていた。
「それじゃ、頂きます」
 それに釣られ、愛梨も手を合わせると挨拶をした。
「はい、いただきます」
 あら? ちゃんと挨拶したわね?
 ちょっと雰囲気が変わったかしら……。
 これ、やっぱりあの超イケメン青葉が作ったのかしら? だからかな?
 だとしたら、須藤さん、めっちゃ愛されちゃってるわね~。
 普通は大概、受けが作るものよ? お弁当とか、料理とか。
 ……まさか逆とか言わないわよね? 
 まぁ、それも有りだけど……須藤さんは受けが似合ってると思うの。
 それにしても、凄く幸せそうに食べてるわ~……仲直りはしたみたいね!!
 愛梨は想像を廻らせると、とても幸せな気分に浸った。
 そうよ、これよ!!
 やっぱり、私はこれが無くちゃ、生きるの辛いわ!!
 いいわ~BLって。何て耽美な世界なのかしら……。
 互いに黙々としたまま弁当を食べ終わると、愛梨は口を開く。
「あの……須藤さんがお弁当持って来るの、珍しいですね?」
「あ、ああ……うん、あ、実家の、母が遊びに来てて……。ごめんね? わざわざ作って来
てくれたのに……」
 慌ててる、慌ててるわ! やっぱり、いい難い事よね、分るわ。
 良いのよ、須藤さん。そのお弁当が見られただけで、私の努力は報われたのよ!
 素敵な彼弁だったわ!! もう、それだけでお腹一杯よ?
 でも話して! 大丈夫、怖くない!! 怖くないわよ、私は!!
「いえ、そんな、か……お母さんのお弁当には敵いませんから! そうだったんですね……。
そう言えば、青葉さんとあの後、デート……デーミニーランド入ったんですか?」
「い、いやいやいや!! お、男二人でなんか入る訳……」
 動揺……半端ないわね? 
 何て分りやすいのかしら、この人。
 ここは少し、揺さぶってみた方が良いわね?
「そんな事ないですよ? よくお友達同士で入ってる人見かけましたし、別に男の人同士で
も変じゃありませんよ?」
「そ、そんなもんかなぁ……?」
「ええ。それに……お話でも昔の神話とかでは、そういうのも有りますし」
「は? ……そういうの……って?」
 よし、喰い付いたわ!
 ここは一気に攻めるのよ!!
「男の人同士が惹かれあう……っていうのもってあるって話です。だから、私、偏見なんか
無いですよ?」
「え、あ、いや……その……。愛梨さん?」
「はい?」
「偏見が無いって……どういう意味?」
「だから、お互い人間ですもの。たまたま好きになった人が、同性って事も有り得るし、そ
れを別に興味本位で見たりしないって事です」
「その……愛梨さんの周りには、そう言う人も……いるの?」
「ええ、居ますよ?」
 主に同人誌と言う、薄い本の中だけど。
 まぁ、腐男子もいるし、本物も中には居るしね。
 腐腐腐……そうら、もう白状しなさいって!
 大丈夫! 飯の種にするかも知れないけど、相談には乗るわ!!
「須藤さん……最近、何か悩んでる様子でしたよね? 私でよかったら相談に乗りますよ?」
「あ……あの、愛梨さん……驚かないで……聞いてくれます?」
 キターーーーーーコレ!!
 何? どうしたの、話して御覧なさい!
「はい、大丈夫です。驚いたりなんかしませんから。何ですか?」
「その……愛梨さん誘っておいて、本当に悪いとは思うんだけど……俺……」
 ああ、もう! 焦れったいわね!!
 分ったわ、言い難いなら、私が言ってあげるわ!
「須藤さん、青葉さんの事……好き、なんですよね?」
「…………あ、いや……その……」
 あらやだ、そんなに顔真っ赤にしてモジモジして……やっぱり、受けなのね!
 攻めだったら、こんな感じじゃないもの。受けの方が可愛いわ~。
 そうよね、恥じらいも無いとね! いくらBLでも、あからさまなのは嫌だわ。
「大丈夫です。私、誰にも言いませんから!」
「……本当に?」
 大丈夫、会社の人に言ったりしないわ!!
 コミケでは有名人になるかも知れないけれど……。
 まぁ、名前変えれば大丈夫よね?
「勿論です! 何なら、私をダミーにしても構いませんよ?」
「いや、そんな……」
「いえ、私で須藤さんの役に立つなら、構いません」
「……でも、どうしてそんなに俺の事……庇ってくれるわけ?」
 そりゃ、間近でこんな体験談、滅多に聞けないでしょ!
 これは極上ネタだもの、逃したくないわ!
 ……なんて言ったら、さすがに怒るわよね?
「須藤さんとは……恋人と言うよりは、お友達になりたいって、ずっと思ってたんです。で
も、なかなか言い出せなくて……。私の周り、女の子ばかりだから、どう接して良いのか分
らなくて……。勘違いさせてしまって、ごめんなさい。だから……」
「あ、何だ……そうだったんだ?」
「ええ……ごめんなさい」
「いや、そんな謝らないで? それ聞いて俺、ホッとしてるんだ……。愛梨さんの事、傷付
けたんじゃないかって……」
「大丈夫です。私もそれ聞いて、ホッとしてます。だから気にしないで下さい」
「そう、言ってもらえると、助かるよ。ありがとう」
 海里はそう言って、強張っていた表情を和らげた。
「それでさ……俺、こんなの初めてで……出来たら、本当に相談に乗って欲しいんだ。あ、
ダミーにしたりはしなから! それは安心して?」
「いえ、私は別に構わないですよ?」
「だって、そうしたら……愛梨さん、好きな人が出来た時に、困るだろ?」
「えっ? あ、ええ……そう言われれば、そうですね……」
 そっかぁ、そこまで頭が廻らなかったわ……。
 ここであんまり食い下がって、変な誤解生むと困るしなぁ。
 誤解ならまだしも、思ってる事バレたら怒っちゃうわよねぇ。
 チャンス逃しちゃったかしら……?
 ん~残念。でも、相談に乗って欲しいって言ったわよね?
 まだ、望みは有るかも!
 愛梨が黙り込んでいると、海里は気を使うように
「だから、今度は友達として、逢ったりしてくれないかな?」
「……え? それじゃ……?」
「うん、これからも宜しくね? 愛梨さん」
 よっしゃーーーーーーっ!!
 これで暫くネタに困らないわ!!
「あ、はい! 喜んで!! それじゃ、私の事はアイで構わないですよ?」
「分った。頼りにしてるね? アイ」
「じゃあ、私も海ちゃんって呼んでいいですか?」
「うん、そうだね。その方が親しみが増した感じで、いいね?」
「腐腐腐……そうですね」
 それから二人は、昼休みが終わるまで話を続けた。
 これまでとは違う、穏やかな空気が二人を包む。
 それは男女の壁を越えた、友情が芽生えた瞬間だった。
 とは言っても、愛梨の策略に、海里がずっぽりと嵌ってしまっただけなのだが。



 あれから半年という月日が流れた。
 冬コミの準備も終えた休日の午後、愛梨は携帯を手にすると、流れるメロディーを止める。
「はい、海ちゃん?」
『あ、アイ? 今、忙しくない?』
「大丈夫よ。全て準備万端!」
『そっか、次の講演、頑張ってね』
 結局、愛梨は演劇サークルに入っている事になっている。
 だが、勘違いされていた方が、好都合だと愛梨は思う。
「ん、ありがと。で、どうしたの?」
『ところでさ、訊きたい事があるんだけど……』
「何? また青葉さんと喧嘩したの?」
『いや、それは無いんだけどさ。共同経営する時って、養子縁組しなきゃ駄目って本当?』
 そう、青葉さん……やるわね! 
 海ちゃんが調べる前に、畳み掛けるつもりね?
 分ったわ、協力するわよ、青葉さん!
 いよいよね、結婚おめでとう!!
「そうねぇ……私も会社の事は分らないけど、青葉さんが言うなら間違いないんじゃない?
彼、専務なんでしょ?」
『やっぱそうか……じゃあ母さんに話しないと』
 それは止めた方がいいわ……。
 でも、いずれバレるだろうけど、籍に入ってしまえば、抜く手続きは面倒らしいから、諦
めてくれる筈よ!
「別に良いんじゃない? お互い成人してるんだし」
『そっか。そうだよな? それにしても、俺、大成の子供になるのかよ……』
 いいえ、嫁です。
「そうね、その方が後々良いんじゃない? やっぱり会社興すとなると、親子の方がスムー
ズって話は聞いたことあるけど……」
 ゲイ婚的な意味で。
 そんな話なら、死ぬほど読んだし、書いたわ。
『そっか、それじゃ手続きして来る。サンキュ!』
 腐腐腐……。
 青葉さん、やったわよ!
 これで海ちゃんは、一生貴方のものよ。良かったわね!
「あ、籍に入ったら、後で皆で会おう? お祝いするから!」
『そんな、結婚する訳じゃあるまいし』
 いいえ、結婚です。
「会社興すんだもん、お祝いくらいしようよ。老人施設って大変そうだけど、頑張ってね! 
あ、元、大家のお婆ちゃん、元気にしてる?」
『うん、ピンピンしてる』
「そっかぁ、今度また遊びに行くって伝えておいて? 海ちゃんが施設建てるって言ったら
凄い喜んでたよ、やっぱり私の目に狂いは無かったって」
 私の目も、狂いは無かったけどね。
『分った。 あ、大成、出掛けるみたいだから、そろそろ……』
 もぉ~、青葉さんってばぁ~。
 盗み聞きしちゃって、落ち着かなくなったのね?
 でも、焦っちゃ駄目よ! バレたら厄介よ? ま、気持ちは分かるけどね。
 海ちゃん、青葉さんと付き合うようになってから、すっごく可愛くなったし。
 あの田中さんですら、なんか最近、様子違うもんね~。海ちゃん、会社辞めるって言った
ら、哀しそうにして見つめちゃって……。
 そりゃ青葉さんも、早く自分のものにしたくなるわよね、分かるわ~。
 あら? これでまた一本、書けるわね!
『……もしもし?』
「あ、うん、分った! それじゃまたね?」
 いけない、いけない。つい妄想に浸っちゃったわ。
『あ、アイ!』
「ん? 何?」
『色々ありがとうな。俺、アイが居なかったら、喧嘩ばかりしてたかも』
 そりゃ、そうでしょう。全てのパターン把握してるもん。
 海ちゃんってば、もろ、ツンデレわんこ受けだし、あまあまぞっこん攻めの青葉さん、嫉
妬深いに決まってるもの。統計を出せば喧嘩のパターンも見えてくるわよ。
「そう? 私も海ちゃんの話聞くと、色々参考になるよ」
 ネタに困らなくて。
『そっか。アイも頑張れよ? 別サークルの人だっけ?』
「うん、うまく行ってるよ。やっぱりお互い趣味が合って楽しいし」
『そっか、良かった。アイも幸せそうで……。あ、それじゃ、そろそろ……』
「うん、分った。それじゃね。お幸せに!!」
『お幸せにって……ま、でも、ありがとうな、アイ』
「腐腐腐……どういたしまして」
 会話が終わる寸前、遠くの方で、青葉の嬉しそうな声が聞こえた。
 愛梨は微笑みながら、画面をそっと閉じる。
 本当におめでとう、海ちゃん。
 これからも新鮮なネタ、楽しみにしてるわ!
 携帯を置くと、愛梨はパソコンに向かう。
 カカカというキーを叩く音が、今日も部屋に響くのであった。

            

               ――隣人がおかしな件について FIN ――


読者の皆様、この度は稚拙な作品の数々をお読み頂き、誠にありがとうございました(〃ω〃)
今回で『隣人がおかしな件について』は終了となります。楽しんで頂けたなら、幸いと思います(*´∀`*)
そして、数々の拍手やコメントを、本当にありがとうございました!
自動更新にしていたのと、体調不良が続きまして、お返事が遅くなってしまったこと、誠に申し訳なく思ってます(´;ω;`)
こちらの自動更新が終わった時点で、お返事を書かせて頂こと思っていますので、もうしばらくお待ち頂けると幸いです。いつも我が儘ばっかりで、ごめんなさいm( _ _ )m

さて、次回の作品は……載せるかどうか、まだ、迷っています。
その作品は三月に締め切りのある美王子様に、どうしても投稿したい作品なのです。
一度、花○様に投稿し、結果は散々だったのですが(;´Д`)
その発表が終わった後に期間限定で公開したので、読まれた方もいらっしゃるとは思うのですが……もし、それでも良いよって言っただけるなら、載せようかとも思います。
しかし、やはり投稿となれば作品を載せっぱなしと言うわけにも行かないので、こちらも期間限定になるとは思います。
多分、全面的に書き直すので一見別物になるとは思いますが、登場人物が変わらないので……。
そのへんをご了承していただけたら、載せようと思っています。
それでは、拍手お返事やコメントのお返事は、また後ほど別記事にて記載させていただきますね。



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――隣人がおかしな件について――<17>Rー18

 憎まれ口を叩く裏で、海里の心臓は今にも飛び出しそうになっていた。
 好きだと認識したら、青葉の顔もろくに見られなくなるほどに意識してしまう。
 試しに運転席に身を置く青葉の横顔をチラリと盗み見したら、視線が合ってしまい耳まで紅くなってしまった。
 それを誤魔化すように俯き、早口で問う。
「あ、あのさ……、その、これからどこ行くんだ?」
「決まってるだろう。俺の部屋だ」
「え、ちょっと待って! そんな急に言われても……」
 海里は動揺した。確かに好きだとは言ったけれど、まだその覚悟は出来ていない。
 ――やっぱ、今度こそ……だよな?
 えっ、でも、何をどうするんだ?
 女なら経験あるけど、男同士だろ?
 ってか……やっぱ、俺が下になるんだよな?
 それとも、上なのか?
 ぐるぐると思考が巡り、慌てる海里を見て、青葉は小さく息をついた。
 信号待ちで視線が合う。
「……海里が嫌がることはしない。ただ、今日は一緒に過ごしたい。それじゃ駄目か?」
 切なげに揺れる眼差しで問われ、海里は暫く沈黙した。
 嫌……って訳じゃない。
 ただ、どうして良いのか分らないだけで……。
 俺は、どうしたいんだ?
 自問自答し、答えを導き出した海里は、静かに頷いた。
「……うん、わかった」
 先程までの不安そうな表情から一転し嬉しそうに微笑む青葉に、自分でも不思議なほど愛しさが込上げてくる。
 車がマンションに着くと、青葉は手を差し伸べてきた。
「歩けるか?」
「あ、うん。大丈夫」
 ここで変なプライドを掲げるより、素直に甘えた方が良いのだろうと思うのだが、まだ羞恥心の方が勝り、素直になれない。
 その手を取らず車から降りると、足元がふらつく。支えようと手を伸ばした青葉だったが、戸惑ったように手を下げ、心配そうに見下ろした。
「大丈夫か? まだショックが抜けてないんだろう。だから連れてきたんだが、正解だったな」
 青葉はどこまでも海里を気遣っていたようだ。先程の揶揄も、海里を元気付けるものだったらしい。
 それに気が付かず、下世話な想像を巡らせていたことが恥ずかしくなり、海里は俯いた。
「ごめん……」
「何が?」
 きょとんとしながら青葉が問う。
「俺、大成が……その、下心があって連れて来たのかと思ってた」
「ああ……。まぁ、無いといえば嘘になるが、隙を突くような真似はしない。今日はゆっくりすればいいよ」
 それを聞いた途端、海里の心は空虚に襲われる。
 せっかく覚悟したのに……。
 いつもなら茶化して迫るくせに、こんな時に紳士ぶるなよ!
 怒りが込上げて、ハッとした。期待していた自分に気が付き、そうしたいのは、本当は自分の方なのだと自覚した。
 青葉は黙り込んでしまった海里を横目でちらりと伺い、作り笑いのようなぎこちない笑みを浮かべる。
「何もしないって分ったら、安心しただろう? 取り合えず、飯でも食ってから休むといい。風呂は自由に使って良いし、寝室は俺と一緒じゃ嫌だろうから、俺はまた、前みたいにソファーで寝るから」
 海里はぐっと拳を握ると、真直ぐな瞳で青葉を見上げる。
「い、嫌じゃない。その、俺は……大成となら……そうなってもいいと思ってて……。だから、一緒に……居て欲しい」
 やっとの思いで口にすると、青葉は瞠目したのち破顔し、海里の腕をそっと引き寄せ抱きしめた。

 玄関の扉を閉めるなり、青葉は海里の唇を塞いだ。
 合わせるだけのキスを繰返すが、角度を何度も変えられ、次第に深さが増していく。
 堪らず吐息を漏らすと、探るように舌が唇をなぞる。
「ん……っ」
 その刺激で熱い吐息が溢れ、薄く開いた隙間を縫って青葉の熱を帯びた舌先が絡まる。
「んぁ……はぁ、ん……」
 濡れた音が心音と重なり耳元を反響して、海里はキスだけで蕩ける。青葉のキスは巧みで、同性だと嫌悪感を感じるのではないかと思っていた海里の思考を、いとも簡単に払ってしまう。
 青葉が海里の口内を探るたびに、翻弄されて海里の欲望を引き出して行く。
 膝が震え、立っていられなくなるような事は初めてで、海里は青葉にしがみ付いた。
 息をつくと、青葉の唇が一度離れた。濡れた唇が妖艶で、海里は目が離せなくなってしまった。
「……ずっと、こうしたかった」
 吐息交じりの甘いバス・バリトンが耳元に響くと、腰が砕けたようになり膝に力が入らない。
 それを察したのだろう、青葉は海里を両腕で大切そうに抱えた。
 そのまま寝室に運ばれ、海里は慌てる。
「あっ、シャワー……入らないと……。拉致された時に、あいつら煙草吸ってて……気持ち悪いから」
「そうか。それじゃ、俺も一緒に」
「……い、一緒に?」
「そう、一緒に」
 艶のある漆黒の瞳に見据えられ、海里の心臓は今にも破裂しそうに鳴り響く。
「あ、いや、だって……」
「嫌……か?」
「あ、いや、その嫌じゃなくて……そうじゃなくて、あの、え、と……」
 海里は必死に自分の言いたい事を伝えようとするが、言葉が出てこない。自分の中の欲望が目覚め始めて恥ずかしいとは言えず、もじもじとしながら俯いていると
「俺は、君と離れたくない。だから一緒に入ろう?」
 耳許で情熱的に囁かれ、海里はちらりと視線を向けて頷いた。青葉は嬉しそうに微笑むと、そのままバスルームへと移動する。
 パウダールームの大きな鏡に、二人の姿が映し出される。と、途端に恥ずかしくなり、両手で顔を隠した。
「……そんなに可愛くされると、理性が弾け飛びそうだ」
 熱に浮かされ掠れた声が扇情的で、海里の理性まで吹っ飛びそうになる。
 そっと降ろされると、シャツを捲られた。次にジッパーに手を掛けられジーンズを脱がされる。肌が露になると、海里の羞恥心は一層煽られる。
 明らかに反応を示している中心を見られるのが恥ずかしくて、身を屈めた。
「お、俺ばっかり、こんなんで……」
「君だけじゃない、俺もだ」
 青葉は衣類を脱ぎ捨てると、海里の首筋に舌を這わせる。
「あっ……」
 思わず漏れた声にハッとして慌てて口を噤むと、青葉はの長い指が海里の唇を割り、口内を弄ぶ。
 口を半開きにされて閉じる事が許されないまま、海里の胸元に舌が艶かしく軌跡を辿る。
 刺激を受けた小さな突起は、熱を持ち紅く色を落とす。
「ふっ……あ、……ん」
 女の子じゃないのに胸で感じるなんて、今までの海里だったら理解不能だっただろう。
 しかし、そんな事を考える余裕すら、今の海里には無かった。
 青葉の手法に煽られ、欲望は高まる一方だ。
 もう片方の大きな掌で脇腹をさすられ、敏感になった胸の尖りを捏ねられ、摘まれ、舌で弾かれると、まだ中心にも触れられていないのに腰が揺れる。
「あ、やぁ……」
 とろりと蜜が零れる感覚に、海里はふるりと身震いした。
 脱力して立っていられなくなると、抱えられてバスルームの中に入る。
 適温の湯が掛けられ、泡立てた掌で髪を撫でられ、全身が清められて行く。
 その間も青葉の追従は留まる事を知らず、海里を深い快楽へと導いて行く。
「あ……あ、んん……」
 もう嬌声を抑える事が出来ずに、浅い呼吸を繰返していると、海里の雄を青葉が咥えた。
「ああ……っ!」
 女の子にだって、今までされた事がない。海里は強烈な快感に身悶えする。
 鈴口に舌が割り込み括れを強く吸われると、今にも達してしまいそうになる。と、強烈な刺激が止んだ。
「……そんなに煽るな。俺も耐えられなくなる」
 浅く湯を張ったバスタブに入れられ、青葉が被さって来る。
 海里のものと青葉の雄を同時に握られ、擦りあわされると、背筋が粟立つほどに強い快感が海里を襲う。
「ふ、ぁ……あ、ああ、……」
 淫らな水音がバスルームに反響すると、海里は耐え切れずに欲望を放った。
 ほぼ同時に青葉も小さく呻くと、同じく吐精し二人の白濁が混じる。
「はぁ……は、ぁ……」
 頭の芯まで痺れて、ぼぅとしながら青葉を見上げると、色濃く艶美さを漂わせていた。
 湯から引き上げられ、シャワーの湯を掛けられると、そのままベットルームへと運ばれる。
 滴る湯も気にせずに、シーツに身を置かれた。
「あ、大成、ベットが濡れる……」
「気にするな、どうせ濡れる。寝る時には全部綺麗にしてやるから、このまま君を抱かせてくれ」
 一度達した筈の、青葉の雄はまたも張り詰めていた。
「……すまない、海里が初めてだって分っていても止められない」
 情熱的に唇が重ねられて、海里は初めて青葉に余裕がないと気が付いた。
 それほどまでに想われていたのかと思うと、胸の奥がじんと熱くなった。
 舌を絡ませた口許が解けると、銀の糸を引く。
「……今まで、ごめん。俺、偏見持ってた。でも、こうしてみて初めて分ったよ、大成の言ってた意味が」
 青葉は小首を傾げて、じっと海里を見つめた。
「好きな人が欲しいって気持ちは、男も女も無いなぁって……。俺も、大成が……欲しいと思ってる」
「海里……」
 嬉しそうに青葉は、海里をぎゅっと抱きしめた。
 耳朶を啄ばまれ、首を辿り、胸元を刺激する。全身を愛しむような青葉の愛撫が心地良くて、海里は身を委ねた。
「あ、あっ……あ……」
「……海里、お前の中に入っても……いいか?」
 掠れた声が、吐息交じりで耳許に響く。
 未知の体験だらけで、海里のキャパシティはもうとっくに超えていた。それが指す意味を深く考える暇なく、頷く。
 青葉は枕元から小瓶を取り出し、海里の双丘にたっぷりと含ませる。
 違和感を覚えて、海里はハッとした。痛みを想像すると、さすがに怖さを払拭出来ない。青葉が標準だったらまだ、そこまで怯えなかったかも知れないが、長さも太さも格段に違う。
 これが普通の状況だったら、コンプレックスを抱えるだろう。しかし、自分を求めていると思えば、魅力的に見えるのが不思議だった。
 ほんの短い間の行為の中で、海里は青葉の雄に確かに欲情している。触れることにも抵抗はなくなっていた。
 だが、触れるのは良いとしても、それが自分の中に収まるのかと思うと、不安が募る。
「っあ、ちょ……待、って」
「……どうした?」
「そ、の……」
 怖いとはなかなか言い出せず、もじっと身体をずらした。その反動で青葉の指が後肛につぷりと挿ってしまう。
「ひぁ……っ!」
 途端に痛みが走り、身を硬くする。
「っ、大丈夫か?!」
 予想外の出来事だったのだろう。青葉が慌てて指を引いた。
 だが、指を抜かれる瞬間、ぞくりと背筋から腰に疼きが訪れた。
「ぁ……」
「……海里?」
 心配そうに覗き込まれ、思わず本音が口をついてしまう。
「怖……い」
 青葉は小さく息をつくと、微笑んだ。
「……そうか。なら無理にとは言わない」
 そう言うと、身体を離そうとした。海里はそれがとても寂しく感じてしまい、その腕を掴む。
「でも……今、なんか、痺れた……って言うか、何だろう、ちょっと気持ち良かった……かも」
 海里も受け入れたい気持ちはあるのだ。それを精一杯、伝えようとした。
「だから……もう一回、やってみて?」
 その健気な気持ちが通じたのだろう、青葉は海里の髪をひと撫でしてから、潤んだ瞳にキスを落とした。
「分った。ただし、無理はするなよ? 痛かったら教えてくれ」
 こくりと頷くと、青葉は海里の雄をゆるゆると扱きながら、後肛の周りに指を忍ばせる。次第に昂ぶりが増し、快楽が海里の中心に集中する。
「あ、やぁ……」
 見計らったように青葉は、後ろの秘めた場所に長い指を這わせる。
 慎重にゆっくりと周りから解し、海里が身を竦めると前に刺激を与え緊張を和らげる。 次第に刺激が強くなり、つぷつぷと指先が押し入れられた。
「あっ? あ、ああ……」
 海里に未知の感覚が訪れた。確かに異物感はあるものの、中を弄られているうちに、徐々に不思議な感覚が起こり始める。
 甘く痺れるような快感がじわりと広がる。
「ん……ぁあ……」
 青葉は海里の反応を確かめながら、指を巧みに動かして行く。そして鉤型に形を変えると、性器に近い部分を擦り始めた。
 途端に鋭い悦楽が海里を襲う。腰が跳ね上がり、爪先に力が入る。
「ああっ……ああ、あ、あ」
「ここ、感じるか?」
 息が上がり、まともに言葉が出てこない。辛うじて頷くと、青葉は更に指の数を増やしながらそこを解していく。
「ふぁ……あ、やぁ……そ……んなにしたら、で……る……っ」
 首を振りながら懸命に訴えた。ゆるゆると扱かれていた手にも力強さが増して、海里は背を弓なりに反らせた。
「あ、ああ……もう……」
「思う存分、出して構わないぞ」
 青葉の言葉に促され、海里の雄が弾けた。
「あ、はぁ……は……」
 短く荒い呼吸を繰返す海里に、青葉は唇を重ねながら指を引き抜いた。
 脱力仕切った身体に、青葉の整った身体が寄せられる。
 脚を掲げられ秘めた所が露になると、恥ずかしさで身が焦れた。
 紅色に染まった身体に、青葉は愛撫を繰返しながら自身の雄を宛がった。
「いいか? 挿れるぞ……」
 青葉の上擦った声が聞こえると、海里の下腹に甘い疼きがまたも訪れる。
「……う、ん……」
 指とは比べ物にならないほどの、熱い塊が少しずつ、海里の中を支配していく。
「ぅあ、ああ……」
 衝撃で、頭を擡げ掛けていた海里の雄が勢いを無くして行くと、青葉はそこに腕を伸ばし扱きあげていく。後ろからと前からの刺激で、どちらがどうなのか分からなくなって行った。
「ふっ……や……、あ、……」
 徐々に、青葉の存在が大きくなっていく。
 自分の中に他者の存在があることに、海里は頭の芯がしびれるほどの刺激があるということに気が付いた。
 その刺激で痛みは薄れて行った。青葉が完全に収まるまでに、また頂点を迎えてしまうほど海里の身体は敏感になっていた。
「大丈夫か……?」
 青葉の息も上がっている。濃い色を帯びた漆黒の瞳が海里を見据えた。
「……だ、……じょ……ぶ」
 海里が懸命に応えると、青葉から滴る汗が海里の頬に爆ぜた。
 欲情している時の青葉の身体から発せられる香りは、普段よりもずっと魅惑的に海里の鼻腔をくすぐった。
「動いても……いいか?」
 この状態では辛いのは同性であるゆえに、よく分かる。
 挿入までにたっぷりと時間を掛け、その上どれ程の長い間、動かないでいてくれただろう。カーテンの隙間からは、もう朝を知らせる薄明かりが差し込んでいた。
 男の本能を押し殺してまで自分を気遣う青葉に、海里の胸は高鳴るばかりだ。
 これが幸せというものなのだろう。海里は今、その幸福を心の奥でかみしめていた。
 青葉の頭を引き寄せ、唇を重ねる。貪るように舌を絡めた。
 激しい蹂躙を終えて一息をつくと、青葉の瞠目した瞳が揺れた。
「……いいよ。俺、大成になら、何されてもいい……」
 青葉の表情が綻ぶと、海里は耳元でそっと囁いた。
「好きだから……。大成のこと、大好きだから」


               
                 ――to be continued――


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――隣人がおかしな件について――<16>

 ――俺、どうなちゃっうんだよ!?
 まさか、海に沈められるとか……!?
 いや、でも、少しの間って言ってた……。
 大丈夫だ、落ち着け! こいつらだって無闇やたらに人殺しなんかしない筈だ。
 ――――アイツが居てくれたら……。
 海里の脳裏に、青葉の顔が浮かぶ。
 何、弱気になってるんだよ!
 そもそも、調子のいい事考えるな!
 俺はアイツを傷付けたんだ、助けてくれる訳ないだろ!!
 ここは考えるんだ、まだチャンスはあるはずだ……。
 海里は思考を廻らすと足掻くのを止める。
 ここで無駄に体力を消耗して、逃げるチャンスを逃したくなかったからだ。
 大人しくなった海里を見て、石山の娘婿がニヤリと口の端を上げる。
「そうそう、そうやって大人しくしてりゃ、早くおうちに帰れるかもな?」
 変わらず醜悪な笑みを浮かべて、運転席に身を置くと車を発進させた。

 少し走ったところで、石山の娘婿が叫び声を上げる。
「うわぁっ!? 何だ、あの車っ!!」
 見ると凄いスピードで、この車めがけて暴走する黒塗りの車が見える。
 石山は慌ててハンドルを切ると、すれすれで避けた。が、操作を誤り、電柱へと衝突する。
 それに釣られて後ろから付いて来ていた、他の連中を乗せていた車も、急ブレーキを踏んだらしい。キキキーッとタイヤの摩擦音が響き渡る。 
 あまりスピードが出ていなかったせいか、乗車していた者は皆、無事だった。
 海里は何が起こったか、理解するのに数秒を要した。
 ――あの車、アイツの……?
 そんな、まさか!? ってかアイツ車持ってなかったよな?
 あっ、俺が見たこと無かっただけか……?
 海里は目を見開き、車から出てくる人物を確認する。
 ヘッドライトに映し出された、黒光りする車の運転席側の扉が開くと、そこから長い手足が見えて、海里の胸はドキンと脈を打った。
 車の様子を窺っていると、出てきたのはやはり青葉だった。エアバックに埋もれながら石山が怒声を上げる。
「このガキ! 嘘付きやがったなっ!? アイツ、居るじゃねぇか!!」
 知るかよっ!! 俺が聞きたいくらいだ!
 それより何で、俺が捕まったこと知ってるんだよ!?
 海里が混乱していると、一台の、やはり黒塗りの車が横に着く。
 降りて来たのは携帯を握り締めた、スーツ姿の男だった。
 その男は携帯を閉じると、青葉に駆け寄った。
 海里を乗せたワゴン車から、わらわらと石山の雇われヤクザが降りると、怒声を上げる。
「ゴルァ! 貴様いい度胸じゃねぇか!?」
「それはこっちの台詞だ。海里を返して貰おうか」
 鋭い眼差しで立ちはだかる青葉が目に映ると、今まで張り詰めていた糸が切れたようになり、堪えていた恐怖心が沸き起こるのと同時に、ガクガクと身体が震え出す。
 スーツ姿の男は、青葉の後ろに立つと頭を下げた。
「若、すみません……! ちょっと目を離した隙に」
 開け放たれたドアのお陰で、会話は筒抜けだった。
「いや、お前が居なかったら、俺は知らないままだった。礼を言う」
「しかし、私達だけでこれだけの人数を相手にするのは……。今、応援を……」
 だが青葉は、携帯を開いた黒スーツの男を制する。
「要らない。下がっていろ」
 殺気を帯びた低音が響くと、青葉は切れ長の瞳を鋭く光らせる。その気配に気圧されたのだろう、黒スーツの男は一歩、後ろに退いた。
 青葉の周りがゆらりと陽炎のように揺らめく。その姿は獲物を狩る時の、黒豹のようにも見えた。
 いや、無理だって!
 幾らアイツが強くても、十人は居るぞ!?
 俺も加勢しなきゃ!
 海里は、焦燥した。青葉の危機に恐怖心はどこかに吹っ飛び、必死にバタバタと足を動かすと、縛られた縄を緩めようとする。
 が、そう簡単に外れる訳もなく、反動でシートの下に転がってしまう。
 くっそぉぉっ!! 何だよ、俺っ!!
 情けないにも程がある……!
 早くしないと幾らアイツだって、無事じゃいられないってのに!!
 ジタバタともがいてみるが、隙間にずっぽりと嵌ってしまい、身動きが取れなくなる。
 焦燥し、もがいていた少しの間、ヤクザ共の怒声が聞こえていた。その後、数分もしないうちに辺りに静粛が訪れた。
 その中に、男のうめき声らしきものが混ざり、海里の胸中は不安に包まれる。
 い、一体、どうなったんだ?
 まさか、アイツ……。そうだよな、あんな人数じゃ幾らなんでも……。
 ぅあああああっ、くそっ!! 俺が情けないばっかりにっ!!
 こんな事になるなら、早くアイツを遠ざければ良かった……。
 そしたらアイツは……大成は……っ!!
 悔し涙で、目の前が霞む。暗闇の中、ただ自分への怒りで身を震わせていた。
 ところが、石山の娘婿がガタガタと震えながら「あわわわ……」と、声を上げる。
 それと同時に、運転席の扉が開く音がした。
「……降りろ、このゲス野郎」
 今までの人生で聞いた事がない、地を這うような静かな怒声に、海里は身を竦める。
 が、それが青葉の声だと気が付き、無事だった事に、深い息をついた。
「ひっ、ごめんなさいっ!! もうしませんからっ!!」
「全力で潰すと言った筈だ……。覚悟は出来てるな?」
 悪魔と言う架空の生き物がいたとしたら、こんな声を出すのだろうかと思う程の低音に、全身がゾッと粟立った。
 ヤバイ! 大成の奴、マジ切れしてるっ!!
 何とかしないと、このオッサン、危ないんじゃね?
 でも、ヤクザの仲間なら……。いや、待てよ? 
 確か金で雇ってるって言ってなかったか?
 ってことは一般人? それに仮にも婆ちゃんの娘婿だよな?
 だとしたら、もし傷付けたりなんかしたら、大成がヤバイんじゃないか!?
 必死に口を動かし、何とか口枷を半分くらい外すと
「やめろ大成!! 俺は大丈夫だからっ!!」
「……海里!? どこに居る!?」
 海里の声を聞いた青葉の声の調子が、少し変わったように感じた。
「う、後ろで転がってるだけだから!! そのオッサンに手ぇ出したら駄目だっ!!」
「どうして? こいつはお前を……」
「俺は無事だから!! だから、そいつには手を出すな!!」
「どうしてだ、海里……。こんな奴を庇うなんて……」
「違う!! 一般人、傷付けたりしたら大成がヤバイだろ!! それに、婆ちゃんにも迷惑が掛かるかも知れないだろ!!」
 海里の言葉に、石山の娘婿は声の調子を上げて尻馬に乗る。
「そ、そうだよ、旦那ぁ。アンタ、事件で掴まるぜ? 怪我なんかした暁にや、婆さんに慰謝料貰いに行くしな?」
「煩ぇ、カスが。別に俺はどうなろうと構わない。お前は黙ってろ。それとも何か? 口が利けなくなるほど、顔面、腫らしてみるか?」
「やれるもんならやってみろよ? 婆さんにその姿見せて慰謝料と……」
 娘婿の声を遮るように空を切る音が聞こえると、車が衝突したのではと錯覚するほどの衝撃と、弾かれるような鈍い音が響き、地震のような振動が伝わる。
 それと同時に、何かが頭上を通過した。海里は何が飛んできたのかと思い、凍てつきながら凝視した。一瞬、猟奇的な場面を想像したが、それに反し通過したものは、ドライバーズシートのヘッドレストだった。
 それがリアガラスに当たると、凄まじい破壊音を轟かせ、破片が飛び散る。
「あ……わわ……」
「それ以上、何か喋ってみろ。次はお前の頭がアレになるぞ?」
「ひ、ひぃぃぃっ!!」
 尋常じゃない青葉の行動に、海里は危機感を募らせ焦燥した。このままでは、事件になってもおかしくない。
「だから!! 俺は無事だから! それ以上はやめろっ!! そいつ殺す気か!?」
 青葉は海里の緊迫した声に制されたのだろう、深い溜息をついた後「分った」と、呟いた。
 その後、どさりとシートに振動が伝わる。
「お前、海里に救われたな? それに免じて今回は見逃してやる。だが、もう二度と近寄るな。例え秋山の親父を連れて来た所で、結果は同じだ。分ったらとっとと失せろ!」
 青葉の怒声に怯えたのだろう。石山の娘婿は「ひぃっ」と小さく悲鳴を上げると、バタバタと助手席側の扉を開け、車外に飛び出して行ってしまった。

 コツコツとアスファルトを蹴る音が近付き、後部座席に人の重みが伝わる。
「海里、どこだ?」
 海里は自分の姿が情けなくなり、声を小さくする。
「一番後ろ……」
「どこだ? 見当たらないが……?」
「下に……」
 青葉は海里の姿を見付けると、縛られていた手足を自由にし、口枷にしていた布を取り払った。その間、青葉の表情は、暗闇で読み取れなかった。
 無様に転がってシートの間に挟まれていた海里は、てっきり笑われるかと思い「笑うかと思ってたのに……」と、呟いた。
 どんよりと曇っていた、雲の隙間から月明かりが緩やかに射すと、青葉の表情がはっきりと映し出される。
 顔面を蒼白にし、眉根を寄せ口許を震わせながら、黒い瞳が揺れてるのが見えると、海里は息を呑んだ。
「誰がこんな状態で笑えるか……」
 大きな掌が、海里の頬を撫で上げる。
 暖かな感触が伝わると、海里の胸はトクトクと脈打つ。
「何かされたのか? 涙の跡が……?」
「あ、いや……何も……。ただ縛り上げられて、悔しくて……」
「本当か? 乱暴な事はされなかったか?」
「あ、うん……」
 海里の返事に、青葉は小さく息をつく。だが、自分を見失っていたのだろう、青葉は散らばったガラスの破片を見て、ハッと息を呑む。
「すまない、頭に血が上って……ガラスは当たらなかったか?」
「それも大丈夫」
「――そうか、良かった…………」
 青葉はハァーと大きな息をつき、海里を抱きしめると、消え入るような声で囁く。
 広い胸板から速い鼓動が伝わると、共鳴するように海里の心音も高鳴って行く。
 後ろから髪を撫でられると、緊張し強張っていた身体が解れて、一筋の涙が頬を伝った。
「俺……怖かった……」
「ああ……」
「大成が……助けに来てくれて……嬉しかった」
「そうか……」
「迷惑……かけて……ごめん……なさい」
「謝る事はない。無事で……良かった」
 心地良い夜風が吹くと、青葉の香が海里の鼻腔をくすぐる。
 海里はその香りに抱かれると、胸の鼓動は早鐘を打つも、安らかな気分になる。
 ……ああ、そっか。
 この匂い、この人の身体から漂ってるんだ。
 俺は、その匂いが好きで…………この人の事も……好き、なんだ。
 海里はようやく、自分の気持ちを素直に認める事が出来たのだった。
「ごめん……俺……大成の言う通りだった」
「……ん?」
 青葉は、海里の瞳を覗き込むように首を傾げる。
 その姿が映ると、海里の顔は沸騰しそうなほどに熱くなった。
「あ、あの……今まで……ごめん」
「どうした? 海里らしくも無いな?」
「……らしくないかも知れないけど……だって、俺……気が付いたから」
「……何に、だ?」
「だから……大成が……その、す、好き……だと思う」
「――そうか。やっと自覚したか」
 青葉は海里をそのまま抱き上げ、両手に抱えるとニッコリと微笑む。
 お姫様抱っこをされて、海里は慌てふためいた。
「あ、いや……ちょ、ナニコレ!?」
「ん? 俺の可愛い海里」
「なんで人を猫か犬みたいに……何してるんだって、訊いてるんですけど?」
「見れば分るだろう? お姫様抱っこだ」
 いつもの調子に戻った青葉に、海里は途端に恥ずかしくなり声を荒げる。
「バ、バカ!! 恥ずかしいだろ、降ろせ!! どこも怪我なんてしてないし、自分で歩けるから!!」
「何を今更。晴れて恋人同士になったんだ、これくらい構わないだろう?」
「だ、誰が恋人同士だ!! 降ろせったら降ろせ!!」
「俺の事が好きなんだろう? 俺も海里が好きだ。だから恋人同士だろう?」
 ニヤリと口の端を上げ青葉が言うと、海里は後悔の念に駆られる。
「……ごめんなさい、嘘です。今のは無しで」
「何の事かな~、聞こえないな~」
「どうしてアンタはそうかな!! 一瞬でも好きだと思った俺がアホでした!」
「うん? ずっと好きでした? そうか、そうか。そりゃ光栄だ」
「……馬鹿だろ? ネジ緩いだろ? 降ろせって言ってるの!!」
「全く、素直じゃないな。嬉しいくせに」
「ばっ、馬鹿野郎っ!! いいから、お・ろ・せぇぇぇっ!!」
 海里の雄たけび虚しく、青葉の車にそのまま押し込めらた。
 二人を乗せた車は、静かに走り出すと、闇に溶け込むようにその姿を消して行った。



             ――to be continued――


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――隣人がおかしな件について――<15>

 リビングの横を抜けると、広いキッチンとダイニングが見える。
 ダイニングテーブルには、彩が鮮やかな洋食が置かれていた。
 トーストしたパンの香りや、スクランブルエッグにはバターが使用されているのだろう、その香が漂うと食欲がそそられる。
 サラダは瑞々しく、シャキっと歯応えがありそうだ。
 青葉は海里に席を促すと、向かい側に座る。
「じゃ、食べようか? 頂きます」
 手を合わせ、挨拶をする青葉が新鮮に映る。
 海里もそれに合わせ「頂きます」と、手を合わせた。
 食事も中ほどを過ぎた頃、黙々と食べているのもどうかと思い、海里は口を開く。
「あのさ……やっぱ一人でも食事前って、手を合わせる?」
「ん? ああ、そうだけど?」
「そっか、俺、忘れてた。うちの婆ちゃん、結構厳しかったのに」
「なら、思い出せて良かったな? 食べ物に対する礼儀だからね」
「うん、まぁね。婆ちゃんも同じ事言ってた」
 海里はふと、今まで思っていたことを訊こうと思い
「アンタさ……」
「うん、その『アンタ』って言うの、実はあんまり気分良くないんだよね。名前で呼んでくれる?」
 確かに世話になりっぱなしの人に、アンタも無いかと思い
「じゃあ、青葉さんは……」
「その、『青葉さん』っても嫌だな」
「アンタ我侭だな! じゃあ何て呼べば良いんだよ!?」
「大成でいいよ」
「いきなり呼び捨てるわけに行かないだろ? それに年上の人を……」
「いや? 別に構わないけど?」
「分ったよ、もう……。これじゃ話出来ないから、呼び捨てるからな?」
「どうぞ?」
 青葉は、機嫌が良さそうに微笑んだ。
 海里はそれが何故か分らないまま、話を続ける。
「んじゃあ、まずはさっきの話の続きで、大成が使ってる洗濯洗剤って市販のやつ?」
「ああ……? ごく普通の……アチョップだけど?」
「柔軟剤は?」
「…………そんなの訊いて、どうするんだ?」
「いや、なんかいつもア……大成から好い匂いするから、何使ってるのかと思って」
「……ふーん?」
 青葉は首を横に向けると、自分の腕の辺りをクンクンと嗅ぐ。
「柔軟剤は、確か……モアモア~だったかな?」
 ……あれ? 俺と全く同じじゃね?
 あ、そっか。洗剤はともかく、柔軟剤は色々香があるからな。
 きっとその種類が違うんだな。今度、探してみよう。
「そっか。今度、探してみるよ」
 海里はそれに納得すると、箸を運ぶ。
「でさ、もう一つ。大成は大家の婆ちゃんに育てられたんだよな?」
「ああ。それが?」
「で、弟は生まれてすぐ……亡くなってしまったって聞いた」
 青葉は首を捻り、海里が言わんとする事を考えている様子だ。
「俺が言いたいのは、俺の事、弟みたいに思ってるかって事」
「そうか、なるほどね……」
「いや、答えになってないから! どうなのよ、実際。大成は、婆ちゃんにはそう言ったんだろ? ゲイを装って、俺をからかって楽しんでるだけじゃないのか? 愛梨さんの事、気にしてたみたいだし……」
「――そうだ、と、答えたら?」

 その答を聞いた途端、胸の奥に重い石を投じられた感覚に陥る。
 なぜか涙が零れ落ちそうになり、海里は混乱した。
 何だよ、やっぱそうじゃん! 
 って、何で俺、泣きそうになってるんだよ!?
 愛梨さんの事、取られそうだからか……? 
 そうだ、そうだよ、じゃなかったらこんなに哀しい気持ちになったりなんかしないって!!
 だったらもう、逢わせない様にすれば良いじゃん……。
 でも、今度は、愛梨さんを狙って、付いてくるかも……?
 そしたら俺は……この人には敵わない……。
 地位や財産もそうだし、見た目だってずっと俺の方が劣ってるし……。
 海里は落ち込み、押し黙ってしまった。
 すると青葉はクスクスと笑う。
「な、何だよ! 人が泣きそうになってるって言うのにっ!!」
「どうして泣きそうになるの?」
「そりゃ、アンタに敵わないからに決まってるだろ!!」
「ふーん。何が?」
「地位も、財産も!! 男としての技量だって……」
「そんなに自信ないんだ?」
「当たり前だろう!! 俺はチビだし、金だって持ってない……まだ駆け出しのサラリーマンだし、愛梨さんを幸せにする自信なんか……」
「――……そんなに彼女の事が……好きなのか?」
 青葉が眉を寄せたのに気が付かず、海里は自分に言い聞かせるように言い放った。
「ああ、好きだよ!! 悪いかよ!!」
「…………ふーん」
「ふーんって! アンタにとっちゃ大した事無いかもしれないけど、俺にとっては一大事なんだよ!!」
「じゃあ、違うと答えたら?」
「は? 何言ってるんだよ? アンタも愛梨さん狙いなんだろ?」
「また……アンタに戻ったな」
 青葉は眉根を寄せると、口の端だけ上げて笑みを作る。
 そして、大きな溜息をついた後に続けて
「俺は前から……ずっと君が好きだと言ってるだろう? まだ信じないわけ?」
「んなの、信じられるかよ!! だってアンタ、婆ちゃんに弟みたいでって言ったんだろ! 第一、俺、男だけど? 普通の恋愛対象は、男は女だろが!」
「全く君には困ったもんだ……。それは昔の考えの妙子さんに本当の事言って、脅かせたくなかったから、そう言ったまでで……。どうして常識で物事を考える?」
「そりゃ当然だろう!? だって普通は……」
「普通は……ねぇ。それ、君の口癖だよね?」
「え?」
「そう、君は気が付いていない事が多すぎる。その普通という常識に囚われ過ぎてね」
 海里は青葉の言葉を反芻する。
「常識に囚われすぎて……?」
「そう。男は皆、女性が好きだと思い込んでいる。と言うか、君に関しては思い込もうとしてるように見えるが?」
「思い込もうとなんかしてない! 実際、そうだろ? 女の身体見たらムラムラするし!!」
「それが真実を見えなくさせてしまっている原因だという事にも、気が付いていない。それはただの本能だ」
「な……? どういう事だよ?」
 青葉は海里の腕を引き、顔を寄せた。
 青葉からあの好い香が漂ってくると、途端に心臓が高鳴り、顔面に熱が篭もる。
「な、何するんだよ!? 放せよ!!」
「そんなに可愛い顔して言われてもね? このまま鏡の前に連れて行ってあげようか?」
 そう言うと青葉は海里の腕を引き、パウダールームへと移動する。
「やめろ、放せ!!」
 手を振り解こうと試みるが、青葉はぎゅっと掴んだまま離さない。
 それはまるで、怒っているようにも思えた。
「真実を知るのが怖いのか?」
 振り向きもしないまま、ズカズカと歩く。
「だから何だよ、真実って!!」
「見てみるといい、今の自分の姿を」
 鏡の前に突き出され、海里は自分の姿を見た。
 顔面は耳までも赤く染め、今にも泣き出しそうな自分がそこにいる。
 ……何だよ、これ?
 俺、コイツの前で、こんな顔してたのかよ!?
 これじゃまるで…………。
 呆気に取られながら鏡を見ていると、不意に顎を捉えられ、じっと見据えられる。
「な、なんだよっ! 放せよっ!!」
「放さない」
 青葉は眉を顰めながら顔を寄せると、その唇が海里の唇に触れる。
 途端に全身に血が駆け巡り、フラフラと脱力してしまった。
「そんな顔されて、そんな反応されて、俺が勘違いしないとでも?」
「勘違いって……」
「君も、俺が好きなんじゃないかってね、期待してたよ」
「え……でも、弟みたいに思ってるって……」
「俺はそう答えたら、と訊いただけだ。弟のように思ってる訳じゃない。でも君は、あの娘が好きなんだろう?」
 青葉は海里の手を放すと、ズボンのポケットを弄り、車の鍵を取り出すと手渡す。
「……悪かったな。鍵、返すよ。車は地下の駐車場に置いてある」
「……え?」
「食事、途中で悪いが……帰ってくれ」
 青葉は踵を返すと、振り返りもせずにリビングへと姿を消した。



 海里は、ナビが案内する道順を辿り、帰路へと向かう。
 ナビの音声だけが、車内に流れていた。
 アパートに到着いたのは、夕方に近い時間だった。
 ぼんやりとしながら玄関を開け、中に入るとそのままベットに雪崩れ込んだ。
 ……俺、アイツの前で、ずっとあんな顔してたんだ?
 あれじゃまるで…………恋する乙女みたいだ。
 好きだって言う人にあんな顔されたら、勘違いだってするよな?
 俺も愛梨さんにそうされたら、脈ありと思うし……。
 愛梨さんがちょっと赤くなっただけで、実際そうだったし……。
 海里はふと、青葉の言葉を思い出す。
『君は常識に囚われすぎて、真実が見えないんじゃないか?』
 真実……? 何だよ、それ。
 それじゃまるで、俺がアイツの事好きみたいじゃん?
 そんな訳あるか! 誰があんな鬼みたいな奴……。
 いつも、からかってばかりいて、俺で遊んでるだけじゃん!
 でも……飯、作ってくれたり、体調気にしてくれたり……。
 大家の婆ちゃんの親戚から、付け狙われてるのを護ってくれたり……。
 海里の脳裏に青葉との思い出が巡ると、なぜか心がゆらゆらと揺れる。
 ――――そんな訳、あるかっての……。
 ……なんで、あんな事するんだよっ!! だから余計に混乱するんだ!!
 海里は思考を纏められないまま、枕に顔を埋めた。

 ふと気が付けば、あたり一面闇に包まれていた。
 むくりとベットから起き出し、冷蔵庫を開ける。
 ペットボトルを取り出し、底に少しだけ残った茶を飲み干す。
 ふと、青葉の感触を思い出すと、心臓が早鐘を打ち始める。
 ――なんで、こんなにドキドキすんだよ、ちくしょう!
 たかがキスじゃん!
 何をそんなに動揺する必要がある? 
 中学生じゃあるまいし、そんな事でいちいちこんなになるなんて、俺はおかしくなったのか?
 そんな事を考えていると、余計に喉が渇いてしまった。
 仕方なく財布を手にして外に出ると、隣の部屋は明かりが消えていた。
 アイツ……今日は帰って来なかったのかな?
 あ、あのマンションが本宅だっけ……。
 じゃあ、もうこっちに来る事もないのか……?
 そう思った途端、血の気が引いていくような感覚に陥り、地面が揺れるように感じる。
 ……何だ?
 どうして、こんな……?
 やっぱり……俺は…………?
 訳が分からないまま、その場に立ち尽くしてると不意に肩を叩かれ、ハッとして振り返る。
 一瞬、青葉かと思った。しかし、海里の予想はいとも簡単に外れる。
「今晩は、須藤さん。これからお出かけ?」
 この前の石山の親戚だった。後ろには十人ほどの、柄の悪そうな連中が控えている。
 前回はいとも簡単に青葉に伸されたからなのか、今度は人数を増やして来たようだ。
 海里は更に血の気が引いたように感じ、蒸し暑い筈なのに手足が冷たく感じた。
「な……! お前は確か婆ちゃんの……?」
「ああ、あの頑固ババァの娘の婿だが?」
 不敵に笑う娘婿が、憎らしく映る。
 大家の話では、ギャンブルに身を投じて遊び呆ける日々を送っている、ロクデナシだ。
 穀潰し……青葉の言葉、そのものだと思った。
「お前、婆ちゃん泣いてたぞ!! 娘さんの婿なら、どうしてそんな……」
「はぁ? ババァが泣こうが喚こうが、俺には関係ないんだよ。甘い顔してりゃ、いつまでも付け上がりやがって。挙句の果てには、こんなガキに財産譲るだと? 冗談じゃないんだよ!! 俺がどんな思いで長い間、媚び諂(へつら)って来たと思ってるんだよ? ああ!?」
「知るかよ、んな事!!」
「何粋がってんだ、小僧が! 青葉の若頭がバックに居るからって、調子こいてるんじゃねぇぞ!! そら、呼んでみろよ!! 助けてください、お願いしますぅ~ってな!!」
 周りに居た柄の悪い連中も、ニヤニヤとしながら海里を見下す。
「マジで、こんなチビで貧相なガキが相手なんすか、石山さん。俺ら物足りないっすよ?良いんですかい? こんなチビに大枚叩いて?」
「ああ、構わないさ。こいつが遺産の完全放棄すれば、そんな端下金なんぞ幾らでも回収出来る」
「じゃあ、思う存分、やらせて貰いますわ」
 ゲラゲラと下品に笑うそいつは、見るからに前の連中とは格が違う。鍛えられたような筋肉が、隆々と浮き出ていた。
 海里は、その気迫に押されそうになるのを、必死で堪えた。
 ビビるな! こんな奴等に負けるかっ!!
 脅しなんかに屈するもんかっ!!
 震える拳を握り締め、石山の娘婿に怒声を上げる。
「うるせぇ!! アイツは何も関係ねぇんだよっ!!」
「はぁ? 関係ないこと無いだろ? 金で雇ったんだろが!!」
「違う! アイツはもう来ない!!」 
「はぁーん、もう来ないねぇ。種切れって所か」
「だから! 雇ってなんか居ない! それに俺は、婆ちゃんに要らないって断ったし!!」
「ま、そりゃ利口なこった」
 石山の娘婿はニヤリと口の端を上げた。
 その顔が醜悪で、海里は顔を背ける。
「だからもう関係ないだろ!」
「だが、ババァはそんな気ぃ無いみたいだが?」
「知るかよ!! 俺は断った、もう関係ない!!」
 海里は掴まれた肩の手を振り解くと、ひと睨みして部屋に戻ろうとした。
 だが、数人のヤクザが、玄関の前に立ちはだかり、それを阻止する。
 しまった、車の鍵も部屋の中だ――。
 どうする? 走って逃げるか?
 だけど……この人数、振り切れるか?
 海里はへびに睨まれたカエルのように、身動きが取れずにいた。
 心音が耳にまで木霊し、恐怖心に押し潰されそうになる。
「……ったく、お前、頭弱いのか? はいそうですかって帰す訳には行かないんだよ。ちゃんと俺が受け取るまではなぁ!!」
 石山はそう言うと海里の腕を引き、後ろ手に捩じ上げる。
「っつ!! 痛ぇな、放せよっ!!」
「残念だったな。お前には少し居なくなって貰う」
「居なくなって貰うって……何する気だっ!!」
「あーもう、キャンキャン煩い犬だ。おい、こいつを車に押し込め」
 目配せで合図をすると、数人が海里を抑え付けてロープのようなもので縛り上げ、布で口枷をする。
「んーーーーーーっ!!」
 声を上げてみるが、ただ唸るようにしか出ない。
「いいザマだな、ガキが。生意気な口利いてるから、こういう目に遭うんだよ」
 石山の娘婿はそう言い放ち、ニヤニヤと不気味な笑みを浮かべる。
 焦燥し、バタバタと足掻くも、自分よりも大きい男達に適う訳もなく、海里はヤクザ二人に抱えられると、ワゴン車の中に押し込まれてしまった。



               ――to be continued――


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